top » diario

diario

気が抜けた~ 5月10日

 

4月末に大きな仕事が終わって

どっと気が抜けたゴールデンウィーク

だったのですが、

せっかく心身に余裕ができたのだから

自分の作業も進めよう、と思って

石膏を磨いて放置していた

グスターヴォ額縁の

2020年2月にフィレンツェで

木彫師グスターヴォさんに

教わりながら作ったので

こんな呼び名になってしまった・・・

作業を再開いたしました。

作業部屋の冷蔵庫には

いつもニカワや石膏液は

準備してありますので

黄色ボーロと赤色ボーロを

湯煎した魚ニカワでちゃちゃちゃと

溶きまして、ベベベと塗りました。

今回は黄色も赤も厚めです。

クラシカルで重厚な雰囲気に

仕上げる予定でおります!

 

 

それは君が考える必要ないよ 5月06日

 

またしても小箱の話・・・

なのですけれど

「ああ、そうだなぁ」と

つくづく思ったことの話。

 

小箱を作りはじめたころ

昔から額縁でお世話になっている方に

「いまこんなものを作っております・・・」

と相談に乗って頂いたことがあります。

とはいえ、仕事ついでに気軽に

「見てみて~ちょっとかわいいでしょ」

なんて感じでもあったのですが。

 

▲小箱の内側には布を貼っています。

大切なものを入れてもできるだけ安全なように。

 

この小箱たちを売り出すにあたって

形もサイズもさまざまだけど

いったい何を入れるために売るか?

どうやって買っていただく??

おすすめの使い方はあるかな???

・・・と考えていたのですが

その方いわく

「入れるものを君が考える必要はないよ。

買った人が入れたいものを入れるのだから。

思いもよらない素敵な使い方をする人が

いるはずだよ。」

 

目からうろこが落ちました。

そりゃそうだ。

空の箱を売るのですから

入れる物を指定する必要は全くない。

 

▲こんな長細い小箱ですが

なにか素敵なものを入れていただきたいのです。

 

とかく視野が狭くなるわたしです。

この頂いたひとことで、なんだか

こころがぽわ~んと軽くなりました。

 

 

ブラックレター装飾 5月03日

 

装飾に文字を入れるのが大好きなのは

もうずっと昔から変わりません。

それも、ゴシック体が好きです。

日本のフォント・ゴシックもありますが

「ブラックレター」の方を指しています。

ラテン語の慣用句などを探し出して

小箱に描きこんでいます。

身近な言語だと文章の意味を強調しすぎて

意味深な小箱になってしまうのですが

ラテン語ですと、パッと目に入っても

ひとまず文字装飾に見えますし

中世の雰囲気が好きなので

ラテン語を選んでおります。

(でもこれはわたしの感覚です。

分かる方が見れば意味深かも・・・)

今回の小箱、なかなか好きな感じに

仕上がりつつあります。

小箱作り、つくづく楽しいです。

 

 

楽しい迷走 4月29日

 

あいかわらず小箱は作っております。

 

デザインやイメージは大まかに決めて

作りはじめるのですけれど

具体的になってくると途中で

「なにか違う」になって

その都度デザインを変更したりします。

鉛筆で模様を書き入れてみたりして。

▲格子模様をパスティリアで入れたけれど

釈然としなくて模様を試してみた図。

 

ご注文品ではないからこその迷走。

成り行き任せと言いましょうか。

でも思いがけない楽しい結果に

なることもあるのです。

おや、失敗か?と思っていても

案外と気に入ってくださる方もいたり。

楽しみつつ迷走しております。

 

 

大切な「よしはる彫刻刀」 4月26日

 

石膏を塗り終わり、乾いたら

石膏の凹凸を整えるために

紙やすりで磨くのですが、

今回のような彫りが細かい場合は

彫刻刀などで再度彫り起こすこともあります。

リカットと呼ばれる作業です。

▲こちらまだ石膏を塗っております。

 

特にこの額縁、オリジナルは

17世紀ヴェネト地方(ヴェネチアがある場所)

で作られたのですが、それはそれは

キリリとシャープなラインなのです。

デザインが曲線と花々でロマンチックですが

シャープなラインで引き締まっていて

それを再現したいのでございます。

上の写真、リカットに使っているのは

小学校時代に図工で使った学童用彫刻刀。

物持ちが良いにも程がありますな。

裏側にはマジックでデカデカと

名前が書きこまれております。

おそらく4年生で買ってもらったのでしょう。

 

石膏を削ると彫刻刀が傷むので

リカットには専用の彫刻刀が便利です。

学童用ですので切れすぎず丈夫ですから。

 

