top » diario

diario

型取り 7月31日

 

ヨーロッパの額縁には型から取った石膏を

彫刻の代わりに使う技法が古くから使われています。

下の写真はシリコンの型を作って石膏で取ったものです。

ここで使う石膏はいつものボローニャ石膏ではなく

歯科用の硬度の高い焼石膏です。

「works」内「other」のピンクの小箱に使ったのもこの型から取った石膏。

いつでも使えるようにいくつか作り貯めています。

いま手元に数種類の型がありますが どれも骨董品から型取りしました。

骨董市に行くたびに型取りに使える物はないかな…と

探すのも楽しみになっています。

katadori

絵画修復ワークショップ 7月30日

 

わたしが日々お世話になっている恩師 尾形純氏による

絵画修復のワークショップをご案内します。

来月8月22日、23日の2日間 練馬区立美術館です。

   atumi

C-1:「”厚み”の向こうにナニがある?絵画の材料とその歴史」
【日時】 8月22日(土) 14:00~16:00
【対象】 中学生から一般
【定員】 20名
【講師】 尾形純(修復家・画家)
【参加費】 無料
【内容】 ルネサンス時代の絵の具と今の絵の具は違うの?修復作業を通してみえてくる油絵の秘密を、豊富な資料とともに探る講座です。

    

    

C-2:「真夏の怪談?絵画の向こうにナニかがかくれている!」
【日時】 8月23日(日) 14:00~16:00
【対象】 小学生から一般(10歳以下は保護者同伴で申し込み)
【定員】 20名
【講師】 尾形純(修復家・画家)
【参加費】 無料
【内容】 修復用の特殊なライトを当てると、いつもは見えないものが浮かびあがってくる?!展示室の絵がいつもと違ってみえるはず。

 

普段接している油彩画も違う角度から見ると沢山の発見があります。

この講座を聞いた後に展覧会場へ足を運ぶと きっと

今までより更に作品に近づいて 横から斜めから 後ろに回ってと

角度を変えて目を凝らして作品と対峙したい気持ちになること請け合いです。

ご興味をもたれたら ぜひともご参加下さい。

尾形氏の修復講座のほかに 絵の具作りや額縁作りの体験もあります。

額縁作りの講師は額師風雅の戒田光雄さん。

私も何度かお会いしてお世話になりましたが気さくでおおらかなお人柄

そして額縁に対する技術と洞察が深い方です。

 

くわしくは下記の練馬区立美術館のサイトをご覧下さい。

http://www.city.nerima.tokyo.jp/museum/tenji/atsumi.html

何も無い ふたたび 7月29日

 

アジアとヨーロッパの境のあたりの風景です。

車窓から眺めるのは永遠に続くかと思われるような

「何も無い」風景でした。

杖を持った羊飼いの老人と痩せた羊の群れが通りました。

nai-2

古典技法額縁の作り方 5 7月28日

 

水押し技法で貼った箔(金銀 真鍮 プラチナ問わず)は

すべて磨くことが出来ます。

箔磨きに使うのはメノウで出来た道具です。

このメノウ棒は額縁にかぎらず 写本やポーセレン カリグラフィーなど

およそ箔を使うヨーロッパの伝統技法全てで用いられる道具のようです。

agata

形も大きさもさまざまです。

私はもっぱら左から二番目のメノウ棒を愛用しています。

前回貼った金箔を磨きましょう。

箔の表面は完全に乾いており かつ石膏地はまだ水分を含んで柔らかい

という状態で磨くのが一番美しく仕上がるタイミングです。

menoubou1

最初は様子を見ながら優しく 徐々に力を入れて磨き上げます。

深い輝きで自分の顔まで写ってしまうほどの艶に仕上げましょう。

頭の上には 7月27日

 

今日も暑いですね。

 

海辺でシャワーを浴びようとして ふと見上げたら

屋根に大きな穴がありました。

そして屋根の更に上にはおおきな椰子の木が。

たわわに実っています。

 

あの立派な実がいまここに落ちてきたら・・・

この屋根の穴はもしかして・・・

 

