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芸術新潮10月号 ウフィツィ美術館ものがたり 9月29日

 

書店ではっと目に留まり ぱらりと中を見たとたんに

「これは買わずばなるまい!」と鼻息あらくなりました。

芸術新潮10月号の “ウフィツィ美術館ものがたり” です。

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イタリアのフィレンツェにある美術の殿堂

ウフィツィ美術館は大変に有名な美術館ですから

興味のある方 また訪れたことのある方も多いことでしょう。

この雑誌に掲載されている美術館内の写真のなにが良いって

所蔵展示作品が額縁つきで紹介されていることです。

展覧会カタログでも美術館のコレクション紹介本でもかならず

額縁は切りとられてしまっているのは仕方がないけれど

つねづね残念にも思っているのですが

こうして美術館全体を紹介する雑誌では

「作品を正しく見せること」に特化する必要がありませんから

額縁もそのままに美術館の雰囲気を伝えてくれています。

 

ボッティチェッリやラファエロ ティツィアーノにカラヴァッジョ等々

彼らの代表作ともいえる絵に付けられている額縁をみて

意外にシンプルなことに驚いたり 当時最高の技術と材料で作られた

額縁の美しさにため息をついたり。

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そして以前に La nostalgia in Italia 2011 のシリーズでご紹介した

フィレンツェの額縁工房 Maselli が載っているのも要チェックです。

http://www.kanesei.net/2013/08/05.html Cornici Maselli

わたしがうっとりと眺めた Maselli のウィンドウにあった額縁は

こんな工房でこの人たちが作っていたのか・・・と納得です。

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芸術新潮10月号の “ウフィツィ美術館ものがたり” おすすめです。

 

 

猫に食べられちゃったお話 9月29日

 

先日 額縁の山を整理をしていて なつかしいものを発掘しました。

フィレンツェにある美術修復の専門学校 Palazzo Spinelli に留学して1年目

指物の授業で作った「はじめての額縁」です。

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なんとも拙い・・・けれど愛着のある額縁。

学校の木材倉庫から角材をもらい 鉋でおおまかな形とカカリを作り

ノミと彫刻刀で整形し 赤と黒のボーロで着色。

そして当時から興味津々だったアンティーク仕上げに挑戦したのでした。

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左側に穴がありますが(涙型に白く見えている部分です)これは木材に元からある節穴で

先生には「あまり良くない材だよ。でもまぁ好きにしなさい。変わった子だね。」と言われつつ

わざわざこの部分に来るように木枠を組みました。

それもまた思い出になっています。

 

さて タイトルの「猫に食べられちゃった」というお話です。

授業での製作では間に合わなくて 下宿先のアパートに持ち帰って

ボーロを塗ったのですが テラスの手すりに乗せて乾かしていたら

あやまって中庭に落としてしまったのでした。

中庭には1階の部屋からしか入れませんが わたしの部屋は2階です。

そして当時 1階は無人で中庭は猫の天国だったのですが・・・

落ちた額縁にワラワラと猫が数匹集まってきて なんと額縁を舐めはじめました。

わたしは悲鳴を上げながら猫を追いはらおうとしたけれど

猫はお構いなしにボーロを舐めつづけ あっという間に白木に戻ったのでした。

 

ボーロは粘土 膠は魚由来ですから食べられないことはないけれど

防腐剤も入っているのに あんなに美味しそうに舐めるとは。

猫たちのその後の体調が気がかりでした。

結局 その後も彼らは元気いっぱいだったのですけれど。

 

鉄柵を乗り越え イチジクの木をかき分けて救出した額縁は

しっかり洗って またボーロを一から塗って一件落着

それ以来 この額縁の名前は「gatto nero」黒猫 になりました。

というお話。

 

 

 

削り鋼板の活用 9月25日

 

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早くも東京で初雪が降った跡でしょうか?

はたまた手作りパン工房??

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・・・わざとらしいですね。

KANESEIの作業部屋の机でした。

秋になってもまだまだ汗をかく石膏磨きの作業は

粉が肌に張り付いて全身真っ白!

