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四苦八苦 8月05日

 

毎日毎日暑い中、何をしているのか。

 

三度の食事をして、なんならオヤツも食べて

出稼ぎに行ったり(修復の仕事や教室など)

自宅の作業部屋で何かを作ったり直したり

 

自分も家族も健康で衣食住そろって、

これは幸せとしか言いようがない状況です。

テレビでオリンピックを観て

戦いと勝利の疑似体験をさせてもらって、

ワクワクドキドキも十分にある。

 

だけどなぁ。なんだか。

いまわたしが求めているのは

穏やかなちいさな日々ではなくて

挑戦の疑似体験でもなくて、

「非日常を経験すること」なのです、きっと。

 

飛行機のチケットや滞在先を決めて

現地情報を集めたり準備をあれこれ始めることから

「服は何を持って行くか」

「あの教会を訪れる最短ルートはどれか」

「これは持って行くか現地調達か」

「あの人へのお土産は何が良いか」

など小さな幸せな悩みをたくさん抱えたい。

 

そして緊張と楽しみの、心からの

ワクワクドキドキを経験したいのです。

イタリアに行きたのです。

 

今現在イタリアにお住まいの

日本の方々のブログなどを読んでいますと、

帰りたいのに帰れない、

日本の家族の緊急事態で、小さな子供を

イタリアに残してひとりで一時帰国、

なんてことも書かれています。

 

行きたいのに行けない。

帰りたいのに帰れない。

どちらが辛いかと言えば当然ながら

帰りたいのに帰れない、でしょう。

 

 

・・・そうしてまた振出しに戻る。

「必要以上の行動ができない」から

ウダウダしているなんて。

お気楽能天気にも程がある。

分かっている。

そして、本当に本心から行きたいなら

無理をすれば行けない訳では無い、という事実。

実際に行っている人もいるのだから。

だけど。

いやはや。どうにもこうにもままならぬ。

 

そんなことを考えて

自分を説得するのに四苦八苦している

8月のはじめです。

 

 

デューラーの砂時計は 8月02日

 

1400年代後半から1500年代前半の

ルネッサンス期に活躍したドイツの画家

デューラーの、とても高い再現度で

原寸大に印刷された版画集を観ていました。

じつに細かいのですが、デューラーが楽しんで

熱中して制作した様子が伝わります。

 

寓意画でも有名なデューラーですが、

砂時計も好んで登場させていたようです。

砂時計の寓意は「限りある時間」でしょうか。

「人生の短さ」などもあるようです。

メメント・モリのひとつ。

▲ひげの悪魔が騎士に砂時計を見せている。

(画像はwikipediaからお借りしました)

 

デューラーの作品に出ている砂時計を見ると

そのどれもが必ず(わたしが見つけた範囲内で)

砂は、半分落ちて半分残っている。

「人生の半分がすでに終わってしまった」

なのか

「人生、まだ半分残っている」

なのか。

▲壁にはおおきな砂時計。

(画像はwikipediaからお借りしました)

 

さて、わたしはどちらだろう。

上の砂が、残された時間が、わたしに

どれくらいあるか知るのは恐ろしいけれど。

考えている間にも刻一刻と砂は落ち続けるけれど。

行きつく思いは「有意義に過ごしたい。」

それしか思い至らない今日です。

 

 

小箱3 7月29日

 

今日ご覧いただく小箱ふたつ

どちらも古典技法で

純金箔を水押ししていますが

仕上げを変えています。

 

 

左のイニシャルHの仕上げは

古典技法王道(?)で

メノウ磨き後に磨り出し、

ワックスでアンティーク風に。

 

右のひとまわり大きな小箱は

メノウ磨きをしてツヤピカに

輝かせた後、艶消しラッカーを。

すりガラスの向こうから

金の輝きが感じられるような

「半艶消し」になって

クリーンで涼しげな雰囲気です。

 

外側寸法:左小箱 61×53×33mm

     右小箱 89×58×39mm

 

どちらがお好みですか?

 

Firenze 2020-22 7月26日

 

フィレンツェ右岸にある

オニッサンティ教会ご紹介のつづきです。

ルネッサンス本場のフィレンツェにあって

珍しくバロック様式のエレガントな教会は

天井画もさすがバロックです。

▲18世紀の天井画はだまし絵になっている。

 円柱もテラスもすべて絵。

 本当にそこにあるみたい!

