diario
王様と踊り子 9月30日
洞窟の迷路のような市場にあった
女性の舞踊衣装のお店。
高く薄暗い天井の蛍光灯で照らされた色は
派手なピンクや紫 原色の赤や青
スパンコールとビーズが妖しくきらめきます。
そんな衣装を売っているのは男性という不思議。
いえ 男性であるべきなのかもしれません。
王様を楽しませるための踊りだったそうですから。
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陰影礼讃 9月27日
待ち合わせまでしばらく空いた時間に
六本木の国立新美術館で「陰影礼讃」という
展覧会を見ることにしました。
谷崎潤一郎の同名の随筆を思い出される方も多いでしょうか。
この展覧会でも「陰」または「影」をテーマに
写真 油彩画 日本画 立体 インスタレーションまで
古今東西多岐にわたる様々な作品が展示されています。
わたしも写真を撮るときなど影は意識しますが
「影」「陰」のある風景に惹かれることを
改めて認識したひとときでもありました。
展覧会場でひとり静かに でも熱く興奮した鑑賞後
感想を話し合える人が居なかったのが寂しいところ・・・。
土曜日の午後なのに入場者は少なくて。
素晴らしい展覧会なのにもったいない!
お時間 チャンスがある方はぜひお出かけ下さい。
*陰影礼讃-国立博物館コレクションによる
http://www.nact.jp/exhibition_special/2010/shadows/index.html
束の間の月 9月23日
秋のお月見は雨や曇の日が多く
美しい満月を見られるのはとても久しぶりです。
でも それもわずかの時間でした。
ほんの束の間見えた 中秋の名月。
月月に月見る月は多けれど 月見る月はこの月の月
(詠人知らず)
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夏の山と冬の海と 9月20日
残暑もどうやら今日「彼岸入り」までの東京です。
暑い夏の都会で出会う森や水の風景は
ほんの少し足取りを軽くしてくれます。
「海と山 どちらが好き?」という質問は
良く聞かれるものですが
わたしは「夏は山 冬は海」と答えています。
きらきら眩しい夏の海も 雪の降り積もった冬の山も
どちらも捨てがたい魅力がありますが
暑い夏に歩く森で出会う木陰の清々しさ
空の高い晴れた冬に砂浜から眺める水平線が好きです。
どちらも幼い頃の思い出に繋がっています。
作品とともに生きる 9月16日
作品とともに長い時間を過ごす額縁ですが
経年や環境で劣化しますし 事故で破損することもあります。
それは額縁の寿命が尽きたのではなく
怪我や病気をした程度という場合が多いのですが
作家が手を加えた額縁でない限り
残念ながら廃棄されてしまう存在でした。
額縁は作品とは違い「壊れたら交換するもの」
と思われていた傾向があるようです。
ですが近年は額縁も作品の一部として考えられるようになり
修復して引き続き利用しようという美術館やコレクターの方が
大変増えてきたように思います。
これはとても心強く 嬉しいことです。
その額縁が選ばれた理由や経緯
額縁の歴史などを考えても できるだけ既存の額縁を
修復して頂きたいと心から思っています。
KANESEIでは額縁の修復も承っております。
壊れた額縁を出来る限り復元し 強度が増すようにし
美しい状態でまた作品と寄り添っていけるように
ささやかながらお手伝いさせて頂きます。
*画像は上から 修復前 修復中(破片を接合・充填) 修復後
夏の終わりに 9月13日
お茶の稽古でいただくお菓子は
器も涼やかに 残暑に相応しいしつらえですが
秋の味覚 ぶどうを使ったものです。
空には鰯雲もちらほらと。
稽古が終わると ひぐらしが鳴いていました。
格子窓の風景 ここは巴里か倫敦か 9月09日
こちらはロンドン郊外にある さる貴族の館…
…と ご紹介したいところですが
上野にある黒田記念館の外観です。
煉瓦造りの重厚な雰囲気 入口のアーチは
ジョージアン風(?)でもあり アールヌーボーの雰囲気も。
この建物は御茶ノ水のニコライ堂の再建設計をした
岡田信一郎(1883-1932)によるものです。
2階の大きな格子窓からは 事件を検証に来た
シャーロック・ホームズの姿が垣間見えそうな
物語が作れそうな様子。
どこか外国の邸宅のような そして
色々なスタイルが混ざった不思議な魅力もあります。
HPによると 内部装飾も創設当初を再現して
美しい装飾が見られるとか。
土曜と木曜のみ公開しているそうですので
季節の良いときにぜひ再訪してみたいと思います。
黒田記念館 http://www.tobunken.go.jp/kuroda/index.html
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印象は個性として 9月06日
以前 わたしの作った額縁を数種類使っていただいた
展覧会をご覧くださったお客様が
「とても女性らしい額縁ですね」とのご感想を下さいました。
それを伺ったときには 内心複雑な気持ちになりました。
女性らしい額縁とは具体的にどんな印象なのだろう?
でも 実際わたしは女性なので 額縁の雰囲気が
「女性らしい」というのも不思議では無いのかもしれません。
そして その印象の良し悪しは別にして
(良し悪しを考えはじめると堂々巡りに。)
これもKANESEIが作る額縁の個性と思うのも
ひとつの考え方なのではないか・・・と
悩んだ結果 今のところ単純な結論に至った次第です。
深呼吸をして 9月02日
ピエロ・デッラ・フランチェスカ(1415~1492)
という画家を意識して観るようになったのは
イタリアのフレンツェに留学してからでした。
電車で1時間程度の街アレッツォへ
休日にひとり出かけては聖フランチェスコ聖堂の
フレスコ画(当時は部分的に修復していました)を観たり
ウフィツィ美術館でテンペラ画を観たりと
美しい色彩と構成の世界に惹きこまれていました。
フランチェスカが描いたウルビーノ公肖像画は
有名な作品ですが わたしはいつも観るたびに
ウルビーノ公よりも背景にある遠くの山を
見つめてしまいます。
不思議な透明感のある空気が好きです。
ダヴィンチの背景での スフマートの
湿度のあるような「リアル」な風景ではない…
良く晴れた冬の きりりとした午後のような空気。
フランチェスカの風景を観ると
深呼吸をしたくなるような気持ちになります。
それにしてもこのウルビーノ公の肖像は
美化されていない「リアル」があります。
おそらくご本人に大変良く似ていたことでしょう。
最近テレビで頻繁にお見かけする
政治家にも良く似ていませんか…?
とくに目元の辺りなど。
辣腕政治家2人の表情が500年を隔てて同じというのも
不思議に納得してしまいました。