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見てしまった喜びと罪悪感と 6月12日

 

そしてまた古色のお話です。

我ながら本当にしつこい。

でも古色話がやめられない止まらない。

 

先日まで修復でお預かりしていた額縁は

イギリス19世紀ヴィクトリア朝時代の画家が

特注で作らせた祭壇型額縁です。

それはそれは繊細な装飾が施されており

額縁オタクとしては眼福の極みでございます。

なんと言いましょうか、超絶技巧なのです。

装飾があまりに繊細で欠損復元に苦労しました。

 

さてその額縁、本体とライナーが釘で留めてあり

修復計画の調査進行上必要なので

錆びた釘を抜き、ライナーを外してみたのです。

そうしたら、ほほう、お出ましです。

見たぞよ見たぞよ・・・。古色加工の痕跡。

 

額縁本体のカカリに隠れていた部分は

古色加工の塗料が届いておらず、

箔の輝きも鮮やかに出現しました。

 


▲左上の明るい金は古色加工されていない。

 

▲本体に取り付けた状態では未加工部分は見えない。

 

箔表面に塗料の液溜りの跡、境目が見えます。

なにが入った塗料か、濃度はどうだったか、

筆でざざっと塗られた様子などから

様々に想像、予想します。

 

 

ほかの額縁職人がどのような道具と材料で

古色加工を行っていたか、じっくり間近で

観察することができました。

それぞれの工房・職人によって材料も道具も

さまざまで、その多くは門外不出。

その技法を赤裸々に目撃してしまった罪悪感と、

それにも勝る好奇心を満たす喜びを感じる

調査なのでした。

 

この古色加工は、おそらくオリジナルではなく

後世の修復時にかけられた加工とおもわれます。
どのような経緯で古色付けすることになったのか

想像をめぐらせます・・・。