diario
思い通りに塗るために 筆の持ち方 7月31日
突然ですが、筆はどの様に持っていますか?
絵を描く時はもちろん、額縁制作では石膏やボーロ塗り
身近にはお化粧の時にも、筆は使います。
市が尾の古典技法教室 Atelier LAPIS の 生徒さん方から
筆を使う作業時に 「上手く塗れない、ムラになってしまう」
「液溜まりができてしまう」との相談があります。
それらはもしかしたら筆の持ち方を直せば
楽に上手に仕上げられるようになるかもしれません。
女性の方に多い持ち方が、下の写真です。
つまむようにして、薬指と小指を立てています。
手首だけで振るようにして動かしています。
勝手に名付けて「オナゴ持ち」
この持ち方では筆がグラグラ安定せず力が一定に保てません。
筆にどの程度の絵の具が含まれているか、
どのくらいの圧力がかかっているか、手にも伝わりにくい。
上の写真のように、指を4本揃えて持ちましょう。
位置は、心もち根本近くを。
筆が太くても細くても、しっかりと持ちます。
手首も腕もいっしょに動かします。
筆と手が一体になって、動かすのもうんと楽。
感覚もしっかり伝わって、圧力、絵の具量を
コントロールし易くなるでしょう。
リップブラシ、ネイルも、 そして繊細なアイライナーも
指を揃えると上手に引けると思います。
筆を持ったら、どうぞ思い出してみてください。
服はシンプルが好きだけど 7月27日
KANESEIの額縁一覧「works」を見ていたら
黒い額縁をずいぶんと作っていることに気づきました。
もちろんお客様からのご注文で黒い額縁を作ることもあります。
ピンクや水色の額縁も可愛くて好きです。
古典技法の金の輝きの魅力にもとりつかれています。
でもなるほど、無意識ですがわたしの好みが
反映されているのですね。当然ながら、ですが。
今日ご紹介する額縁も黒一色です。
黒い額縁は実はかなり強い額縁で、作品を選びます。
今回、中に納められる作品が金箔を使った華やかなものなので
黒一色の額縁でも大丈夫、負けません。
以前に作った同じデザイン「kuro-acanthus-1」は黒と金でした。
金の代わりと言っては何ですが、黒の下に弁柄色を塗って
すこし磨り出しをしています。
黒の下に赤があると深みが出るように感じます。
いかがでしょうか。
「works」内「classical」にこちらの額縁をアップいたしました。
どうぞご覧下さい。
ひとりでいること 7月24日
KANESEIとして額縁の制作、修復を始めたときは
将来の展望だとか計画だとか 何も考えずに
額縁好きだし作るの楽しいし道具もあるし
(そして両親が許してくれそうだし・・・。)
心構えもせずに、ただ「始めた」のでした。
我ながらなんと呑気だったことでしょう。
徐々にわずかながら自信を持てるようになってきた頃
「そろそろ後輩を育ててみたら?」
「人を雇って仕事を拡大しないの?」という
ご意見を頂戴する場面も出てきました。
後輩を育てる、とは少し違うかもしれませんが
「額縁の素晴らしさ、古典技法の楽しさを知って頂く」
に関しては、母校の非常勤講師させて頂いたり
atelier LAPIS講師 や額連のワークショップをとおして
行っているつもりです。
では「誰かと一緒にKANESEIを進めること」は? というと
う~~む・・・
同志(または共同経営者、共同責任者?)が側にいる心強さは
修復スタジオ Tokyo Conservation の室長と主任の姿、
お互いを補い励ましあい、それぞれの役割をしっかり果たす様子を
いつもとても羨ましく思います。
でもわたしは、どうなんだろう。
今、なにかを失敗しても自己責任です。
やり直しの出費も労力も、わたしひとりの問題です。
もし共同経営者がいて、わたしがなにか失敗したら?
またはそのひとの作業に不足を感じてしまったら?
それらを一緒に乗り越える勇気と気力がわたしにあるのかしら。
信頼関係を築く努力を怠らずに続けられるでしょうか。
今はまだ自信がありません。
怖い、の方が近いかもしれません。
両天秤にかけて想像してみても、それは想像だけ。
それならひとり、しょせん小さな範囲でガサゴソと
穴倉にこもっているのがわたしにはお似合い。
いまのところ、そんな風に思っています。
遠からず変えられる日が来ると良いのですが。
・・・いや、このままの方が良いのかな。
同志――志を同じくする人が側にいてくれたら。
むむむ。
夜のサングラス作戦 試してみたら 7月20日
春にお話しした「夜のサングラス作戦」を
ふと思い出して、試してみることにしました。
夕食前に金箔を水押しして、22時にメノウ磨き開始です。
今回のサングラスは普段ドライブするときに使っている物。
装着していざ、磨きましょう。
結論から言いますと、わたしのサングラスは暗すぎて
作業が良く見えないのでした。
反射のきつい部分はちょうど良い明るさ、でも
凹み部分や隙間などは真っ暗になってしまう。
確かに目はとても楽ですが、作業が見えないのでは本末転倒です。
結局、いつものように裸眼で磨き終えたのですが、いやはや。
家族も寝静まった後、ひとりで「目が、目が~!」と叫び(ムスカ大佐風)
肩におきゅ膏を貼る夜でした。
箔作業用に色が薄いサングラスを買うのが良さそうです。
シリーズでも違う雰囲気に 緑のs&a-2 7月17日
2009年に作った「s&a‐1」という額縁の色違いの
