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美を伝える 「修理」の世界へようこそ! 4月30日

 

佐倉市の国立歴史民俗博物館には

全国の国立国立博物館・美術館が

出版している本がずらりと販売されていて、

それはそれは面白いブックショップでした。

 

京都国立博物館の「美を伝える」という

1冊を購入しました。

 

帯にある通り、修理・修復を紹介する内容。

写真が豊富で before&after が一目瞭然!

修理・修復の現場で必ず行うこと、

「調査し修復方針を決める→修復工程記録

→完成写真を撮って報告書をまとめる」

が分かりやすく解説されています。

こつこつとした地道な作業がつづけられ、

ボロボロの宝物が滑らかに鮮やかに修復、

保存されてスッキリ!サッパリ!です。


 

修復に使う道具、材料の説明や


「これからの文化財修理が目ざすもの」

というコラム、修復が必要な理由、

修理の基本は「現状維持修理」、その理由・・・

修理・修復をするうえの基本的なことを

こうして解説し、皆さんに知って頂くのは

とても大切なことですね。

 

この本は中・高生や大学生に読んで欲しい、

そして美術館・博物館の展示への

興味の幅をぐっと広げてもらいたいなぁ

と思いました。

 

「美を伝える

 京都国立博物館文化財保存修理所の現場から」

京都国立博物館編

京都新聞出版センター

2011年7月15日 初版発行

 

 

額縁の作り方 16 紙やすり選びの重要性 4月27日

 

彫刻をほどこした額縁木地に

石膏を塗って、さて。

丁寧に塗ってきれいに仕上がっても、

やはり磨かねばなりません。

 

細かい凹凸や入り組んだ形は

磨き辛いですね。

凹凸やカーブのある石膏地を磨くには

紙やすりの「コシとやわらかさ」が重要です。

バリバリと硬くて厚いと凸カーブに沿いません。

やわらかすぎてコシの無い紙やすりでも

凹の奥が磨けません。

ハリがあるけれどしなやかで指に沿い、

研磨剤が落ちづらく、目詰まりもしづらい

そんな紙やすりが理想です。

 

石膏の粉で指が乾きアカギレになるので

わたしは指サックを使っています。

紙やすりも滑らず磨けます。

 

つらい石膏磨き作業をいかに効率よく

美しく完成させるかは、ヤスリに

かかっていると言っても過言ではない。

・・・と思っています。

自分に合う道具と材料選び、重要です。

 

 

国立歴史民俗博物館 4月25日

 

良く晴れた爽やかな日に、千葉県佐倉市の

国立歴史民俗博物館へいきました。

 

「世界の眼でみる古墳文化」という

企画展が目的です。

古墳からの出土品の展示はもちろんなのですが

古墳内部を実物大に再現したものを覗き込んだり

壁画の詳細な模写(日本画による)を間近で観たり

アメリカ大陸やヨーロッパの「古墳的なもの」

の解説がとても興味深かったですよ。

王様のお墓の上に次の王様のお墓を作って、

そうしてどんどん積み重ねて巨大化するなんて。

なぜ重ねるんだろう??不思議です。

 

この博物館は国立だけあって、常設展が

かなり充実しています。

先史・古代(改装中)、中世、近世、

近代、現代と日本の歴史文化を追って

映画のセットのような街が作ってあったり

ジオラマやビデオ上映があったりと

体験型の展示が多くてとても楽しいのです。

きっと子供も喜ぶだろうなぁ、という感じ。

 

なにせ広くて、すべて見るには1日がかり。

当初は博物館の後に川村記念美術館や

ホキ美術館に行こうと目論んでいましたが

博物館で力尽きてしまいました。

それくらい楽しめる博物館です。

 

東京からすこし遠いけれど、

公園や植物園も充実していて気持ちの良い場所、

連休に遠足としてお出かけください。

レストランの古代ハヤシライスも

おいしかったですよ。

 

国立歴史民俗博物館

「世界の眼でみる古墳文化」

2018年3月6日~5月6日まで

 

 

 

MAさんの筆収納アイディア 4月23日

 

先日、atelier LAPIS でMAさんの

作業台をふと見たら

カンペン(死語ですか?)に筆が浮いているよう。

よく見てみたら、筆がジェルパッドに

貼りつけて収納されていたのです。


これはとても良いアイディアですね。

ジェルパッドは100円ショップで売られている

耐震ジェルだそうです。

これならカバンの中でペンケースが揺れても

筆は軽いので動かず、穂先も痛みません。

ジェルパッドは水洗いできるので

ホコリがついても大丈夫。

 

なるほどなるほど!

筆巻きよりずっとコンパクト。

巻いたりほどいたりの手間もかかりません。

そして見た目も美しい。

わたしも真似しようと思います。

 

 

ちいさいもの好き 2 4月20日

 

マカロンを食べ終わった

ラデュレの小箱。


中にはオーナメントを入れています。

小さい箱に小さいものがガサゴソと。


骨董市で買い集めたふるいもの、そして

フィレンツェのマッシモ氏に頂いたものも。

石膏で型取りして、額縁や小箱装飾に使います。

 

花型もありますよ。


ぜんぶ同じじゃないか、ですって?