思えばこの「よしはる彫刻刀」で

ずいぶんいろんなものを作りました。

図工では自分の肖像浮彫りや木版画、

中学生になってからは消しゴムはんこ、

高校の美術クラブでは壁掛け木彫時計・・・

そして今も現役なのですもの

わたしの長い長い仲間です。

 

ネット検索してみたら、この「よしはる」は

いまも同じデザインで販売されていました。

ただ箱は紙からプラスチックに変更。

この部分に時の流れを感じました・・・。

 

 

ワックス実験悲喜こもごも 4月22日

 

ずいぶん前、2017年に

完成させました彫刻の額縁

市が尾のAtelier LAPIS に飾らせて頂いたり

サンプルとして手元に置いていましたが

どうも・・・なんだか気に入らない。

4年経って感覚や好みが変わったのかも

しれません。

▲以前の状態。汚しが不自然なのです。

 

気に入らないなら変えてしまえば良いじゃない?

なにせ自分で作って自分で持っている

額縁なのですから、遠慮は必要ありません。

 

まずはスチールウールで磨ります。

同時に以前に付けた古色のワックスや

パウダーも取り除いてしまいましょう。

 

そして改めて褐色のワックスを塗ります。

このワックスは最近手に入れたもので

今までのワックスと少し違います。

今までは留学時代に教わったレシピで

調合していたワックスなのですが

今回の新しいワックスは市販品。

実験もかねて使ってみることにしました。

▲黄色味が抑えられ、濡れた感じ。

 

ふうむ。

今までより褐色が強いイメージです。

そしてなんだか・・・日本の他工房の製品の

色とツヤに似ているような?

言ってしまうと「日本製っぽい」ような。

 

以前に「KANESEIの金は色が軽い」と

言われたことがあるのです。

他製品より黄色味が勝っていて重厚感が無いと。

いろいろと謎が解明されてきました。

 

今までの自作ワックスも

今回の市販ワックスも

一長一短あるのです。

まだ調整が必要だけれど

使い分けることができそう。

手持ちの札が増えましたよ・・・フフフ。

 

 

黄色いお花のお家 4月19日

 

わたしの記憶によりますと

モッコウバラの満開時(東京)は

5月の大型連休ごろなのですが

今年2021は4月18日現在すでに

満開~終わりに差し掛かっています。

思えば昨年2020年も「今年は

満開が早い」と書いておりました

そんな昨年よりさらに早い今年

どうしちゃったのでしょうね。

桜も早ければモッコウバラも早い。

いつもモッコウバラが咲くころは

わたしの額縁作業がなぜか

一年で一番忙しいことが多いのですが

今年は「命がけ」(大袈裟ですが)な

最終局面を迎えて、我ながら

寝ても覚めてもその額縁ばかり

考えている状態になっています。

 

納品は間近、制作は順調ですし

こうした場面も人生には必要ですから

いっそのこと楽しんでしまえ!

(実際は難しくとも)と

張りきって咲き乱れるモッコウバラに

今年も励まされております。

作業部屋の側壁に植えてあるので

道行く親子の会話が聞こえます。

「わー、今年も綺麗ね~」とお母さん

「きいろいおはなのおうちだ!」と

幼稚園くらいの子供の声。

たまらなく嬉しく、和みました。

 

どうにもこうにも。 4月15日

 

先日に外側に木枠を取り付けて

縁彫刻をしていた額縁ですが

まぁ・・・こんな感じで。

思ったようにはなかなかいきませんが

目の前に「ドツボ」(いつまでたっても

終えられない心境)が見えてきたので

これはこれとして、次に進みます。

 

 

グスターヴォさんとの会話中の

メモ書きが木地に残っています。

「stracantone」三角刀

「tiglio」シナノキ

「spigolo」エッジ、縁

 

この3つの言葉、留学中には

知っていたはずなのに、もうすっかり

頭の中から消えていたのでした。

石膏を塗ると消えてしまう。

もう2度と忘れないように。

 

 

コンスタブル展と額縁の謎 4月12日

 

三菱一号館美術館で開催中の展覧会

「コンスタブル展」に行きました。

なんと・・・展覧会は1年以上ぶり。

我ながら信じられませんけれども。

 

さて。

この展覧会ではもちろん19世紀イギリスの

美しい風景を描いたコンスタブル作品を

ぼんや~り観て心を洗うのが目的ですが

実はもうひとつ。

額縁にある謎があって、実物が見たかったのです。

▲最後の部屋にあった撮影可の作品

「虹が立つハムステッド・ヒース」

1836年 カンヴァス テート美術館所蔵

 

この額縁はおそらく19世紀のオリジナル。

上部をご覧ください。

スライド式の仕組みと突起があります。

これは一体なんだ・・・?

