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有元利夫 絵を描く楽しさ 3月30日

 

先日ご紹介しました小川美術館でに有元利夫展ですが

作品鑑賞はもちろんのこと 額縁鑑賞もとても楽しい展覧会でした。

古典技法の水押しでほどこされた金箔

そしてかなり強めに表現された古色(アンティーク風仕上げ)は

機会があればぜひご覧頂きたいのです。

有元作品に付けられている額縁には 有元自身が作ったものもあり

まさに額縁と作品が一体となって理想の姿になっています。

 

「有元利夫 絵を描く楽しさ」という本をひさしぶりに開いたら

いくつか額縁の写真もみつけられました。

金箔の上にラフに絵具で模様を描いて

虫食いの穴を再現してみたものや

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イタリアのカッセッタ額縁(箱型額縁)のようなスタイルも。

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展覧会で見た限りでは 一番多かったのは上のような

赤または黄茶色のボーロに金箔を押して強い古色を付けたものでした。

 

有元の制作過程の紹介を読んでいると

キャンバスをわざとクシャクシャに折りたたんだり

画面を何度もこすって削って古い雰囲気を出しているとか。

これだけ強い古色をつけた額縁ともしっくりなじむ理由は

「古さ」のバランスなのでしょう。

 

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ご自宅の居間にはルドンや船越安武の作品といっしょに

自作の模写イコンや木彫 オリエンタルなオブジェなども並び

有元の好み 彼のイメージの源などを想像させられます。

 

彼がわたしの作った額縁を見たら なんて言っただろう

気に入ってくれたでしょうか?

それとも苦笑いされるでしょうか?

 

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「有元利夫 絵を描く楽しさ」

著者 有元利夫 有元容子 山崎省三

株式会社新潮社

2006年9月23日発行

 

La nostalgia in Italia 2011 -Arrivederci Italia- 3月26日

 

イタリアの郷愁 2011 -さようならイタリア-

 

しばらく間が空きましたが「イタリアの郷愁」も

帰国の日になりました。

 

イタリア最後の日 空港についてからは案の定慌ただしく

チェックインしたり荷物を預けたりバタバタと右往左往。

名残を惜しむ余裕も無く あっという間に搭乗になりました。

 

イタリアで最後に撮った美しい夜景写真はブレブレで

まるでなにやら分かりません。トホホ。

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こうして飛行機に乗ること十数時間で 無事に故郷日本へ帰り着きました。

 

旅の写真を見返して 思い出しては綴ってみましたが

もう4年も昔のことになりました。

あの頃とは変わってしまったお店や場所もあるかもしれません。

でも街の空気や住んでいる人たちの息遣いのようなものは

2011年旅の最中も わたしが留学していた頃と変わらないと感じていたように

きっと2015年になった今も変わっていないのだろう・・・と

思って(願って)います。

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次にイタリアへ行けるのはいつになるやら分かりませんが それまで

懐かしい人たち 懐かしい風景に再会できることを楽しみに

額縁制作に励もうと思います。

 

また折に触れてイタリアのことを思い出した際に登場するかもしれませんが

「イタリアの郷愁 2011」ようやく今日でおしまいにします。

長らくお付き合いいただき ありがとうございました。

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無精製綿で押さえる 3月23日

 

古典技法の箔の貼り方はいくつかありますが

代表的なのが水押しです。

石膏地にニカワで溶いたボーロを塗り

その上に水を塗って箔を乗せる・・・というような方法です。

 

水の表面張力で箔を乗せ 水が引いた頃合いをみて

綿で箔をしっかり押さえる必要があります。

空気を抜きシワをつぶし ボーロと箔を密着させるのですが

その時に使うのは 薬局で売っている綿

(カットメンあるいは清浄綿などの商品名)を使います。

 

この綿は化粧用のコットンと違い その都度必要な大きさを

ちぎることができ 高価ではありませんから心配せず使えます。

でも本当は・・・精製されていない綿が良いとされています。

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上の写真は無精製の綿 綿花から摘んでそのままのものです。

片手にふわりと乗る程度の量で綿花1~2つ分。

色は精製綿のように真っ白ではなく ベージュがかっています。

すこしだけ綿花の殻の欠片も雑じっていますが問題ありません。

 

水押しの箔置きで なぜ精製綿より無精製綿が良いか?

