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Firenze 2018 tempo calma №17 8月30日

 

アパートからパオラの工房へ通う毎日の

通りみちにあって、毎朝訪ねた教会が

サン・レミージョ教会でした。

路地にあって観光名所でもない、そして

前を歩いても外観が目立たないからか、

この教会では誰にも会うことはありませんでした。

 

先日ご紹介した「隠れた珠玉の作品に出合う旅」にもあります。

本によると、この教会は1040年には最初の記録があり、

現在の建物は13世紀に完成。聖地ローマへむかう

フランス人巡礼者のために建てられたとか。

とても古い、そして歴史ある教会です。

 

この教会の宝物はビザンチンの聖母子像です。

作者も不明だけど、チマブエやドゥッチオにも

引けを取らない荘厳さ、でも母に抱きつくイエス様が

なんとも親しみを覚えるのです。

小さな子供ってこんな表情でお母さんに向かって

手を差し伸べますものね。

▲お母さん、抱っこして!

「隠れた珠玉の作品に出合う旅」より

 

毎朝ここでマリア様とイエス様に会ってから

額縁工房へ向かう日々でした。

 

窓が少なく壁が厚くて、教会内部は外と

空気も湿度も匂いも違う異空間。

暗くて静かで、でもまったく怖くない。

わたしは信仰を持っていないけれど、

この教会はそんなわたしでもすんなりと

受け止めてくれるような雰囲気がありました。

 

 

小さなかわいこちゃん 8月28日

 

千洲額縁さんにお願いしていた木地が

満を持してやってきました。

祭壇型です。

千洲額縁さんにいくつか数をお願いしておりますが

諸事情ありまして、まずはひとつ先に仕上げて頂きました。

 

これまた小さくて、部品作りも組み立ても

とても面倒だったと思います。

大きくても小さくても、手間はあまり変わりませんから。

 

いやはや、小さくって可愛いですなぁ。

これから彫刻をして、全面に金箔を貼って

グラッフィートで装飾模様を入れます。

小さくてギッシリ!の予定でございます。

 

 

最後の審判の歯 8月26日

 

6月のおわりにお話ししました

親知らず問題。

(個人的なことで失礼いたします。)

抜くならいっそ早く抜いちゃおう、と

8月23日に右上の親知らずを抜きました。

真夏の抜歯はいやだ、なんて申しましたが

もう秋が見えてきましたしね。

1本の歯。たかが1本、されど1本。

口の奥がさびしいけれど

咬み合わせがすっきり落ち着きました。

そして期待した小顔にはなりませんでした。

イタリア語で親知らずは

Dente del giudizio.

giudizio を直訳すると審判、良識。

読んだところによると「良識の歯」と訳されるとか。

良識を持ったおとなになってから生える

つまり「親知らず」と似たような意味です。

だけど「審判の歯」のほうがイメージに近い。

おとなになって生えるのか審判を受ける。

そしてその歯は抜かれる運命なのか。

どいうような。

 

ちなみにミケランジェロの傑作「最後の審判」は

イタリア語で Giudizio Universale.

かつてイタリアで左下の親知らずを抜いて以来

わたしにとって「親知らず=『最後の審判』図」になっていて

青い背景のイエス様に「その歯、抜くべし。」(びしっ)と

宣告されているような気分になるのでした。

 

 

額装しました angelo-4 8月23日

 

フラ・アンジェリコの受胎告知図から

大天使ガブリエルをテンペラで模写し、

あわせて作った額縁 angelo-4 に納めて

ようやく完成いたしました。

黄金背景のテンペラ画、額縁も純金箔、

ライナー(絵と額縁の間)は紺色の別珍。

なかなか派手でございますね。

昨年2018年2月に模写した同じ絵は

angelo-3 と名付けた額縁に入れました。

ライナーはダークグレーです。

同じ絵を同じように模写したつもりですが

なんだか顔も服の陰影もいろいろ違いますね・・・。

ううーむ。

 

それはさておき。

額縁、ライナーが違うと雰囲気も変わります。

どちらがお好みでしょうか?