いやいや、細部も厚さも違うのですよ。

 

使う目的で買いはじめましたが

眺めるだけで楽しい気分。

いつのまにかコレクションになっていました。

ニヤニヤが止まりません。

笑ってないで作りなさい、ですって?

はい、そうします。

 

 

太古の思い出との別れ方 4月18日

 

1月末にお話しした「物を減らしたい欲求」

低音でドヨドヨと、わたしの中で続いています。

服や本といった比較的整理しやすいものは済み

(第一回整理。本当はまだあるのです、きっと。)

「開かずの引出し」に着手しようと思いました。

 

この引出し、とても便利な場所にあるけれど

いままで全く活用していませんでした。

そっと開けて、唸って、そっと閉じる。

何故かと言えば、それは「思い出だけ」しか

詰まっていないと分かっているから。

 

連絡先も分からなくなった

学生時代の友人と撮った写真、

ものすごく古い手帳、

頂いたまま箱に入ったお土産品、

従兄と一緒につくった夏休み実験の結晶、

そうです、要らない物だけです。

 

もう何年も開けずに済んだ引出しの中身、

えいやとひっくり返して

中身を見ないで捨ててしまえば

楽なのは分かっていますけれど。

必死で整理して、結局どうにもならない

いくつかの物がまた引出しの奥に戻されました。

 

いったい皆さん、こういった物は

どう扱っていらっしゃるのでしょうか。

「捨てる」に気持ちを持っていくには

わたしはどうしたら良いのでしょう。

「だんしゃり」の本でも読めばいいのでしょうか。

それとも開き直ってあきらめる?

なぜ捨てられないのか理解に苦しむと

思われる方が沢山いらっしゃるのも

わかっているのですけれど。

 

わたしの「太古の品々」を目の前に

ぼんやりしゃがみこんでしまうのでした。

 

 

フラ・アンジェリコの後ろ姿を追って 4月16日

 

4月11日の夕方、九段にある

イタリア文化会館での講演「アートと科学:

広帯域の電磁波で観たフラアンジェリコの壁画

を聴講しました。


講師の福永先生は、電磁波についても

分かりやすく解説してくださいましたが、

この電磁波調査がいかに修復に役立つか、

なによりワクワクするような、ジオットや

フラ・アンジェリコがどのような手順と材料で

テンペラ画やフレスコ画を制作したのか?

というお話を聞けました。

 

サン・マルコ修道院の至宝「受胎告知」の

フレスコ画について、

・マリア様のクリーム色の衣は、当初は

 コチニールの赤い顔料で塗られていた。

・1960年代の修復時にはすでに赤が失われていた。

・天使の翼の顔料はすべて土系の顔料である。

・漆喰の最後の層(ジョルナータ)は0.5mm程

 の厚さで作られている。

・湿式法の上に乾式法で草花や赤褐色の

 アウトラインが描き加えられている。

・建物奥の天井付近に当初は鳩が描かれていた。

などなど、他にもジオットのテンペラ画についても

気づけば体を乗り出して聞いていました。

やー。

とても面白かったです!

 

サン・マルコ修道院の狭い廊下に足場を組んで、

黒い僧服の腕をまくったフラ・アンジェリコと弟子、

そして左官職人がせっせと作業している後姿、

並んでいる道具や筆、匂いや音まで

想像できたような気がします。

 

画像はwikipedia からお借りしました

 

こうして今まで大切に大切に

調査し、修復し、保存されてきました。

あらためて保存修復の大切さと面白さを

思い返す、興奮冷めやらぬ夜でした。

Aちゃん、知らせてくださってありがとう!

 

 

額縁の作り方 15 彫刻木地に石膏を塗る 4月13日

 

先日ご覧いただいた彫刻木地

ボローニャ石膏を塗りました。


今回のように彫刻で凹凸がある場合

平面やちょっとした曲面に塗るときとは

すこし勝手が違います。

いつものように塗ると凹部分に石膏液が溜り

彫刻を美しく表現するのがなかなか難しい。

ではどのようにするか?

今回ご紹介する塗り方も、わたし個人の

経験からのお話ですので、参考程度にお聞きください。

 

少々薄い石膏液を作るところから始めます。

いつものニカワ液(水10:兎膠1)に

石膏をふり入れて石膏液を作りますが

いつもの石膏液よりも6~8%程度石膏を減らします。

そして出来上がった石膏液を60℃程度

「けっこう熱いな」と思うくらいまで

湯煎で温めます。

 

ちなみに兎膠は70℃以上になると

煮えて接着力が無くなってしまいますから

ご注意ください。

 

そして温まった石膏液に、筆にひとすくいの

ぬるま湯を足して下からゆっくり混ぜましょう。

これを下ニカワを塗った木地に、丸筆を使って

手早く丁寧に塗っていきます。

凹みに液溜りができないように。

塗り残しがないように。

凹も凸も、できるだけ厚さが同じになるように。

いつもより薄い層を3~4回塗り重ねます。

KANESEI石膏塗りのスローガン

注意深く丁寧に、でも手早く!!