▲本展では厚い無反射ガラスが入っていました。

 

先日、京都の「ガクブチのヤマモト」さんの

インスタグラムにこの謎があったのです。

山本さんが「これは一体なんだ??」と。

その後、わたしもどうしても気になって

イタリアの額縁史先生に尋ねました。

先生がさらにロンドンのナショナルギャラリー

額縁部門の方に問い合わせてくださり

とうとう謎が解けたのでした。

「額縁の表からガラスを出し入れできる仕組み」

なのですって。

当時のロンドンは産業革命真っ只中で

大気汚染もひどかったとか。

(おそらく石炭の煤でしょうか)

ヨーロッパでは今も昔も一般的には

油彩額縁にガラスは入れないのですけれど

当時は室内に飾る油彩画も煤で汚れるほど

大気汚染がひどかったから、だそうです。

 

なるほど・・・。理由は分かりました。

だけど、具体的にどのような仕組みで??

実物を見ましたけれど、その仕組みは

想像するしかありません。

ガラスのサイズはおそらく、

左右は額縁窓と同寸法で、上下の寸法が

5~10mm程度大きいのではないでしょうか。

で、下のカカリ内側にサンがあって

ガラスを表から差し込んで、

上の金具をスライドさせて留める、と。

そんな風に想像します。

突起は引っ張る取っ手なのか、

はたまた押してガラスを動かすのか

これは謎なままです。

 

▲展覧会見学後に外に出ましたら

コンスタブル的な空と雲が。

 

いつか実際にガラスの出し入れを

しているところを見学したい。

額縁の仕組みをじっくり見たい。

などと夢見ています。

いつかきっと実現したいです。

 

テート美術館所蔵 コンスタブル展

三菱一号館美術館 5月30日まで

 

花を見て思う 4月08日

 

あっという間に咲いた桜は、やっぱり

あっという間に散って

もうつつじが満開になっていたりして。

庭のライラックを摘んで生けたら

部屋が日差しで暖かすぎたのか

これもあっという間にしおれました。

 

 

なんだか・・・早すぎる!と思うも

コロナ禍は一向に終わる様子もなくて

じりじりと焦げそうな気持になります。

 

早く去ってほしいものは去らず

待ってほしいものは待ってくれない。

ままなりませんね。

 

 

・・・などと愚痴を言っていても

わたしの時間は待ってくれないのでした。

 

するべきこと、できることをするのみ

でございますね。

 

 

シリーズ「豆」 4月05日

 

小箱といっても形さまざまに

作っておりますけれど

その中でも特に小さな箱

豆のような小箱があります。

「豆」シリーズでございます。

 

 

左上から時計回りに

・パスティリア(石膏盛り上げ)に

 ホワイトゴールド箔の水押し

 メノウ磨き

・パスティリア(石膏盛り上げ)に

 純金箔の水押し、メノウ磨き

・純金箔水押しにアクリル彩色

 イニシャルKモノグラム

・イタリアのオーナメント

 アクリル彩色、古色仕上げ

・イタリアのアンティークから型取り

 オーナメント、アクリル彩色

・イタリアのオーナメント

 アクリル彩色、古色仕上げ

 

 

サイズは

外側:35×35×23mm(オーナメント含まず)

内側:22×20×15mm

指輪なら斜めに入る感じです。

 

いかがでしょうか。

なにかに使っていただけますか?

 

「works」ページ内「other」にアップいたしました。

ページ内下部です。スクロールしてください。

どうぞご覧下さい。

 

 

Firenze 2020-17 4月01日

 

フィレンツェには大小沢山の

公立・私立の美術館があって

まだまだ知らない行ったことのない

美術館・博物館があるのですけれど

結局いつも決まったお気に入りの

美術館にばかり行っているようです。

 

せっかくなのにもったいない?

すぐに来られる場所ではないから

他のところも見てみよう・・・と

出発前には思うのですけれど

同じ美術館の同じ展示品でも

その時々の天気や自分の気持ちで

印象が変わるものですから

やっぱり2度3度と通うのです。

 

さて、そんな訳でして今回も

大好きなホーン美術館へ行きました。

2018年のホーン美術館訪問はこちら

この美術館はわりと大きな交差点にあって

車やバスが行きかうのですが

中庭は驚くほど静かです。

 

▲真っ青な空が中庭から見上げられる。

 

▲その足元は雨上がりの水に映る空

 

▲フィレンツェ独特のオフホワイトと

グレーの組み合わせ。

このシンプルな美しさはローマのバロックを

観た後はますます心に沁みます。

 