なかなか辛いものがあります。

 

平な面の額縁なら 削り鋼板で磨いてしまえば

作業効率が良く 仕上がりもツルピカに。

辛い作業をすこしでも早く終わらせるために活躍してくれます。

もともとこの削り鋼板は テンペラなど板絵の支持体を

磨いて平面を出すための道具ですが

額縁でも凹凸が無ければもちろん使うことができます。

下の写真 右にあるのが鋼鉄の削り鋼板です。

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むかし(かれこれ20年前!)この鋼板が欲しいけれど手に入らない時

じつは車のサスペンションに使われている鋼板だから

自動車整備工場(?)に行けば廃材をもらえる・・・と聞きました。

いまはもうネットでも大きな画材店でも購入できます。

 

この削り鋼板は荒い砥石で研いで つねにエッジを立てる必要がありますが

きちんと手入れをしておけば 紙やすりよりずっと早く

そしてこの鋼板の作業だけで(仕上げ作業など無く)済みます。

削り鋼板 どうぞお試しあれ!

 

ちなみに以前 LAPIS(古典技法の教室)の生徒さんが

ステンレスの定規を鋼板代わりにして 細い溝を削っていました。

これは良いアイディア! それ以来わたしも真似しています。

もっとも 代用するには定規も研ぐ必要がありますので

一度研いだらもう定規には使えません。

削り用の定規を準備するのが無難でしょう。

 

 

 

 

La nostalgia in Italia 2011 Venezia -Extra 15 Ti piacerebbe mangiare dolce verde? 9月22日

 

イタリアの郷愁 2011 ヴェネチア -番外15 緑のお菓子が食べたいの?-

 

バールやパン屋さん 乾物屋さんやお土産物店

気を付けてみてみるとケーキやお菓子を売るお店はけっこうあります。

秋という季節柄 栗やチョコレートを使った濃厚なお菓子が沢山。

エスプレッソと一緒に立ち飲みでササッと頂くのもイタリア風ですし

教会前広場でのんびりと道行く人を眺めながら・・・も旅ならでは。

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上の写真はどれも美味しそうなケーキばかり。どれにしようか悩みます。

 

ですが同じショーケースの左には 突如としてなにやら強烈な緑色が。

なんだろな? メロン味?ライム味?のエッセンスが入った砂糖掛け?

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その他のお店にも この「鮮やかな緑」はほぼ必ずあるのでした。

乾物店にはマジパンのお菓子。 サボテンの実の形でしょうか。

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こちらのバールには ピスタチオとナッツのパン。(ビスケット?)

ピスタチオって こんな緑色でしたっけ?

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上の棚に並ぶアブサンも鮮やかな緑色。

アブサンってこんな緑色でしたっけ?!

 

そしてリド島の駅前にあった新しいバールには

緑以外にも鮮やかな色とりどりの装飾が施されたケーキ。

思えばわたしが幼かった頃の誕生日ケーキに 食紅を使ったマジパンや

砂糖細工の飾りがのっていた時代もありました。

でも青と緑は?! 鮮やかさも違います。

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まるで花束のようなケーキの数々。

こんなところにも イタリアと日本の感覚の違いが垣間見られました。

 

 

 

atelier LAPIS(アトリエ ラピス)の様子から 2014年9月 9月18日

 

クリスマスにむけて 盛夏のころから作りはじめた額縁が

2か月以上も余裕をもって はやくも完成しました。

Tさんの純金箔を使った額縁です。

天使の絵を額装予定ですので クリスマスをいつも以上に思い出深くしてくれるでしょう。

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デザインは15世紀のイタリア・トスカーナ州で作られたものを参考にしました。

木地にボローニャ石膏 盛り上げ装飾。赤色ボーロに純金箔 刻印装飾

磨り出しとワックスでアンティーク仕上げです。

Tさん 毎週のレッスンお疲れ様でした。

すばらしい作品を作って下さり ありがとうございます。

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盛り上げは雲のような植物のような おおらかな模様

大きめの刻印で縁取ることで さらに力強さが加わりました。

この刻印の効果は想像以上!

わたしも制作意欲を駆られます。

KANESEIも次回は大きめ刻印を打ってみたいと思っています。

 

 

 

ここはどこ 9月15日

 

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みどりゆたかな並木通り

その先に見えるのはお城の塔?

まるでヨーロッパをドライブしているような気分。

 

ここは東京の井之頭通り 先頭は東京ジャーミイのミナレット

通るたびに楽しい気分になる 好きな風景です。

 

 

どこかでみたことがある 9月11日

 

夏も終わりの夜 満月の日にあわせて開きはじめた月下美人の花。

妖しい香りを漂わせていました。

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正面から見たら 可憐さは皆無の迫力の姿です。

「・・・どこかで見たことがあるような?」

 

映画「風の谷のナウシカ」の終盤 生まれたばかりの巨神兵が

砂漠の向こうから登場して 王蟲を攻撃するシーン。

ひらいた口の場面を思い出したのでした。

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「風の谷のナウシカ」はVHSビデオのころからDVDになった今も

くりかえし何度もみている作品ですので 無意識に記憶していたようです。

宮崎駿監督が巨神兵のイメージを月下美人から得たか? まさか。

・・・どうでしょうね?

