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最後の最後に 10月30日

 

秋はいつも家で 暇を見つけてはひとりガサゴソと

黄金背景テンペラ画の模写をしています。

手順は古典技法の額縁制作とほぼ同じです。

思えば・・・大学の恩師にテンペラを勧められて

今のわたしがあるのです。

 

さて手順ですが 黄金背景テンペラ画は

ボローニャ石膏地の板を準備します。

こちらは古典技法額縁の制作と同じですので今日は割愛。

磨いて整えた石膏地に下描きをします。

普通でしたら下描きを終えたらさっそく描写を始めますが

黄金背景テンペラ画の場合 描写の前に箔の作業がつづきます。

下の写真は箔を貼り終えたところ。

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絵具で描く部分(箔を貼らない部分)をマスキングしてあります。

この箔を磨いて天使の翼や後輪を入れて・・・

そうして最後の最後 ようやく描写のはじまりはじまり。

長い道のりでした。

酢をひと匙入れた卵黄で 顔料を溶いて描きます。

防腐剤と防かび剤入りのテンペラ用ニスを塗って完成。

黄金背景テンペラ画は絵画と工芸の間のような感じもあります。

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ベニヤ板と化学合成の顔料を別にすれば

手順も材料もほぼすべて ルネッサンスの頃から変わりません。

600年前の職人と同じように 2014年のわたしも。

 

 

額縁シール 10月27日

 

これはアイディアですね。

文具店でみつけた額縁写真のシールです。

これまたミニチュア好きの血が騒ぐ一品。

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ちいさなシールなので ちょっとしたメッセージを書いて

それを囲むように貼るとか ドールハウスに貼ってみる?

プリクラのような写真に合わせるとか・・・?

とりあえずお気に入りの記念切手に並べてみました。

サイズがぴったり ままごと気分。

 

このシール 何に使うか考え中なのです。

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Atelier LAPIS 展覧会のお知らせ 10月23日

 

横浜市の市が尾にある古典技法の研究所 Atelier LAPIS では

生徒さんの作品を中心に 展覧会を開くことになりました。

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わたしが担当させていただいている月曜日からは3名の生徒さんが出品され

ほか土曜日 火曜日の生徒さんと講師(わたし含め)総勢16人。

11月1日土曜日から11月16日日曜日まで

銀座7丁目の「ギャラリー林」にて開催です。

お近くにおいでの際には どうぞお立ち寄りくださいませ。

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La nostalgia in Italia 2011 Venezia -Un ricordo della cioccolata calda- 10月20日

 

イタリアの郷愁 2011 ヴェネチア -ホットチョコレートの思い出-

 

リド島の散策と帰りの船で海風にさらされて

冷えた身体にエネルギー補充をしましょう。

サン・マルコ広場にある これまた有名なカフェ

Caffè Lavena カフェ・ラヴェーナです。

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ヴェネチア最古のカフェであるフローリアンより

遅れること30年 1750創業のこのお店もまた美しい内装です。

ゆっくり座って・・・も良いですが 今回はカウンターでささっと。

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「un caffè perfavore!」コーヒーをひとつください!

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あっという間に笑顔でサーブされたエスプレッソコーヒー。

ご存知のように イタリアでコーヒーと言えばこのエスプレッソです。

上の写真はお砂糖を入れて混ぜただけ。まだ口を付けていません。

ジノリの美しい小さなデミタスカップの 半分にも満たない量ですが

熱々で良い香り 砂糖を入れて甘くしたコーヒーは

何とも言えない幸せな美味しさです。

これが大きなカップにナミナミと入っていたら・・・?

長いコーヒー文化で培われたこの「ひとくち」が絶妙なのでしょう。

そえられたチョコレートとの相性も抜群でした。

 

ずっと以前に両親とヴェネチアを訪ねた時に

歩き疲れてぐったりと3人でこのラヴェーナに入ったことがあります。

その時にココアが飲みたいという父の為に 拙いイタリア語と英語で

ココアを注文したのですが・・・どうやらメニューにない様子。

「暖かいチョコレートドリンクをお願い!」と母が英語で言うと

上の写真と同じような白いジャケットに赤いタイのおじさまが考えた末に

「 D’accordo!」(了解!)そして「Eccolo!」(はいどうぞ!)と

持ってきてくれたのは この小さなチョコレートを何枚も沢山

ピッチャーに入れて温め溶かしてくれたものに 温かなミルクが添えられたセットでした。

メニューにないけれど機転を利かせてその場で答えて下さったことと

そのチョコレートドリンクの美味しかったことは 今も我が家の語り種です。

 

あのおじさま 今頃どうしておられるでしょうか。

旅先で親切にしていただいた思い出は いつまでも残ります。

 

 

 

 

 

いつもどおりに 10月16日

 

また今年も今年とて いつもどおりに

暮の「小さい小さい絵展」の準備をはじめています。

テンペラで描いた模写にあわせる額縁を製作中。

このふたつの額縁は同じ木地に同じデザインが施されていますが

色を変え 仕上がりの表情を変えてみました。

緑の額縁には ひび割れを作って汚しを入れて

アンティークな雰囲気にしました。

納める小鳥のテンペラ画は背景に純金箔を使っていますが

アンティーク風額縁に合わせて艶消し仕上げです。

 