まずジョットの「聖ステパノ」に会います。

相変わらず爽やかで素敵な笑顔です。

▲画集などでは見られない角度で観察。

 

▲うろ覚えの記憶では、たしかこの

青緑色のボーロの色が特殊で、

ジョット作品と認定できたと書いてあった。

・・・だったような。記憶力が無さすぎです。

 

2階のちいさな道具の部屋へ。

▲階段踊り場から中庭の装飾壁が見られる。

右にはテラコッタで作った雨どいが。

フィレンツェの屋根瓦や床タイルとおなじテラコッタです。

ちなみにテラコッタとはイタリア語で terra-cotta

「焼いた土」の意です。

 

この時ちょうど美術館学芸員さんの

無料ガイドツアーが行われており

飛び入り参加させてくださいました。

前回からの謎、この美しい道具は何ですか?

答えはなんと、金箔を磨く道具。

つまりわたしが今も使っているメノウ棒と

同様に使われていた物なのです。

(解説によると写本用だとか。)

なんとまぁ。象牙でできた磨き道具。

美しいにも程があるではありませんか。

・・・ほ、ほしい!

こんな美しい道具を作ったのはどんな人?

これを使ったのはどんな細密画家?

そしてそれはどんな写本??

その写本はいまどこに???

想像に想像が重なって

ますますこの道具に引き込まれるのでした。

 

これだから「好きな美術館通い」は

止められないのでございます。

幸せな時間でした。

 

 

完成に向けて準備しよう 3月29日

 

このブログで2020 Firenze として

昨年のフィレンツェ滞在記を

話し続けておりますが、

あの旅は額縁彫刻修行でした。

グスターヴォさんの工房に通い

必死で作った額縁は

ひとまず彫刻を完成させて帰国しました。

 

ですが、じつはまだ外側に一周

縁彫刻があるのです。

作業の合間に完成させましょう!

 

▲持ち帰った彫刻木地と参考にした本の写真

 

いつもいつもお世話になっている

千洲額縁さんにお願いして

ジェロトンの細い棹を送って頂き、

外周に取り付けました。

▲ボンドで貼り付けてから彫ります。

 

上の写真、金属の輪(というかC字型)

で固定していますが

この金具もグスターヴォさんから

お土産で分けていただきました。

バネの利いたC をぐいっと開いて

はめると思いの外しっかり固定します。

▲C をあてた部分には小さな穴ができるけれど・・・

 

留学先の修復学校でも使っており

日本で探したのですが見つかりません。

それもそのはず、職人さんが自作するとか。

古いベッドのスプリングなのですって。

これまたアイディアですね。

 

 

やっぱり似て非なる 3月25日

 

同じサイズ、同じデザインで

装飾技法を変えた小箱を

作ってみました。

 

グラッフィート装飾と

純金箔の上に卵黄テンペラを塗り

模様に沿って絵具を掻き落とし

下の金箔を見せる方法

パスティリア装飾です。

石膏盛り上げ。ボローニャ石膏地に

ボローニャ石膏液を垂らし描きして

レリーフ状も模様を作る方法

左のパスティリアには

錫箔を貼りました。

同じサイズの小箱だけど

錫のほうが大きく見えるような。

面白い。

 

似て非なるふたつです。

兄弟というか、いとこくらい?

 

春っぽく 3月22日

 

バラの絵のための額縁が完成しました。

 

ピンク色のバラ2輪が大きく描かれた

F3号の油彩作品のために作りました。

純金とクリーム色、装飾部分は

少しトーンを落としたベージュです。

 

 

艶消しにしたので穏やかな雰囲気。

春っぽいな、と思っています。

いかがでしょうか。

 

「works」内「classical」にこちらの額縁をアップいたしました。

どうぞご覧下さい。

 

 

Firenze 2020-16 3月18日

 

朝一番で乗り込んだピッティ宮殿の

パラティーナ美術館ですが

日曜日なのになんと休館!

受付の女性に

「今日だけ休みなのよ~残念ね」と

慰められてしまい・・・さて。

せっかくなのでピッティ宮殿のお庭

ボーボリ庭園へ参りましょう。

 

なにせ日曜の朝一番でしたので

わたしひとりの貸し切り状態。

聞こえるのは鳥の声と風の音、

そして砂利道を歩く自分の足音のみ。

それはそれは素晴らしい朝でした。

 

▲人っ子一人おらず、現実離れした雰囲気で

ついうっかりメディチの奥様気分になってしまう。

この庭はわたくしのもの。ホホホ・・・

 

▲けっこうな山坂がある庭園なのです。

 

▲ロマンチックな小道の先にある建物。

こんなところに住んでみたい。

 

▲本当に誰もいない。ちょっと不安になるくらい。

 