それは無精製綿なら油分が水を弾いてくれるから。

箔の下にまだ残っている水分を綿が吸ってしまう心配が減ります。

ご存知のように 箔の上に水や膠液が付くと色が変わってしまいます。

これを極力防ぐためには 油分の残っている無精製綿が良いのです。

 

以前見学させて頂いた老舗の工房では 古い布団を分解して

これまた古い布団綿を使っていました。

昔の布団には無精製の綿が使われていたのだそうです。

現在はこうした綿を手に入れるのも難しくなりました。

生花店でたまに綿花を売っていますので

それで精製綿と無精製綿の違いを試してみるのも良いでしょう。

 

 

Atelier LAPIS(アトリエ ラピス)の様子から 2015年3月  3月19日

 

2月19日にご紹介しましたグラッフィート技法は

TAさんの他にTOさんも着々と制作を進めています。

TAさんの額縁同様 まずは全面に金箔を水押し。

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TOさんは中世ドイツの古い羊皮紙写本からのテンペラ模写です。

オリジナルは羊皮紙ですが 今回はボローニャ石膏地の板に

アレンジして石膏盛り上げ装飾も取り入れていました。

箔が乗らない周囲の部分も 羊皮紙風の色を塗ってから

徐々にテンペラ絵の具で金の上に色を加えていきます。

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角の弁柄色 中央に濃い緑色と白が加わりました。

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そして中央の濃い茶紫色が入ると いやぁかっこいい!

他の生徒さん方から「完成したらわたしに下さい!」

なんて声が上がっています。

わたしも欲しいです・・・。

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更に濃い茶紫色を囲むようにしグレーを加えました。

徐々に金箔の面が隠されていきます。

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さぁ外側の帯にも彩色され ドラゴンの目も入りました。

いよいよグラッフィートの掻き落とし作業のはじまりです。

細い金の線がきらきらと美しく輝きます。

中央の茶紫部分にもグラッフィートが施される予定。

長かった制作も終わりが見えてきました。

次回のレッスンで完成できるでしょう。

楽しみです!

 

 

 

 

ヒヤ子の3月18日 3月18日

 

先週の水曜日3月11日に おおきな第1花を摘み取って

身軽(?)になった我が家のヒヤシンスのヒヤ子ですが

第1花の茎と葉のすきまで必死に伸びていた第2花が

すくすくと育ち 立派な花を咲かせてくれました。

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花の数は8つ。

第1花は数えきれないほどだったことに比べれば

ずっと小さくて香りも少ないけれど

この第2花のほうがつつましやかで可愛らしくて

どちらも違う魅力があります。

第1花はゴージャスで大胆で 女優のような美しさ

第2花は なんだか和風な可憐さがあるような?

・・・なんて 親ばかですね。

 

 

梅と猿と狛犬と 3月16日

 

湯島天神の梅まつりに行きました。

甘酒や七味唐辛子の屋台 沢山の観光客で賑わっています。

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合格祈願の絵馬も重なりに重なっていました。

わたしも昔 お参りをして合格祈願の鉛筆を

頂いて帰ったものです。なつかしい。

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本堂の前にはおおきな人だかりがあって

何かと覗いてみると 猿回しの公演中でした。

絵や本 テレビで見ていますが実物を観るのは初めてです。

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人間のお兄さんも猿くんも笑顔です。

「さぁ始めますよ 観ていってね」

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真剣なまなざしがいじらしい。

「ボールに乗りますよ」

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あらさっさー

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ほいさっさー

器用にボールをあやつります。

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くるっと宙返りをして 今日の公演はおしまい。

拍手喝采で猿くんもどこか得意そうに見えました。

 

自分に何を求められているのか

観客の人間の様々な気持ち

すべてを理解しているのかもしれない。

そうして 拍手をもらえることが素直に嬉しい。

そんな表情に感じました。

 

なんて わたしの勝手な想像です。

 

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狛犬も高いところから見守っていました。

阿「猿くん良く頑張った えらいえらい!」

吽「拍手したいけど手がとどかない・・・。」

阿「犬猿の仲じゃないのかですって?まさか!」

などと言っていたとかいないとか。

 

 

山下りん 日本のイコンと日本の額縁 3月12日

 

