top » diario

diario

Atelier LAPIS(アトリエ ラピス)の様子から 2016年4月 №3 4月28日

 

この春、Atelier LAPIS は完成ラッシュを迎えています。

MUさんは遠くから新幹線に乗って月に1度来て下さる生徒さん。

MUさんも額縁店に勤務経験をお持ちで、木工もプロ並みです。

 

今回はご自身の作品に合わせて盛り上げ装飾の額縁です。

木地にボローニャ石膏を塗り磨き、垂らし描きの要領で

筆を使ってボローニャ石膏で模様を入れます。

mu-2016 (1)

盛上げた部分を削って形を整え、足りない部分には更に盛上げ。

mu-2016 (2)

焦らず丁寧な仕事が続けられます。

そしてアクリル絵具でクリーム色に塗ったら

ワックスを使って汚しを入れましょう。

塗っては磨き、凹凸を美しく表現します。

mu-2016 (3)

麻布を貼ったライナー(市販)を入れて完成です。

mu-2016 (4)

mu-2016 (5)

象牙のような肌合い、柔らかな印象の優しい額縁が完成しました。

日本の家庭に飾っても違和感なく合う額縁です。

MUさん、ステキな額縁を完成させてくださって

ありがとうございました!

 

 

生誕300年記念 若冲展 4月25日

 

4月22日から始まった「若冲展」のオープン前日にあった

内覧会とレセプションに参加させて頂ける機会があり、

大喜びでそそくさと出かけてきました。

jakuchu (1)

ロビーで受付をして、オープニングセレモニーを少々拝見。

都美術館の館長、NHK会長、そして岡田美術館館長の挨拶が続きます。

今回の展覧会、岡田美術館が所蔵したという「孔雀鳳凰図」が楽しみでした。

83年ぶりに発見されたとか・・・。

 

かなりの混雑でしたが、広い会場内にある作品がすべて若冲という

極楽の中にいるような熱気と喜びが満ちていました。

印象的なのはやはり若い若冲が描いたという孔雀鳳凰図。

ku-ho

画像は岡田美術館HPよりおかりしました

 

筆使いはさすが若冲なのですが、後年の作品のような

鬼気迫るような怖さ(?)は少なくて、色使いが華やかです。

黒色が少ないからでしょうか。

 

何度も本やテレビで見て、見慣れたような気分になっていた

升目描きの「鳥獣花木図屏風」の想像以上の色の繊細さにも驚きました。

jakuchu (3)

画像では分からない、象の額の淡い朱鷺色の美しさ!

面白くて可愛らしい、そして神々しい世界でした。

 

展覧会カタログ表紙にもなっている「梅花群鶴図」の

真正面から見た鶴の顔。

jakuchu (2)

私は生きた鶴を良く見たことがありませんが、

このトウモロコシのような頭、そしてなにより

乱れの無い筆運びに引き込まれました。

細い細い筆で一本ずつ描かれた羽、太さ長さが均一です。

いつ筆に絵具を付け足したのか、いつ息継ぎしたのか。

どんなスピードで筆を運んでいたのか。

この一糸乱れないハッチングを見ていると

ルネッサンス時代のイタリア人画家カルロ・クリヴェッリを思い出します。

時代も国も宗教も違う二人の画家だけど、もし

お互いの作品を見る機会があったなら

なにか通じるものがあったのではないでしょうか。

 

たった1ヵ月だけの開催です。

ぜひお時間を作ってお出かけください。

生誕300年記念 若冲展 東京都美術館

伊藤若冲「孔雀鳳凰図」について 岡田美術館

 

 

Atelier LAPIS(アトリエ ラピス)の様子から 2016年4月 №2 4月21日

 

Atelier LAPIS には様々な生徒さんが来てくださいますが

NAさんはいつかプロの額縁制作者になりたいと思っておられるおひとり。

とても熱心に丁寧に、精魂傾けて制作なさっています。

今回完成した作品も、そんなNAさんらしい完成度です。

 

昨年完成したフラ・フィリッポ・リッピの聖母子模写を納める額縁です。

まず木地にボローニャ石膏を塗り磨き、赤ボーロを塗って

全面に純金箔を水押ししてメノウ棒で磨きます。

na-2016 (1)

