diario
Firenze 2023-小箱営業珍道中・・・そうして 6月29日
息切れしつつ、2023年1~2月に滞在しました
フィレンツェでの突撃小箱営業のお話のつづき。
どうぞお付き合いください。
日本出国時に「この営業はダメ元。
上手くいけば運が良かった程度に思っておこう」と
自分の精神に保険をかけておいたのですが
それでも落ち込むものは落ち込みます。
そろそろ気力体力が尽きてきて
もう諦めようと思う・・・と泣き言をLに言ったころ
最後に訪ねたポルタ・ロマーナ近くの工房で
ご紹介していただいたのが老舗の高級文具店でした。
夕方に2人で訪ねたそのお店は、ドゥオーモ広場東から
南へ出る Via del Proconsolo プロコンソロ通りにある
Eredi Paperone Bottega d’Arte というお店です。
フィレンツェの伝統工芸であるマーブル紙を使った
美しいノートや箱、カードや文具の目移りするほど並び
奥には製作工房もある本格的なお店です。
お父さん率いる家族経営の「昔ながら」で
きっちり整頓された明るいお店。
▲小箱もある!
さて。
と言う訳でして・・・とうとう最後の最後
このEredi Paperone のボス、フランチェスコさんに
拾っていただいたKANESEI の小箱なのでした。
奥の工房で小箱とクリクルム(履歴書的なもの)を
フランチェスコさんとその妹さんに見て頂き
(クリクルムを作って行って良かった~!)
相棒L がいろいろ捕捉しつつ確認してくれて
(L が居てくれて良かった~!!)
10分程度で「ふむふむ、君の希望はわかったよ。
じゃあ試しにウチに置いてみたらどうだい?」
と言ってくださったのです。
はて聞き間違いかな、と思いつつ
頭に上った血で顔が真っ赤になりながら
フランチェスコさんの大きな暖かい手とがっちり握手をして
喜びで天に舞い上がりそうなのを繋ぎ留めてもらいました。
そこから現実に戻りまして
価格や今後の流れ諸々を相談し
わたしの帰国後もLが仲介をしてくれることになりまして・・・
Lと2人、夕暮れの通りに飛び出して
踊りながら乾杯したのは言うまでもなく!
「これから鍵付きで照明も付けた
ガラスケースを準備するからね、
そこに君の箱をいくつか並べてみたらいいじゃない?
店頭に並ぶのは3月末くらいかなぁ?
他の商品と比べて高額だから売れるか分からないよ。
でも何が起こるか分からないからね、やってみなさいよ!」
と言って下さったフランチェスコさん。
まさしく頼もしいお父さんです。
オマケの一言があって
「でもまぁここはイタリアだからさ!
準備が出来たら連絡するからさ、ワハハ!」
・・・そうです、イタリアです。
予定は未定。3月末はあくまでも希望的観測。
わたしの帰国日は変えられませんので
フランチェスコ父さんの笑顔と握手を信じ
Lに小箱を託したのでした。
つづく・・・!
Firenze 2023 ー小箱営業珍道中はじまる 6月26日
2022年秋に思い付いた「フィレンツェ小箱販売」を
ダメ元でひとまずやってみよう、
何事もやってみなくちゃわからないよ
人生何が起きるか分かっらないよ・・・と
2023年1月半ばに鼻息荒くフィレンツェへ
乗り込んだのは良いものの、実際始めてみたら
不安で慌てていたわたしです・・・お恥ずかしい。
そこへ救世主の友人Lが登場してくれました。
Lは観光業なので1月2月は時間がある、
接客には慣れているという心強い相棒です。
初日の朝、開店直後のポンテ・ヴェッキオの
高級ジュエリー店へ突撃です。
Lがまず笑顔で「こんにちは!」と入り
(彼は背が高くなかなかハンサムですので
