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やるぞエミリア、でも気分は倒れる3秒前 8月14日

 

怒涛の勢いで(自分比)快進撃を続けております

エミリア額縁の摸刻・・・

と書き出しましたけれど

実際のところは動悸息切れ激しいわたしです。

とにもかくにも完成間近になりました。

・・・まだ完成していませんけれども。

 

▲ボローニャ石膏を塗ります。

 

木地に下ニカワを塗り、薄めシャブシャブの

ボローニャ石膏を細い筆で塗り重ねます。

溝に液溜まりができないように細心の注意を払います。

 

▲地獄の石膏磨き

 

なにせカーブや凹凸が激しいので紙やすりも届きにくい。

ここでモノを言うのが石膏塗の跡です。

石膏液を凹凸にもいかに均一に塗るか!筆跡を残さないか!

その結果によって地獄の石膏磨きの作業時間が左右されます・・・。

そして愛用の三共理化学の空研ぎペーパーはしなやかで大変に宜しいです。

 

▲黄色ボーロ塗り

 

さて無事に磨き終えまして、ここで登場するのが

2月にフィレンツェのZECCHIで買った黄色ボーロです。

いままで使っていたシャルボネの黄色ボーロは

何というか黄色というよりオレンジ褐色で

どうも違う・・・と思っておりました。

このZECCHIの黄色は、ローシェンナ色

まさにトスカーナの土の色です。

 

▲黄色の上に赤ボーロ

 

やはり黄色ボーロより赤ボーロのほうが

金を磨いた後に輝きますし、色味もきれい。

凹に黄色を残し、凸に赤を重ねます。

 

▲いよいよ箔作業開始

 

ゼーゼー・・・息切れが。

 

金箔を20等分に小さく切り、チコチコと貼ります。

側面や穴、奥の方まで、可能な限り箔を貼り

どうにもこうにも届かない部分や影は金泥でごまかし

とにかく金で額縁を包み込んでいきます。

 

▲メノウ棒で箔磨き、目が痛くなる。

 

もはや意識が朦朧としてきました。

・・・いえ、もちろんワタクシ元気ですけれど

気分的には白目をむきそうです。

居間の薄暗がりで、メノウ棒でカタコトと

(木とメノウ石が当たる音がする)磨いておりましたら

家族が見て一言「ウッギャー・・・すごぉ・・・」

 

「素敵だね」の「すごぉ・・・」では無い。

ええ、分かりますよ、ギンギラギンでコッテコテですからね

これは和室には不似合いかもしれません。

でもこの曲線、輝く金の光と影、これもひとつの美ですぜ!

 

こうした時に改めて、日本とイタリアの文化と

感覚の違いを痛感します。

安土桃山時代の人々なら・・・織田信長とか

気に入ってくれたかしらん?と妄想しております。

 

次回は古色を付けて完成した姿をお披露目いたします。

 

 

怖い怖いと言いながら 8月07日

 

前回ご覧いただいた「ルネッサンス風」

ほぼレプリカ額縁の制作過程をご紹介いたします。

とはいえ、これまた以前ご覧いただいた

「ことわざ額縁」と同じ技法で重複しますので

もしご興味がありましたら、ご覧いただけますと嬉しいです。

 

さて、木地は参考にしたオリジナルの額縁と

今回額装する作品とのバランスを考えて

簡単なデザイン画を起こしてからお客様にご相談。

微調整をして最終確認をして頂いて・・・

いつものように千洲額縁さんへ木地をお願いいたしました。

 

▲写真は千洲額縁さんインスタよりお借りしました。

 

千洲額縁の職人さんは、もうわたしの魔法の玉手箱状態です。

図面と希望を伝えると形にして送って下さるのですから!

 

そしていつものように下膠(ウサギ膠1:水10)を塗り

ボローニャ石膏液を塗り重ね、乾きましたら紙やすりで磨きます。

 

▲地獄の磨き(大げさ)を終えたところ。ふぃ~

 

次はこれまたいつも通り

魚膠で溶いた赤色ボーロを塗り重ねまして、純金箔を貼ります。

 

▲側面も金ぴか。これからメノウで磨きます。

 

参考にしましたルネッサンス時代に作られた額縁

もちろん実物を見たことはありません。

お客様から送って頂いた数枚の写真を拡大印刷して凝視して

下描きを「ああでもないこうでもない」と繰り返して数日。

ようやくトレーシングペーパーに転写しまして

お客様にもご確認いただき

 

▲トレペを載せたところ。まだ完成図には程遠い。

 

さて、問題はここからでございます。

オリジナルの額縁、当時の諸々を考えると

恐らく模様は黒ベースの可能性が高いんじゃないかな、と思いつつ

お客様のご希望は「オリジナルは深緑に見える。

作品との相性も良いから深緑で。」とのご注文です。

オリジナルの額縁を見ることは叶わず問い合わせも難しい。

 

問題は、わたしにはどうにもこうにも緑に見えない・・・ということ。

見えない色を再現する難しさよ。

 

色の認識は人それぞれの感覚ですし

深緑で製作、これはもう全く異存ありません。

額縁職人としての微々たるプライドをかけまして

経験を総動員して「古色加工後の完成時に黒寄りの深緑になる」を

作る覚悟を決めたのでございます。

怖い!でもやるしかない。

 

色を作って塗って、乾かしてから

古色用ワックスを塗って確認して

という実験を繰り返しまして、

再度覚悟を決めまして(大げさですね。しつこくてすみません。)

 

▲こんな緑色を卵黄テンペラで塗りました。

 

▲グラッフィート(模様の搔き落とし)を終えたところ。

実際の緑色はもっと明るかったのですが

写真に撮ると暗くなりました。

 

いやはや・・・息切れします。日々恐怖との闘いでした。

何が怖い?そりゃ失敗です。

「こんな色になるはずじゃなかった!」とか。ヒィィ。

 

▲ZECCHI のシェラックニスを塗ってから、いよいよ古色付け。

 

上の写真は古色付け初日

まだまだ金の輝きも緑の色も鮮やかでした。

これから更にワックスや塗料、パウダーを重ねては拭き

重ねては磨いて、完成しました。

 

▲コテッと古色仕上げ

 

それにしても「大変だった怖かった」と書き連ねるほどに

職人として自信がないと自白しているようですね・・・

でもまぁ、わたしの製作の現実はこんな感じです。

 

 

ことわざ額縁を作る つづき 6月12日

 

前回にグラッフィート完了までご覧いただきました

ブリューゲルのことわざ額縁

アンティーク風の加工をしまして完成まで進みます。

 

▲グラッフィート(搔き落とし)が終わったところ。

 

▲マットな黒とキラキラ金で派手です。

 

磨いた純金箔の上に塗った卵黄テンペラ絵の具は

なにせ搔き落とせるくらいですから

固着力はあまり強くありません。

爪で引っかけば取れてしまう。

ですので、テンペラの上にシェラックニスを塗ります。

 

▲ZECCHI で買った(これは最近)シェラックニス

イタリア語で Gommalacca

 

ニスが乾きましたら角や凸を叩いて傷を作り

スチールウールを使って下色の赤色ボーロを磨り出します。

特製の古色用ワックスを塗りまして

さらに「偽物ホコリ」つまり埃風の粉を撒きます。

まるでお化粧ですね。

下地を塗ってリキッドファンデーションを塗ってパウダーで仕上げ。

お化粧と違うのは塗るほどに汚くなっていく・・・。

 

▲ツヤピカだった額縁がコッテリと。

 