ゼッキから取り寄せたご自分の箔道具の初使い。

箔床、箔ナイフ、箔刷毛など、まず手入れをしてから作業します。

 

ピカピカに磨き上げた金の上に、黒のテンペラ絵の具を塗って

金をすべて覆い隠してしまいます。きゃーもったいない。

おっしゃるなかれ。グラッフィートの準備です。

na-2016 (2)

さぁグラッフィート(削り)開始です。

模様を転写して、竹串で黒の絵具を削ります。

この作業の楽しいことと言ったら!

na-2016 (3)

繊細な線が表現できるのもグラッフィートの特徴です。

削り終わったらすかさずニスで保護しましょう。

na-2016 (4)

今回は艶ありニスでクラシックな雰囲気を強調しています。

na-2016 (6)

額縁が出来上がり、いよいよ額装です。

内側に紺色のベルベット調の布を貼り、箱額に仕立てました。

na-2016 (5)

今回は模写の金とのバランスを考えて

額縁をアンティーク仕上げにはしませんでした。

とても格調高い作品が完成しました!

NAさん、誠実な作業の積み重ね、お疲れ様でした。

すばらしい作品を完成させて下さってありがとうございました。

 

 

帆立貝のタベルナーコロ その6 4月18日

 

金ぴかになったタベルナーコロの

脱お仏壇風、めざせルネッサンス。

グラッフィートで装飾模様を入れます。

 

グラッフィートとは磨いた箔地の上に

卵黄テンペラで色を乗せ、乾いた絵具層を削って

下の金箔地を覗かせて作る装飾です。

全面に箔を置く必要がある贅沢な技法です。

2016-02-15 09.36.45

上の写真はオリジナル、上下帯状の装飾文様を入れます。

によるとオリジナルの色はアズライトとチャコールの混色。

製作当時はもっと明るい青だったとか。ふむ・・・。

今回はアンティーク仕上げにする予定なので、

グラッフィートの色も現状を見本に作ることにします。

tabernacolo5 (4)

ほとんど黒の様な濃紺です。ムラが極力少ないように塗ります。

 

そして模様を転写して削ります。

が・・・嫌な予感的中。削りが上手くいきません。

原因は分かっています。やっぱりね、という感想。

後悔先に立たず、後の祭り。(またもや!)

これも経験、勉強です。もう同じ誤りは繰り返すまい!

tabernacolo5 (2)

気を取り直して修正。 削り終わりました。

 

装飾模様はもうひとつあります。

下の植物彫刻の中央にある楯状の部分です。

どんな模様が入っていたのか、擦り切れてもはや分かりません。

おそらく家紋、紋章、そんな感じです。

ここはもう創作して、自分のイニシャルモノグラムを入れることにました。

おこがましいようですが、小さな自己主張です・・・。

tabernacolo5 (1)

tabernacolo5 (6)

ひとまず装飾模様入れが終わりました。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

この「帆立貝のタベルナーコロ」額縁の木地キットを

現在 Atelier LAPIS で販売予約受付中です。

ご自分での制作にご興味のある方、ぜひどうぞ。

予約受付は5月いっぱいの予定です。

詳しくは下記のリンクから Atelier LAPIS のサイトをご覧ください。

タベルナクル型額縁のキット

KANESEIではこちらのキットを使って制作しました

完成品のご予約もお受けいたします。

また額縁に納める黄金背景テンペラ画模写も制作いたします。

こちらも5月いっぱいの受注です。

下記のリンクをご覧のうえ、ページ上部右の「ccontact」からご連絡くださいませ。

帆立貝のタベルナーコロ 木地キットと完成品受注のおしらせ

tabernacolo8 (5)

 

 

春、青い花のお話 4月14日

 

 昨年春のおわりに水栽培を終えて庭に植えた

ヒヤシンスのヒヤ子の、その後のお話です。  

3月5日、葉が大きくなって花芽が見え始めました。

葉は昨年の水栽培よりずっと力強く色も濃い。

地植えにしたからでしょうか。

2016-03-05 15.34.55

 

3月10日、さらに茎が伸びてつぼみが出ました。

2016-03-10 09.54.15

つぼみはいくつあるでしょうか。

2016-03-10 09.54.24

 

裏側にあるのも合わせて、どうやら7つです。

昨年の第2花は8つでした。

ひとつ減りました。  

 