 

さて、この教会の宝物のひとつは

なんと言ってもこちら

ジョットの十字架磔刑でしょう。

 

 

ラピスラズリの青が鮮烈で

まるで先日完成したばかりのようです。

でも14世紀初頭の作品なのです。

設置された場所や照明の効果もあって

劇的な演出で観る者の心を揺さぶります。

 

完成当時、明日の食事をこと欠くような人々が

これを目の当たりにした時の驚愕と

神様に対する畏怖は、きっと現代のわたし達の

想像を絶するものがあるのでしょう。

打ちのめされるような

身も心もすべて委ねてしまうような。

自分の隣にイエス様を感じ、頭上に神様を

感じることを可能にする鍵のようなもの。

 

鑑賞後もなんだか呆然としてしまう。

ひょいっとあっけなく心を

持って行かれてしまったような感覚が

しばらく残っていました。

 

ギルランダイオの最後の晩餐が

見られなかったのは心残りですが

このジョット作品の感動を得られたので

心ここにあらずであっても

爽やかな気持ちで教会を後にしました。

 

フィレンツェでくり返し訪れる場所が

またひとつ増えました。

 

 

何か秘密があるのかい? 7月22日

 

夜、夢は見ますか。

 

わたしは幼いころからずっと

毎晩見る夢をひとつは覚えています。

夢を見る理由って脳の整理だとか

潜在意識の表れとか聞きますけれど

単純に自分が見る夢が面白くて

あるいは恐ろしすぎて

自分でも理解できていない内面が

大きいのだな、としみじみ思います。

 

 

今朝見た夢も、なかなか変でした。

自分は高校生、でも意識は現在のもの、

そしてクラスメートも現在の友人知人。

ポテトチップスを貪り食べるのです。

我ながらものすごい勢いでした。

どれだけポテチが食べたかったのだ。

そしてはっと気づいたら賞味期限が先月。

一緒に食べている友人に見られないように

必死でパッケージを隠す!・・・という

バカバカしいような意味深なような

夢でした。

 

なにかわたしの秘密が暴露される

などという暗示でないことを祈るばかり。

 

 

sansovino-2 7月19日

 

先日、白木を茶色に塗った双子の片割れ

サンソヴィーノは無事完成いたしました。

 

 

先に完成した「金&黒」と今回の「茶」を

並べてみると、同じサイズとデザインでも

仕上げが違うとこれだけ変わる、という

驚きと楽しみが見えました。

 

▲サンソヴィーノ額縁とは、16世紀イタリアで

流行したスタイルです。渦巻きとウロコが特徴。

 

 

シンプルながら悪くない・・・と

思ったりなんかして。

いかがでしょうか。

 

「works」内「classical」にこちらの額縁をアップいたしました。

どうぞご覧下さい。

 

 

額縁の作り方 35 布貼りマットをつくる 7月15日

 

額縁の作り方の番外編と言いましょうか、

今日は額縁本体ではなくて

マットの作り方のおはなしです。

 

紙の作品—デッサンやパステル、水彩、

写真など―を額縁に納める場合には

額縁のガラスと接しないように

作品を固定する必要があります。

マット(イタリアではなぜか仏語

パスパルトゥPassepartout と呼ぶ)で

作品を挟んで固定し、額縁に入れます。

 

最近は額縁店や画材店で無酸の紙ボードで

すぐに作ってもらうことができますが

今回はラワンの合板を使って自分で作ります。

と言うのも、変形で余白もほぼ無いデッサン

だからなのです。

 

今回はラワンの4mm合板を使います。

本来なら合板はマットに相応しくない

(接着剤などの影響が考えられる)かも

しれませんが、この作品はわたし自身の

持ち物であること、作品に影響等変化が

見られそうな場合にはすぐに対応できること、

経過観察も兼ねて・・・と言うことで

今回はラワン合板を使います。

 

▲まずは作品に合わせて窓の形をトレペに取ります。

 今回はイタリアの古い鉛筆デッサンを額装します。

 

▲そしてラワン合板に転写して形にくり抜きます。

 

▲線をととのえて、エッジを丸く削ります。

 

今回は薄い麻布を板に貼り込みます。

下の板の色が透けて見えますので

板にはアクリル絵の具で下色を塗りました。

▲薄いつや消しグレーに彩色

 

▲麻布にしっかりアイロンをかけてから

 貼り込み、のり代を残して布を切ります。

 

さて、経過観察するとはいえ

合板の影響は減らしたいのです。

作品がじかに接する部分には

アルミで裏打ちされた無酸紙の

シーリングテープでカバーしましょう。

▲裏側をととのえます。使ったのは

 スプレー糊とスティック糊。

 左の箱はシーリングテープです。

 

▲テープ貼り込み完了

 

▲作品をのせてみました。

 接するのはテープの部分のみ。

 

この後は、作品を中性紙ボードに

ヒンジで固定して合板でサンドイッチ。

写真撮影を忘れてしまいました・・・。

ヒンジ固定については下記のリンク

(株)絵画保存研究所さんの

「マットとヒンジ」をご覧ください!