ご店主のマダムたちには効果抜群・・・)
「東京の友人が小箱を作っているのですが
お時間宜しければ見て頂けませんか?」と言います。
あっさり断られるかと思いきや
すべてのお店が快く受け入れてくれました。
わたしも後ろからひきつった笑顔でアタフタと小箱を披露します。
▲ポンテ・ヴェッキオ(「古い橋」の意)の中ほどからアルノ川を臨む。
橋の両側に張り付くように高級ジュエリー店が並んでいる。
フィレンツェ観光の中心地のひとつ。
結局何件まわったことか。
ポンテ・ヴェッキオのジュエリー店から始まり
その後セレクトショップや高級インテリアショップ
革の小物店などなど・・・。
飛び込み営業(それも東洋人の)がいかに無謀か痛感しました。
ひとりだったら初日にあきらめていたかもしれません。
どのお店でも、小箱は褒めてくださるのですが
お店に置いては頂けない。
それでも事情を話すと皆さんとても親身になって下さり
最後には「ウチのお店では扱えないけど
このお店なら興味を持ってくれるかも」と
次の候補を教えて下さる方が多いのが印象的でした。
疲れ切った夕方には作戦会議と称して
ワインを飲みながら励ましあい次なるターゲットを絞り
次回こそ!と気合を入れなおして別れる日々でした。
ポンテ・ヴェッキオのジュエリー店
最後にお話したマダムの一言があります。
「この小箱はジュエリーを入れるとか「用途有りき」ではなくて
小箱自身として販売するべき。わたしはそう思うわ。」
そしてつづく・・・
Firenze 2023 ー小箱営業珍道中前夜 6月22日
2023年1月半ばに到着したフィレンツェ。
ひと月の滞在期間中の目的は、小箱の営業でした。
なにせコロナ・パンデミック後初
3年ぶりのフィレンツェで街の様子も何もかも想像止まりでした。
わたしは今まで、いわゆる「営業」をしたことがありません。
ノウハウも無ければ方法も知らず
「行ってみて、目ぼしいお店を回ってみよう」としか考えておらず。
つまり「行ってみてから考える。」行き当たりばったり
まさしくいつものパターンです。
我ながら今さらながら、無知って恐ろしい。
出国前にどうしたものかと数人に相談し
一応のクリクルム(履歴書的な)と小箱写真
販売についてのお願い一覧(何と呼ぶのでしょうか)
それから小箱20個を担いで、いざいざ!
乗り込んだフィレンツェです。
ダメでもともと。期待しすぎずに気軽に。
でも後悔しないように精力的に!と考えておりました。
まずは額縁師匠のパオラと彫刻師匠のグスターヴォに
披露してご意見を募る。
そして、扱ってくれそうなお店を紹介して頂けないかと尋ねました。
ですが・・・パオラからは厳しいご意見が続き
グスターヴォは「へぇ、可愛いね。え?店を知らないか??
さぁねぇ・・・こういったことには疎いから。」でおしまい。
パオラ曰く
・とにかく値段が高すぎる
・オリジナル性がない
・街中の廉価なお土産屋で売っている小箱と差別化するのが難しい
などなど・・・
お先真っ暗・・・がっかり。
だけど、前途多難は最初から分かっていたこと。
二人の意見が全てではないのだ!と自分を励ましつつ
留学時代の友人L(先日のビステッカの友人です)
にも見てもらいました。
パオラに言われたこと、自分の考え
具体的なプラン(今思えば行き当たりばったり過ぎプラン)
を聞いてもらったところ、Lが一言
「いいじゃん!営業回り、僕が一緒に行こうか?」と。
なんとなんと、わたしの折れかけた心が
シャッキリ立ち直った瞬間です。
かくして経験ゼロなわたしたち2人の
飛び込み営業珍道中が開始されたのでした。
こうご期待であります・・・つづく!