粉が落ち着くまでしばし待ちまして、ウエスで拭いて

 

 

最終的には手のひらと指先で磨き上げます。

手の微妙な指紋や弾力が秘訣なのかもしれませんが

布拭きでは出せないツヤと落ち着きが出るのです。

愛情込めて我が娘(額縁ですけれど)を

撫でくりまわして抱きしめます。

ああ、なんて可愛いの、いい子だねぇ、と褒めちぎります。

ひとりでブツブツ、ニヤニヤ・・・

ここは誰にもお見せできない姿です。

 

 

イタリアの教会や美術館で見る本当に古い、

ルネッサンス時代に作られたグラッフィート装飾の

額縁を見るたびに感じていたのは

テンペラ絵の具に厚みがあって

下の金との段差があることで表現される美しさと力強さでした。

絵の具も粒子が粗くて、ざらつきの上に

しっとりとしたツヤがある、という印象なのです。

 

それを今回どうにか再現したかったのですが

イメージに近い仕上がりになったようです。

勝因はやはり本場イタリア ZECCHI の顔料と

シェラックニスかな、と思っています。

 

次回は完成して版画作品と合わせた姿をお披露目いたします。

引っ張りますが、もう少しお付き合いくださいませ。

 

 

ことわざ額縁を作る 6月08日

 

ずいぶんと昔から文字を装飾に使うことが好きです。

額縁や小箱にラテン語の文章を入れたりしております。

 

今回は版画作品用の額縁(ご注文仕事ではなく

自分のため)を作りました。

この額縁の制作過程をご紹介します。

ご興味を持っていただけたらと思います・・・。

 

▲完成した額縁、名前は「ことわざ額縁」にしました。

 

ヨーロッパの1500年代には聖書の一節などを装飾に入れた額縁が作られ

聖母子像などが額装されていました。

そんなイメージで製作開始・・・ですが

 

わたしの額縁に聖書の一節は入れられません。

そして文字はあくまでも装飾として入れたいのです。

あまり意味付けしないように・・・つまり英語などではなく

普通の日本の方が見ても「一言も意味が分からない文章」でありたい。

そんな訳でして、ピーテル・ブリューゲルの作品

「ネーデルランドのことわざ」と言う作品から

古いネーデルランド(オランダ)のことわざを

ふたつ選んで入れることにしました。

 

▲P・ブリューゲル「ネーデルランドの諺」 1559年 写真はwikipedia より

 

やれ、前置きが長い・・・

いつものように千洲額縁さんに木地をお願いして

ボローニャ石膏を塗り磨き文字装飾を下描きをしたら

線彫り(線刻)します。

 

▲ことわざ文字をカーボン紙で写す

 

そして赤色ボーロに純金箔を水押し、メノウ棒で磨きます。

箔を貼らない部分にも下色として赤色ボーロを塗っておきます。

 

▲磨き終わり、さていよいよグラッフィート装飾準備です。

 

今回の額縁は、グラッフィートという技法で装飾します。

純金箔を貼り磨いた上にテンペラ絵の具を塗り

乾いた絵具をニードル(竹串等)で搔き落として

下の金を出す、というものです。

 

▲全面に黒いテンペラを塗りました。しばし乾かす。

 

今回はアイボリーブラックを卵黄メディウムで溶きました。

金箔のはじき止めに少しだけ牛の胆汁も入れます。

アイボリーブラックの顔料は、留学当時にゼッキ

(ZZECCHI フィレンツェにある古典技法の画材店)で

量り売りにて購入した大切な大切な顔料を使いました。

ずっと仕舞い込んでいましたが、使わないのももったいないですからね。

 

クシャナ殿下風に「今使わずに、いつ使うのだ!」と

ひとりで叫びまして(分かって下さる方はいらっしゃるはず)大奮発。

この額縁一枚に大匙3くらいの顔料を消費しました。

 

さて、翌日にいよいよグラッフィート、つまり搔き落とし作業開始です。

 

▲うっすらと線彫りした跡が見えるので、この線を追う。

 

一般的には線彫りはせずテンペラの上に下描きを転写して掻くのですが

わたしは線彫りをしたほうがほんのりとした立体感が出るので好んでいます。

 

コリコリと搔き落とし、失敗したら絵の具を塗って補彩して、さて。

 

 

グラッフィート作業完了でございます。

黒も金もまだ生々しいですが、これからアンティーク風

それも1500年代風にボロボロ加工をいたします。

 

長くなりましたので続きます!

 

 

古典技法額縁の見本を作る 仕上げワニスと完成 1月05日

 

ぼんやりしておりましたら

年を越してしまいましたこのシリーズ

見本額縁制作、本日最終回でございます。

 

前回ですべての装飾入れを終え、

しばらく寝かせて乾かした額縁に

仕上げのワニスを塗ります。

 

今回は2種類を使いました。

下写真左はホルベインのテンペラワニス

右はゼッキのシェラックニス(艶消し)

どちらもアルコールベースのものです。

 

▲それぞれ特徴が違う

 

今回の額縁、右長手のグラッフィートと

ミッショーネは特に傷がつきやすいので

装飾したらあまり動かさず触らず

緩やかに乾燥させて速やかにニスで保護!

左下の銀箔も、これまた錆びて変色するので

あまり悠長にしておられません。

 

 

ホルベインのテンペラワニスは

・下短手左の銀箔

・右長手上半分のグラッフィート

 

ゼッキのシェラックニスは

・左上角の「磨く前の金箔見本」

・右長手下半分のミッショーネ

・側面黒テンペラ塗装部分

 

以上に塗り分けました。

その他の金箔部分には基本的に

ニス等を塗る必要はありません。

なにせ純金ですから、変色もせず

メノウ磨きした古典技法水押し箔は

とても丈夫なのです。

 

 

わー、完成しましたぞー。

 

グラッフィートとミッショーネ、

同じ黒テンペラと純金箔ですが

技法の違いで表現が随分変わります。

 

 

実物は来年3月にお披露目いたします。

また詳しくご案内させていただきます。

 

 

古典技法額縁の見本を作る ミッショーネ 11月28日

 

さて、最後の技法紹介です。

Atelier LAPIS の見本額縁制作も

大詰め、ミッショーネをします。

 

ミッショーネ missione

イタリア語の辞書を引きますと

「使者・布教」とありますが

この技法がなぜ missione と

呼ばれるのか・・・知りません。

いつか調べたいと思います。

 

古典技法での missione ミッショーネ

金銀等の箔を糊で貼り付ける技法です。

今回は水性の箔用糊で模様を描き

半乾きの時に純金箔を載せて押さえ、

乾いたところで余分な箔を払い落として

模様を出します。

 

前回 塗った黒いテンペラ絵具の上に

模様をカーボン紙で転写します。

 

 

上写真の右に見えている白い液体がミッショーネ液。

ルネッサンス当時は乾性油を使いましたが

今回は水性、薄い水溶きボンドのような

糊を使います。乾くと透明になります。

 

▲純金箔を糊の上にふんわりと乗せる。

 

必死で描いて忘れてしまい糊で描いた写真が無くて

残念なのですが、白い糊が半乾きで透明になった頃

タイミングを見計らって箔を載せます。

早すぎると箔に皺が寄ったり模様がつぶれたり、

遅すぎると乾いてしまい箔が貼り付きません。

 

コットンで優しく押さえた後、丸一日乾かして

柔らかい筆で金箔を払うと

下から模様が出てきます。

この箔払いがとても楽しいのです。

 

ミッショーネ装飾の完成です。

 

綺麗な紙を敷いておいて、払った金箔は

大切に瓶に貯めておきます。

沢山貯まったら金泥制作などに使いましょう。

なかなか貯まらないので先は長い!