大急ぎでシャワーを浴びたのでした。

yasi

翌朝 ドーンドーンという音で目覚めたら

椰子に器用に登った男性が収穫した椰子の実を落としています。

実が芝生に落ちた音でした。

落下事故を防ぐために きちんと手入れされているのです。

屋根の穴の原因は違ったようで一安心・・・

作品とともに 7月26日

 

こちらKANESEIサイトでは額縁をメインに紹介していますが

見てみればどの額縁も空っぽの状態ばかりです。

いろいろと額縁の写真を並べられても

作品と併せてみたイメージがなかなか掴めない…

と感じられている方もいらっしゃるかもしれないと思い

今日は作品の入った状態の額縁の雰囲気をご紹介します。

 

私個人で持っている版画作品に合わせて作った額縁ですが

「works」内「classical」一番左にある彫刻を施した額縁と同じデザインです。

木地を濃い茶色にしてアンティーク風の仕上げになっています。

「works」の額縁はハガキより小さな作品用のごくごく小さなものですが

同じデザイン同じ木地を使っても作品サイズに合わせて

大きくすると印象も変わります。

小さいとギュッと凝縮されていますが

大きくなるに連れ余白が広くなる…といった感じでしょうか。

版画は特に紫外線に弱く退色しやすい性質があるので

UVカットの機能がある特殊アクリルガラスを入れています。

またマットも無酸中性で美術館向けの保存のより良いマットボードを使っています。

こうしたちょっとした心遣いですが作品の命がより長くなるのです。

vogeler

職人の技 7月25日

 

KANESEIの名前を決めた頃 雑誌で見かけたのが

台東区の合羽橋道具街にある焼印職人さんの記事でした。

これから私はKANESEIという名前で額縁を作っていくという決心で

日本の伝統的な職人技で作られるという世界に一つだけの焼き印を

作っていただくことにしました。

合羽橋の住所を訪ねると質素で実用的な工房の奥から

こちらの職人さんが登場しました。

私が「かねせい」で「晴」の字を入れて欲しい と簡単に話すと

机の引き出しから字体の辞書が出てきて見せてくださった「晴」の文字。

「この字体が良さそうだね」「そうそう、これこれ!これでお願いします」

ものの3分もかからず相談が終わりました。

私のイメージを瞬時に汲み取ってくださった…不思議な感覚でした。

1週間で完成した焼印は細かで見事な仕上がりです。

熟練した職人技に触れて厳粛な気持ち そして憧れが生まれました。

この焼印の佇まいは私の額縁職人としての人生を励ましてくれています。

yakiin1

何も無い 7月24日

 

何も無い風景に惹かれます。

もちろん大地と空はあります。それとわずかな人工物。

遺跡や廃墟 人通りの絶えた道…

その人工物のはかなさが「何も無い」感を際立たせると言いましょうか。

こうした風景の中に佇み ファインダーを通して眺めるのは

さびしい つらい という感情ではなくて

ひたすら開放感なのです。

nai-1

中央の白い道を中学生くらいの男の子が一匹の犬と通っていきました。

古典技法額縁の作り方 4 7月23日

 

前回準備した箔下トノコに今日はいよいよ金箔を貼りましょう。

「水押し」技法です。

下の写真に箔を貼る道具を並べてみました。

右の紺色の台はスエードで作った「箔床」 箔を扱う際に乗せる台です。

それに竹バサミ 箔切ナイフ 紙に包まれた金箔 箔ハケ コットンです。

そして箔を貼る額縁(今回はコーナーサンプルですが) 筆と水。

hakujunnbi1

箔を竹バサミで箔床に乗せ、ナイフで切ってハケで移動させます。

hakuhari1

箔を貼りたい場所に筆で水をたっぷりと塗っておきます。

そこへハケで箔を乗せると水の表面張力で吸い付くように箔が張り付きます。

水分が石膏地に吸収された頃を見計らって

コットンでしっかり押さえ空気を抜き より密着させます。

なぜ水だけで箔が付くのか?と思われるでしょう。

下に塗った箔下トノコに含まれるニカワ成分が水に溶け出して

のりの代わりになるという原理…だそうですが

実際のところ私も不思議に思っています。

 