 

 

第一回 箔切ナイフ代用試験のお知らせ 9月08日

 

6月にお話しした「箔切ナイフ どうかなどうかな?」の後日談。

100円均一ショップで買ったステンレスのペーパーナイフが

思いのほか作りがしっかりしていたので

箔切ナイフに転用できないかな?という作戦です。

 

いま作っている額縁に銀箔を貼るので ちょっと使ってみることに。

まずは紙やすりで刃を整えましょう。

180番程度の紙やすりで けっこうガリガリと力強くカラ研ぎします。

「いざ!」切ってみました。

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上の写真 小さく3枚切られた銀箔の左の1枚はいつもの箔切ナイフ

右の2枚はペーパーナイフを使ってみました。

結果は歴然・・・ペーパーナイフで切った切り口は破れてしまい失敗。

刃の側面の研ぎが十分でなく 箔が引っかかってしまったのでした。

普段の研ぎも180番程度の荒いヤスリを使っていますので

荒すぎたと言うわけではない と思います。

このナイフは良く見ると 刃の側面が1ミリ幅ほどザラザラ仕上げになっています。

ペーパーナイフですから 紙を切るにはこのザラザラが役立でしょうが

薄い箔は引っかかってしまったようです。

研いだ時にできた側面のバリが取りきれていなかったことも原因でしょうか。

 

いやでも!

このナイフも使えますよ!

心配だった刃のカーブも使用に問題ありませんし。

今回は研ぎが足りませんでしたが 勝手は悪くありません。

先細りの形も案外安定して刃を動かせます。

 

また研ぎなおしてチャレンジします。

次回こそ「使い勝手の良い小型箔切ナイフ」に仕立てあげます。

 

まずは「第1回 箔切ナイフ代用試験」のお知らせでした。

 

金箔を使った額縁の古色強弱 9月04日

 

KANESEIでつくる純金箔を使った額縁は

ほとんどが古色(アンティーク風)仕上げです。

金箔を水押しで貼り メノウ棒で磨き上げると

まるで金塊のようなツヤピカになります。

「純金の輝きを楽しむ」という目的があるなら別ですが

金の強い輝きが似合う作品は稀ですし 日本の風土にもしっくりこない・・・

そしてなにより わたし自身が古色を付けた金の風合いが好き

ということが一番の理由かもしれません。

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上の写真 2点の額縁の古色の強弱比較。

左の額縁は古色というよりも 半分壊しかけのようですが

打ちっぱなしや凹凸のある壁 または古民家の柱などを背景に

鏡を入れたり 木口木版のような緻密な作品にいかがでしょうか。

もうひとつの額縁は 少しの磨り出しと薄いワックスで終えました。

まっしろな漆喰の壁 またはクロスの壁にも違和感ありません。

デッサンやパステル画など あるいは展覧会で買った絵葉書でも。

どちらもそれぞれ お好み次第です。

 

 

La nostalgia in Italia 2011 Venezia -Bel uomini 3- 9月01日

 

リド島の散策も終盤 夕方にサン・マルコ広場へ戻る

船バス乗り場に向かって歩いているとき。

ようやく人影もちらほらと見えてきました。

 

この島では観光客が少ない時期でもありましたが

ここで暮らしておられるだろう方々とすれ違う機会がありました。

裕福な方が比較的多い場所なのでしょうか

おそらく80歳近いとおもわれる とても上品な女性が

毛皮のロングコートに最新モデルのグッチのバッグを提げていたり

八百屋さんにならぶ野菜が丁寧に扱われていたり

また 広いお庭のある家がならぶ落ち着いた住宅街があったり。

道行く車が大きくて(イタリアの街中では小回りの利く小型車が多い?)

街路樹も手入れが行き届き 歩道がとても広くて安全。

イタリア大都会のチェントロ(旧市街)とはずいぶん違います。

いたるところに「余裕」が感じられるのが印象的でした。

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そんな通りで見かけた男性。

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黒のコーディネート。

ダウンコートのベルトを締めても このスタイルの良さ!

幅広のソフト帽も ちらり見える真っ白な髪もお似合いです。

スッと立ってサッとひらいた新聞に目を通す・・・

これを「きざ」と言うのでしょうけれど(笑)

シチュエーションも立ち姿も何もかもが美しくて

映画のワンシーンのようでした。