Firenze 2023 ー小箱営業珍道中序章 6月19日
わたしにとってフィレンツェ留学とは、
古臭く大げさな表現になりますけれども
まさに自由と青春を謳歌し
人生の方向を指し示してくれた時間でした。
たった3年ちょっとだったとは思えないほど
濃く深く心身に刻み込まれた時間です。
そのフィレンツェで学んだ古典技法を使って
装飾をした日本伝統の桐小箱。
それをフィレンツェの街で受け入れてもらえたら・・・
2022年の秋にそんな風に思い始めて
すぐにフィレンツェ滞在の準備を押し進め、
お正月の抱負は「フィレンツェで小箱を販売」
に決めたのでした。
2023年1月半ばに日本を発って2月半ばまでの
1か月間、フィレンツェで怒涛の突撃営業をしました。
そうして6月に、とうとう中心地ドゥオーモ近くにある
高級文具店 Eredi PAPERONE にKANESEI の小箱が並びました。
なんだかまだ夢のよう。
こちらでKANESEI小箱営業珍道中の
お話を聞いていただけたらとおもいます。
つづく。
ことわざ額縁を作る 完成 6月15日
長々とお付き合いいただきましたブリューゲルのことわざ額縁は
無事に完成しました。
さて、肝心のことわざです。
単純に額縁に収まる文字数で選びましたので
何が書いてあるかは重要ではない、文字装飾である・・・
などと申しましたが、やはり意味もお知らせします。
(下記にてお披露目します額装した作品と
額縁のことわざの内容は一切関係ありません。)
額縁上部左から時計回りに
”Niemand ooit zo klein iets spon,of her kwam wel aan zon”
「どんなに細かく紡いでも、太陽の下には現れる」
”De ene pijl na de andere afschieten
「矢継ぎ早に射る」
ことわざの意味はどちらも戒めです。
おおよその感じで、それぞれ「天網恢恢疎にして漏らさず 」と
「猪突猛進」と言ったところでしょうか。
紀元前500年に生きた孔子と1500年に生きたブリューゲルが
同じ意味の戒めを書き(描き)残しているって
面白いと言いましょうか、
人間は結局同じだなぁとつくづく感じます。
さて、額縁に納めましたる版画作品はこちら!
三浦康太郎さんの作品「星の箱舟 1 」です。
この作品を初めて拝見したとき
額縁からUFOが飛び出している、その発想に驚き感激し
すぐさま購入させていただくことを決めました。
背景にはローマの水道橋のような建造物
トスカーナの糸杉のような木立、そして額縁とUFO・・・
もうわたしの為の作品と(絶対に違うけれど!)
思い込んでしまいそうに好きな世界なのです。
▲・・・ちょっと額縁が暑苦しかったですかね・・・いや、でも。
作中の額縁とわたしの額縁は違う時代様式ですが
まあそこは良し。
まるっとわたしの好みで額装させていただきました。
▲仮額装状態でマットがたわんでいますが、雰囲気だけでも・・・。
今後、この額縁は小箱の展示会等の什器としても
活躍してもらうつもりです。
いつか皆様に実物をご覧いただけますよう!
これにて「ことわざ額縁」物語は完結でございます。
長らくお付き合いありがとうございました。
ことわざ額縁を作る つづき 6月12日
前回にグラッフィート完了までご覧いただきました
ブリューゲルのことわざ額縁
アンティーク風の加工をしまして完成まで進みます。
▲グラッフィート(搔き落とし)が終わったところ。
▲マットな黒とキラキラ金で派手です。
磨いた純金箔の上に塗った卵黄テンペラ絵の具は
なにせ搔き落とせるくらいですから
固着力はあまり強くありません。
爪で引っかけば取れてしまう。
ですので、テンペラの上にシェラックニスを塗ります。
▲ZECCHI で買った(これは最近)シェラックニス
イタリア語で Gommalacca
ニスが乾きましたら角や凸を叩いて傷を作り
スチールウールを使って下色の赤色ボーロを磨り出します。
特製の古色用ワックスを塗りまして
さらに「偽物ホコリ」つまり埃風の粉を撒きます。
まるでお化粧ですね。
下地を塗ってリキッドファンデーションを塗ってパウダーで仕上げ。
お化粧と違うのは塗るほどに汚くなっていく・・・。
▲ツヤピカだった額縁がコッテリと。
粉が落ち着くまでしばし待ちまして、ウエスで拭いて
最終的には手のひらと指先で磨き上げます。
手の微妙な指紋や弾力が秘訣なのかもしれませんが
布拭きでは出せないツヤと落ち着きが出るのです。
愛情込めて我が娘(額縁ですけれど)を
撫でくりまわして抱きしめます。
ああ、なんて可愛いの、いい子だねぇ、と褒めちぎります。
ひとりでブツブツ、ニヤニヤ・・・
ここは誰にもお見せできない姿です。
イタリアの教会や美術館で見る本当に古い、
ルネッサンス時代に作られたグラッフィート装飾の
額縁を見るたびに感じていたのは
テンペラ絵の具に厚みがあって
下の金との段差があることで表現される美しさと力強さでした。