3月8日放送のNHK番組「日曜美術館」は

日本最初のイコン画家山下りんを取り上げていました。

その番組の中で 御茶ノ水のニコライ堂

(正式名は東京復活大聖堂)も登場しました。

ちょうど先日 このニコライ堂を見学したばかりで

またキリスト教美術についての内容でしたので

とても興味深く観ました。

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山下りんはロシア留学から帰国後 このニコライ堂で生活し

アトリエも与えられイコンを描いていたそうです。

先日見学に行った際に購入した小冊子には

りんが描いたイコンを額装してロシア皇太子ニコライに献上したことが

写真とともに掲載されています。

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日本語の文字も描かれているからでしょうか

またイエス様や天使の顔だちもヨーロッパ的ではなくて

イコンと言えどもビザンチン様式の物よりずっと身近に感じます。

そしてこの額縁。

菊や百合 水仙などのとても日本的な図案です。

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この額縁について少し検索してみたのですが

漆による金蒔絵の装飾が施されているそうです。

 

このイコンが描かれ献上されたのは明治24年(1891年)とか。

日本における額縁制作の始まりは明治半ばとされていますから

この額縁は日本で作られた額縁の極々初期のものです。

額縁というよりも「大切な絵を囲む平たい箱」というような認識で

蒔絵職人が作ったもの・・・なのではないでしょうか。

山下りんはロシアで額縁を沢山見ているはずですし

この蒔絵額縁についてアドバイスをしたかもしれません。

 

NHK「日曜美術館」

-祈りのまなざし イコン画家・山下りんと東北-

3月15日の夜に再放送があります。

 

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「日本正教会の歴史 1」

著者 司祭パウエル及川信

日本ハリストス正教会教団 西日本主教教区宗務局

2008年8月28日 初版発行

 

 

ヒヤ子の3月11日 3月11日

 

青紫の大輪の花を咲かせてくれたヒヤシンスのヒヤ子は

数日前からすこしずつ花がしおれて

さわやかだった香りに嫌なにおいが混じるようになりました。

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4日の写真と比べると 満開になってからも伸び続けた葉と

そしてひと回り小さく萎んだ花が分かります。

「ヒヤ子の3月4日」

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先延ばしにしていたけれど 思い切って花を切り取りました。

もうさようならの時が来たかと思ったのです。

せめて緑が美しい葉だけでも元気なうちに

庭の土に移してやれれば・・・と。

 

ところが。

花を切ってみたら 奥にもう一つの花芽が出ていたのでした。

小さな芽で 花の数もずっと少ないけれど

確かにヒヤ子の命は続いています。

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球根はもうスカスカになって 養分も残りわずかです。

新鮮な水をポットに足して

液体肥料を数滴与えてみました。

 

がんばれヒヤ子。

 

有元利夫展 小川美術館 3月09日

 

「好きな画家は誰ですか」と聞かれたら

あの人もこの人も・・・と沢山挙がりすぎて困りますが

でもきっとわたしの3本指には入るだろう作家のひとり。

有元利夫の展覧会が今年も小川美術館で始まりました。

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青い空に浮かぶ雲 遠いまなざしの人物

低く遠いところに見える地平線 それと接する空の色

かすれたような画面も気持ちを落ち着かせてくれます。

 

彼が描く晴れた日の地平線と夜の森が特に好きで

それらの絵の前にいれば いくらでも時間は過ぎてしまいます。

 

陳腐なセリフですが 何度観ても飽きることなく

新しい発見と考えるヒントをくれる作品です。

 

毎年この時期に開かれている展覧会ですが

やはり毎年観ずにはいられないのです。

 

小川美術館/彌生画廊

有元利夫展

2015年3月2日(月)~3月14日(土)

11時から17時まで 会期中無休

 

 

修道院のレシピ そしてGratin dauphinois 3月05日

 

頻繁に立ち寄る雑貨店にはちょっとした本のスペースもあって

そこにはいつも様々なジャンルのエッセイや新書がならび

大きな書店ではたどり着けないような面白い本が並んでいます。

先日も本棚を眺めていて「修道院」に惹かれて手に取ったのが

「修道院のレシピ」という本でした。

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後で検索して分かったことですが 2002年の出版当時は話題になったようです。

修道院付属の女子高で使われたレシピ本が和訳されているそうで

かなり分厚い本ですが それがまた学校の教科書風で実用的。

開いてみても料理の完成写真はほとんどなく

ひたすらぎっしりとレシピが並んでいます。その数600近いとか。

ソース 保存食 前菜とスープ 主菜の魚・肉・野菜 副菜 デザート・・・

数えてみようと思いましたが 数えきれませんでした。

(デザートに写真が一枚も無いレシピ本は初めてです!)