 

 

古典技法額縁の作り方見本を作る グラッフィート 11月03日

 

しばらく間が空きましたが

市が尾の古典技法アトリエの企画で

制作中の「見本額縁」つづきです。

前回は金箔を貼りましたので

今日は右辺の装飾をします。

 

graffito グラッフィートと言いまして、

磨き上げた金箔の上に卵黄テンペラを塗り、

細い棒で絵具を搔き落として

下の金箔を出す、という技法です。

 

▲額縁右辺(右長手)にテンペラを塗ります。

 

▲弾き止めオックスゴール、卵黄メディウム

アイボリーブラックの顔料と水を混ぜて

テンペラ絵具を作ります。

 

磨き上げた金箔は絵具をはじきますので

オックスゴールは欠かせません。

オックスゴール、牛の胆汁でございます・・・

界面活性剤的なもの。

 

ちなみにグラッフィートは右長手の上半分。

下半分はまた違う装飾技法を入れますが

ひとまず一緒に黒に塗ります。

 

さてさて、テンペラ絵具が乾きましたら

いよいよ「グラッフィート」です。

金箔を傷つけないように竹串や木の細い棒が

使われるのが一般的なのですけれど

わたしは鉄筆(ニードル)を使うのが

好みなのです。これは職人それぞれで。

 

▲カリコリ削ります。

イタリア語 graffio とは「引っ掻くこと」

そこから graffito 「掻き絵」を指しています。

 

ちょっと間違えてもテンペラ絵具で補彩可能。

搔き落とした絵具を柔らかい筆で掃除して

 

 

ひとまず完成です。

 

 

今回は金箔地に予め模様の線を入れましたが

入れない場合の方が多いと思います。

線があると書き落としが楽。

線が無ければ絵具の上に模様を転写します。

その方が繊細な表現ができるように感じます。

 

 

古典技法額縁の作り方見本を作る 8月15日

 

Atelier LAPIS の展覧会に向けて制作中の

古典技法額縁の作り方見本」額縁の続き

久しぶりになりましたがご覧ください。

 

前回、金箔の下地「ボーロ」を塗り終わり

いよいよ金箔の「水押し」です。

古典技法ではボローニャ石膏の上に

ボーロを塗り、その上に水をひき

(フライパンに油をひくように)

金箔を乗せて乾かすと貼り付く、のです。

 

水をひきますので、高い部分から開始。

今回の額縁では内側の一段高くなった

細い部分にまず箔を置き、そして平ら面へ。

 

▲この刷毛で金箔を持ち上げて移動します。

 

▲一通り箔を置き終わったら、小さな穴や

欠けた部分を繕います。

 

下の黒ボーロ部分には銀箔を貼る予定。

右下は違う装飾技法で模様を入れますので

マスキングしてあります。

 

 

うう~む。

ここで説明しても良く分かりませんよね。

百聞は一見にしかず。そして

百見は一経験にしかず、でございます。

古典技法にご興味のある方はぜひ

Atelier LAPIS へお越しください。

見学ご希望のご連絡お待ちしております。

 

 

古典技法額縁の作り方見本を作る ボーロ塗り、そして愛は必要なのか問題 7月18日

 

引き続きAtelier LAPIS の展覧会に向けて

制作中の「古典技法額縁の作り方見本」額縁

その制作風景をご覧ください。

 

1回目「木地に下ニカワ、ボローニャ石膏塗り磨き

2回目「模様下描き、パスティリア

本日3回目は箔準備の「ボーロ塗り」です。

 

古典技法(いわゆるヨーロッパの中世以来

伝統的な絵画・額縁制作技法)では

箔を貼る下地としてボーロを塗ります。

このボーロ下地が無いと「水押し」

と呼ばれる技法での箔貼りができませんので

大変重要、かつ特徴的な工程です。

 

ボーロは主に赤・黒・黄色3色。

見本ですので3色のご紹介をしてから

必要部分に赤と黒を塗り分けます。

 

▲まず黒。深くてかっこいい黒です。

・・・敷いた新聞「女性には、やはり愛が必要なのか?」が気になる。

もちろん必要です。愛が必要なのは全生物当然でございましょう。

 

▲つづいて黄色。

「若くキレイでありたい女性は、愛が必要であるはずだ。」

・・・年齢相応でいたい女性も老人も、男性でも子供でも愛は必要。

 

▲そして赤です。

下に敷いた新聞記事はもう見ないことに。

 

今回は赤ボーロに金箔、

黒ボーロには銀箔を貼る予定です。

これぞ「ザ・古典技法」でございます。

 

ボーロとはいわば粘土。

これをニカワ液で溶いて塗ります。

ボーロが乾いた後、水を塗って箔を置くと

溶けだしたニカワが糊になり箔を接着し

さらにメノウ棒(貴石のメノウ)で

磨くことでより圧着する、と言う原理のようです。

 

▲ボーロ作業終わりました。

 

このボーロの色は顔料とも違う深みがあって

とても不思議に魅力的なのです。

箔を貼らなくても美しい、と思っています。

 

「愛をください wowwow 愛をください zoo・・・」

この歌詞が頭から離れなくなりました!

 

古典技法額縁の作り方見本を作る つづき 6月23日

 

先日ご覧いただいた見本額縁制作

その続きでございます。

 

装飾模様をカーボン紙で転写して

下部にパスティリア(石膏盛り上げ)で

模様をレリーフ状に入れることにしました。

 

湯煎で温めたボローニャ石膏液を

面相筆で垂らし描きします。

こんもり、ふっくらと。

石膏が乾きますとレリーフになります。

 

▲ある程度のスピードと度胸も必要。

「手早く丁寧に!」

 

このパスティリア技法は

石膏液の温度・濃度が大変重要です。

わたしは得意な方・・・ですけれど

いまだに中々バッチリ満足な

仕上がりになることは無く、

試行錯誤を続けている奥深い装飾法です。

 

 

ピカをボロに 2月28日

 

古色仕上げで承ったご注文。

今回はかなり本格的に古色を付けます。

ボロボロにするのであります。

 

とは言え、まずは一度ピカピカに

凹み部分にも金を入れておく必要かあります。

 

▲磨いてとにかくキンピカに。

 

そうして叩いて傷を付けたら

スチールウールで磨り出して金を取り除く。

せっかくきれいに貼って磨いた金を

取ってしまうなんて勿体ない・・・と

思わなくもありませんけれども。

 

▲粗目のと細目と使い分けます。

L字下は磨って赤い下地が見えている。

 

 

そうしてワックスで仕上げたら

やっぱり古色仕上げって良いなぁ!