絵の具も粒子が粗くて、ざらつきの上に
しっとりとしたツヤがある、という印象なのです。
それを今回どうにか再現したかったのですが
イメージに近い仕上がりになったようです。
勝因はやはり本場イタリア ZECCHI の顔料と
シェラックニスかな、と思っています。
次回は完成して版画作品と合わせた姿をお披露目いたします。
引っ張りますが、もう少しお付き合いくださいませ。
ことわざ額縁を作る 6月08日
ずいぶんと昔から文字を装飾に使うことが好きです。
額縁や小箱にラテン語の文章を入れたりしております。
今回は版画作品用の額縁(ご注文仕事ではなく
自分のため)を作りました。
この額縁の制作過程をご紹介します。
ご興味を持っていただけたらと思います・・・。
▲完成した額縁、名前は「ことわざ額縁」にしました。
ヨーロッパの1500年代には聖書の一節などを装飾に入れた額縁が作られ
聖母子像などが額装されていました。
そんなイメージで製作開始・・・ですが
わたしの額縁に聖書の一節は入れられません。
そして文字はあくまでも装飾として入れたいのです。
あまり意味付けしないように・・・つまり英語などではなく
普通の日本の方が見ても「一言も意味が分からない文章」でありたい。
そんな訳でして、ピーテル・ブリューゲルの作品
「ネーデルランドのことわざ」と言う作品から
古いネーデルランド(オランダ)のことわざを
ふたつ選んで入れることにしました。
▲P・ブリューゲル「ネーデルランドの諺」 1559年 写真はwikipedia より
やれ、前置きが長い・・・
いつものように千洲額縁さんに木地をお願いして
ボローニャ石膏を塗り磨き文字装飾を下描きをしたら
線彫り(線刻)します。
▲ことわざ文字をカーボン紙で写す
そして赤色ボーロに純金箔を水押し、メノウ棒で磨きます。
箔を貼らない部分にも下色として赤色ボーロを塗っておきます。
▲磨き終わり、さていよいよグラッフィート装飾準備です。
今回の額縁は、グラッフィートという技法で装飾します。
純金箔を貼り磨いた上にテンペラ絵の具を塗り
乾いた絵具をニードル(竹串等)で搔き落として
下の金を出す、というものです。
▲全面に黒いテンペラを塗りました。しばし乾かす。
今回はアイボリーブラックを卵黄メディウムで溶きました。
金箔のはじき止めに少しだけ牛の胆汁も入れます。
アイボリーブラックの顔料は、留学当時にゼッキ
(ZZECCHI フィレンツェにある古典技法の画材店)で
量り売りにて購入した大切な大切な顔料を使いました。
ずっと仕舞い込んでいましたが、使わないのももったいないですからね。
クシャナ殿下風に「今使わずに、いつ使うのだ!」と
ひとりで叫びまして(分かって下さる方はいらっしゃるはず)大奮発。
この額縁一枚に大匙3くらいの顔料を消費しました。
さて、翌日にいよいよグラッフィート、つまり搔き落とし作業開始です。
▲うっすらと線彫りした跡が見えるので、この線を追う。
一般的には線彫りはせずテンペラの上に下描きを転写して掻くのですが
わたしは線彫りをしたほうがほんのりとした立体感が出るので好んでいます。
コリコリと搔き落とし、失敗したら絵の具を塗って補彩して、さて。
グラッフィート作業完了でございます。
黒も金もまだ生々しいですが、これからアンティーク風
それも1500年代風にボロボロ加工をいたします。
長くなりましたので続きます!
今日からわたしは 6月05日
小箱を「販売しよう」と作り始めたころから
決めていたことがあります。
それは「同じデザインの小箱は作らない」ということ。
以前に少しお話したことがありましたが
まるっと同じデザインとサイズの小箱は
今まで作らないようにしていました。
同じ模様でも技法違いや色違い、サイズ違いと
少しずつ変化させています。
本当はそれも出来れば避けたい気持ちでした。
3月の阪急うめだ本店での催事で、お客様に
「同じデザインの小箱は作らないようにしています」
とお話したところ「ええっ?!」と驚かれました。
その様子を見てわたしも「えええっ?!」となったのでした。
そんなに意外なことでしたでしょうか。
▲桜咲くころのアトリエLAPIS 生徒さんが少ない日に小箱磨き中
以来なんとなく「なぜ同じものを作らないのだろう?」と考えていました。
ひとつは単純に「マンネリ化したくない」があります。
でもそれだけではない。
思い返してみれば・・・
一番最初、小箱を初めて作ったころは
友人知人にプレゼントする目的で作っていました。
だからと言う訳ではありませんが
「このデザインはあの人のためのもの」のような気持でした。
同じものを作って販売したら
差し上げた相手に申し訳ない気がする・・・と言うか。
だけどまぁ、そこまで考える必要も
ないのかもしれない、と思い始めました。
差し上げた方は何とも思わないのではないかしら、と。
そして何より
とても好きなデザインの小箱は再度作りたいのですもの!
