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箔 今昔 10月31日

 

KANESEIに入院中の天使、ようやくここまで

たどりつきました。

箔を置いてメノウ磨きが済んだところ。

方翼だけキラキラになった天使ちゃんです。

もうすぐ飛べるはず。

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白っぽく光っているところは今回箔を置いた部分です。

箔のつくろいをしてまた磨き、それから

オリジナルの部分のような色艶にするための補彩をします。

 

わたしは普段、箔類は金沢のお店にお願いしています。

先日も純金箔と洋箔(銅と亜鉛の合金箔、純金箔の代用品)を

購入しましたが、やはり高騰しているのですね。

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上の写真、純金箔4号色(94.4%金)で100枚18000円くらいでしょうか。

(時価ですので今日すでに高くなっている可能性も有り。)

わたしが大学生の頃、はじめて金箔を買ったときには

贅沢にも4号箔よりもっと純度の高いほぼ24金の金箔を使っていて、

その金箔が100枚で1万円しないくらいだったと記憶しています。

当時はまだ額縁制作を続けるとは思っていませんでしたけれど

「あの頃、金箔を買い溜めしておけば良かったなぁ」

なんて思ったりしています。

 

 

今年は早めに 10月27日

 

冬支度開始」でお話した、暮の「小さい小さい絵」展の準備を

今年はすこし早めに終えることにしました。

ハガキより小さなサイズのテンペラ画を額縁に納めました。

例年は11月後半の納品締切ギリギリになってしまうのですが

早めに準備を終えると気持ちも晴れ晴れです。

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ひとつひとつタイプの違う“わたしの娘たち”

12月に皆様にご覧いただけますよう。

 

 

梅若研能会橘香会 10月24日

 

10月22日の土曜日、国立能楽堂での橘香会の舞台を拝見しました。

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友人の繋がりで最近お知り合いになった

古室知也さんシテの「藤戸」が目当てでした。

なにせ20年ぶり3回目のお能、理解できるか不安でしたが

前もって古室さんに解説していただいたり資料を頂いて

予習できましたので、とても興味深く拝見できました。

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仮面劇であり、動きも緩やかなお能ですが

表現力の深さに感動しました。

藤戸も朝長も死者が霊になって登場する内容で

(この2つに限らずお能は霊の登場が多いそうですが)

決して明るい物語ではありませんでしたが

観劇後はどこか清々しいような、穏やかな気持ちになっていて

なんとも不思議なのでした。

 

 

金継ぎ 作業6 10月20日

 

平和島骨董市で「金継ぎ練習用」として売られていた

割れたお皿の修理作業も大詰めになりました。

高蒔絵にするため、模様を漆で高さを出して

乾くのを待つまでの様子が前回作業5でした。

 

その後に朱漆を全面に塗ってまた乾くのを待ち・・・

(作業時間より待ち時間のほうがずっと長い)

とうとう金蒔絵の作業になりましたよ!

 

計画通り、高くした模様部分にだけ朱漆を塗り

しばらく待ってから金粉を撒きました。

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豪快に金を撒き過ぎまして、余計な部分にも沢山ついてしまいました。

もったいないこと。

さて、この状態でまた1日ほど漆が乾くのを待ちます。

それから「固め」の生漆を金に塗って、さらに1日待ちます。

 

まだ待つの?!・・・これが最後の待ち時間です。

 

 

これさえあれば 10月17日

 

以前に作った額縁と同じデザインで、という

ご注文を頂いたとき、かならず取り出すのが

模様の下書きをしたトレーシングペーパーです。

(もちろん模様が入っているデザインの場合、ですが)

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そのトレーシングペーパーは上の写真のように

小さな紙片ですから、ポケットファイルに入れて整理しています。

新しいデザインの額縁を作るたびに紙片が増えて、

気づけばファイルも随分と分厚くなってきました。

 

トレぺの紙片を見れば、どんな額縁で誰に作ったか思い出せる。

このファイルさえあれば、また同じ額縁を作る事ができる。

KANESEIのお宝のひとつ、でございます。

 

ネコテンペラ 10月13日

 

先日に金箔を貼り終えたねこのテンペラ画が

ひとつできました。

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直系10センチくらいの板に黄金背景、卵黄テンペラです。

ねこは初めて描きましたが、ふわふわの毛の表現が難しいのですね。

ハッチングの線が目立つと剛毛に見えてしまう。

ぶにゃー!

ねこ特有のやわらかさと可愛らしさ、愛嬌を出したいのだけど。

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バケネコになりきれず茫然とした表情・・・といったところ?