 

 

長々したうえに尻切れトンボで恐縮ですが

これにてマットは完成でございます。

変形の窓が必要、好みの布を使いたい

などなどの場合にはご参考に。

ちなみに合板ではなく中性紙ボードを

くり抜いて布を貼っても制作可能です。

 

 

Firenze 2020-21 7月12日

 

フィレンツェのアルノ川沿い

ポンテ・ヴェッキオから下流方向に

すこし行った先にある教会

Chiesa di San Salvatore in Ognissanti

オニッサンティ教会があります。

 

町の中心部から少し離れていることもあって

留学中も含めて一度も訪れていない教会。

ですが、それはそれは素晴らしい教会で、

返す返すもなぜ今まで行かなかったのかと

自分を不思議に思うばかりです。

アルノ川右岸をてくてく歩く途中

風船お兄さん発見!幸先が良さそうです。

 

正面ファサードはバロック様式ですが

派手さが無く女性的でエレガントなのが

さすがフィレンツェ・・・なんちゃって。

 

 

内部は想像以上の装飾で、暗く重厚です。

目当てだったギルランダイオのフレスコ画

「最後の晩餐」がある部屋は残念ながら

午前中のみの公開で見られず。ですが

本で何度も繰り返し見ていたフレスコ画2点を

しつこくじっくり鑑賞できました。

どちらも保存修復されて色鮮やかで美しい。

 

ギルランダイオ「書斎の聖ジローラモ」

 

ボッティチェリ「書斎の聖アゴスティーノ」

ピンボケ!すみません。

それにしても教会内部が暗い・・・

 

この教会が有名な理由のひとつは

ボッティチェリのお墓があることです。

思えば大学生の頃、ボッティチェリに嵌り

フィレンツェを夢見るようになったのでした。

 

奥にある礼拝堂の角にあるお墓。

案内板が無ければ分からないような

質素なお墓なのが意外だけど、

彼の寂しい晩年を考えると理解できるような気も。

 

ボッティチェリに導かれて

フィレンツェとのご縁が持てたわたしです。

ボッちゃん(と親しみを込めて呼んでいる)

どうもありがとう・・・と感慨深くおもいました。

 

オニッサンティ教会、つづきます。

 

 

小箱2 7月08日

 

先日の「小箱1」に続きまして

「小箱2」シリーズを

ご紹介させてください。

前回のシリーズより

ひとまわり小さいくて

薄手のサイズです。

木地にボローニャ石膏

パスティリア(石膏盛り上げ)と

点刻印の装飾

赤色ボーロに純金箔水押し

メノウ磨き、ワックスによる

アンティーク仕上げ

蓋裏と内部に布貼り

 

 

外側寸法:75×48×22mm

2€コインと指輪をひとつ。

 

 

思い出のものをしまうために

いかがでしょうか。

 

 

もうひとつの sansovino 7月05日

 

2020年秋に作った双子のサンソヴィーノ額縁。

ひとつは石膏を塗って純金箔と黒で仕上げて

サンソヴィーノらしい強烈額縁になりました。

そして片割れのもうひとつは白木のまま放置し、

仕上げを迷いに迷っておりました。

 

完成したのは昨年。

そろそろどうにかせねばなるまいよ・・・。

オリジナル通り全面金にしてみる?

でもそれも完成が見えてつまらない。

じゃぁ、シンプルに茶色にしようか?

などと自分会議をしまして。

さっそく水性ステインのオーク色で塗ります。


 

そういえば、全面ただの茶色の

サンソヴィーノ額縁って

見た記憶がありません。

知らないだけで存在するのかな、

イタリアの方にとっては

ちょっと変な感じなのかしら、

と心配になりつつも

完成したらきっとかわいいですぞ!

