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憧れの人に近づきたい 棟方志功とメガネ  6月28日

 

いま府中市美術館では「棟方志功展」が

開催されています。

先日トントコと観に行ってまいりました。


タイトルに「連作と大作で迫る版画の真髄」と

ありますように、いままで観たことが無かった

巨大な作品に圧倒されました。

大作とはいえ木版画なので、何枚もに分割して

版木が作られ刷られ、貼り合わせてあります。

それぞれ1枚ずつの墨の色の違いやつなぎ目のずれが

何とも言えない「美しさと迫力の大切な一味」でした。

 

その数日後に TokyoConservation の修復スタジオで

室長に「展覧会良かったですよ」と話したところ

「実はね・・・」と新しいメガネを見せてくださいました。

ツルの裏には「MUNAKATA」と。

 

とても美しく力強い形。男性向きですね。

棟方志功が黒縁メガネをかけていたのは有名ですが

そのオマージュでしょうか、こんなメガネがあるとは。

室長は以前から「棟方志功をとても尊敬している」と

話しながら、モノマネ(!)も披露してくださるのです。

このメガネをかけた室長、さらに棟方志功に

近づけるのではないでしょうか。

 

憧れる人の名前が入ったものがあれば

それは身近に置きたいですよねぇ。いいなぁ。

わたしは誰の何が欲しいかな、

ワイエス、バルテュス、有元利夫か・・・

フラ・アンジェリコ?

ふむ。

 

 

とうとうこの時が来た dente del giudizio 6月26日

 

数日前から、どうにもこうにも

上奥の歯茎が痛くて夜中に目が覚めてしまう。

歯みがきで出血する。食事も楽しくない。

これはいかん!と歯医者さんに駆け込みました。

 

 

歯槽膿漏か?歯がぐらぐらになっちゃう??

と戦々恐々でしたが、レントゲンなどの結果

親不知の影響でした。

 

なんと。

上あご左右に生えている親不知ですが、

生えた時からこの日が来ることは分かっていたはず。

いつか来る日とは思っていたけれど、本当に来ました。

抜いたほうが良いみたい。

 

 

夏の抜歯で暑さとの2重の苦しみに呻きたくない。

「じゃ、秋にはね」と看護師さん。

夏の間に覚悟を決めましょう。

冬に先延ばししないようにします。

と、いまのところは思っております!

 

ちなみにイタリア語で親不知の歯は

dente del giudizio といいます。

左下の親不知はフィレンツェの大学病院で

抜いて頂いたのでした。

遠い思い出・・・

 

Firenze 2018 tempo calma №14 6月24日

 

ある朝、パオラの額縁工房へ行くと

まだシャッターが閉まったままでした。

いつもなら9時には開いているはず。

雨の中をしばらく待つことにしました。

 

▲“CORNICI”  額縁。店名は“Corniceria del’agnolo”

「アーニョロ通りの額縁店」です。シンプル。

 

すこし離れて店をみてみると

シャッターには落書きされたままだし

右の壁にある道路標識はひん曲がっているし

(この位置でここまで曲がる謎・・・)

CORNICIの看板も古びて薄汚れています。

雨で暗い日だったのもあって

うらさびしい雰囲気でした。

 

 

結局この日はパオラがひどい風邪をひいて

お店は閉店のままの一日。

パオラひとりで工房とお店を管理する

大変さと難しさを感じました。

 

今回のフィレンツェ滞在は、じつは当初

パオラがもうお店を閉じるかも・・・とのことで

わたしになにか手伝えることがあればと

急きょ決めた訪問でした。

パオラとマッシモ夫婦、ふたりで長年行ってきた作業を

もう若くないパオラがひとりでこなすのは至難のことです。

 

でもいざパオラに会ってみればお店を閉じる話は無し。

「どうして急に来たの?懐かしくなっちゃったの?」

なんて言われる始末なのでした・・・。

つまり閉店を考えてしまうほどに大変、ということで。

メールのみでのやり取りでわたしの早合点。トホホ。

 

なにはともあれ、緊急閉店はなく(ひとまずは。)

微力ながらもわたしが額縁制作を手伝ったことで

パオラの作業が楽になり、気分転換にもなり。

わたしはパオラから新しい技法を教えてもらったり、

日本で額縁制作の経験を積んだ今だからこそ

理解できること等をさらに相談できたりと

「悪くはない」滞在でした。

とは言え、パオラひとりでのお店経営問題が

解消したわけではありません。

心配は続く・・・

 