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なにせほとんど写真がありませんから 完成図は想像するしかありません。

でもそれがまた想像が膨らんで「読み物」としてじーっと読んでも楽しいのです。

たまに出てくる数少ない写真もまた期待を膨らませます。

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上の写真の左は「野菜のジャルディニエール」と言うそうですが

フランス風ゆで野菜の和え物。

右は「お米のポーチドエッグ添え」でピラフにトマトソース。

なんとも簡単な いわば毎日食べるような家庭料理の紹介です。

そんなものわざわざレシピを見なくても・・・と仰るなかれ。

この本で料理した人たちの感想を検索すると「とにかく驚くくらい美味しい」とか。

「こってりソースの重いごちそうフレンチ」ではありません。

8版も重ねられているのがひそかな人気の証でしょう。

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修道院というと質素で殺生は控えて・・・と思いきや

かなりボリューミーな肉料理も紹介されています。

左はココットで作るローストビーフ 右はブフ・ブルギニヨン。

どれもこれもレシピにはごく簡単な手順があるだけで

火加減やオーブンの温度も無いし調味料の量も「お好みで」とか

「卵1~2個」「小玉ねぎ15個くらい」と曖昧ですけれど

それもまたフランスらしいとでも言いましょうか。

帯には「これ1冊でお嫁に行ける。」とあるほどです。

 

そして作ってみました修道院のグラタン・ドフィノワ。

Gratin dauphinois 薄切りじゃがいものグラタンです。

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じゃがいも 牛乳 卵 そして塩コショウとナツメグ少々。これだけ。

例によってレシピ文は数行 調味料の量もオーブン温度もありませんが

準備は簡単 調理はオーブン任せで忙しい夜にも便利なレシピです。

バターもチーズもクリームも使いませんから食後の片づけも胃袋も楽でした。

そして本当に美味しいのでした。

これは今後も頻繁に作ることになりそうです。

 

「修道院のレシピ フランス・ブルターニュ地方」

企画・構成・写真・イラスト・文 猪本典子

朝日出版社

2002年7月24日 初版第1刷発行

 

 

 

ヒヤ子の3月4日 3月04日

 

おととい満開を迎えたヒヤシンスのヒヤ子は

とうとう花の重さに耐えかねて 自立できない事態に。

棚に置いたワインのボトルや ランプシェードにもたれて

ようやく体勢を保っています。

 

日光を求めて手を伸ばすように茎を伸ばした?

いえいえ 南向きの窓辺に置いていましたし。

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そんなに茎を伸ばさなくてもよかったのにね。

 

なんだかトンチンカンなところ といいましょうか

花に注がれるべき力が茎にいってしまっているような

エネルギーの使い先がずれているところが

マイペースに我が道を進む飼い主(つまりわたしです)に

似ているのです・・・。

きっとヒヤ子にはヒヤ子なりに 茎を伸ばす理由があったのでしょう。

ヒヤ子に自分を投影しています。

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ヒヤ子が花の寿命を全うできるように支えたいと思います。

 

 

ここで額縁をつくったらもしかして 3月02日

 

山梨県の北杜市にある清春芸術村

そのひろい芝のまんなかには まるい建物があります。

集合アトリエの “La Ruche”

シャガールやスーチンが使ったパリのアトリエ兼住居と同じ設計で

1980年にここに建てられたものだとか。

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いまもアトリエとして健在で 内部は公開していません。

外から眺めるのみですが その魅力は十分すぎるほどです。

 

まるでサーカスのテントのような丸い外観 放射状に広がる屋根の模様

煉瓦の壁に白い枠の格子窓 アトリエらしく天窓のある部屋。

中央にあるのは煙突?

童話にでてくるような建物です。

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ここに住んでみたい!

この場所で額縁を作ったら きっと素敵なものができそう。

・・・

だけど結局 考える頭も動かす手もわたしのものですから

素敵な場所で作れば迷いなく素敵なものができるなんて

そんな夢のような話はありません。

わかっています。

でもここは 夢のような話を想像できる場所でした。

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清春芸術村 清春白樺美術館