古いもの(これは新品だけど)が

好きだなぁ、とつくづく思います。

この瞬間に、キンピカに仕上げた

苦労が報われます。

 

 

 

ボロの前にはピカ 2月17日

 

今回作ってる額縁は全面彫刻で

最終的に古色仕上げの予定です。

 

古色付けにもいろんな方法があって

工房や職人によっても千差万別。

それでも共通しているのは

古色加工する前にきっちり仕上げる、

加工はその延長上にある、です。

 

 

金箔の古色仕上げも、凹凸すべてに

きちんと金が貼られていないと

美しい古色仕上げにならないのが

辛いところなのでございます。

凹凸の凸は磨り出して箔が無くなるけれど

金箔は貼りやすい。貼りやすいけど

最終的に無くなる。でも貼らねば。

凹凸の凹は金箔がとても貼りづらい。

でも加工後にも残る。だから貼らねば。

 

貼ってないと取れない。

貼らないと残らない。

 

 

そんな訳でして、今日も今日とて

全面に金箔を貼り貼りしております。

 

 

額縁の作り方 36 エポキシパテでオーナメント作り 12月23日

 

以前にも型取りについてお話しましたが

「額縁の作り方 23 型取り」2019年

今回は作った型からオーナメント制作に

エポキシパテを使ったお話です。

 

わたしは「プラリペア型取りくん」で

抜き型を作ったら、焼石膏で型抜きしますが

▲武藤商事「プラリペア 型取りくん」

 

より折れやすいデザインや強度が必要な場合は

エポキシパテを使うこともあります。

焼石膏は安価で手軽なのですが

硬化・乾燥まで時間がかかります。

一方エポキシパテは費用が石膏より高い。

ただ硬化時間が短く衝撃に強いのが魅力です。

どちらも一長一短、ケースバイケースで

使い分けています。

 

エポキシパテ、いま手元に3種類あります。

▲左上の緑色がタミヤのエポキシ造形パテ・速硬化タイプ

中央茶色がセメダインのエポキシパテ木部用

右端赤がセメダインのエポキシパテ金属用

 

写真左下にある抜いたオーナメント群の

大きなツバメなど茶色がセメダイン木部用

グレーのものがセメダイン金属用

黄色いものがタミヤです。

 

特徴はそれぞれ違います。

タミヤは硬化後に一番硬くなりほぼプラスチック。

速硬化とあるだけに作業時間が短いかも。

練り合わせるときもニチニチした手応えがあります。

セメダイン木部用は金属用にくらべて

粒子がモコモコしていてるような感じです。

硬化には練り終わってから4~5分はある印象。

金属用は粒子が細かくて、練り終わりから

3分くらいで硬化開始、作業はできなくなります。

でも硬化開始から完全硬化まで

タミヤより時間があります。

ですので、半硬化のフレキシブルな時に

型からそっと外すと、バリなどハサミで

切り取ることができます。

そして完全硬化後にペーパーをかけるのが

一番楽なのも金属用。

(木部用はねっちり感があって、ペーパーの

目詰まりが比較的多いです。タミヤは硬くて大変。)

 

結論として、この3種類の中から型抜きに使うなら

セメダインのエポキシパテ金属用がベター

という感想です。

タミヤはプラスチック模型のメーカーですから

プラモデル制作には艶もあってピッタリでしょうし、

セメダイン木部用は硬化後に彫刻刀で彫るには

最適な硬さだと思います(金属用は硬すぎ)し、

塗装もしやすく古典技法にも使えます。

わたしの木工作業には欠かせないメンバーです。

 

そんな訳でして、エポパテ選びのご参考までに。

エポキシパテひとつとっても

こうして選ぶことができるのは大変便利です。

 

 

額縁の作り方 35 布貼りマットをつくる 7月15日

 

額縁の作り方の番外編と言いましょうか、

今日は額縁本体ではなくて

マットの作り方のおはなしです。

 

紙の作品—デッサンやパステル、水彩、

写真など―を額縁に納める場合には

額縁のガラスと接しないように

作品を固定する必要があります。

マット(イタリアではなぜか仏語

パスパルトゥPassepartout と呼ぶ)で

作品を挟んで固定し、額縁に入れます。

 

最近は額縁店や画材店で無酸の紙ボードで

すぐに作ってもらうことができますが

今回はラワンの合板を使って自分で作ります。

と言うのも、変形で余白もほぼ無いデッサン

だからなのです。

 

今回はラワンの4mm合板を使います。

本来なら合板はマットに相応しくない

(接着剤などの影響が考えられる)かも

しれませんが、この作品はわたし自身の

持ち物であること、作品に影響等変化が

見られそうな場合にはすぐに対応できること、

経過観察も兼ねて・・・と言うことで

今回はラワン合板を使います。

 

▲まずは作品に合わせて窓の形をトレペに取ります。

 今回はイタリアの古い鉛筆デッサンを額装します。

 

▲そしてラワン合板に転写して形にくり抜きます。

 

▲線をととのえて、エッジを丸く削ります。

 

今回は薄い麻布を板に貼り込みます。

下の板の色が透けて見えますので

板にはアクリル絵の具で下色を塗りました。

▲薄いつや消しグレーに彩色

 

▲麻布にしっかりアイロンをかけてから

 貼り込み、のり代を残して布を切ります。

 

さて、経過観察するとはいえ

合板の影響は減らしたいのです。

作品がじかに接する部分には

アルミで裏打ちされた無酸紙の

シーリングテープでカバーしましょう。

▲裏側をととのえます。使ったのは

 スプレー糊とスティック糊。

 左の箱はシーリングテープです。

 

▲テープ貼り込み完了

 

▲作品をのせてみました。

 接するのはテープの部分のみ。

 

この後は、作品を中性紙ボードに

ヒンジで固定して合板でサンドイッチ。

写真撮影を忘れてしまいました・・・。

ヒンジ固定については下記のリンク

(株)絵画保存研究所さんの

「マットとヒンジ」をご覧ください!

 

 

長々したうえに尻切れトンボで恐縮ですが

これにてマットは完成でございます。

変形の窓が必要、好みの布を使いたい

などなどの場合にはご参考に。

ちなみに合板ではなく中性紙ボードを

くり抜いて布を貼っても制作可能です。

 

 

額縁の作り方 34 金の繕いには 5月31日

 

久しぶりに「額縁の作り方」の

本当に額縁です。

小箱ではなく・・・。

 

さて、古典技法による額縁の

最大の特徴は箔の水押しと言えるでしょう。

日本の伝統的な方法

漆やニカワを糊にして貼り付けるのに対して

ヨーロッパの古典技法では

石膏下地にボーロと呼ばれる

箔の下地材を塗り、その上に

水を塗って箔を押し付ける。

そしてメノウ石で磨き圧着させる

(ものすごく簡単な説明ですが。)

と言うような手順です。

 

凹凸のある彫刻などに

古典技法で箔を貼るのは

どうしても箔に亀裂ができて

破れた部分の「つくろい作業」が

必要になります。避けて通れません。

 

ある程度の繕いは、小さく切った箔を

細い筆を使って穴埋めするのですが、

細かく沢山で「どうにもこうにも」な場合は

金泥を使います。

 

わたしは京都の堀金箔紛さんで買った

「純金泥鉄鉢入」を使っています。

筆もこの金泥専用の面相筆を準備します。

この金泥を使う方法は、わたしはずっと以前に

鎌倉にある「井上箔山堂」の井上さんより

教えていただきました。

なにより素晴らしいのは

この金泥はボーロの上に塗って乾けば

メノウ磨きができるということ。

ただ、平らな面や目立つ場所では

やはり見分けがついてしまうので要注意。

凹凸の凹の影、点のように小さい部分

などには大変おススメです。

 

 

額縁の作り方 33 錫箔を貼る 比べると 3月15日

 

先日お話しました錫箔ですが

とても使いやすい箔でした。

 

銀箔ともホワイトゴールドとも

ちがう深い色です。

比較してみました。

上の写真は左が今回作った錫箔箱

右はホワイトゴールド箔の箱です。

ホワイトゴールドとは、金に

パラジウムや銀などを混ぜた合金だそうです。

 

ホワイトゴールドは反射が白く

繊細で華やかな輝きな印象、

錫は輝きは少ないけれど

暗い色で重厚感がある。

錫はよりひんやりしています。

同じようで全く違う箔の色です。

 

海外の額縁工房では

銀箔ではなくホワイトゴールド箔を

使うことが多いようです。

錆びないからでしょうかね、やはり。

ちなみにイタリアの額縁史の先生に

伝統的に錫箔をに使うことはないのか

聞いてみましたが

「無い。金箔か銀箔のみ。」

とのお答でした。

錫は古くからある金属ですのに

なぜ使われなかったのでしょうね。

 

いろいろ比較して楽しみました。

ほかの箔も試してみたい!