▲かの有名な(?)ヴァザーリの回廊の終着点。

 

▲「TI AMO」(あなたを愛している)

こんな落書きは世界共通ですな。

 

▲丘の上には素敵な建物。

以前はカフェテラスだったけれど今は閉まっていて残念。

 

▲そして振り返ると街が一望できる。

 

今年2021年のいま、トスカーナ州は

コロナの感染状況による措置により

オレンジゾーン(部分的にレッド)

半ロックダウン状態だそうで、

美術館、博物館などは閉鎖されているとか。

この春の一番美しいときに

誰も訪れることのないボーボリ庭園は、

きっと2020年2月におわりに

わたしが行ったときとおなじように

朝だけではなくて午後も夕日の時間もずっと

鳥のさえずりと木々を揺らす風の音だけが

響いているのだろうなぁ、と

寂しく美しい様子を想像しています。

 

つぎにイタリアへ行けるとき、

どんな季節であっても

(寒風でも真夏のカンカン照りでも)

また人がいない朝一番で乗り込んで

ボーボリを鳥といっしょに

ひとり占めするのだ!

だってきっとわたしだけではなくて

ボーボリの森に帰りたがっている人は

沢山いるはずですから!

・・・と、今から作戦を練っております。

 

うう~、イタリアに行きたい。

 

額縁の作り方 33 錫箔を貼る 比べると 3月15日

 

先日お話しました錫箔ですが

とても使いやすい箔でした。

 

銀箔ともホワイトゴールドとも

ちがう深い色です。

比較してみました。

上の写真は左が今回作った錫箔箱

右はホワイトゴールド箔の箱です。

ホワイトゴールドとは、金に

パラジウムや銀などを混ぜた合金だそうです。

 

ホワイトゴールドは反射が白く

繊細で華やかな輝きな印象、

錫は輝きは少ないけれど

暗い色で重厚感がある。

錫はよりひんやりしています。

同じようで全く違う箔の色です。

 

海外の額縁工房では

銀箔ではなくホワイトゴールド箔を

使うことが多いようです。

錆びないからでしょうかね、やはり。

ちなみにイタリアの額縁史の先生に

伝統的に錫箔をに使うことはないのか

聞いてみましたが

「無い。金箔か銀箔のみ。」

とのお答でした。

錫は古くからある金属ですのに

なぜ使われなかったのでしょうね。

 

いろいろ比較して楽しみました。

ほかの箔も試してみたい!

 

イメージからイメージをつなげる 3月11日

 

最近は小箱のおはなしが続いておりましたが

額縁も作ります・・・もちろん。

 

暖かな印象のバラの油彩画のために

淡い色の額縁を作ろうと思います。

 

木地にボローニャ石膏を塗りみがき

内側の端先に純金箔の水押し。

そして角に線刻で模様を入れましょう。

あまり目立ちすぎないように

柔らかでクラシカルなイメージで考えます。

ふむふむ。

線刻道具はわたしの愛用五寸釘・・・。

そして淡いベージュに全体を塗りましたら

模様部分に一段暗い色をのせて

線刻がやんわりと見える程度まで持ち上げて

さて。どうだろう。

今回、額装予定のバラの作品は

すでにお客様のお手元に納まっており

わたしは昨年秋に一度拝見しただけ

あとは写真からの印象で製作しています。

なかなか作品の印象がさだまらず

額縁のイメージが決まりづらく

悩み深い製作になっております。

 

イメージからイメージをつなぐのは

たしかに悩み深いけれど

やりがいのある面白い作業です。

 

額縁の作り方 32 錫箔を貼る 3月08日

 

なにせ小箱ばかり作っておりますので

作品例が小箱ではありますけれど

古典技法ですので額縁にも応用できます。

ぜひご参考になさっていただければと

思いつつ、ご紹介します。

 

興味本位で京都で手に入れて以来

死蔵されていた錫(すず)箔を

小箱に使ってみようと思いました。

 

ヨーロッパの古典技法では

ボローニャ石膏地にボーロを塗り

箔押しの下地作りをします。

これはすべての箔に共通の下地ですが

純金箔を貼る場合は水のみ、

わたしはその他の箔を貼る場合には

薄いニカワ水をボーロに塗って箔を押します。

今回の錫箔には魚ニカワを使いました。

魚ニカワは、1リットルの水に対して

4シートの板ニカワを溶きます。

 

錫箔の印象。

とにかく丈夫です!かなり厚い。

シャカシャカ、キュルキュルしています。

石膏盛り上げ(パスティリア)の

凹凸でも破けることがありません。

(繊細な金箔では大抵破れてしまう・・・)

素手で持っても大丈夫ですが、

後々に指紋がサビて浮き上がりそうなので

やはり竹箸を使いました。

ただ、丈夫で厚いのはよいけれど

箔ナイフでは上手に切れませんので、

アルコールで拭いたハサミで切りました。

▲京都の堀金さんで購入しました。

金箔より一回り大きく、銀箔と同サイズ。

 

メノウ磨きは金箔よりだいぶ

早いタイミングで磨き始めたほうが良さそう。

とは言え丈夫な箔ですので

ハラハラ気分はずっと少なく済みます。

 

これは良い!