前置きが長すぎました。つまり
「今日からわたしは以前作ったデザインの小箱を再度作ります」
の宣言でございます。
好きなら飽きるまで作ってみよう。
その先にも何かあるだろう。
と、思う今日です。
Firenze 2023ーその呼び名はコファネットと言う。 6月01日
以前、箱のことをイタリア語で「scatola」スカートラと呼ぶ
とお話したことがありました。
小さい箱ですと scatolina スカトリーナまたは
scatoletta スカトレッタなどと言うことができます。
インスタグラムにはイタリア語のコメントも書いておりまして
(間違いだらけの変な文章だとしても
イタリアの方々にも見て頂きたいので・・・)
その際には scatolina と書いていました。
フィレンツェ滞在中、大好きな美術館のひとつである
バルジェッロ美術館を訪ねました。
朝いちばんで行って、ガラガラの展示室を
(普段もあまり混まない美術館ですが)
独り占めする気持ち良さがたまりません。
ここは彫刻作品が有名ですが、工芸品
特に象牙細工や宝飾品も充実しています。
小さくてぎゅっと詰まった世界
まさにわたし垂涎の品々でございます。
今までも心の中は大騒ぎで見学していましたが
小箱を本格的に作るようになってから初めての訪問で
いにしえの小箱を改めてじっっっくり見ることができました。
▲500年前の七宝がこんなに美しく残っている驚き。
▲今はもう作ることも無い象牙の小箱が大小さまざま。
緻密な細工にほれぼれ。
▲この小箱はなんと13世紀のもの。日本の鎌倉時代・・・
これら小箱のキャプションですが
ひとつも scatolina scatoletta なる記載はありません。
すべてが「cofanetto」と表示されているのでした。
cofanetto コファネット、フランス語で coffret コフレ
つまり小さな箱のこと。
そうか、コファネットという単語があるのか。
ううむ、なるほど。
よぉ~し、今日からわたしの小箱も
Cofanetto コファネットである。決めました。
美術館に展示されている宝石のような小箱を見て
自作品も同じ呼び名にしようとは我ながら図々しいのですが
でもまぁ呼び名ですから、自称ということで!
後日、イタリア人の友人にこの話をしましたところ
「ふむ、確かにスカトリーナよりコファネットのほうが
ずっとエレガントだね!コファネットと呼ぶのは大賛成!」
と言ってもらえたのに気をよくして
それ以来すっかり 自称cofanetto が定着しております。
さて。この美術館は小箱だけではありません。もちろん。
▲マヨルカ焼きのコレクションも素晴らしい。
忘れちゃならないのがこの部屋。
▲広々とした大広間は明るくて気持ちがよい。人もまばら。
▲片隅に置くなんてもったいない、かわいいかわいいヨハネ君。
そして中央にはフィレンツェ共和国のシンボルのライオン像「マルゾッコ」
その後ろには麗しいダヴィデ、さらに奥の壁には聖ジョルジョ
(大学のデッサン練習ではお世話になりました。)と
視界にドナテッロ作品が並び立つ奇跡のような空間です。
これはもうドナテッロ祭りが年中開催されているようなもの。
心と頭は大興奮であります!
なんで誰もいないの・・・
これが日本の特別展だったら長蛇の列だろうに!
嗚呼なんたる贅沢、なんたるしあわせ。
つづく1階にはミケランジェロ作品もありますが
わたしはコファネットの衝撃と広間のドナテッロで満ち足りてしまい
ミケランジェロに感動する心のスペースがありませんでした。
フィレンツェにお越しの際には
ウフィツィ美術館もアカデミア美術館も良いけれど
その後にはぜひバルジェッロ美術館へ!
珠玉の世界をご堪能下さい。