3月16日、下のつぼみから咲き始めましたよ。

2016-03-16 17.08.01

もちろん色は昨年同様、紫がかった青。

デルフトブルーです。  

 

3月19日、雨上りの満開、ブロマイド写真。

「水も滴るいいオンナ」ヒヤ子さんです。

2016-03-19 12.14.15

 

3月21日、夕日のたそがれヒヤ子。

すみません、親バカです。

2016-03-21 15.35.41

 

花の数が少なくてヒヤシンスらしくありません・・・

でも可憐さは増しています。  

3月21日、茎が伸び、花の色が褪せてきました。

地植えだと雨風にさらされるのでしかたありません。

2016-03-27 16.27.02  

 

3月31日、さらに茎が伸びて、ニョロリと倒れはじめました。

思えば昨年も茎が伸びすぎて花を支えきれなかったヒヤ子でした。

IMG_3655

 

あざやかだった青が水色になりました。

ヒヨドリが遊びに来ています。

IMG_3651

 

ヒヨドリ「ヒヤ子さんヒヤ子さん、どうしてあなたは斜めなの?」

ヒヤ子 「それはね、わたしがわたしだからよ。」

ヒヨドリ「ヒヤ子さんヒヤ子さん、どうして花が7つなの?」

ヒヤ子 「それはね、わたしが精いっぱいがんばっているからよ。」  

 

茎の根元をみても、どうやら今年は第2花は無い様子。

もうそろそろ花も終わり、早めに摘み取ってやったほうが良さそうです。

昨年の水栽培で命の限り花を咲かせてくれたヒヤ子、

本来ならもう力尽きていたかもしれないのに

ことしも頑張って花を見せてくれたのでした。

健気なヒヤ子、ありがとう。    

 

 

帆立貝のタベルナーコロ その5 4月11日

 

しばらくぶりの帆立貝報告です。

 

古典技法額縁制作のメインイベント(?)である

純金箔の水押しです。

今回はいつものように4号箔を使いました。

オリジナルはもっと赤味のある黄金色。

3号箔でも良かったかもしれません。

 

さてさて、箔を置きメノウ磨きを終えた額縁は

tabernacolo5 (3)

ぴっかぴか。

お仏壇やお寺の伽藍を彷彿とさせます。

tabernacolo5 (7)

彫刻の凹凸、奥まで輝かせるために

今回は金粉も少々使いました。

 

蛍光灯の下で観る純金箔の輝きはかなりの迫力です。

この額縁のオリジナルが作られたのは1500年代イタリア。

当時は蝋燭や松明の「炎」の揺らめきで観ていたはずです。

蛍光灯のような青白く広範囲を明るく照らす光では

彫刻を施し、純金箔を磨き上げた額縁の

本当の美しさは表現できないな、と

この写真を眺めてつくづく思ったところです。

完成した暁には、ぜひ燭台の横に置いてみよう。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

この「帆立貝のタベルナーコロ」額縁の木地キットを

現在 Atelier LAPIS で販売予約受付中です。

ご自分での制作にご興味のある方、ぜひどうぞ。

予約受付は5月いっぱいの予定です。

詳しくは下記のリンクから Atelier LAPIS のサイトをご覧ください。

タベルナクル型額縁のキット

KANESEIではこちらのキットを使って制作しました

完成品のご予約もお受けいたします。

また額縁に納める黄金背景テンペラ画模写も制作いたします。

こちらも5月いっぱいの受注です。

下記のリンクをご覧のうえ、ページ上部右の「ccontact」からご連絡くださいませ。

帆立貝のタベルナーコロ 木地キットと完成品受注のおしらせ

tabernacolo8 (5)

 

「ファッション史の愉しみ―石山彰ブック・コレクションより―」展 4月08日

 