錫箔はかなり良いですよ。

色味もモダンで力強い感じ。

次回は完成した錫箔小箱を

ご紹介しようと思います。

 

Firenze 2020-15 3月04日

 

サンタ・マリア・ノヴェッラ広場に面して

タッシナーリというお店があります。

こちらは刻印屋さんです。

 

▲TASSINARI

Incisore : 彫板

Timbri : 印

Targhe : 表札

Stampi per doratura : 金箔細工用刻印

こんなものを扱っているお店です。

 

▲Brunitoi Agata

箔用のメノウ棒も。ガラス窓に

サンタ・マリア・ノヴェッラ教会が写ります。

 

▲こちらの印は、おそらく革細工用。

我らの古典技法には細かすぎるのですが

とても美しい道具です。

 

こちらで道具をいくつか購入しました。

回転式の印を3本と、刻印1本。

 

これらすべて、お店の裏手にある工房の

手作りだとか。刻印は古いものに

あたらしい柄を取り付けてありました。

 

▲刻印はピンボケ・・・すみません。

ゆるいアール状に点が5つ並んでいます。

 

▲これまたピンボケ・・・花模様

▲ギザギザカーブ模様

▲点々模様 タコ足風・・・

回転式のものは、買ったは良いけれど

まだ使いこなせていません。

練習が必要。

 

とても商売熱心で親切なおじちゃん(失礼!)が

いろいろと説明しつつ見せてくださいます。

外国人の対応にも慣れている様子です。

オーダーメイドの印も作ってくれるそうで

「漢字でもなんでも大丈夫!」とのこと。

時間を忘れて滞在してしまうような

楽しいお店です。

 

Cosimo Tassinari dal 1890 Incisori
Piazza di Santa Maria Novella, 2/R
50123 Firenze

 

 

響いて届いた言葉 3月01日

 

もう何年も前に、カウンターの席で

偶然となりになったオジサマから

突如いただいた、ある言葉があります。

お店の紙ナプキンにボールペンで書かれていて

お酒の席の一興といった感じで帰り際に

「この言葉を君にあげよう」と渡されたのでした。

わたしの身の上話もしていませんし

お悩み相談をしたわけでもなく、

わたしは同席した方々の話を

聞いていただけだったのですけれど。

 

だけど、その時のわたしの心と脳に

ドカーーン!と入り込んで、

あまりの衝撃にぎょっとした記憶と共に、

未だにこの紙ナプキンは見えるところに置いています。

いまは目に入るたび、肩をポンとたたいて

励まされている気持ちになります。

そうして「ああ、そうだな」と落ち着きます。

 

 

「心配するな、工夫せよ」

 

タイミングと言葉 必要とする人にバシッと届いて

ガチャッとはまった瞬間だったのですね。

ものすごく個人的だけど、

ものすごく衝撃的な出来事ってまれに起きます。

このオジサマ、どなただったのか

なぜわたしにこの言葉をくださったのか

もはや知る由も無し。永遠に謎なまま。

でも知る必要もないのかもしれません。

この言葉、生涯たいせつにします。

 

 

似て非なるふたつ 2月25日

 

相変わらず小箱のおはなし。

 

同じサイズ、同じデザインでも

ちがう装飾技法で作ってみる試みです。

どちらもボローニャ石膏下地ですが

上の完成している小箱には

全面金箔を貼ってから卵黄テンペラで

彩色後に、模様を細かく削り出す

「グラッフィート」技法で、

下の白い現在制作中の小箱は

下地とおなじボローニャ石膏を

垂らし描きして盛り上げを作る

「パスティリア」技法で。

 

完成したら、きっとまったく

印象の違う二つの小箱になりそうです。

たのしみです。

 

アボリジニ風 2月22日

 

オーストラリアにあるオルガ山、ご存じですか?