 

 

裂地爛漫 違う方角からのアプローチ 7月01日

 

少し前のことですが、

いつもお世話になっている方から

素敵な本を頂きました。

以前にも茶箱の本2冊をくださった方です。

わたしの普段のアプローチとは違う方向から

心と意識を刺激するものを紹介してくださいます。

 

京都西陣にある茶道帛紗専門店「北村徳齋帛紗店」の

あつかう裂地を、短い文と美しい写真で紹介しています。

日本オリジナルの模様、中国の模様、さらに

インド、ペルシャ、ポルトガルから伝わった模様など。


額縁のデザインとは全く違うけれど、それでも

モチーフの配置バランスや色の組み合わせは

おおいに勉強になります。

 

お茶の稽古では裂地の名前を覚える必要があって

裂地にたいする興味もどんどん深くなります。

普段の稽古では「鶴岡間道」という落ち着いたチェック柄の

小帛紗を使っていますが、なんだか金襴や緞子、モールの

華やかな小帛紗が欲しくなってしまいました。

こんどいつか京都に行った時に北村徳齋帛紗店に

行ってみようかしらんと思い始めています。

稽古の励みに1枚だけ、ということにして。

この本を眺めながら、どれにするか目移りしています。

呑気でしあわせな悩みですな・・・。

 

「北村徳齋の仕事 裂地爛漫」

北村徳齋

株式会社 淡交社

平成29年9月29日 初版発行

 

 

小箱1 6月28日

 

小箱もだいぶ増えました。

制作過程ばかりをご紹介していましたので

完成品もご覧いただきたいと思います。

 

木地小箱はすべて桐の既製品です。

無垢材ですので、古典技法の

ボローニャ石膏下地をほどこし

仕上げています。

まずは古典技法らしい金箔シリーズを

ご紹介させてください。

上の写真には12個あります。

今日はそのうちの4つ。

木地にボローニャ石膏

線刻、パスティリア(石膏盛り上げ)

赤色ボーロに純金箔水押し

メノウ磨き、ワックスによる

アンティーク仕上げ

蓋裏と内部に布貼り

4つのうち3つは

外側寸法:78×57×39mm

 

楕円装飾のものは

外側寸法:78×57×31mm

(いずれも凸装飾部分は含まず)

ひとつだけ8mmほど低いサイズです。

サイズはおおよそですが

女性用腕時計をたたんで入れると

こんな感じです。

 

贈り物などにも

いかがでしょうか。

 

 

久しぶりに再開 6月24日

 

ここしばらく、グスターヴォさんに

教わったヴェネト額縁の

仕上げの小さな部分以外

彫刻から距離をとっていたのですが

久しぶりに「そろそろ良いだろう」と

再開いたしました。

 

 

半年以上本格的な彫刻から

離れていたので感覚が変!

あれ、どうするんだっけ・・・

とは大げさですけれど

腕慣らしが必要でした。

 

えーっと、ううむ、んん??

などと言いつつ。

 

やっぱり木槌を振り上げて

ガシガシと彫り進めるのは

楽しいのです。

 

 

これはなかなかよろしい額縁が

完成する予感です。

 

 

ようやく手に入れた 6月21日

 

成城学園前のアンティークショップ

atticさんにおじゃましましたら

ずっと前からほしかったガラス小箱が。

我ながらどれだけ小箱が好きなんだ?!

・・・と思いつつ。

 

 

このタイプの小箱は

「ヴィトリン」とか「ベベル」なんて

名前で呼ばれるそうですが

分厚いガラスを面取りして組んだ

美しいガラス小箱です。

骨董市などでたまに見つけると

数万円もして「ぎゃー」と逃げるのを

くり返しておりましたが

attic にあったものはなんと数千円!

それもそのはずリプロダクトなのですって。

でもそんなの構いません。

ガラスに程よく傷があって

佇まいもエレガントですもの。

アンティーク・骨董ではなくて

「古いもの」で十分でございます。

嬉々として連れ帰りました。

 

底の内張が黒い布で・・・それだけが

なんだかなポイントでしたので

水色の布貼りボードを仕込むことに。

▲黒い布底だと内部がとても暗い。

 

▲厚紙に青い布を貼って

箱底に両面テープで留めてしまう。

 

一番上の写真は仕込み後に

グスターヴォの左手を入れたところです。

イタリアの教会にある聖遺物風・・・

またもや家族に「こわい!」と叫ばれ

やめました。

 

 

気づけば窒息寸前 6月17日

 

小箱も少しずつ作っております。

 

ヨーロッパの古典技法を使った

小箱ではありますが

日本の模様を使ったものも

作りたい・・・と思いまして

天平時代のデザインを。

東大寺三月堂の仏様にある模様を

参考にしました。

▲天平時代の模様は地中海世界のものが

 シルクロードを通って日本にやってきたそうですから、

 バランスが洋風、アラブ風にも感じられる。

 

桐の小箱に下地を施し

ボローニャ石膏を塗り磨き

模様を線彫りしてから

アクリルグアッシュで彩色。

 

なにせ細かい模様なので

神経を使います。

▲この後にバックの色を塗ります。

 

じぃぃぃぃ~っと描き続け

はたと気づくとものすごい頭痛。

びっくりした!