むむむ。

 

ティントレットの世界 10月10日

 

国立新美術館で開催中の、アカデミア美術館所蔵

「ヴェネツィア・ルネサンスの巨匠たち」展に行きました。

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ベッリーニ、クリヴェッリ、カルパッチョ、ティツィアーノ

そしてわたしの大好きなティントレットの作品が出ています。

 

19歳の時にはじめてヴェネツィアでティントレットを観たとき

うす暗い部屋の天井近く一杯にあった作品の

灰色がかった青と紫がかった赤、強いハイライトの白と

影の縁にある反射の表現の激しさで

「な、なんだこのオドロオドロしい絵は!」が第一印象でした。

なにせその頃のわたしはボッティチェッリとモネ凝っていて

明るい色使いと女性的な美を追っていたのです。

でもティントレットの作品に「ぎゃっ」と思ったのもつかの間

旅の最中になんども、教会やドゥカーレ宮など本来あるべき場所

-美術館ではなくて-で観る機会を得るにつけ

独特の強さと不思議な世界に引き込まれたことを覚えています。

今回ひさしぶりにティントレットの作品に触れる事ができて

ヴェネツィアで観たときの感情や部屋の匂い、空気の様子を思い出しました。

 

この展覧会にはルネッサンスらしい額縁も出ています。

肖像画の小品に付けられていた額縁には、金箔をふんだんに使った

グラッフィートなど繊細な額縁があって、それも見どころ。

ちなみにわたしのおススメはティントレットの「動物の創造」です。

神様が動物、鳥、魚を生み出した瞬間を描いています。

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筆使いも構成もドラマチック、そしてちょっとユーモラス。

神様が今まさに「さぁ、行きなさい!」と叫ばれた瞬間でしょうか。

みなが神様の指さす方、同じ方向を目指しています。

鳥が不思議な飛び方をしています。

そして右端のユニコーン。

天地創造時にはユニコーンがいたのかな。

顔しか描かれていませんが、躍動感あふれる全身が見えるよう。

東京での展示は今日で終わってしまいますが、大阪に巡回します。

おいでの際にはぜひ楽しみにご覧ください。

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「アカデミア美術館所蔵 ヴェネツィア・ルネサンスの巨匠たち」

東京・新国立美術館 10月10日(月・祝)まで開催

大阪・国立国際美術館 10月22日(土)より開催

 

雨の日に 10月06日

 

やっと秋が来たと思ったのに、暑い日が来たり

変な陽気がつづきますね。

 

先日の雨の日、展覧会めぐりをしました。

まずは日本橋三越で開催の「第63回日本伝統工芸展」です。

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毎年楽しみにしている展覧会ですが、今年はなんと

知人の知人(お目にかかっていませんが)高橋奈己さんと仰る方が

日本工芸会新人賞を受賞されたとのお知らせがありました。

すばらしい!これまでの鍛錬の賜物です。

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うつくしい曲線で構成された白磁の水差し。

女性らしい柔らかさと同時に鋭さも感じられました。

金継ぎを勉強するようになってから、漆の作品を見る

気持ちにも変化が出てきました。

完成するまでの労力、その技術、時間・・・

百聞は一見にしかず、と言いますか

百見は一経験にしかず、なのでした。

 

さて、続いて六本木の国立新美術館に移動して新制作展です。

わたしの母校である和光大学には新制作に所属されている

先生方が多く、以前は毎年お邪魔していた新制作展ですが

ひさびさに拝見しました。

この冊子にもお世話になった先生方のお名前が。

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こちら新制作は今年で80周年だとか。

日本伝統工芸展が63回ですから、ずいぶんと古いのですね。

 

さてさて続きまして、Tokyo Conservation の室長

尾形先生の個展を・・・と意気込んで行きましたら、

ギャラリーにはシャッターが下りていたのでした。

開廊日のチェック、忘れていました。

やれやれ・・・そんな日もあります、と思うことに。

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金継ぎ 作業5 10月03日

 

木片を埋め込んでコクソ漆、朱漆、黒呂色漆を塗って

やっとのことで整形を終えた(あきらめた)金継ぎ練習ですが、

そろそろ装飾部分の計画を立てる段階までたどりつきました。

悩んだ結果、高蒔絵で装飾を入れることにしました。

 

全く関係のない模様を入れることも考えましたが

華やかな図柄のお皿に違う模様はゴチャゴチャになるだろう

それに全体を金にすると派手すぎるし・・・

ということで、先生にいただいたアドバイスに従って

オリジナルの模様を追って再現し

高く盛った模様部分を金、他は朱で仕上げる計画に。

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蒔絵筆をゆっくりゆっくり動かして漆を盛ります。

あまりに集中して窒息しそうでした。

 

蒔絵筆はわたしが普段テンペラに使う面相筆と同じくらいの細さ。

でも漆は卵黄テンペラ絵の具よりずっと粘りがあります。

いつものテンペラの感覚で漆を筆に含ませて動かすと

厚塗りになりすぎる傾向があって、先生に注意されました。

筆を傾けて持って、進行方向に向かって引くように

ゆっくりとゆっくりと動かすのがコツのようです。

実践は難しいですが、ようやく分かって来ました。

 

ちなみにわたしの使っている蒔絵筆は猫の毛だとか。

真っ白でコシのある、うつくしい毛の筆です。