箔を貼る作業は細心の注意を要しますし慣れるまで経験が必要ですが

やってみるととても楽しくワクワクします。

この水押しは額縁制作の一番華やかな作業と言えるでしょう。

石畳に映る風景 7月22日

 

フィレンツェの住宅街はアスファルトが敷かれている道もありますが

街の中心部ではほとんどの道が石畳です。

車に乗っても自転車に乗っても 石畳のデコボコが

明確なリズムになって身体に伝わってきます。

でもハイヒールで歩くのはあまりお勧めできません…。

 

古い石畳には長年の風雪と人馬の脚によって出来たであろう

窪みがそこかしこにあります。

雨が降ると水たまりにもなります。

雨の日の昼過ぎにウフィツィ美術館前にあった水たまりを見たら

パラッツォ・ベッキオの塔が映っていました。

pioggia

今日の東京 日食は観られるのでしょうか・・・?

冷たい輝き 7月21日

 

今日は連日の暑さからすこし開放されそうですが

夏になると額縁も見た目が涼しげなものを飾りたくなります。

銀箔の冷たい輝きはすっきりとした気分にさせてくれるので

真夏のインテリアには最適です。

gin-seo-21

* 本日「works」内 「modern」にこちらの額縁をアップいたしました。

  どうぞご覧下さい。

四姉妹 7月20日

 

同じ木地を使ってコーナーサンプルを4種つくりました。

それぞれ木地に石膏を塗り彩色 箔で装飾しています。

角の模様はクッキーとアカンサス。

色と箔の種類を変えただけでも雰囲気が変わります。

こうして色違いの額縁をシリーズで並べるのも

楽しい展示になるのではないでしょうか。

4sisters

作る楽しみ 7月19日

 

額縁制作はもちろん楽しく 好きなことを仕事にできたことを

感謝しつつ毎日の制作に励んでいるわけですが…

たまに 純粋に「作る楽しみと喜び」を感じる為に また気分転換の為に

額縁以外のものを作りたくなります。

worksにてご覧いただいている小箱もそんな時間で作りました。

今回はまた違った気分で引き出しのツマミを作ってみました。

ホームセンターなどで細工用に売られている白木のツマミに

古典技法額縁と同じ方法で石膏を塗り箔を貼り彩色しました。

いつもどおりにアンティーク風の仕上げにしています。

普段使っている引き出しもツマミを替えると雰囲気も変わります。

いかがでしょうか?

tumami

tumami22

* 本日「works」ページ内「other」にこちらのツマミ3点をアップいたしました。

  ご注文に応じて制作もいたします。どうぞご覧下さい。

敬意を表して 7月18日

 

新しい額縁を作る仕事をしていても

骨董市で美しい一昔前の額縁を見ると手を伸ばしてしまいます。

こんな額縁を私も作りたい…とか どんな部屋に飾られていたのか…など

手に取りながら色々と想像します。

今日出かけた骨董市でも小さな円形の額縁を買いました。

額縁を作っている身で言うのははばかられますが

正確な円形や楕円形の額縁を作るのはなかなか難しいのです。

小さいとは言えきちんとした円形の手作り額縁を見つけるととても嬉しくなり

また作った職人さんに敬意を表したくなります。

下の写真は今日から我が家の住人(?)になった骨董雑貨達です。

中央の缶はお米用のようですが ギリシャ神話の絵柄です。

赤いガラスの器はかなりディスカウントして頂けました。

当分の間はこれらの雑貨を眺めて撫でて楽しめそうです。

骨董市通いは止められません。

2009718

古典技法額縁の作り方 3 7月17日

 