 

いとしのヒヤ子、みなぎる活力の謎 6月21日

 

庭のヒヤシンス、ヒヤ子と昨年分球した

クローン2つのデルフトブルー3球、

ホワイトパールの真珠姉妹3球、

そして今年仲間入りした桃色姉妹3球

(この桃色は球根名が不明。)の3種類の球根

ヒヤシンス軍団を満を持して掘り上げました。

本格的な夏を前にして、そろそろ潮時。

先日には残っていた青い葉も、ほとんど

すべての葉が茶色チリチリになっていました。

 

 

上の写真、それぞれ掘り出した球根を種類別に

手前が桃色、右がホワイトパール

左奥がデルフトブルーのヒヤ子一族です。

葉がしっかり枯れるまで我慢したからか

昨年より大きくむっちりした球根です。

 

ですが・・・ヒヤ子、4球ありました。

掘ってびっくり、今年もまた分球しているのです。

それも去年の分球よりしっかり丸くて大きい。

 

▲つやつや美味しそうなヒヤ子球根。食べたら毒ですけれど。

 

なんなの。どういうこと。

子孫繁栄(分裂活動?)はめでたいかぎりですが。

1球だったヒヤ子が、いまや4球ですって。

2014年からのヒヤ子成長記はこちら

一番下からご覧ください。

 

ヒヤシンスは自然分球しないと聞いていましたが

改めて調べたところ、水栽培に適したダッチ系は

ほとんど分球せず、ローマン系は自然分球する云々。

と言うことは、ヒヤ子はローマン系なのでしょうか。

でも「デルフトブルー」はダッチ系なはずですし。

自然分球しても花が咲くまで2~3年必要とのことですが

ヒヤ子クローン(分球根)は初年の今春から

しっかり花を咲かせましたが。

本当になんなの。どういうこと。

 

ヒヤ子が飛びぬけて活力があり、生命力が強いのだ

としか思えませんし出生の謎は残りますけれども

まぁ健康で何より、ということで養母(わたし)は

喜んでおくことにいたします。

 

ヒヤシンス栽培5年目の今年、ようやく学んだこと。

・葉がすべてしっかり枯れるまで待つべし!

・毎年分球しても驚くべからず!

・球根に少々カビが生えても(たぶん)大丈夫!

 

また秋に植え直すまで日陰の風の通り道で

ネットに入れて吊るして保存します。

(今年はすこし日に当てて表面を乾燥させてから。)

来年のヒヤシンス軍団、分球有無やいかに。

乞うご期待でございます・・・。

 

 

ヒヤシンス栽培、楽しいですよ。

 

 

ボーロの持つ魅力 6月19日

 

いま Atelier LAPIS のMさん制作中の

彫刻額縁が佳境を迎えております。

こつこつと丁寧に作り続けてきた木地に

銀箔を貼ろうということで準備を始めました。

石膏地に黒ボーロを塗ったのですが・・・

 

白い石膏地のときは可愛らしさが感じられましたが

 

黒にすると印象は一変します。

▲ボーロ塗り中。まだ白が透けていますが

このあと漆黒になりました。

 

これがもうあまりのカッコ良さにほれぼれ。

力強さと優しさを兼ね備えたような雰囲気です。

黒髪の精悍な青年、でも少年の面影も残る、というか!

 

ボーロ(箔下地)には伝統的に赤、黄色、黒があり

そのどれもがとても美しい色です。

粘土ですので土の暖かさが感じられます。

額縁に興味の無い友人も、ボーロの色を

褒めてくれたことがあったのを思い出します。

土系の顔料をニカワで溶いても何かが違う、

この雰囲気はやはりボーロ特有と言えるのでしょう。

以前から彩色にボーロを使うことも考えましたが

今回Mさんの額縁を見て、改めてボーロのもつ

色の美しさにハッとさせられました。

 

Mさん、銀箔をやめてボーロ仕上げにするか

現在ご検討中。

 

わたしもボーロ彩色の仕上げを考えてみよう・・・

問題はニスですな。いや、ワックスか。

フフフ。楽しくなってきました。

 

 

庭の謎 6月17日

 

最近、気になってしかたがないこと。

我が家のバジルとシソはプランターで育って

食卓では大いに役立ってくれております。

が、特に栄養豊富な土でもないのに

その大きさが・・・

 

 

 

バジルの葉はふつうサイズの4倍に大きくなり

シソにいたってはわたしの手より大きい。

ぎえー。

 

虫に食われ過ぎて闘争心が湧いたのか

(もっと大きく強くなってやる方針)

人に食われ過ぎてやけっぱちになったのか

(もっと硬くモジャって食べにくくなってやる方針)

謎でございます。

大きかろうが硬かろうが刻んで食べちゃいますけど。

 

その横で、我らがヒヤシンス軍団

時は満ちたと思われますぞ。

 

▲そろそろ掘り上げだぞ~覚悟しろ!