 

額縁の作り方 32 錫箔を貼る 3月08日

 

なにせ小箱ばかり作っておりますので

作品例が小箱ではありますけれど

古典技法ですので額縁にも応用できます。

ぜひご参考になさっていただければと

思いつつ、ご紹介します。

 

興味本位で京都で手に入れて以来

死蔵されていた錫(すず)箔を

小箱に使ってみようと思いました。

 

ヨーロッパの古典技法では

ボローニャ石膏地にボーロを塗り

箔押しの下地作りをします。

これはすべての箔に共通の下地ですが

純金箔を貼る場合は水のみ、

わたしはその他の箔を貼る場合には

薄いニカワ水をボーロに塗って箔を押します。

今回の錫箔には魚ニカワを使いました。

魚ニカワは、1リットルの水に対して

4シートの板ニカワを溶きます。

 

錫箔の印象。

とにかく丈夫です!かなり厚い。

シャカシャカ、キュルキュルしています。

石膏盛り上げ(パスティリア)の

凹凸でも破けることがありません。

(繊細な金箔では大抵破れてしまう・・・)

素手で持っても大丈夫ですが、

後々に指紋がサビて浮き上がりそうなので

やはり竹箸を使いました。

ただ、丈夫で厚いのはよいけれど

箔ナイフでは上手に切れませんので、

アルコールで拭いたハサミで切りました。

▲京都の堀金さんで購入しました。

金箔より一回り大きく、銀箔と同サイズ。

 

メノウ磨きは金箔よりだいぶ

早いタイミングで磨き始めたほうが良さそう。

とは言え丈夫な箔ですので

ハラハラ気分はずっと少なく済みます。

 

これは良い!

錫箔はかなり良いですよ。

色味もモダンで力強い感じ。

次回は完成した錫箔小箱を

ご紹介しようと思います。

 

額縁の作り方 31 銀を腐食させる 2月08日

 

8年前(もう8年!)にもすこしだけ

ご紹介しましたが、銀箔を腐食させて

趣きの変化を出す方法です。

タイトルは「額縁の作り方」ですけれど

今回のサンプルは小箱です。

ボローニャ石膏に赤ボーロ、パスティリア。

純銀箔の水押し。額縁と同じ手法でつくっています。

古典技法の銀箔の貼り方は金箔とほぼ

同様ではありますけれど、それはさておき

今回はメノウ磨きを終えた銀箔から作業開始。

▲金箔は水で貼りますが、銀箔は薄いニカワ水で

貼り付けてからメノウで磨きます。

銀箔は磨き終えても銀らしい白っぽい輝き。

 

銀を腐食させる(サビさせる)にはいろんな薬剤が

ありますが、わたしは硫黄と硫化カリウムが主の

溶液を使っています。

▲硫黄が入っているので黄色くて臭い・・・。

 

この溶液を筆でまんべんなく塗りまして、しばし放置。

▲塗った少し後の状態。

徐々に変化がはじまって部分的に艶消しになっています。

 

▲2時間後。良い感じにサビました。

寒い時期は暖房の近くに置いた方が早いみたい。

 

いわゆる「真っ黒」にしたければ、さらに溶液を

塗り重ねるか濃い溶液を準備しますが

今回はこんな感じで終わらせようと思います。

▲ラッカーで艶を出し保護しました。完成。

いぶし銀の渋い雰囲気、いかがでしょうか。

 

艶ピカの少年が、苦み走った紳士に

なりましたとさ・・・。

 

 

額縁の作り方 30 留め切れをつくる 10月08日

 

先日から作りはじめた額縁は、以前にも

ご紹介した額縁本「CorniciXV-XVIIIsecolo」にある

16世紀に作られた古い額縁の摸刻、レプリカです。

 

古い額縁には必ずひび割れ、とくに四隅の角の

接合部分(留め)に亀裂が入っているのです。

これを「留め切れ」と呼びます。

「留め切れ」はモダンデザインの新しい額縁には

とても困るひび割れで、和紙や麻布を貼り込んで

ひび割れができないように努力します。

ですが、今回の16世紀の額縁摸刻だったり

古色を付けるようなアンティーク風の額縁に

留め切れがないとなんだかかえって不自然と言いますか。

かといって刃物等で作れるものではありません。

 

意図的に留め切れを作る方法をご紹介します。

つまりは「こうしなければ留め切れは出来づらい」

との解説にもなりますので、ご覧いただければと思います。

 

さて、いつものように木地にウサギの下ニカワを塗ります。

そしてこれもいつものように作ったボローニャ石膏液

(10:1のニカワ液にボローニャ石膏を振り入れて、湯煎で温めたもの)

に10%程度の水を足します。もう少し多いかも・・・?

とにかくかなりシャバシャバの石膏液にしてたものを

木地にタプタプと塗ります。あまり薄く塗らない方が良いようです。

▲これは1層目

▲石膏液の濃度が薄いので木のエッジが目立っています。

 

この石膏液を4層ぬり重ね、翌日に乾いたとき

留め切れができています。しめしめ、でございます。

▲こんな風に石膏がひび割れます。

 

この後は普段通りに紙やすりで磨き、ボーロを塗り

金箔を貼りますけれど、作業を重ねる(水分を与える)と

さらに留め切れは広がります。

 

最後の作業、古色付け時のワックスや偽ホコリの

パウダーを留め切れに擦りこみますと・・・

自然な「ぼろぼろ感」が出るのです。

 

石膏液の濃度は本当に重要です。

季節や気温で細かく変える・・・という程

神経質になる必要はありませんけれども、

ニカワ液、石膏液を煮詰めないこと、

塗りやすいからと言って安易に水を足さないこと。

ニカワ、石膏、水の濃度、温度、そして木地の乾燥度。

これらすべてを許容範囲内に納めれば

石膏塗りは上手く行くはず、なのです。

 

今回ご紹介しました留め切れの作り方も

わたしの数々の失敗経験から、ついうっかりと

「出来るようになってしまった」ようなものなのです!