下の黒い額縁はいつものように少しの磨り出しだけで

強い印象の仕上がりにしました。

中に納まるお姫様が黄金背景に派手なドレス姿ですので

額縁も負けないように。

 

会期が近づきましたらまたご案内申し上げます。

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好きなように 好きなだけ 10月13日

 

ひさしぶりに気ままに 好きなように作った額縁です。

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制作や修復のあいまに 少しずつ進めましたが

とても楽しい時間でした。

好きなサイズで 好きな色とデザインで思うままに。

ラテン語の文字装飾をいれるのも好きな遊びです。

 

今回は初めての技法と 初めての材料を使ってみました。

クラッキングニスで表面にひび割れを作ること。

そして紫色で描いたキャンデラブラム風の模様に

レリーフ状にすこし凹凸を付けること。

よーく見ないと分からない程度なのですが。

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四隅のモチーフには 箔を貼らずペイントにしました。

デザインによっては箔は重すぎる場合があるのです。

金というより古い真鍮のような色味になって なかなか良い仕上がりです。

 

この額縁には鏡を入れて 11月に開かれる

Atelier LAPIS の展覧会に出品する予定です。

 

 

 

お好み次第でどうぞ 10月09日

 

版画や写真 水彩画など紙が支持体の作品を額装するとき

多くの場合はマットボードに挟み 額縁に入れます。

KANESEI では美術館仕様のブックマットに

和紙のヒンジによる取り付けも承っております。

 

打ち合わせの時にはマットサンプルの実物をご覧いただきますが

中性で安全なボード紙にさまざまな色が施してあって

マットサンプル帳は 眺めているのも楽しいほど。

原色の強い色からパステルの優しい色 グレーやカーキの

トーンで統一したシックなシリーズなど

作品や額装イメージにあわせて選ぶことができます。

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ほかにも金銀 デニムや植物繊維の布張り メタリック加工などなど

どんな作品に使われるのか想像してしまいますが

これまで 多くの場合は無難な白系が選ばれてきました。

わたしもあえて強い印象のマットをご提案することも無く・・・。

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今後これら 色とりどりのマットを選ぶチャンスが到来するかわかりませんが

選択肢が沢山あるというのも贅沢で楽しいことですね。

「わたしの額装には ぜひ燃えるような赤を!」

「作品のカジュアルな印象にあわせてデニム生地を貼ったものを」

などなど ご注文お待ちしております。

 

 

 

 

La nostalgia in Italia 2011 Venezia -Che vita ci sono?- 10月06日

 

イタリアの郷愁 2011 ヴェネチア -どんな人生がそこに?-

 

ぶらぶらと気が赴くままに住宅街を散歩します。

朝は真っ白だった霧も 徐々に晴れてきました。

 

沢山の木々に囲まれて 緑豊かな広い庭

手入れの行き届いた大きなお家・・・

住んでいるのはどんな人々だろう?

 

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仲の良いご夫婦が一緒にああでもないこうでもないと

楽しそうに庭仕事をしている風景や

 

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夏には真っ赤なキョウチクトウの花が咲く庭への門を

ワンピースを着た女の子が通って行く様子

 

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海からの風が抜ける薄暗い居間で 白いカーテンが揺れて

ラジオから小さい音でカンツォーネが聞こえていたり

 

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運河をすすむボートの音で その日の天候や時間がわかる老人が住んでいる・・・

 

そんなことを考えながら歩いていたら すっかり道に迷ってしまいました。

ようやくたどり着いた港から また船バスに乗って本島へ帰りましょう。

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海の霧も消えて 道しるべの杭の向こうにはアルメニア人の修道士が暮らす島

サン・ラッザロ・デッリ・アルメーニ島が浮かんでいました。

 

 

 

 

出張修復は大荷物 10月02日

 

この秋に 北里研究所所蔵の作品

「ロベルト・コッホ氏肖像画」につけられている額縁の

出張修復をおこないました。

Tokyo Conservation を通じてご依頼いただきましたので

当日は修復室長とともに 道具・材料一式を担いで伺いました。

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大きな額縁だったり 作品を取り外すのが困難だったり

現場での作業になる理由はさまざまですが

いつものスタジオや自分の作業部屋での作業とは違って

制約がありますから緊張感も高まります。

 

事前に伺い調査し写真を撮り 以前の修復に関する資料も頂き

修復計画をたてて北里研究所へ提出してありますが

予想される様々なことの その更に先の「万が一」を予想して

可能な限りの準備をして現場に入ります。

 

無事に作業が終わり担当の方にご確認いただいたあと

さぁ片づけようという段階に「準備が大げさだったな 要らないものもあったな」

なんて思う程度のほうが安心ですし そして作業は成功したということでしょう。

写真は上から 修復前 修復後です。

(Tokyo Conservation ブログ「修理屋の眼力」からお借りしました。)

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