今日は箔を貼る準備作業をご紹介します。

前回 木地に塗り終わって乾かしたボローニャ石膏を

紙やすり等で磨いて形を整えた次の工程です。

今回ご紹介するのは「水押し」という方法で箔を貼る作業の準備です。

下の写真の枠は装飾部分と内側の細い枠部分(茶色の部分)に

「箔下トノコ」または「ボーロ」「アシェット」などと呼ばれる下地材を塗ってあります。

黄色いラベルの物がシャルボネ社製の箔下トノコです。

アルミニウムを多く含む粘土状の天然土が主成分。

これをニカワで溶いて箔を貼る部分に塗っておきます。

赤 黒 黄の3色が一般的でこれらを混ぜて使うこともあります。

今回は赤と黒を半量づつ混ぜて茶色にしました。

この箔下トノコの色は金箔や銀箔の仕上がり色に微妙ながらも影響します。

特に金箔は10.000分の1~2ミリという極薄の箔なので

金属とはいえ下地のトノコの色がかすかに透けるようです。

またアンティーク風仕上げで箔の表面を磨ってトノコを出す場合は

仕上がりの雰囲気にとても影響があります。

イタリアでは普通「金には赤トノコ 銀には黒トノコ」と言われますが

日本では金にも銀にも赤トノコが好まれるようです。

日本の額縁ユーザーの好みや おそらく今まで作られてきた額縁の

伝統なども相まっての結果だと思われますが 面白いです。

tonoko

この箔下トノコを塗るのは水押し作業の

前日に済ませるのがベストだと思います。

トノコを塗ってから日にちが経ちすぎるとどうも上手く仕上がりません。

せめて1週間以内には次ぎの水押し箔貼り作業をしたいものです。

羽のゆくえ 7月16日

 

フィレンツェで古典技法額縁製作の修行をさせて頂いていた

マッシモ・フランカランチ氏の工房があるのは

サンタンブロージョと呼ばれる教区の一角です。

これはサンタンブロージョ(サント・アンブロージョ)教会のある地区という意味。

マッシモ氏の工房ではもちろん新しい額縁を作るのがメインの仕事ですが

サンタンブロージョ教会の聖具を修復することもあります。

古い蜀台がいくつもいくつも運ばれてきたりしました。

ある日工房へ行ってみると何か彫刻の一部なのでしょうか

羽の一部のようなものが並んでいました。

それほど古い物ではなさそうですが とても美しい羽でした。

あまりに綺麗なので写真を撮らせてもらったのです。

そしてある日 忽然と工房から消えていました。

私がいない間に作業が終わって返却されたのですが

まるで飛んでいってしまったようで寂しい気持ちが残ったものです。

結局この羽は何の部品なのか どこから来たのか 聞きそびれてしまいました。

サンタンブロージョ教会の天使の彫刻の部品だったのかも謎です。

聞かなかったことを今も後悔しています。

piume

明日もまた 7月15日

 

毎日の額縁制作作業は自宅の一角の作業部屋で一人です。

ラジオやCDで音楽を流しつつ聴くとはなしに聴きながら

もくもくと集中して作業をしていると あっという間に一日が終わることもあります。

一人きりの時間と空間が寂しいというわけではないのですが

ラジオからDJの明るい声が聞こえてくると安心したり…。

 

思い通りの仕事が出来た日に爽やかな気分で作業部屋を出ると

最近は日が長くなって夕方もかなり明るい空が見られます。

梅雨も明けてすっかり夏らしい空になりました。

一日の終わりに美しい空と雲と木々を見ると

また明日も良い仕事が出来るような

頑張れるような気持ちになることができます。

sora21

額縁の本 「Coleccion CANO DE P.E.A」 7月14日

 

今日ご紹介する本はスペインで出版された額縁のカタログです。

マドリッドにある額縁会社が出版したもので

副題に ”絵画史におけるスペインの額縁”とあります。

スペイン語と英語の両方で書かれているので

苦労しつつも辛うじて読むことが出来ますが

私はもっぱら美しい写真を眺めてはため息をついています。

カタログと言っても商品カタログというより やはり額縁の歴史を

メインにおいた本と言えると思います。

この本との出合いはフィレンツェ留学中に

スペインから来ていた同級生に借りたのがきっかけでした。

同じヨーロッパと言えどイタリアとスペインの額縁では

細かな部分も含めれば違いが沢山あります。

特にゴシックスタイルの額縁はスペインに豊富に見られます。

昔からゴシックのデザインに興味があった私は

この本に載っている数々のゴシックスタイルの額縁写真に魅了されました。

フィレンツェで通っていた修復の専門学校の修了制作として

この本に載っていたゴシックスタイルの額縁を摸刻したのも思い出です。

日本帰国後にこのスペインの会社へメールしたところ

すぐに実物の本と振込先の手紙が届きました。

入金より先に本が届いたことに驚きつつ大喜びでした。

以来この本も私の「支え」のひとつになりました。

写真はさまざまな伝統装飾技法の紹介ページです。

spain1

 