 

 

額縁の作り方 29 ほこり大敵 7月16日

 

たいへんに久しぶりの「額縁の作り方」です。

今回はボーロ(箔下とのこ)を塗る前の準備について。

 

ボーロをつかうには、木地に石膏を塗り磨いてある

必要がありまして、この石膏地がないと

ボーロを塗っても箔が付きませんし、

またメノウ磨きも出来ないのです。

たとえば、ボローニャ石膏ではなくアクリルジェッソで

代用しようと思っても、上手くいかないのが不思議なところ。

石膏の硬度、密度、ニカワの有無など関係あるのでしょう。

 

それで、ですね。問題は石膏地は紙やすりで

きれいに磨いておく必要があるのですが

ボーロ以降の作業にはホコリや塵が大敵ということです。

磨き上げた石膏地を、さらにさらに掃除して

石膏粉や紙やすりの屑を極力払っておかないと

箔の仕上がり・・・つまり完成度に影響します。

「たかが石膏の粉でしょ?」と侮るなかれ。

 

磨き終えた石膏地は柔らかい筆で粉を払い、その後は

とにかく乾いたティッシュで拭きまくります。

わたしの経験ですと、ティッシュがいちばん柔らかくて

粉を取り除いてくれるのです。

ウエスやタオルよりきれいになるように思います。

その後、わたしは作業部屋にエアコンプレッサーが

ありますのでさらに風で吹き飛ばすのですが、

お持ちでない場合、カメラなどの精密機器を手入れする

シュコシュコ(名前が分かりません!)で吹き飛ばす!

100円ショップなどでも売っています。

▲これがいわゆるシュコシュコ

 

ちなみに掃除機で吸い取ることも可能ですがその場合、

掃除機の掃除がとても面倒になりますのでお気を付けください。

 

ここで肝心なのは石膏地だけではなくて

裏側や内側もきれいにしておくこと!

木目の中はティッシュでは取れませんから、

筆とシュコシュコを駆使してください。

木目にしつこく入り込んだ石膏紛があとからこっそり

落ちてきて邪魔をしますので、侮れません。

▲ボーロの中にホコリやゴミがあると

ボーロが粉っぽくなって箔の付きが悪くなる。

メノウ磨きのときにメノウが引っかかって箔が傷つく。

金箔を磨いた時にホコリがそのまま凹凸になって現れる。

恐ろしい結果が待っておりますぞ。

 

それからもうひとつ。

ボーロを塗ったら素手では触らないこと。

これはフィレンツェの修復学校で繰り返し言われました。

手の油分がボーロに付くと

箔置きのときの水をはじいてしまいますし

手汗などの水分でホコリが付いてしまうことも。

側面か裏面を持つようにする必要があります。

 

いちいち面倒だな、こんなのある程度で大丈夫でしょ!

・・・とのお気持ち、とてもよく分かります。

だけどひとつの工程を適当にすると、その後がすべて

「ザ・適当」になるのです。

これはわたし自身の教訓でもあるのでございます!

手を抜くべからず・・・。がんばります。

 

 

五寸釘を握りしめて 3月05日

 

真夜中に、恨みの藁人形に打ち付けるのは

五寸釘・・・

 

ですけれど、わたしの五寸釘は打たずに使います。

それももっぱら日がある時間でございます。

線刻するニードルとして重宝しています。


 

この五寸釘、つまり長さ150mm、太さ5mmの大きな釘ですが、

さすがにそのままでは細くて作業がし辛い。

革テープを巻き付けて握りやすくしています。

▲これぞ本当の五寸釘。

 

▲ちょっと太くてシャープな線が彫れます。

 

この重くて太い五寸釘、これを深夜に生木に打つなんて

相当な気力体力が必要なことでしょう。

なんともはや。

 

この五寸釘、大学生の頃に道で拾いました。

誰が落としたんだろう。

藁人形と一緒に持っていた人でしょうかね。

あまり考えないようにしています。

 

 

額縁の作り方 28 石膏塗りの筆選び 2月24日

 

古典技法額縁の制作では

ボローニャ石膏塗りは大切な工程

かつ一番難しい工程と言えるのではないでしょうか。

「手早く丁寧に!」をスローガンに

適度な濃度で適温にした石膏液を塗るには

筆選びが大切です。

 

わたしがいつも使っているのは

水性用の平筆、12~15ミリ幅くらいのものです。

メーカーによって微妙に号数が違いますが

この写真の筆は世界堂オリジナル筆14号。

やわらかい毛がたっぷりしていて抜け毛も少ないく

このシリーズは愛用しております。

もちろん塗る対象――テンペラ用の板なのか

彫刻の入った額縁木地なのか――によって

選ぶ筆のサイズと形状は変わりますが

やわらかい毛の筆、というのはいつも同じです。

乾いた筆をいきなり石膏液につっこまず、

まずはお湯で(湯煎した鍋の湯で)ゆすいで

ホコリを落とし、空気を抜きましょう。

 

ボローニャ石膏液を扱う指南書がさまざまありますが、

著者によって選ぶ道具はちがいます。

ある本によるとブタ毛の堅い丸筆や刷毛で

筆跡を残してガシガシと塗るとありました。

でもわたしは、可能な限り筆跡を残さず

石膏液の表面張力を利用して滑らかに塗るのが好きです。

滑らかな表面なら、次の辛い作業「石膏磨き」で

削る必要が少なく(つまり時短)、そして

気泡が入りづらいと感じているからです。

 


翌日の朝、かわいた石膏地に気泡はありませんでした。

石膏塗り成功でございます。バンザーイ。

 

 

額縁の作り方 27 ミッショーネで箔置き 11月27日

 

前回ミッチャクロンで下地を整えて

アクリル絵の具の赤色ボーロ色(赤茶)を塗った

ドイツの祭壇型額縁に純金箔を貼ります。

▲赤茶を塗って乾いたところ。金箔作業の準備ができました。

 

この額縁は、もともと金色ではありましたが

洋箔(純金箔の代用品)が使われており、さらに

部分的に塗装で金色に塗られ、緑青色の古色が付けられて、

何度か修理された形跡もありました。

今回は欠損部分を再成形して形の復元からはじまり、

純金箔を全面に貼り直してから改めて古色を付けて完成。

そんな計画です。

 

今回のような額縁にはミッショーネ、つまり

接着剤で箔を貼り付ける方法しかありません。

日本では「ニス貼り」(ニスを接着剤にして箔を貼る)

とも言うようです。

検討した結果、わたしは使い慣れた糊で安全に進めることにして

フィレンツェの画材店「ZECCHI」(ゼッキ)が販売している

「missione all’acqua」を使いました。

白い水性の接着剤で、乾くと透明になります。

酢酸ビニール系(木工用ボンド)と近い雰囲気ですが

もっとさらりとした感触です。

 


▲左上に見える白いボトルが接着剤です。

 

この糊を筆で塗って、透明になってしばらくしたら

箔を置き、やさしく押さえます。

糊の乾き具合が難しくて、生乾きでも乾きすぎでもダメ。

触ってみて「乾く寸前」くらいがベストなのです。

 


さぁ、全面に貼れました。

目も眩むコガネイロでございます。

ミッショーネは金箔をメノウ棒で磨くことはご法度。

剥がれてしまいますからね。

ミッショーネの糊が乾いたら次は古色付けです。

 

 

額縁の作り方 26 ミッチャクロン 11月11日

 

夏に「型取り方法」でご覧いただいた

ドイツ製祭壇型額縁のコリント様式柱の土台。

無事に取り付けまして、金箔の貼り直しをいたします。

 

この額縁はそんなに古いものではありませんので

木材と石膏のみではなく、部分的にプラスチックの装飾や

金属製ライナーも取り付けられていて複雑です。

 

ひたすら掃除をした後はアルコールで脱脂して

「ミッチャクロン」(プライマー)を吹き付けました。


▲庭の一角でスプレーします。

部分的に色が違うのは欠損部分を再成形したところ。

 

プライマーがあれば、複数の材を使った土台も

均一になって上に塗装することができます。

 