 

 

Firenze 2018 tempo calma №13 6月14日

 

フィレンツェの街で会ったかわいこちゃんたち。

お店のオーナーは職場に犬をつれてくる人が

多いのかもしれません。

 

▲洋服屋さんで店番。「いらっしゃ~い・・・買わないの?」

 

▲おーい美人さん、こっち向いて!

 

▲思いがけずやさしい微笑。抱きつきたいけど我慢しました。

 

▲じっ・・・。市場の八百屋さんの裏で。たいくつそう。

「知ってっか?おれ、ベジタリアンなんだぜ・・・。」(うそ)

 

▲夕暮れふわもこ3兄弟!・・・いや、4兄弟か??

パンを買うご主人をしずかに待つ。

「われらの晩御飯はなんじゃろか・・・。」

 

▲つま先をあわせてちょいちょい!これは撫でてほしい催促です。

マッシモの愛犬ガイア。人間好きでお客さんにもすぐご挨拶。

 

フィレンツェではバスや電車にのらないで

通勤できる人が多いこともあるかもしれませんけれど、

日本ではあまり見ない光景です。

日本より犬嫌いが少ない?

犬も人も一緒の空間に慣れていておおらか?

犬どうしが道でばったり出会っても

吠えたり騒いでいる様子も見ませんでした。

 

街中にあまり植物をみかけないフィレンツェで

穏やかな表情の犬に出会うと

ホッとして和やかな気持ちになりました。

 

 

見てしまった喜びと罪悪感と 6月12日

 

そしてまた古色のお話です。

我ながら本当にしつこい。

でも古色話がやめられない止まらない。

 

先日まで修復でお預かりしていた額縁は

イギリス19世紀ヴィクトリア朝時代の画家が

特注で作らせた祭壇型額縁です。

それはそれは繊細な装飾が施されており

額縁オタクとしては眼福の極みでございます。

なんと言いましょうか、超絶技巧なのです。

装飾があまりに繊細で欠損復元に苦労しました。

 

さてその額縁、本体とライナーが釘で留めてあり

修復計画の調査進行上必要なので

錆びた釘を抜き、ライナーを外してみたのです。

そうしたら、ほほう、お出ましです。

見たぞよ見たぞよ・・・。古色加工の痕跡。

 

額縁本体のカカリに隠れていた部分は

古色加工の塗料が届いておらず、

箔の輝きも鮮やかに出現しました。

 


▲左上の明るい金は古色加工されていない。

 

▲本体に取り付けた状態では未加工部分は見えない。

 

箔表面に塗料の液溜りの跡、境目が見えます。

なにが入った塗料か、濃度はどうだったか、

筆でざざっと塗られた様子などから

様々に想像、予想します。

 

 

ほかの額縁職人がどのような道具と材料で

古色加工を行っていたか、じっくり間近で

観察することができました。

それぞれの工房・職人によって材料も道具も

さまざまで、その多くは門外不出。

その技法を赤裸々に目撃してしまった罪悪感と、

それにも勝る好奇心を満たす喜びを感じる

調査なのでした。

 

この古色加工は、おそらくオリジナルではなく

後世の修復時にかけられた加工とおもわれます。
どのような経緯で古色付けすることになったのか

想像をめぐらせます・・・。

 

 

父さん! 6月10日

 

わたしにとっての「お父さん」像は

もっぱらテレビの中ではぐくまれました。

現実にも頼りになる父がおりますよ。

 

ドラマ「大草原の小さな家」の父・チャールズ

ドラマ「大地の子」の養父・陸徳志

アニメ「赤毛のアン」の養父(?)・マシュー

この3人の「お父さん」はみな

絶対的な愛情と強さをもっていて

波乱万丈の物語の中でもゆるぎません。

その愛情の深さ、思い出しても泣けるシーンが沢山。

これら「お父さん」を観ればいまだに

どこか安心してしまうのです。

 

6月8日土曜日の朝、とても懐かしい

メロディーが聞こえてきたと思ったら

「大草原の小さな家」リマスター版が

BS3で放送され始めたのです。

これからしばらくの間は毎週チャールズ父さんに

会えるかと思うと嬉しい。

 