アンティークのカード 7月13日

 

コレクションするつもりも無く 気付くと数が集まっていた

アンティークのカードです。

骨董市に行くとたいてい何軒か西洋のアンティークカードを

扱っているお店があり 見逃せません。

こうして並べてみるとどうやら私の好みは

冬の風景や夕暮れの風景が入っているカードのようです。

左上に見えているカードは湖上のボートに乗る男性二人の様子とともに

シューベルトの歌曲集「白鳥の歌」の一曲が描かれており

とても美しく 大切にしている一枚です。

carta

額縁の本 漆山俊次著「額縁の世界」 7月12日

 

今日ご紹介する本は大地堂という老舗額縁店の店主の

漆山俊次氏の著書「額縁の世界」です。

この本のことは色々な場面で素晴らしい内容を見聞きしつつも

実物の本とはなかなか出合うことが出来ませんでした。

一度欲しいと思うともう「どうしても欲しい!」という気持ちになり

探し始めて半年後くらいでしょうか

ネットの古本店で見つけたときは飛びつきました。

以来わたしの本棚の特等席に納まっています。

 

以前ご紹介したクラウス・グリム著「額縁の歴史」同様に

写真を豊富に入れつつ額縁の歴史や製造過程

近現代の額縁の傾向と問題点など大変丁寧に書かれています。

製造過程ではヨーロッパでの方法を説明すると同時に

日本での工程との比較もされており具体的です。

特に明治から昭和にかけての巨匠達の作品とともに

その額縁の写真を見ることが出来ることもポイントです。

また著者と関係が深かった日本人の作家達の好みや

ヨーロッパでの見聞などは読み物としても楽しめます。

出版されてから30年以上経つ本ですがまだまだ現役で

著者の考えなどはっとさせられる内容もあります。

国内の額縁制作の歴史についての本では

この本がまず一番に上げられるのではないでしょうか。 

データ : 「額縁の世界」

      著者 漆山俊次

      株式会社 講談社

      昭和50年9月23日 第1刷 発行

urusiyama

思い出のクッキー 7月11日

 

額縁の四隅に石膏の盛り上げ技法で色々な装飾を施しますが

下の写真の模様を私はクッキーと名付けています。

小さい子供の頃の記憶にあるクッキーの模様を思い出しました。

バターの香りがほんのりとして薄焼きのサクサクした美味しさが

なにかとても幸せな記憶となっています。

cookie2

* 本日「works」ページ内「classical」にこちらの額縁をアップいたしました。

  どうぞご覧下さい。

黄金背景テンペラ画作家 布施久美子さん 7月10日

 

今日は私のお友達のサイトをご紹介しようと思います。

黄金背景テンペラ画の作家である布施久美子さんのサイトです。

http://kumikofuse.ciao.jp/

彼女と出会ったのは何時だったか…もはや記憶が定かではありませんが

かれこれ15年以上前のこと 御徒町にあるU美術研究所の

テンペラ画の授業でご一緒したときです。

穏やかでふわりとした雰囲気でもきちんとした芯がある

そんなお人柄同様に彼女の描く作品も優しさと清清しさが感じられます。

布施さんのサイトの「works」ページ内 no.11 の作品に付いている額縁は

私が作らせていただいたものです。

睡蓮がモチーフの作品なので額縁の装飾にも睡蓮を。

古代エジプトの装飾模様をヒントにしています。

どうぞご覧下さい。

古典技法額縁の作り方 2 7月09日

 