この山の写真を額装するご依頼がありました。

真っ赤な夕焼け空に黒々とした山がそびえる

力強い作品です。

ご依頼くださった方のイメージやお好み、

お家のインテリア等をふまえてご相談した結果

アボリジニアンアート風にしましょう

と言うことになりました。

 

わたしは実は・・・今回までオルガ山の存在も

いわゆる「アボリジニ・アート」も知らず・・・

いやはや、自分の興味の狭さを恥じるばかりです。

 

気を取り直し、いろいろと検討しまして

ドットで円を散らばせることにしました。

(どこまでもアボリジニ「」でございます。

ご容赦ください。)

 

▲ランダムに円を下描き。色は7色に決めて、

そこにお箸を利用してドットを入れていく。

 

▲色の順番など考えすぎると固くなる。

自分の感覚を信じるのみ・・・。

 

今までのわたしとは別世界の

カラフルで楽しそうな額縁になってきました。

作っている時、外は寒い一日でしたが

気持ちは明るくてワクワクして

なんだか新しい扉をこっそり開いた気分です。

 

 

Firenze 2020-14 2月18日

 

彫刻修行先のグスターヴォさんの

工房からの帰り道は、行きと違って

サン・マルコ教会に寄るのが日課でした。

運が良いときにはパイプオルガンの

練習が聴けたりするのです。

 

そんな日々で見たのが下のお知らせでした。

 

2月18日は我が師フラ・アンジェリコの命日で

夜6時半から記念ミサがあるとのこと。

カトリック信者ではないわたしですが

参列することにいたしました。

 

6時過ぎに行きますと準備が進められていました。

修道士の方が足早に物を運んだり、

後ろではパイプオルガンと合唱の練習も。

 

 

ミサがはじまる頃にはほぼ満席になりましたが

東洋人はどうやらわたしひとりだった様子。

 

厳粛で美しい教会音楽とともに、

アンジェリコの生涯と功績

サンマルコ美術館がいかに重要であるか

などなど、アンジェリコファンにとっては

有り難く嬉しいお話がされたのでした。

 

わたしは幼稚園に通う前から小学校卒業まで

教会の日曜学校へ毎週通いました。

(プロテスタントの教会でした。)

深い信仰を持つまでには至りませんでしたが

わたしにとってキリスト教はとても近しい存在です。

だけどまわりの信者の方々からしてみたら

ただの興味本位の観光客が紛れていると

思われただろうな、とお邪魔してしまったようで

申し訳ない気持ちにもなりました。

教会という固い結束のあるコミュニティに

外国人のわたしが突然参加するのは

やはり難しい一面があったと思っています。

 

フラ・アンジェリコが亡くなったのは1455年

ローマ滞在中の60歳のときでした。

565年後の2020年2月18日の夜でした。

 
Fra Angelico
 
 
 

少しずつ増える 2月15日

 

ここしばらく励んでいる小箱制作は

順調に進んでおります。

 

いくつか以前に作ったものも含みますが

集合写真を撮ってみました。

 

左上の一番大きな青い箱が

片手の平に乗るサイズです。

最小のものはOKサインの輪に

(親指と人差し指で輪を作る)

すっぽり収まります。

 

こうして写真で客観的に眺めますと

偏りや改善点が見えてきました。

ふむふむ・・・でもまぁ、かわいいかも。

いや、まったくの自己満足であります。

 

まだまだ増える予定です。

 

 

再燃の予感 2月11日

 

先日、まとめて何通か手紙を書く機会があって

とても久しぶりに封蝋をしました。

 

あぶって溶かした蝋を封筒にたらして

印を押すというもの。

この封蝋をひとつ押すだけで、ただの手紙が

ぱっと古典的なヨーロッパの雰囲気になるのです。

▲久しぶりすぎて蝋の適量もコツもすっかり忘れている。

 

もう10年以上使っていなかった封蝋ですが

なんだかとても楽しくなって、

あたらしい蝋が欲しくてネットで探しはじめたら

蝋を溶かす炉のようなものやスプーンなど

いろんな道具がどんどん出てきて

物欲が増す一方なのでした。

「封蝋をするためだけの美しい道具」

必要ない。でも欲しい。でもいらない・・・。

ああでも、欲しいなぁ。

封蝋熱が再燃しそうな予感です。

 

 

額縁の作り方 31 銀を腐食させる 2月08日

 

8年前(もう8年!)にもすこしだけ

ご紹介しましたが、銀箔を腐食させて

趣きの変化を出す方法です。

タイトルは「額縁の作り方」ですけれど

今回のサンプルは小箱です。

ボローニャ石膏に赤ボーロ、パスティリア。

純銀箔の水押し。額縁と同じ手法でつくっています。

古典技法の銀箔の貼り方は金箔とほぼ

同様ではありますけれど、それはさておき

今回はメノウ磨きを終えた銀箔から作業開始。

▲金箔は水で貼りますが、銀箔は薄いニカワ水で

貼り付けてからメノウで磨きます。

銀箔は磨き終えても銀らしい白っぽい輝き。

 