 

 

ダメ元だったけれど。 8月21日

 

先日おはなししました新規作成計画の額縁

千洲額縁さんにお願いしました木地もとどき

いよいよ開始でございます。

▲下描きをしました。左右の木片はあとで取りつけます。

 

今回も「見切り発車」的な制作ですので

途中で修正を繰り返すことになるのです。

でもまぁ、これも訓練、練習です。

微妙に違う木地のつじつま合わせも必要ですから。

繰り返すうちにきっと上達するはず!

と自分に期待しつつ。

 

今回のモデルにした額縁の所蔵先である

フィレンツェのバルディーニ美術館に

制作場所、年代、サイズ等の問い合わせメールを

送ったのは7月のことですけれども

お返事はまだ来ません・・・。

届いていないのかな、それとも文章が悪かったかな。

きっと単に「いちいち答えていられないから」

なんて理由なのでしょう。

ヴァカンス前で忙しかったのでしょうし。

ダメ元で送ったメールでしたし。

・・・でもやっぱり、ちょっとガッカリしています。

 

 

Atelier LAPIS(アトリエ ラピス)の様子から 2019年8月 8月19日

 

いやはや、毎日お暑うございますが

市が尾の古典技法アトリエ Atelier LAPIS は

外の暑さにも負けな額縁熱で満たされております。

そんな中、TAさんの額縁が完成しました。

 

全面に彫刻し、ボローニャ石膏を塗り磨き

茶色ボーロを塗って純金箔を置いて繕って

悩みながらもコツコツと丁寧に作業を続けていらしたTAさんです。

いやはや、TAさんの額縁への気持ちは熱く深い!

 

今回は「古色を強くつけたい!」とのことで

打ち傷と磨り出し加工に加え、

亀裂加工と虫食い穴も作りました。

▲ごらんください、この磨き上げられた金を!

千枚通しで虫食い穴作り中。リアルを追及するTAさん

穴の密度や数も様々計算しておられます。

 

ワックスとパウダーによる「汚し」も

今回は数回重ねて念入りに。

そうして完成した額縁です。

 

 

茶色のボーロ(金箔下地)がシックで

赤よりずっと落ち着いた色味です。

わたしの勝手なイメージですけれど、

南イタリアやスペインの渋みと色気のにじみ出る

ロマンスグレーのすてきなオジサマ・・・のような。

いや、妄想が過ぎましたか。

 

TAさん、ますます古典技法の腕をあげられました。

LAPISに通い続けてくださりありがとうございます。

額縁に傾ける熱意、わたしも負けていられません!

 

Atelier LAPIS

 

 

ちいさな額縁 angelo-4 8月16日

 

「人気のあの子」フラ・アンジェリコ作の

受胎告知大天使ガブリエルの模写を

入れるちいさな額縁が完成しました。

angelo-4 です。

今回は磨り出しもせずにそのまま

艶消し仕上げで終えました。

ピカピカの黄金背景テンペラ画が入るので

額縁ばかりボロボロでも合いませんのでね。

最初は模様の中も点の刻印で埋めようと

思っていたのですが、しつこいように思えて

輪郭だけ打つことにしました。

 

これはとても小さな額縁ですけれど、

同じ材、デザインで大きく作れば

角にだけ模様が入ってもっとスッキリ。

版画やデッサンにも良いかもしれません。

 

いかがでしょうか。

 

「works」内「classical」にこちらの額縁をアップいたしました。

どうぞご覧下さい。

 

 

S先生の額縁ー3 8月14日

 

S先生の額縁ご紹介は今日の3で最終回です。

まえの2点とは違い、銀と黒の装飾です。

外側寸法は330×240mm

銀箔の下には赤色ボーロ。

じんわりと浮いた錆が美しい趣を出しています。

吊金具は、もしかしたらヨーロッパで

買っていらしたものかもしれません。

この額縁の木地はおそらくキャンバス木枠、

F4号サイズでしょう。

ご自分のイメージする額縁を完成させるために

さまざまに工夫なさったのですね。

 

四隅にできた留め切れも美しい額縁、

そしていろいろと考えさせられる額縁です。

 

S先生の額縁3点は Atelier LAPIS に

飾らせて頂くことになりました。

生徒のみなさん、ぜひお手に取ってごらんください。

制作の参考に、そして励みにして頂けたらと思います。

 