前回の木材に続いて今回は次の工程である

ボローニャ石膏を塗る作業をお話します。

石膏と言えば水を足すと反応して硬化する焼石膏が一般的ですが

古典技法で使うボローニャ石膏は二水石膏または非晶質石膏といい

すでに水と反応して硬化した石膏を砕いて粉にした状態の物です。

つまり水を加えても硬化反応しません。

このボローニャ石膏を固めるためにはニカワ液を加えます。

古典技法に用いるニカワはウサギニカワです。

日本では鹿ニカワをよく見ますがヨーロッパでは兎ニカワ。

話し始めるときりなく続く…のですが

今回はニカワの詳しいことは省略します。

細かい粒状の兎ニカワを1に水を10加えて一晩ふやかしておきます。

これを翌日湯煎で溶かしボローニャ石膏を加え石膏液を作ります。

木地に下塗りとして一層ニカワを塗り乾かした後に

温かい石膏液を筆やハケで手早く額縁木地に塗ります。

 gesso1

おおよそ4~6回程度塗り重ねて更に翌日まで乾かします。

気泡が入ったりムラになったりと慣れるまで少々難しい作業ですが

この石膏塗りが完成度を左右すると言っても過言ではありません。

下の写真はイタリアでの私の師匠 マッシモ氏です。

サンプル用の木片にボローニャ石膏を塗っています。

タバコ片手なのはご愛嬌…

massimo

足音を聞きながら 7月08日

 

イタリアのフィレンツェでの留学から帰国してもう10年近くになりますが

今も当時の記憶は鮮明です。

3年間という長いような短いような濃い時間を過ごした思い出は

現在の東京生活でも音や匂い メディアで見かけたりとふとしたことで蘇ります。

先日もテレビでヨーロッパの町の様子が放送されていました。

観光客を相手に営業している馬車の場面でした。

私が暮らしていたフィレンツェにもこの馬車をはじめ

騎馬警官を毎日のように見かけることが出来たのです。

街中に馬がいる様子は私にとって新鮮で楽しい風景でした。

フィレンツェに限らずヨーロッパの古い町並みは数百年前から

変わることの無いよう景観を保存する努力がされています。

最新流行のブランドショップが並ぶ街角でも

ふと見上げれば中世~ルネサンス時代と変わらない建物が目に入り

当時も聞こえていたであろう人々の賑やかな話し声

そして通りすがりの馬車や騎馬警官の馬の足音が聞こえてきます。

まるでタイムスリップをしたような不思議な感覚でした。

そんな風にちょっと上を見上げながら耳を澄ませて

一人空想に浸りながら散歩をするのはとても楽しい贅沢な時間です。

cavallo

額縁の本 「La cornice italiana」 7月07日

 

以前ご紹介したクラウス・グリムの「額縁の歴史」が和書の「支え」なら

今回の「La cornice italiana」は洋書の「支え」となっている一冊です。

タイトルを訳すと「イタリアの額縁」 とてもボリュームがあります。

イタリアのフィレンツェに留学していた時に購入した本ですが

とても高価な買物なので(当時の3万円程でした)まずは

スポンサーの父にお伺いを立ててから喜び勇んで買った記憶があります。

写真も大きなカラー写真がメインで詳しい解説がぎっしり書かれています。

勿論全てイタリア語ですが イタリアにおける額縁の位置づけや成り立ち

教会や貴族との関係 地方別時代別の傾向 技法の説明と

大変豊富な情報があります。

辞書を片手にじっくり読むのも良し 美しい額縁の写真を眺めるも良し…です。

ちなみに イタリア語で「額縁」は「cornice」コルニーチェ 女性名詞です。

それもあってか私は自分で作る額縁を我が娘のように思っています。

cornice-italiana

古典技法額縁の作り方 1 7月06日

 

まずは木材についてお話します。

KANESEIでは主に杉材を使っています。

杉は古典技法の石膏との相性も良く安定した材です。

また松などのようにヤニが出ることもありません。

杉のほかにはナラやサクラ チークや黒檀など

木肌を生かしたい時に使う木材もあります。

最近はアユースという比較的安価で加工のしやすい材も使います。

 

作る額縁のデザインや目的に合わせて木材を選び

まずは額縁の形に組むことからはじめます。

角を45度にカットした竿状の木材4本を組みます。

今は電動工具があって正確に楽に切ることができますが

ルネサンス時代は全てが手作業で重労働だったことでしょう…。

kiwaku

LADURE`E  ラデュレが好き 7月05日

 

その近くまで行ったら寄らずには帰れない!