銀を腐食させる(サビさせる)にはいろんな薬剤が

ありますが、わたしは硫黄と硫化カリウムが主の

溶液を使っています。

▲硫黄が入っているので黄色くて臭い・・・。

 

この溶液を筆でまんべんなく塗りまして、しばし放置。

▲塗った少し後の状態。

徐々に変化がはじまって部分的に艶消しになっています。

 

▲2時間後。良い感じにサビました。

寒い時期は暖房の近くに置いた方が早いみたい。

 

いわゆる「真っ黒」にしたければ、さらに溶液を

塗り重ねるか濃い溶液を準備しますが

今回はこんな感じで終わらせようと思います。

▲ラッカーで艶を出し保護しました。完成。

いぶし銀の渋い雰囲気、いかがでしょうか。

 

艶ピカの少年が、苦み走った紳士に

なりましたとさ・・・。

 

 

Firenza 2020-13 2月04日

 

ローマ日帰り旅行、充実しました。

ドーリア・パンフィーリ美術館に長居して

タクシーに飛び乗ってどうにかこうにか

発車5分前にローマ中央のテルミニ駅に到着。

うひゃー・・・焦りました。

▲ホームには銀と赤のフレッチャ・ロッサの車両。

「赤い矢」という名前、いかにも速そうです。

 

イタリアには主に2種類の高速列車があり、

上のフレッチャ・ロッサは旧国鉄系、

今回帰路にわたしが乗るのはイタロ(ITALO)です。

ホームに入ってきました。

NYV社のITALOはフェラーリと同じ色使いだとか。

▲こちらITALOの車両、かっこよいのです。

ヒョウ柄コートの奥様のバッグも赤。

 

さて、ゆっくりと発車しました。

さようならローマ、また来ますよ。

本当は今すぐにでも行きたいけれど。

 

▲これから明かりが灯り出す家々。

 

▲住宅街から徐々に郊外へ。

 

▲上りのほうが車が多い。皆が家路を急ぐ時間・・・

 

▲そうして平原に日が沈み、もうすぐ一日が終わる。

 

フィレンツェS.M.N駅には夜7時半に到着。

もう真っ暗になった街を足早に帰宅しました。

いやはや・・・大変に充実した濃い一日でした。

 

 

ザ・コレクター -中世彩飾写本蒐集物語り- 2月01日

 

2019年12月に訪れた上野西洋美術館での展覧会

「ゴシック写本の小宇宙 内藤コレクション展」

内藤裕史氏のコレクションが寄贈された

記念の展覧会でしたが、

そのコレクションの歴史~寄贈までが綴られた

「ザ・コレクター」を読みました。

著者は医師・大学教授であって

写本の収集は興味と趣味ではじめたそうですが

どんどんのめり込む様子、広がり深まる

興味と知識、人脈などがとても面白く

そしてなにより羨ましく思えたのでした。

 

コレクションを高める熱意、財力

時間があることも羨ましいですが、

これだけの質の写本を集めることができたのは

内藤氏の人柄が大切だったように思います。

古書店や骨董店がふたつと無い商品を

引き渡す(売る)のは、金銭のやり取り以外にも

「この人になら」という信頼以上の何か、

感情的な何かが必要な気がしますが

その全てを備えていた内藤氏だからこそ

成し遂げられたコレクションなのでしょう。

なんて幸せなことなのだろう。

公的機関の国立西洋美術館に納まったらもう

それら写本が市場に出ることは恐らくありません。

販売する側(内藤氏にとって友人でもあった

ロンドンやパリの店主たち)としては手詰まりを意味し、

でも作品を愛する身としては嬉しいことでもあり・・・。

複雑な心境を抱えつつも、素直に寄贈の喜びを

内藤氏に伝えていたことが印象に残りました。

コレクターと販売者の理想の形がありました。

 

「ザ・コレクター -中世彩飾写本蒐集物語り-」

内藤 裕史

株式会社新潮社

2017年3月30日発行

 

じゃんじゃん作ろう 1月28日

 

2度目の緊急事態宣言が発令されて

市が尾の Atelier LAPIS 古典技法教室は休講

田町の Tokyo Conservation の仕事も休み

お茶の稽古も休み・・・

 

幸いにもご注文いただいている額縁制作は

ありますけれど、発注した木地の到着待ちやら

なにやら(まぁつまり、そういうことです・・・)

自宅の作業部屋で好きなことができる時間が

とても増えました。

 

何する?

小箱を作るのだ。

じゃんじゃん作るのだ!

楽しく過ごしたいと思います。

ムフフ・・・。