ミッチャクロン(わかりやすい商品名)はとても便利。

まさしく下地と上塗装を密着させてくれます。

ホームセンターやネット通販で容易に手に入ります。

ミッチャクロンがあれば、大体のものの塗装ができる

といっても過言ではないでしょう・・・たぶん。

ミッチャクロン塗布前にはかならず

最初にしっかり脱脂しておくことと、

乾くまで時間がかかるけど待つ。

わたしはこのふたつに気を付けています。

 

今回は純金箔をミッショーネ(箔用糊を塗って貼る)で

全面に施す計画です。

まずはミッチャクロンが乾いたところで

赤色ボーロ風のアクリル絵の具を全面に塗って下地作り。

 

色が整うときれい。

さて、この後はいよいよ箔仕事ですぞ。

いつもと違う方法での箔仕事、そわそわします。

 

 

小さなかわいこちゃん5&額縁の作り方 11月04日

 

小さな祭壇型額縁、点の装飾が完成しました。

古色を付けますけれど、ここで裏の処理をば。

 

この木地は合板を土台にして組み上げてあります。

合板?ベニヤ??チープ・・・と思われるでしょうか。

でも最近の合板はとても良く美しくできております。

反ったり割れたりが少なく丈夫ですし。

 

さて、裏面と裏板に色を塗ります。

金を使った額縁には、わたしはターナーが出している

「生壁色」というアクリルグアッシュを使います。

イエローオーカーより赤みが少なく、くすんでいて

金との相性が良いように思っています。

絵が接する部分には何も塗りません。

この色以外にも、クリーム色も違和感なくなじみます。

茶色ステイン着色の額縁には裏にもステインを塗ります。

額縁と似た色、もしくはインテリアと似た色が無難です。

 

この絵具が乾いたら、いよいよ仕上げ。

古色付けでございます。

 

 

額縁の作り方 25 差し箱の向き 10月16日

 

本日は番外といいますか余談といいますか。

額縁を保存するための箱「差し箱」の向きについて。

 

額縁を黄袋(黄色い布の袋)に入れてから

差し込み式の箱に収納する場合、

画面はどちらに向けるのか。

Atelier LAPIS の生徒さんにも質問されましたし

疑問に思われるお客さまも多い様子です。


▲こちら差し箱と黄袋。

一般的に段ボール製ですが、布を貼ったタトウ箱もあります。

 

昔、いろいろな方に質問しましたが諸説あって

結論として向きに決まりは無かったのです。

その中でわたしがしっくりきた答えは

『紐具のある面に画面をむけて収納』でした。

 

随分前に、あるギャラリーオーナーにお聞きした時

「じゃあ差し箱を壁に立てかけて置いてごらん」

と言われて、わたしは紐具面を表に置きました。

「ね、自然に置くとその向きでしょう、だから

絵の表もおなじだよ。」とのお話でした。


▲箱の紐金具がついている面と額縁の表を合わせる。

そして紐をくるくる巻き付けて閉じる。

わたしはこの向きで入れていますが

反対向きに入れるほうが安全という方もいらして、

どちらが正しいかはそれぞれ。

▲裏側には何もありません。

 

蓋を閉じる前に黄袋のくちの処理もします。

黄袋に入れて箱に入れて、蓋をしますけれど

黄袋のくちをきちんと畳んだほうが

蓋はきちんと閉じます。

そして次に開けたときも美しい。

たまに黄袋がグチャッとつっ込まれた額縁に会いますが

ものがなしい気分になります。

いちいち細かいですか?

でもこうした小さなことって、案外と人の目に

留まっているものですから

気を付けるに越したことはありません。

▲黄袋を畳まないと額縁も箱内で不安定になる。

 

ちなみに!どちら向きに箱に入れたとしても!

差し箱に入れた作品を何枚も立てかけるとき。

たとえば棚に収納したり、搬入搬出のときなど。

画面はかならず中合わせにしてください。

A、B、C、Dと箱に入った作品4枚があったなら

A表とB表、B背中とC背中、そしてC表とD表。

「前へならえ」(すべて同じ向き)ではありません。

これ、昔々に「前へならえ」で並べてしまい

こっぴどく怒られた思い出があります・・・。

 

 

額縁の作り方 24 線刻で模様を入れる 10月09日

 

このKANESEIブログで一番ご覧いただいているのが

「額縁の作り方」なのは、やはりそうなのかな

という気持ちでおります。

額縁にご興味を持ってくださる方が

おひとりでも増えれば!と願いつつ。

今日の「額縁の作り方」は線刻です。

 

細い線で入っている模様は線刻で入れています。

 

ボローニャ石膏を塗り磨いたら模様を下描き。

そして線で模様を彫るように入れます。

わたしが使っているのは、エッチングのニードルと

ドライバーセットに入っている千枚通しです。

細い線はニードル、太い線は千枚通しと使い分けて。

▲釘を加工した道具を作っても可。先端が円錐形であることが大事。

穴あけのキリのような角錐形ではなくて円錐形がベストです。

 

今回は模写作品を入れる額縁にとりつける

ライナーにタイトルと名前を線刻しました。

 

ヴィクトリア時代やラファエル前派のころ

額縁に文字を装飾することが流行しました。

当時の額縁にある美しくそろって凹んでいる文字は

おそらく刻印(金属の活字(文字型)を打つ)

で入れてあるのではないかなぁと思っています。

これはわたしの想像です。まだ調べていません。

▲ひとまず細く入れてから、すこしずつ太くしたり修正したり。

 

さて今回は小さな文字を線刻で入れねばなりません。

活字は持っておりませんので・・・。

文字を装飾に入れるのは昔から大好きですが

じつは文字の線刻ははじめてでして。

ちょっと練習したりしたのですけれど、

結局のところ定規を使ったりするよりも

息をつめて丁寧にフリーハンドで刻むのが

比較的きれいにできることがわかりました。

とはいえ、文字線刻に関しては改善の余地大いにあり。

 

ニードルの線がきれいに出なくなったら

紙やすりでニードル先端を磨いて整えます。

この技法は線の美しさが命です。

 

 

小さなかわいこちゃん3 やっぱりちまちま 9月13日

 

小さな祭壇型額縁をつくっています。

木地を彫って、ボローニャ石膏を塗り磨き、

ようやく金箔作業です。

 

以前に「祭壇型額縁をつくる」でご紹介した額縁は

これよりもうんと大きな額縁でしたけれども

大きくても小さくても、作業手順は同じでございます。

 

今回の小さな祭壇型額縁もまた、黄色ボーロを3層塗って

赤色ボーロを2層塗りました。

今回は少々厚めのボーロです。

ボーロの層が厚いと金がしっとりと仕上がり、

薄いボーロだとさっぱりシャープな雰囲気に。

デザインやお好みで試してみてください。

 

黄色と赤のボーロを塗る場合には

凹に赤を塗らないように注意します。


▲やはりボーロの色は独特で美しいのです。

 

金箔は、大きく切った箔片をばーんと置いてから

凹をこまかく繕うか、最初から小さな箔片を置くか。

わたしは額縁が大きかろうが小さかろうが

彫刻の凹凸には、結局小さく切ってちまちまと

箔を置くほうが上手くきれいに仕上がるようです。

これは作業する人それぞれ好みや得意があるでしょう。

磨り出しの仕上がりにも影響がありますから大切です。

 

さて、箔を置いたらその日のうちにメノウで磨きます。

▲め、目が!目が・・・! 反射光が眩しく刺さります。

 

なんだかお仏壇かお神輿かといった風情ですが

これからまだまだ装飾作業が続きます。

イタリアのルネッサンス風に仕上がる予定。

乞うご期待であります!