呼吸をほとんど忘れておりましたよ。

窒息して酸欠になっていたのでした。

やれやれ。

いくら楽しくても息はしましょう。

 

 

Firenze 2020-21 6月14日

 

先日のパラティーナ美術館でのお話のつづき。

 

ラファエロなどの有名どころも

当然ですけれども画集で見るのとは

色の深みも迫力もなにもかも

別世界の美しさなのです。

▲ラファエロ「小椅子の聖母」目がくらむ。

 

▲いわゆる「カルトッチョ」額縁。

 これもフィレンツェらしい額縁です。

 絵と合ってるのかな・・・というのは

 余計なお世話ですか。

 

それにしてもこの美術館の派手さ。

赤い壁に保存状態の良い金の額縁

そこに絵画の発するエネルギーが加わり

なんと言いましょうか

心身ともに体調が良くないと吹き飛ばされます。

 

ある大広間にたどりつきましたら、あれ⁈

空っぽの額縁があるではありませんか。

これは確か、カラヴァッジョの作品の

額縁だったような記憶です。

この後3月、ローマでカラヴァッジョの

大回顧展が開催予定だったはず。

記憶はあやふやです。

いやぁ、こう言っては何ですが

空の額縁は絵が無いから額縁に集中できて

わたしなどには悪くなかったりして。

絵を見たかった方には残念ですけれど。

 

そして思い出しました。

数日前にボーボリ庭園から見えた様子

ピッティ宮殿の裏側の作業が見えたのですが

なにやら大きな作品を運び出していました。

なるほどね~ここからこんな風にして

作品の搬入出をしているのか!と

写真を撮ったのですが、おそらくは

この額縁に入っていた作品がちょうど

運び出されるシーンだったのかな、と

思いました。

 

この絵、もう今は自宅(つまりこの額縁)に

帰ってきて、のんびりと高いところから

眺めて暮らしているのでしょう。

ようやく美術館も再開しましたから

お客さんが戻ってきて、絵も額縁も

喜んでいるに違いありません。

 

 

もう寝なさい。 6月10日

 

どうもわたしは日ごろ

ひとりで作業しているからか

はたまた根っからの性格なのか

煮詰まりがちで、

そんなときは大抵作業も

上手く進まなかったり

失敗したりします。

・・・いえ、そんな頻繁に

失敗しているわけでは

ありませんけれども。

 

眉間にしわを寄せつつ家族に

「失敗した」などとブーブー訴えて

気を紛らわそうとしていると母は

「まぁ、そんなときは一晩寝るのねぇ」

とノンキな口調で言うのでした。

 

結局その日は手直しの準備だけして

違う作業をして一晩寝ました。

翌朝見ても、やっぱり失敗は失敗で

小人が夜中にこっそり直してくれているわけもなく。

でもまぁ、昨日思ったほど深刻でもないし

失敗の理由の整理がついたので直せるし

「もう同じ失敗は繰り返さない」と思えたし

一晩寝たことで煮詰まりも消えました。

 

分かってはいたことだけれど

寝ちゃって仕切り直しって

改めてわたしには効果的なのです。

この年齢になってもやっぱりまだ

母には助けられているのだわ・・・と

苦笑いの朝なのでした。

 

 

ヴェネト額縁はひとまず 6月07日

 

2020年2月にフィレンツェにて

木彫職人グスターヴォさんの

工房に通って制作した額縁木地は

帰国後に追加工をして

先日無事に完成しました。

勝手に呼んでいた名前

グスターヴォ額縁改め

ヴェネト額縁でございます。

 

 

なんたる派手。

額縁の中に見えている写真は

参考にしたオリジナル額縁

18世紀イタリア・ヴェネト州で作られたもの。

Roberto Lodi 著

Repertorio della cornici europea P.270掲載

 

▲技術的に足りないのはもちろん、葉の向きとか

 いろいろとオリジナルとは違う部分もあります。

 

すぐにアンティーク加工をしようと

企んでいたのですけれど、

完成してみたらなんだかこれも悪くない。

もう少し眺めて楽しんで

具体的にどうするか検討しようと思います。

 

実は完成前日に、ふと遠くから

離れて眺めてみたら気が付きました。

左下角、対で葉が足りない。

え、今気づくってどういうこと。

彫って、塗って、磨いて、

また塗って、貼って磨いて・・・

ここまでの作業中に一度も気づかなかった。

ちょっと自分が信じられないのですが。

 

そういえばフィレンツェで作業中に

わたしが「あ!間違えて彫りすぎた!」

と叫んだ時にグスターヴォさんは

「そんなのは後からリカバリーできる」

と確かにおっしゃったのでした・・・。

これを今、書いていて思い出しました。

 