ご注文を頂き、7枚完成しました。
「s&a‐1」はチーク材で濃い茶色に作りましたが
今回は濃い緑色で、というご注文でしたので
緑色がより美しく発色するよう、千洲額縁さんに特注で
ホワイトアッシュの木地を作っていただきました。
オーナメントを取付けて着色、ワックスで
アンティーク風に加工して仕上げです。
お客様がイタリアから買ってこられたボタニカルアートを
額装して完成しました。
濃い緑色と濃い茶色。
形のデザインは同じだけれど、長方形か正方形か、
色やライナーの有無でも印象はずいぶん変わるものです。
「works」内「classical」にこちらの額縁をアップいたしました。
どうぞご覧下さい。
最近オーナメントを使うご注文を続けて頂いています。
骨董市で購入した古い引手(箪笥の取っ手)を型取りして
石膏で作っています。
この石膏型取りについても近々お話したいと思います。
ゴッツォリ天使、大きいフレスコ小さいテンペラ 7月13日
ふたたびゴッツォリの天使模写です。
大きい天使の下に、小さい天使が置いてあります。
母校の大学で以前、フレスコ画制作の飛入り参加をしました。
その時に模写したのが大きい方。
(天使なのに翼を省いてしまいました。ひどい話。)
その下にある小さいのは今回テンペラで模写しました。
オリジナルのゴッツォリ作品はフレスコですので
やはりフレスコ模写の方がオリジナルの雰囲気に近いようです。
でもまぁ、この小さなテンペラ模写(5×4.5cm)も
これはこれで、と。
同じ絵を違う技法とサイズで模写するのもなかなか楽しい作業でした。
先日のロレンツォもあわせて額縁を作って
暮の「小さい小さい絵」展に出品予定です。
Atelier LAPIS(アトリエ ラピス)の様子から 2017年7月 7月10日
5月6月とお知らせしていなかった
古典技法アトリエ atelier LAPIS の生徒さん作品ですが
新たに1枚誕生しました。
IMさんの素晴らしい模写作品、ロイスダールの風景画用の
シンプルだけど重厚感のある額縁です。
白木の木地に水性ステインを
(木工用の塗料でその名の通り染料。木目を生かします。)
何度も何度も塗っては拭き、を繰り返して深い茶色にして、
その上にアンティーク仕上げ用のワックスを塗り磨きました。
まるでイギリスの古い家具の様な雰囲気ではありませんか?
庭に面した大きな窓のある、お屋敷の書斎に飾りたい感じ。
IMさん、作品にぴったり合った額縁を作って下さり
ありがとうございました!
ロレンツォ、その若かりし頃 7月06日
ベノッツォ・ゴッツォリ(1421頃~1497)は
わたしの敬愛するフラ・アンジェリコの弟子で
フィレンツェで活躍した画家です。
昨年にもマギ礼拝堂フレスコ画「三賢者」の部分模写を
描いていてとても楽しかったので、今年もまず1枚。
ロレンツォ・ディ・メディチの若い頃がモデル
と言われている賢者のひとりです。
描き始めたは良いものの、顔の描写は本当に難しい。
なにせ細い線1本で表情はガラリと変わってしまうのですから。
唸りながら呼吸を止めて、線を1本ずつ描き足して
どうにかこれで完成とします。うーむ。
描けば描くほどにブラックホールに吸い込まれそう。
オリジナルの表情は、ここまで笑っていません。
もっと澄ました顔をして、眉を上げて、
王子様然としています。
それが・・・すまし顔に近づけない。笑っちゃう。
庶民的な顔、とでも言えそうな表情になりました。
もともとフレスコの大きな作品を
手のひらサイズのテンペラに模写するのですから
無理があるというか。
ゴッツォリが怒りそうですね。
それにしても・・・
いつもホルベインが出しているテンペラワニスで
仕上げているのですが、どうも艶が強い気がします。
もう少し艶を押さえた、3分艶くらいのテンペラワニスを
作ってくれたらとても嬉しいのですけれど。
めぐり逢う朝 もう一度 7月03日
7年前にもご紹介したことがある映画「めぐり逢う朝」ですが、
手元には古いVHSビデオしか無くてすでに観ることも叶わず
最近はサントラCDもあまり聞いていませんでした。
先日どうしても観たくなって、絶版になっているDVDを
中古で購入することにしました。
映像も音楽も何もかもが好きな映画なのですが
観るたびに小さな気づきがあって、また嵌っていきます。
この映画のどこが好きなの、何が魅力なの、と聞かれたら
ひと言ではとても言えませんけれども、
父と娘、老と若、師と弟子、妻と夫、富と貧、俗と清、剛と柔
そして死と生。
世の中のさまざまな対比が表現されているのも魅力のひとつです。
美しい映像、美しい音楽と必要最低限のセリフで物語が進みます。
ああ、でも
ここでどれだけわたしが叫んでも栓無いことではありますが
どうぞ機会があったら、いいえ、機会を作ってでも
ぜひともご覧になってほしい映画なのです。
頭の片隅に「めぐり逢う朝」を置いておいてください。
考えてみたらわたしは、老師と若い弟子の映画が
好きなのだと気づきました。
この「めぐり逢う朝」を筆頭に「薔薇の名前」しかり
「いまを生きる」のキーティング先生と生徒たち、
「風の谷のナウシカ」のユパ様とナウシカも師弟。
「ニューシネマパラダイス」のトトとアルフレードも
ある意味師弟関係と言えるでしょう。
わたしは今まで、何人もの素晴らしい師に導かれ
今に至っているから、なのだと思っています。