娘ローラは「お父さん」ではなく「父さん」と呼ぶ。

画像はwikipediaよりお借りしました

 

それにしても幼い頃にテレビで見た父さんは

立派なオジサンでしたけれど、今となれば

案外若い父さん(俳優マイケル・ランドン)

だったのですね・・・。しみじみ。

 

 

ヒヤ子ちゃんの心はいかに 6月07日

 

我が家の--というかわたしの--ペット

ヒヤシンスのヒヤ子一族と真珠3姉妹

とうとうこんな姿になりました。

む、無残・・・

 

 

葉はかろうじて緑もあるものの

生気はなくなって地を這うばかり。

読んだものによると

「ヒヤシンスの球根を掘り上げるのは

葉の半分以上が枯れてから。

それまでは光合成をして来春に発芽する

エネルギーを蓄えているから触るべからず」

とありました。(記憶によると!)

 

昨年はあまりに無残な姿に耐えかねて

葉の3割程度が枯れた時点で掘り上げました。

その結果なのか今年は花数が少なかったのです。

 

無残に思えるのはわたしだけの親心

そしてなにより見苦しい・・・!

球根たちは嬉々として光合成をしているのか?

掘り上げるべきか待つべきか。これが問題だ・・・。

子を思う親なら静かに待てるはず?

目下の悩みであります。

 

 

セラミック砂で思い出す 6月05日

 

先日、おおきな画材店に買い出しに行きました。

必要なものをカゴに入れつつ

商品棚を端から端までじっくり見てみました。

 

以前から気になっていたのが、額縁に砂を付ける装飾。

フランスのバロック(ルイ14世)終わりから

ロココ(ルイ15世)スタイルによく見られます。

下の写真の中央を走る帯部分、粒々しているのは

砂の上に金箔が施されています。

 


▲写真中央あたり、ザラザラした部分に砂が使われています。

砂壁に金箔、のような感じ。

 

フィレンツェの学校で修復したときは、学校にあった砂

(どこの砂か、買ったか採集したかも聞かなかった)を

ニカワで貼りつけた記憶があります。

学校の砂も細目、中目、荒目と準備してありました。

 

ルイ14~15のスタイルで額縁を作るか・・・は別として

砂をつかったザラリとしたマチエールは面白いので

わたしも日本で使ってみたいと思って、時は流れ。

先日みつけたのはセラミックバルーンという商品です。

 

 

いわばセラミックで「作られた砂」。

これを使えば均一な粒で美しいマチエールが作れそうです。

 


▲加熱したタラコがグレーになったような・・・?

 

きっと以前から販売されていた材料でしょう。

今まで知らなかったなんて。

棚の端から端まで見てみた甲斐がありました。

「ほんとうの砂」の自然なばらつきは無いけれど

整ったザラザラ--変な表現だけれど--を

作ることができそうです。

 

セラミックの砂と聞いてなにか思い出しませんか?

「風の谷のナウシカ」を思い出しませんか・・・?

ユパ様ー!

 

 

ほんのり磨きの美 6月03日

 

先日ご覧いただいた花彫刻 fiore-4

作っていたときのお話。

 

古典技法の金箔置き(金箔貼り)は

メノウ石で磨き上げ、まるで金の塊りのような

奥深い輝きを出すのが醍醐味です。

正しい技術で箔を置き、正しいタイミングで磨けば

金箔はより強く密着し丈夫になります。

数μの厚さしかない金箔とは思えない美しさです。

 

そんな訳でして、金箔を磨くとなったら

わたしはもう「磨かずんば死」でした。

大げさ? まぁそうですね、でもそれくらい

「磨くと言ったら磨くのです!」と

真剣に丹念にしつこく磨き上げていました。

 

ですが、最近思うのです。

ギャンギャンに磨き上げた金は息苦しい。

確かに吸い込まれるように美しいけれど、

硬く隙が無さすぎるのではないか、と。

 

いままでの8割くらいの気持ちで磨いた額縁は

10割磨きの額縁よりやさしく軽く親しみが持てる。

押しつけがましさが減る。

艶消しとも違う美しさがあるようです。

 

 

「磨きゃ良いってもんじゃなんだよ、きみぃ!」

と額縁の神様に言われたような気がします。

ばっちり磨きの金が必要な額縁もあれば

ほんのり磨きの金が生きる額縁もある。

 

気づきました。