という場所がありますがラデュレもそのひとつです。

ショーケースに並ぶ美しいケーキやマカロンを見ているとうっとり…

そしてこちらでマカロンを買った時に入れて下さる箱が!

小箱好きにはたまらないものがあります。

マカロンも美味しくて大好きですがこの箱が目当てだったり。

laduree

新しい額縁と古い額縁と 7月04日

 

私は主にKANESEIの名前で新しい額縁を製作していますが

恩師が主宰する絵画修復工房で額縁修復の仕事もしています。

美術館や画廊 個人コレクターの方などからのご依頼頂き

破損したり経年劣化した額縁をお預かりします。

落下事故などにより破損した額縁は できるだけ破損前の状態に復元し

経年劣化の場合は磨いたり痛んだ金具を交換したり

あるいはガラスが無かった額縁にはガラスを入れられる細工をして

また元の作品に寄り添うことが出来るようにします。

ただ修理して直せばよいだけではありません。

傷を目立たないようにし 劣化の速度を落とせるよう補強し

できることなら修復することによって強度が増すように努力します。

出来たばかりのようにピカピカにする必要はありません。

100年前に作られた額縁なら 美しく100年を経た趣を保ちつつ

補修し補強するのが額縁の修復だと思っています。

とても繊細な作業であり奥深い仕事です。

restauro2

着物こと初め中田堂 7月03日

 

このKANESEIのサイトを作ろうと思い立ったとき

友人達の運営するサイトも巡り参考にさせてもらいました。

それぞれお店や作家活動を紹介した個性のあるサイトです。

ご本人を知っているせいもあるのか サイトの雰囲気は

やはりご本人のイメージに近いように感じます。

そんな数あるサイトの中でも キリリとしつつも柔らかで

「こんなサイトが作れたら素敵!」と思ったのが

「着物こと初め中田堂」でした。

http://www.nakatado.com/blog/blog/

女性二人で運営なさっている着物の着付け教室のサイトです。

中田堂の友人に「どちらに依頼して作ったの?」と伺ったところ

なんとご自分で作られたというではありませんか。

さっそくその場でKANESEIサイトの制作をお願いしたのでした。

着付けは勿論のこと彼女は友禅染色のプロでもあり

仕立にも詳しいという正しく着物のプロフェッショナルです。

文系美術系おまけに理系にも強いなんて…素晴らしい才能!

毎日更新される「日誌」には着物と帯の着比べや

見ているとお腹がすいてくるお料理の写真など

とても充実していますのでぜひぜひご覧下さい。

浴衣着付け講習(たった2時間!)もあるそうです。

今年の夏は粋に浴衣を着こなすのも素敵です。

yukata-530

銀を錆びさせてみたら 7月02日

 

銀箔を使った額縁の仕上げはサビ予防のために

必ずニスやラッカーを塗ってコーティングする必要があります。

でも意図的に錆を出して普段と違う色味を表現するのも

変化が楽しめるのではないでしょうか。

下の写真の額縁2点はどちらも同じサイズ同じデザインです。

左は銀そのものの色の艶消ししあげ

右は錆を出した仕上げにしました。

同じデザインでも銀の色によって雰囲気が変わるものです。

ireland21

*本日「works」ページにこちらの額縁をアップしました。

 どうぞご覧下さい。

古典技法額縁の作り方 序 7月01日

 

古典技法額縁製作は簡単に述べますと

まずベースに木材を使用し希望の大きさの額縁に組みます。

その上にボローニャ石膏をウサギニカワで溶いた石膏液を塗り

乾いた石膏を紙やすりで磨いた後に箔下トノコを塗り

金箔や銀箔を貼り磨き上げて完成という流れです。

(以上はあまりにも簡単すぎる説明かと思いますが・・・)

 

これから何回かに分けて古典技法額縁の制作過程や

材料 技法をご紹介してまいります。

皆さんが展覧会で素敵な額縁を見たときになど

どのような工程でつくられた額縁なのかご理解下されば

展覧会での楽しみをより豊かなものにして頂けると思っています。

200907011