これに尽きます。

 

石膏を上手に塗ることができれば

その分、つらい石膏磨きの労力も減ります。

がんばりましょう!

 

 

真珠姉妹と花の数 4月11日

 

ヒヤシンスの「ヒヤ子」は、すでにこちらで

何年も前からお付き合いいただいていますが

先日、白いヒヤシンスの鉢植えを買いました。

ホワイトパールという品種。

名付けて(名付けなくても良いのだけれど)

真珠3姉妹です。

 

 

お店に並んでいた時から蕾はすでに伸びていて

もう他にはヒヤシンスの鉢はありませんでした。

これも何かのご縁と連れて帰ったところ、

我が家でちょうど咲き始めてくれました。

 

ですがこの3姉妹、どうも花数が少ない。

そして横からおおきな第2花の蕾がすでに

にょっきり伸びています。

こういう品種なのでしょうか。

 

なにはともあれ、可憐な真珠姉妹です。

部屋を良い香りで満たしてくれています。

わたしはご飯(液肥や水)をせっせと差し入れ、

花の期間の球根も健康に過ごしてもらいましょう。

初夏にヒヤ子の球根を掘り上げるとき

3姉妹の球根も取り出そうと思います。

また来年すてきな花を咲かせてほしい。

 

 

我が家にヒヤ子のほかにもヒヤシンスが増えたので

カテゴリー「ヒヤ子」は今日からひとまず

「ヒヤシンス」にします。

 

 

日本の文様 第一集 4月09日

 

先日ご覧いただいた菊と牡丹の小箱

そして梅と菊、竹模様のツマミにいれた

デザインは、この本から拝借しました。

 

「日本の文様 第一集」文庫本サイズです。

副題が「刺繍図案に見る古典装飾のすべて」

ですので、刺繍技法についての紹介がすこしと

カラー写真が10ページほどありますが

あとはすべて図案集になっています。

 

松竹梅、唐草、御所模様から鳥、蝶などに加え

洋風模様なるもの(ペルシャ風やロココ風)

まで入っているのです。

眺めるだけでも楽しいですし

シンプルな線画なのですぐに利用できます。

 

ずいぶん前から持っていたけれど

ようやく活躍してもらうことができました。

第二集もあるのでしょうか。

つづきも欲しくなりました。

 

「日本の文様 第一集」

-刺繍図案に見る古典装飾のすべて-

著者:紅会

株式会社青幻社

2002年10月1日 初版発行

 

余白の美、その対極 4月06日

 

最近、合間にすこしずつガサゴソと

彫り進めていたアユース材の小さな額縁、

そろそろ木地作業終了です。

 

今回のデザインはイタリアの額縁本

“REPERTORIO DELLA CORNICE EUROPEA”

に載っている15世紀末ボローニャの額縁を

参考に作りはじめました。

まずは簡単なところから着手。

隙間時間に作りましたので

ここまで2カ月弱かかってしまいました。

木地の形が違うので、彫り進めながら

すこしずつデザイン変更をしていきました。

仕上げに部分的にペーパーをかけます。

 

調え終わり、本と並べてみたらずいぶん違う。

オリジナルも全面細かく彫ってありますが

自分の額縁を改めてみてみると

ちょっとやり過ぎちゃった?

詰め込み過ぎた・・・ような気がしています。

見本にした額縁は平たい箱額、

わたしの木地は高さのある外流れ型ですから

オリジナルより主張が出たのかもしれません。

 

「小さくぎっしり」が好きなので

まぁ、これはこれで。

石膏をかければもう少し落ち着くだろう

と思っています。

 

 

ちいさいもの好き 4月04日

 

先日ご覧いただいた和柄の引出しツマミは

ほかのツマミ一族とともに小箱に納まりました。

 

わたしの宝物、タンブリッジウェアの小箱

 

こっそり開けると

 

ツマミのサンプルが12個。

数年前にもご紹介したのですけれど

また見て頂きたくて登場させました。

和柄ツマミで箱も満席です。

小さい箱に小さいものがぎっしり。

ニヤニヤしながら眺めています。

 

 

和洋折衷ツマミ 4月02日

 

ひさしぶりにツマミを作りました。

ツマミ、お酒の肴ではありません

引出しの取っ手のツマミです。

転がってしまうので箱にいれて

写真を撮りました。

 

木地にボローニャ石膏、赤色ボーロ、

そして純金箔の水押し、メノウ磨き。

梅と菊、竹の線刻模様が入っています。

艶消し仕上げです。

このデザインは着物の模様集本から採りました。

 

明治時代の和洋折衷のお屋敷にある

奥さまの小箪笥についている・・・というイメージ。

いかがでしょうか。

 

「works」ページ内「other」にアップいたしました。

どうぞご覧下さい。