 

S先生の額縁ー2 8月12日

 

先日からご紹介しておりますS先生の額縁ご紹介2は

石膏盛上げ(パスティリア)装飾の作品です。

サイズは外側202×202mm、小さな額縁ですが

これだけ細い線と立体感のある花と葉

そしてなにより端先の点々模様を入れるのは

とても難しく根気の要る作業です。

裏から見ると、この木地も手作り。

裏板はポリカーボネート、絶縁テープで端の処理

T字金具で留める・・・これは保存仕様額縁。

修復家の仕事と分かります。

S先生、どんなことを考えながら

この額縁を作っていらしたのでしょうか。

 

 

人気なあの子の額縁は 8月09日

 

フラ・アンジェリコの受胎告知図

大天使ガブリエルの黄金背景模写

なんとか完成いたしました。

合わせた額縁を作ります。

 

前回の模写で作ったのは angelo-3 で、

15世紀のトスカーナで作られた額縁をモデルに

薄いカマボコ型の木地に金箔、刻印で模様を入れました。

 

今回は刻印で模様を入れるのは同じ、

16世紀半ばイタリア・ピエモンテ州で作られた

素朴な雰囲気の額縁を参考にします。

 


▲70×80mmの板に描きました。

大天使、オリジナルより笑いすぎ。むむ。

 

▲模様を転写して、右のニードルで線を刻みます。

{ } の模様を入れるのは転写しながら中止に決めました。

 

我ながら笑ってしまうほど小さいものが好きです。

 

オウム2羽飛び立つ 8月07日

 

お正月にご注文を頂いて

気づいたら夏真っ盛りになってしまいました。

オウム2羽のテンペラ模写がようやく完成し

元気に飛び立って、もとい

お客様にお引渡しすることができました。

 

相変わらず小さな模写絵です。

プレイヤーズシガレットについていた

シガレットカード(と言うのですか)の絵から。

京都の骨董店から買ったアンティークのカードです。

 

▲お客様は「酉年に家族が増えて、それ以来鳥が好き!」

と話して下さいました。

 

オウム、漢字で書くと鸚鵡。

鳥偏なのは納得です。

「櫻」とつくりが一緒で「おう」

「武」のつくりで「む」ですって。

かっこいい漢字ですね。

これで覚えられた気がします。

 

 

新規作成計画 8月05日

 

ようやくサンソヴィーノ風額縁

終わりましたので、さて次。

また隙間時間にガサゴソ作るつもりです。

フィレンツェの バルディーニ美術館で昨年

見た額縁(下の写真)を真似してみようと企んでいます。

 

 

上記のような見上げた写真を数枚撮りましたが

正確なサイズも凹凸も側面もよく分からない・・・。

でもまぁkanesei風味ということで!

想像力をたくましくいたします。

完成すればかわいいんじゃないかな〜 と思っております。

 

 

だいたいの寸法がでましたので

いそいそと千洲額縁さんに木地をお願いします。

 

この額縁--バルディーニ美術館所蔵の--は

いつどこで作られたのか。

わたしなりの目星は付けておりますけれど

果たして正しいのか不安でもあり。

美術館に問い合わせてみようと思います。

返答をいただけることを祈って!

 

 

S先生の額縁-1 8月02日

 

あるご縁があって、修復家S先生が作られた

古典技法の額縁を3点頂戴することになりました。

丁寧に、とても美しく仕上げられた額縁は

ご自分で楽しむためだけに作られた(と思う)のですが、

わたしの手元に届いたのも何か意味があるのかもしれない

と思い、こちらでご紹介することにしました。

 

195×135×30mm 小さいけれど重厚感があります。

 

ゴシック風のアーチのうえには

グラッフィート技法で植物模様が入っています。

左右で違うデザイン、曲線の流れが繊細です。

 

裏面から見れば、1枚の厚い杉材からすべて

くりぬき彫刻して作り上げてあることが分かります。

▲角もきれいに面取りされて「裏面も美しく」です。

 

どれだけ時間と手間がかかったことか。

その手間をたのしみながら作った様子が

手に取るように感じられる額縁です。