ハハハ・・・もうリカバリー不可。

でもまぁ、それもまた思い出

と言うことにしよう・・・

 

 

 

Firenze 2020-20 6月03日

 

さあ、満を持してやってきました

ピッティ宮殿内のパラティーナ美術館です。

日曜の午前は不定期な休館でがっかりでしたが

おかげでボーボリ庭園を独り占めできたので

それはそれで良かったとして。

この日も朝いちばんで乗り込みました。

 

入り口で荷物と身体検査をうけて入館。

(飛行機搭乗前のような感じ)

オーディオガイドを借りようと思ったら

一時的に休止中とのこと。

あら残念~でしたが、今思えば

コロナ感染拡大が確認されつつあり

蔓延防止措置が始まっていたのかもしれません。

 

まずはとにかく、拝見いたしましょう!

▲絵画も見ますが目が行くのは額縁

 

いわゆる「フィレンツェ・バロック」の

額縁がそこかしこに。

 

この美術館は後期ルネッサンス~バロックの

作品がメインで、ラファエロが有名どころ。

実はわたし、この時代の作品にも額縁にも

長らく興味があまり持てず

留学中もほとんど近寄らない美術館でした。

 

ですが2018年にこの本

「CORNICI DEI MEDICI 」を手に入れて

ひたすら眺めているうちに

どうにもこうにも実物が見たくなってしまった!

という訳です。

 

ものすごく独断的な表現ですが

彫刻模様のエッジが際立っていて

ニュルニュルした感じがして

むやみやたらに入り組んじゃって

ちょっと爬虫類や昆虫っぽいし

好きになれない・・・と思っていたのは

過去の話になりました。

▲でも昆虫風味はぬぐえない・・・

 

大変失礼いたしました。

やはり年月を経ると自分の経験が増えるぶん

好みも感覚も変われば変わるものですね。

 

うう~む!

これはいつかきっと、わたしも

ひとつ作ってみなければなるまいよ!と

志をひたすら高くしたのでした・・・。

達成はいつになるやら、ですけれど。

 

 

額縁の作り方 34 金の繕いには 5月31日

 

久しぶりに「額縁の作り方」の

本当に額縁です。

小箱ではなく・・・。

 

さて、古典技法による額縁の

最大の特徴は箔の水押しと言えるでしょう。

日本の伝統的な方法

漆やニカワを糊にして貼り付けるのに対して

ヨーロッパの古典技法では

石膏下地にボーロと呼ばれる

箔の下地材を塗り、その上に

水を塗って箔を押し付ける。

そしてメノウ石で磨き圧着させる

(ものすごく簡単な説明ですが。)

と言うような手順です。

 

凹凸のある彫刻などに

古典技法で箔を貼るのは

どうしても箔に亀裂ができて

破れた部分の「つくろい作業」が

必要になります。避けて通れません。

 

ある程度の繕いは、小さく切った箔を

細い筆を使って穴埋めするのですが、

細かく沢山で「どうにもこうにも」な場合は

金泥を使います。

 

わたしは京都の堀金箔紛さんで買った

「純金泥鉄鉢入」を使っています。

筆もこの金泥専用の面相筆を準備します。

この金泥を使う方法は、わたしはずっと以前に

鎌倉にある「井上箔山堂」の井上さんより

教えていただきました。

なにより素晴らしいのは

この金泥はボーロの上に塗って乾けば

メノウ磨きができるということ。

ただ、平らな面や目立つ場所では

やはり見分けがついてしまうので要注意。

凹凸の凹の影、点のように小さい部分

などには大変おススメです。

 

 

Firenze2020-19 5月27日

 

念願のモスカルディ訪問

そのつづきです。

 

地図を確認しつつでしたが

わたしひとりではちょっと

たどり着けない・・・というか

薄暗い路地で入る勇気がない

というような雰囲気の場所に

突如モスカルディらしい

赤いショーウィンドウがありました。

 

中は倉庫のように広く雑然として

お店と言うより、まさに工房でした。

アルノ川沿いにあったエレガントな

お店の雰囲気とは様変わりしていて

一抹の不安。

ここがあのモスカルディ・・・??

 

だけど雑然とした部屋には

目が爛々とするような額縁の数々。

「ああ、これ、これが見たかったの!」

と叫びたくなるような額縁でした。

どの額縁も、古くても50~60年前のもの。

うう~、あるところにはあるのだ。

これがフィレンツェなんだなぁ・・・

と感慨深くなっていたら

奥の段ボール箱を抱えてきた

モスカルディさん(ご当主40代くらい)。

箱の中には無造作にこんな宝物が!

