diario
ピカをボロに 2月28日
古色仕上げで承ったご注文。
今回はかなり本格的に古色を付けます。
ボロボロにするのであります。
とは言え、まずは一度ピカピカに
凹み部分にも金を入れておく必要かあります。
▲磨いてとにかくキンピカに。
そうして叩いて傷を付けたら
スチールウールで磨り出して金を取り除く。
せっかくきれいに貼って磨いた金を
取ってしまうなんて勿体ない・・・と
思わなくもありませんけれども。
▲粗目のと細目と使い分けます。
L字下は磨って赤い下地が見えている。
そうしてワックスで仕上げたら
やっぱり古色仕上げって良いなぁ!
古いもの(これは新品だけど)が
好きだなぁ、とつくづく思います。
この瞬間に、キンピカに仕上げた
苦労が報われます。
マイクロ点々 2月24日
最近自分の中でヒットしている技法
極小の点打ちで梨地風にする刻印
名付けて「マイクロ点々」
(もう少しマシな名を考え中)で
ハガキサイズの額縁を作っています。
今までは小箱にばかりしていたマイクロ点々
額縁に装飾したらどうだろう、
あまり大きなサイズの額縁には合うまい、
と考えまして、このサイズに落ち着きました。
ボローニャ石膏地に線で模様を刻んでから
ボーロ、金箔を貼ってメノウ磨き後に
ポーセレン用の極細メノウ棒で点を打ちます。
相変わらず目と手が痛くなるし
根気が必要な作業ですけれど
このマイクロ点々技法、楽しいです。
次はどんなものをこのマイクロ点々で装飾しようか
考えるのもまた楽しい。
ウチのヒヨ 2月21日
我が家の庭の片すみに父が
小鳥のための小さな餌台を作りました。
お仏壇に供えたご飯を下げてきて
水でふやかして入れておきます。
以前はスズメが何羽も来て
とても賑やかだった餌台ですが
最近巷で聞く通り、すっかりスズメの姿は
見かけなくなってしまいました。謎。
いま、この台には一羽のヒヨドリが
縄張りにして、ほぼ住んでいます。
すっかりわたしを「餌を出す生き物」と
認識しているようで、朝窓辺に来ては
室内を覗き込んではご飯を待ちます。
ぴよ、なんてぶりっ子(死語)な声で
首をかしげてはご飯を催促しちゃって。
▲「ごはんはやくちょうだい。」目が真剣。
あまりの可愛さに悶えつつ、わたしが
窓を開けて1メートルに近づいても
逃げる気配も無し。
形ばかり「逃げるポーズ」をとって
銀木犀の木に飛び込んでいます。
餌台のご飯が入れられると張り切って
チャカチャカと食べ始めるのです。
▲「よいてんきだな。」・・・ではなくて。
食事中も警戒は怠らず。
それを毎日眺める幸せ。
野鳥を飼うのは禁止されているけれど
このヒヨドリは・・・ほぼ「ウチのヒヨ」
になっております。
▲自分の可愛さを知っているに違いない。
それにしてもこの子
夜はどこで寝ているのかな。
安全な寝床と仲間がありますように。
ボロの前にはピカ 2月17日
今回作ってる額縁は全面彫刻で
最終的に古色仕上げの予定です。
古色付けにもいろんな方法があって
工房や職人によっても千差万別。
それでも共通しているのは
古色加工する前にきっちり仕上げる、
加工はその延長上にある、です。
金箔の古色仕上げも、凹凸すべてに
きちんと金が貼られていないと
美しい古色仕上げにならないのが
辛いところなのでございます。
凹凸の凸は磨り出して箔が無くなるけれど
金箔は貼りやすい。貼りやすいけど
最終的に無くなる。でも貼らねば。
凹凸の凹は金箔がとても貼りづらい。
でも加工後にも残る。だから貼らねば。
貼ってないと取れない。
貼らないと残らない。
そんな訳でして、今日も今日とて
全面に金箔を貼り貼りしております。
小箱9 2月14日
今日の小箱は前回の「小箱8」で
ご覧いただいた金の点々打ち小箱と
同じサイズの小箱木地を使っています。
なので当然ながら同寸法なのですけれど
ちょっと大きく感じるような。
オフホワイトベースに
スモーキーなピンク・緑・紫、グレー
アクセントに艶消しの金色を入れました。
モダンな幾何学模様に見えますけれど
純和柄なのでございます。
色選びと配色で雰囲気も変わります。
内側はモスグリーンの別珍で。
いかがでしょうか。
外側寸法:78×50×25mm
内側寸法:58×30×15mm(おおよそ)
勝利は目前 2月10日
古典技法制作の何が辛いって
石膏磨きなのであります。
ニカワを塗った木地に
液状のボローニャ石膏を塗り
乾いたところを磨くのです。
紙やすりでひたすらに磨く。
荒いやすりで形を整えて
細かいやすりで磨き痕を消す・・・
テンペラ支持体の平らな板や
シンプルな額縁ならまだしも
彫刻が全面に入った額縁なんてもう
気が遠くなりそうです。
この石膏磨き作業を左右するのが
石膏液の塗り方です。
均一な厚さで凹凸を少なく塗れば
それだけ磨き作業も減るのでございます!