桜が満開の日曜日、世田谷美術館で開催中の

ファッション史の愉しみ―石山彰ブック・コレクションより―」に

行きました。

隣の砧公園からは賑やかな声が聞こえ、花を楽しむ人たちで大賑わい。

美術館も女性メインのお客さんで程よい込み具合でした。

setabi

ロココ辺りからアール・ヌーボーの頃までをメインに

女性の服装の変化を追った内容で、版画と実物のドレスの展示でした。

映画や小説、絵画で見ていたままのドレスの実物を観ては

「これはモーツァルト」「こっちはプライドと偏見」

「若草物語のメグそっくり!」「アシュレーとメラニーみたい」

「ホームズの『あの人』が着ていそう」などと

ひとつひとつがとても楽しいのでした。

そして18世紀のドレスの小さいこと。150センチ前後?意外でした。

時代が下るにしたがってサイズも大きくなっていました。

帰り際、楽しみにしていたカタログが売り切れと知って

がっかり・・・。

 

西洋服飾史研究家の石山彰氏のコレクションの展覧会でしたが、

石山氏の著書一覧を見ていたら、わたしも実は何冊か持っていたことに

今さらながら気づいたのでした。

カタログを入手し損ねたがっかり感が薄れました。

もう一度ゆっくり改めて、石山さんの本を読み返してみようと思います。

 

世田谷美術館

ファッション史の愉しみ―石山彰ブック・コレクションより―」

 

 

帆立貝のタベルナーコロ 番外お知らせ 4月07日

 

制作過程をご紹介しております

帆立貝のタベルナーコロ額縁ですが、

この度、Atelier LAPIS では木地キットを

予約受注製作することになりました。

木地サイズ:H280×w175×D50 (mm)

入る作品のサイズ:H112×W85×D5 (mm)

tabernacolo1 (2)

上の写真の右が木地、左はオリジナルの額縁です。

「ITALIAN RENAISSANCE FRAMES AT THE V&A A TECHINICAL STUDY」

1500年代にイタリアで作られた額縁を元にしています。

このキットを使って模刻することも、

ご自分でデザインした額縁を作ることも可能です。

b0205287_21165574 b0205287_21175612

ご注文の受付は5月末まで、商品のお届けは2016年10月以降の予定です。

価格はひとつ¥11.880

ご希望の方は下記のリンクからご注文下さいませ。

Atelier LAPISのブログ:タベルナクル型額縁のキット

 

KANESEIではこちらのキットを使って制作しました

完成品のご予約もお受けいたします。

tabernacolo8 (5)

額縁デザインは上記の写真と同じもので、手彫り、

純金箔を使った古典技法で制作いたします。

こちらも5月いっぱいの受注です。

完成品のお届けは来年2017年以降を予定いたしております。

また額縁に納めるテンペラ画模写も同時に受注制作いたします。

フラ・アンジェリコ、リッピ、ギルランダイオ、

あるいはクリヴェッリやゴッツォリ等、ご相談ください。

本格的な祭壇画が完成します。

ページ上部右の「ccontact」からご連絡くださいませ。

 

 

 

Atelier LAPIS(アトリエ ラピス)の様子から 2016年4月 №1 4月04日

 

2016年も4月がはじまりました。

なんて早いのでしょう・・・。いやはや。

近所の川沿いにある桜は毎年見事に咲いており

買い物ついでに必ず立ち寄る花見散歩道です。

2016-04-03 14.51.32-1

そして、今年もLAPISアトリエ前の桜は美しく咲いています。

寿命だったのか昨年秋に1本減ってしまいましたが、

残りの木が補うように、いつもに増して美しく咲いてくれていて

いじらしく思えてしまいます。

 

さて、こちら月曜コースの生徒さん方の制作意欲はいつも通り。

IWさんの額縁も、はやくも4点目が完成しました。

1月に製作開始した額縁で、初の彫刻に挑戦。

シャープな線を表現します。

デザインを決めて木地に下描きをします。

lapis2016 (7)

彫刻刀、またカッターナイフも使って彫りました。

iw-4 (2)

今回はボローニャ石膏は使わず、

トノコで整えたあとアクリル絵具で着色しました。

淡い色を何色も使って複雑な色味を作ってあります。

金も箔ではなく油性塗料で。

磨り出しをして、金に趣を出しました。

iw-4 (1)

そしてワックスで仕上げです。

丁寧に彫った彫刻の凹凸が強調されて

より立体感が感じられるようになりました。

iw-4 (3)

iw-4 (4)

フォークロアな雰囲気もある、力強い個性的な額縁が完成です。

IWさん、彫刻初挑戦ながら完成度のある額縁を作って下さり

ありがとうございました。

IWさんの次作は引き続き彫刻額縁の予定です!