彫刻された額縁木地です。

ご覧ください、この繊細な仕事を。

▲どれも30~40センチほど。かわいいにも程がある。

 

モスカルディさんいわく

「60年前くらいのサンプルだね。

今はもうこんな職人はいないから・・・」とのこと。

 

着色もされていない木地からは

彫った職人の息遣いや視線のリアルさと、

だけどその職人はもうこの世にいないという

寂しさと不安が感じられるのでした。

 

 

分かっているからきっと 5月24日

 

読んでいる本の

登場人物のセリフで

「期待しない。

期待すると自分が壊れてしまうから。」

とか

「焦らないで。」とか

 

糸井重里さんの言う

「落ち着け」とか

 

時計の針がちくたく進む音が

頭の中に響くような毎日の中で

こうして目に飛び込んでくる言葉は

「自分にいま必要な言葉」

「無意識に求めている言葉」

なんだろうな、と思っています。

 

 

ヨーロッパやアメリカでは

着々と再開が準備されて

イタリアのラジオからは

ヴァカンス旅行の広告が流れて

じゃあわたしたちは?

と考え込んでしまう。

 

期待しないで焦らないで落ち着いて。

それともうひとつあるとすれば

「でも希望は失わないで」です。

 

 

ムスカ大佐化する夜 5月20日

 

グスターヴォ額縁は

いい加減に呼び名を変えなければ・・・

箔を貼り、メノウで磨きました。

 

なんと言いましょうか、

箔作業って一投入魂!という

集中力もをもって作業しますので

はたと気づいた時には

箔貼り中の写真を撮ることも

忘れておりました・・・。

 

まだ箔の繕いがありますけれど

とりあえず、磨き上げまして

一息ついたところでございます。

 

▲四辺中央の平坦な部分には

 箔を2枚重ねで貼りました。

 重厚感が加わります。

 

そして、四隅の彫刻部分には

点の刻印が入るのです。

▲点をひとつひとつ打ちます。

 とんとんとん・・・こつこつこつ

 永遠に終わらない気がする作業

 

いやはや本当に、純金の輝きは

目によろしくありません。

相変わらずムスカ大佐風に

「目が、目がぁぁ~!」と叫びつつ

夕刻には無事に打ち終えました。

 

 

花は小さくとも 5月17日

 

ことし初のバラが咲きました。

手入れもほとんどされずに

けなげに植木鉢で生きているバラは

花がとても小さいけれど

薫り高いのです。

数日後にはもううつむいてきていたので

切り花にして近くに置くことにしました。

記念写真を撮りましょう。

左向きが良い?

それとも右向き?

はい、右に向きたいですね。

ではブロマイドを。

まだ蕾がいくつか枝にあります。

この切り花とお別れしても

また会えるでしょう。

 

Firenze 2020-18 5月13日

 

久しぶりですが

相変わらずのペースで

2020年2月のフィレンツェ滞在記を

ご紹介させてください。

 

わたしが留学していたころ、

ヴェッキオ橋とサンタ・トリニタ橋のあいだ

アルノ川沿いアッチャイウオーリ通りに

それはそれは美しくて高級な額縁店が

あったのでした。

 

2011年に行ったとき、たしかにありました。

あいにく営業時間外だったので

外から見ただけだったのですが。

2011年滞在記:モスカルディ

 

▲こんな繊細な額縁を作るお店でした。2011年撮影

 

だけど2018年に何往復もしたけれど見つからず

お店の名前も忘れてしまっていて

結局「あのお店はもうないんだ」と

ショックと寂しさを受けてあきらめました。

 

それが今回、パオラと偶然に

そのお店の話になって

「ああ、モスカルディでしょ。

川沿いのお店は売って引っ越したのよ」

とのこと。

そして後日に知人と話していたら

「ああ、モスカルディなら

ちょうど行く予定だから一緒に行く?」

と言うではありませんか!

 

いつものように鼻息荒く付いていくことに。

だけど新しいお店は以前とすっかり

様変わりしていたのでした。

 

つづく・・・

Cornici Moscardi

 

 

気が抜けた~ 5月10日

 

4月末に大きな仕事が終わって

どっと気が抜けたゴールデンウィーク

だったのですが、

せっかく心身に余裕ができたのだから

自分の作業も進めよう、と思って

石膏を磨いて放置していた

グスターヴォ額縁の

2020年2月にフィレンツェで

木彫師グスターヴォさんに

教わりながら作ったので

こんな呼び名になってしまった・・・

作業を再開いたしました。

作業部屋の冷蔵庫には

いつもニカワや石膏液は

準備してありますので

黄色ボーロと赤色ボーロを

湯煎した魚ニカワでちゃちゃちゃと

溶きまして、ベベベと塗りました。

今回は黄色も赤も厚めです。

クラシカルで重厚な雰囲気に

仕上げる予定でおります!