フィレンツェの額縁師匠マッシモ曰く
「結局一番難しいのは石膏塗りだよ」
でした。さもありなん・・・。
海外ではスプレーで吹き付けるような
大きな工房もあるようで
上手にできればこのスプレー方式が
一番効率が良さそうです。
とは言え設備や場所が必要ですから
わたしには縁遠い方法です。
そんな訳で、わたしは石膏塗りに
命を懸けております。大袈裟ですが。
それくらい石膏磨きをしたくない。
筆選びから始まって、石膏とニカワの
割合、濃度、温度、室温
いかなる筆さばきで塗るか etc・・・
▲塗り終わりがいかにツルンとしているか、
表面張力を味方につけるのがカギ。
すべて自分の感覚で「こんな感じ」
なので説明が難しいのですけれど、
ようやく最近になって「実験」が実を結び
今のところの最適な塗り加減
つまり、塗り終わって乾いたときに
凹凸や気泡が少なく磨く手間が減る塗り加減
というものが見えてきました。
平面と角以外は磨く必要が無い、と言うような。
最初は「いかに磨き作業をしないで済ませるか」
という怠け心から始まった探求ですが
今となってみると、ツルンと塗り上げて
紙やすりで磨かない石膏地の方が
箔を貼り磨き仕上がった時に
「品がある柔らかさ」が表現出来るようです。
もちろん、シャープでビシリとした
仕上がりを求める場合は別です。
ボローニャ石膏との闘いに勝利目前です。
ワハハ!しめしめ・・・してやったり。
闘っているのは一方的にわたしなのです。
石膏からは白い目で見られているような。
でももうわたしは闘いの気分そのもの。
最適を探す実験はまだ続きます。
性格が出る 2 2月07日
我ながら思います。
わたしは何にせよ理由が知りたい、
めんどくさくしつこい性格。
幼いころから両親と出かけるとき
「これからどこへ行くのか、それは
なぜなのか」を教えてもらわないと
「ねぇ、どこ行くの、ねぇ、なんで」
と繰り返し尋ねておりました。
うるさい子ども。
サプライズなんてあったものでは無い。
今現在もお茶の稽古などしておりますと
「ここで左手で茶碗を持つ」など
踊りの振り付けのように決められた動きがあります。
それはなぜ・・・なぜ右手じゃだめなの、
と、いちいち気になって仕方がありません。
先生に「それはなぜですか」と訊ねたら
先生は大層驚かれて「なぜはありません。
決められたとおりにしなさい」と仰います。
結局お稽古後に、先生はため息をつきながら
理由を教えてくださったのでした。
左手なのはその方が動きが少なくてスムーズだから。
お茶の動きにはすべて理由があるのです。
だけど、そんなこと気にする必要はない。
まずは正しく美しい所作で美味しいお茶をたてる。
お客様に気持ちよく過ごして頂く。
それをお稽古するのです。分かっちゃいるけれど。
そんなわたしですので、古典技法の額縁制作で
生徒さん方に手順を説明するときには
同時に理由も説明したいと心がけています。
「木地に石膏を塗る前にニカワ液を塗ります。」
と言われて、ただ漫然とペタペタ塗るより
「なぜなら木地の目留めになるからです。
次の石膏液が必要以上に木に吸い込まれない
ようにする為なのですよ。」
の一言があった方が、塗る目的も理解できて
記憶に残るのではないかな、と思っています。
▲目留めのためにニカワ液を塗る。
自分がいま、何のために何をしているか。
やっぱりいつでも知りたいと思います。
「笑顔は大切」は本当 2月03日
先日、某エレベーターホールで俳優の
吉田鋼太郎さんをお見掛けしました。
向こうから颯爽と、ものすごく素敵な人が
やって来た!と思ったら吉田鋼太郎さん。
わたしはその近くで人を待っていたのですが
夢遊病者のようにフラフラと近づいてしまいました。
エレベーターが到着し、これまた颯爽と
吉田さんが乗りこまれて、ふとわたしを見て
「一緒に乗る?」とジェスチャーしました。
そこで我に返ったわたしは「いえいえ、どうぞ!
どうもすみません」とこれまたジェスチャー返し。
そうしたら!
その時の吉田鋼太郎さんの笑顔が!
わたしを見て微笑んだ素敵さったら!!
目と目が合ったのですぞ!
今思い出しても倒れそうです。
もちろんマスクを付けておられましたが
テレビで見るままの眩しいな笑顔なのでした。
エレベーターのドアが閉まり、呆然と
立ちすくんでしまったわたしです。
▲吉田さんのキャメルのコートの裾には
ピンクの花があしらわれていました・・・。
あの笑顔の威力のすさまじさたるや。
あんなに感じの良い笑顔を知らない人から
向けてもらったことって、あったかしら。
もちろん吉田さんのお仕事柄、普通の人の笑顔の
何倍も輝くのは当然かもしれません。
だけどわたしの様な一般人でも、
知らない人と接するときにも自然な笑顔になる
努力は必要なのだなぁ、とつくづく思った次第です。
笑顔は大事、と言われていたけれど
改めて印象に残る笑顔でした。