 

 

それは君が考える必要ないよ 5月06日

 

またしても小箱の話・・・

なのですけれど

「ああ、そうだなぁ」と

つくづく思ったことの話。

 

小箱を作りはじめたころ

昔から額縁でお世話になっている方に

「いまこんなものを作っております・・・」

と相談に乗って頂いたことがあります。

とはいえ、仕事ついでに気軽に

「見てみて~ちょっとかわいいでしょ」

なんて感じでもあったのですが。

 

▲小箱の内側には布を貼っています。

大切なものを入れてもできるだけ安全なように。

 

この小箱たちを売り出すにあたって

形もサイズもさまざまだけど

いったい何を入れるために売るか?

どうやって買っていただく??

おすすめの使い方はあるかな???

・・・と考えていたのですが

その方いわく

「入れるものを君が考える必要はないよ。

買った人が入れたいものを入れるのだから。

思いもよらない素敵な使い方をする人が

いるはずだよ。」

 

目からうろこが落ちました。

そりゃそうだ。

空の箱を売るのですから

入れる物を指定する必要は全くない。

 

▲こんな長細い小箱ですが

なにか素敵なものを入れていただきたいのです。

 

とかく視野が狭くなるわたしです。

この頂いたひとことで、なんだか

こころがぽわ~んと軽くなりました。

 

 

ブラックレター装飾 5月03日

 

装飾に文字を入れるのが大好きなのは

もうずっと昔から変わりません。

それも、ゴシック体が好きです。

日本のフォント・ゴシックもありますが

「ブラックレター」の方を指しています。

ラテン語の慣用句などを探し出して

小箱に描きこんでいます。

身近な言語だと文章の意味を強調しすぎて

意味深な小箱になってしまうのですが

ラテン語ですと、パッと目に入っても

ひとまず文字装飾に見えますし

中世の雰囲気が好きなので

ラテン語を選んでおります。

(でもこれはわたしの感覚です。

分かる方が見れば意味深かも・・・)

今回の小箱、なかなか好きな感じに

仕上がりつつあります。

小箱作り、つくづく楽しいです。

 

 

楽しい迷走 4月29日

 

あいかわらず小箱は作っております。

 

デザインやイメージは大まかに決めて

作りはじめるのですけれど

具体的になってくると途中で

「なにか違う」になって

その都度デザインを変更したりします。

鉛筆で模様を書き入れてみたりして。

▲格子模様をパスティリアで入れたけれど

釈然としなくて模様を試してみた図。

 

ご注文品ではないからこその迷走。

成り行き任せと言いましょうか。

でも思いがけない楽しい結果に

なることもあるのです。

おや、失敗か?と思っていても

案外と気に入ってくださる方もいたり。

楽しみつつ迷走しております。

 

 

大切な「よしはる彫刻刀」 4月26日

 

石膏を塗り終わり、乾いたら

石膏の凹凸を整えるために

紙やすりで磨くのですが、

今回のような彫りが細かい場合は

彫刻刀などで再度彫り起こすこともあります。

リカットと呼ばれる作業です。

▲こちらまだ石膏を塗っております。

 

特にこの額縁、オリジナルは

17世紀ヴェネト地方(ヴェネチアがある場所)

で作られたのですが、それはそれは

キリリとシャープなラインなのです。

デザインが曲線と花々でロマンチックですが

シャープなラインで引き締まっていて

それを再現したいのでございます。

上の写真、リカットに使っているのは

小学校時代に図工で使った学童用彫刻刀。

物持ちが良いにも程がありますな。

裏側にはマジックでデカデカと

名前が書きこまれております。

おそらく4年生で買ってもらったのでしょう。

 

石膏を削ると彫刻刀が傷むので

リカットには専用の彫刻刀が便利です。

学童用ですので切れすぎず丈夫ですから。

 

思えばこの「よしはる彫刻刀」で

ずいぶんいろんなものを作りました。

図工では自分の肖像浮彫りや木版画、

中学生になってからは消しゴムはんこ、

高校の美術クラブでは壁掛け木彫時計・・・

そして今も現役なのですもの

わたしの長い長い仲間です。

 

ネット検索してみたら、この「よしはる」は

いまも同じデザインで販売されていました。

ただ箱は紙からプラスチックに変更。

この部分に時の流れを感じました・・・。