 

 

額縁の作り方 23 型取り 7月24日

 

本日は修復用の型取りday

「プラリペア型取りくん」の登場です。

この型取り方法で、修復に限らず新しい額縁につける

オーナメントを複数つくることもできます。

▲ひとつ43g、だいたい1300円くらいで販売されています。

 

さて、今日は先日作りましたパーツを型取りします。

▲エポキシパテでつくった原型パーツ

 

ドイツの祭壇型額縁のコリント様式柱

土台復元のパーツを4つつくるため、そして

額縁の欠損した装飾を再現するための型取りです。

 

このシリコン粘土は100円ショップ等で売られている

「おゆまる」と似ていますけれど

「型取りくん」は10倍くらいの価格です。

でもこちら「型取りくん」は値段相応といいますか

より細密にとれますし冷えて固まった後も

「おゆまる」より柔軟性があり、

型からの取り外しも安全なように思います。

わたしは場合によって使い分けております。

 

65℃でやわらかくなるシリコン粘土ですので

お湯につけたりドライヤーの温風などで温めます。

わたしは「ちょい鍋」で湯を沸かして浸して

▲右下の団子状は以前に使った型取りくん。

あたためて繰り返し使います。紙の付着物もあたためると取れます。

 

消しゴムのような四角いかたちに整えてから

原型パーツにおしあてて整えます。

気泡や水が入らないように気を付けて。

 

あたたかいうちは透明ですが、冷えると白くなります。

白く冷えれば取り外せますが、わたしは

以前の失敗を踏まえて翌日まで待つことにしています。

 

さて、取れた凹型を使ってパーツ再現。

柱土台には焼石膏、装飾の復元にはエポキシパテや

ボローニャ石膏を使ってつくります。

 

▲左下はエポキシパテ原型、黄色3つは焼石膏で作りました。

 

▲なくなってしまった柱の土台ですが・・・

 

▲むむむ。さらに微調整をくりかえします。

 

焼石膏でつくったパーツは木工用ボンドでは

うまく付かない場合がありますので要注意。

わたしはマルチタイプの接着剤を使っています。

ちなみに、可逆性を求められる修復では

マルチタイプの接着剤は使えません。

 

 

額縁の作り方 22 裏も横も 7月12日

 

たいへんに久しぶりになりました

「額縁の作り方」ですが、今日は裏と横のお話。

このカテゴリー「額縁の作り方」は、

額縁に興味を持って下さった方、

額縁ってなにでできているの?

額縁をつくってみようかな?と

思われた方にむけて書いています。

 

額縁はおおくの場合、壁にかけて鑑賞しますので

裏と側面が目に触れることは少ないのです。

でも、特に側面は意識して見られることはなくとも

ふとした時に視界に入り、額縁と作品の印象に

案外と影響しているものです。

それくらい、側面は実は大切。

裏側は・・・そうですね、これはもう

意識と言うか好みと言うか、ですけれども

美しいに越したことはない。

そして様々な額縁を見てきて思うのは

「意識して作られている額縁は大切に扱われる」

ということでしょうか。

 

前置きが長くなってしまいましたが、とにかく

「裏面側面も美しく作りましょう!」でございます。

 

薄い額縁に厚さのある作品を額装する時、

額縁裏に高さを出すために足す部分を「ドロ足」と呼びます。

ドロって何のこと?わたしも知らないのですが。

額縁を横~裏から見て、薄い額縁とドロ足の段差が高いと

少々不安定な印象をうけます。

薄い板に箱枠が取り付けられているような感じ。

かと言ってドロ足を額縁側面ちかくまで幅広にすると

どっちゃりして重苦しい印象になってしまう。

そんな時には三角形の材を付けましょう。

下の写真は Atelier LAPIS のTさん制作中を撮影させて頂きました。

 

▲三角形の材の向きに気を付けて切ったらボンドで貼りつけ。

テープで補助の仮留めをします。

 

▲はみ出した部分は彫刻刀などで荒削りして

 

▲ヤスリで仕上げます。カンナがかけられればなお良し。

 

三角形の材はホームセンターなどで売られています。

材の高さがドロ足より低くてもOK

側面ですからこれで大丈夫です。

サイズに合わせて切って、ボンドで貼ります。

はみ出した部分はおおまかに削り取ってから

隙間があればパテなどできれいに整えて、

ヤスリで仕上げれば完成。

 

この三角材加工は、いわばお化粧みたいなものです。

(補強にもなりますけれども、不可欠ではない。)

壁にかけたときに出来る影の浅さ

手に持った時の安定感

裏から見た時の美しさ

それらを考えた時、意味はあると思います。

 

こんなちょっとした手間を重ねることで

完成度も変わってくるのではないでしょうか。

 

 

合わなければ合わせよう 5月22日

 

日本とイタリア、伝統を大切にするのは同じでも

金箔の規格サイズが違います。

とても小さなことだけど、わたしには大問題。

わたしが箔置きに使う道具はイタリア規格ですが

なにせ日本の金箔はイタリアの金箔より

2cm近くも大きいのですから。

 

イタリアの金箔1枚の幅に合わせた箔刷毛は

(箔を移動させる刷毛。日本の箔挟みの代わり)

日本の金箔1枚には小さいし、半分には大きい。

なので、日本の金箔半分サイズに合わせて

切っちまいます。

▲柔らかく弾力のある毛が厚紙の台紙に挟まれている。

リスの一種の動物の毛、とのことですが。

 

切り口を額縁模様のテープで保護して完成です。

おまけで繕い用の小さいサイズの刷毛も出来て

便利便利、一石二鳥でございますよ。

 

道具は使う対象に合わせて作られる。

使う対象が変われば道具も変わる。

合わなければ合わせちゃいましょう。

 

 

額縁の作り方 21 気の強い娘から妖艶なマダムに変身 7月11日

 

しばらく時間が空きましたが

いよいよ仕上げです。

ピカピカの金と塗りたての黒。

これも悪くは無いでしょうけれど

わたしはアンティークな雰囲気が好きなので

今回もいつものように古色仕上げにします。

手順は、①打ち出し②磨り出し③汚し付け

で完成とします。

 

まず、木槌で打って傷を付けます。

角や凸を打ちますが、強弱をつけて

打ち跡が並ばないようランダムに打ちます。

石膏が割れて白くなっても木地が少々見えても

それはそれで良しとします。

掛け替えや移動のときに

落としたりぶつけた感じをイメージ。

 

つづいて磨り出しをします。

スチールウールで少しずつ様子を見ながら

凸部分を狙って箔の上も絵具の上も磨ります。

箔下のボーロの赤や黒の下色の赤を

ほんのりと見せます。

これまた昔々に歴代のメイドさんが

何年も長い間、季節の変わり目の拭き掃除で

徐々に下地が見えてきた・・・そんな感じ。

下の写真、金の下にうっすら赤が見えています。

 

さて、最後に汚しを付けましょう。

わたしはフィレンツェの師匠マッシモ氏に

教わったレシピでワックスを調合しています。

このレシピはここでお知らせできませんが

様々な茶色の塗料を工房それぞれで作っています。

日本では手に入りやすいブライワックス

という商品を使う方もいらっしゃるようです。

 

ワックスを筆やウエスで付け、乾き始めたころに

灰色のパウダーをはたきます。「にせものホコリ」です。

これもわたしは調合して作っていますが、

最近は「ホコリ」として販売しているお店も

あるそうですので、お試しください。

ホコリをはたいた表面を手のひらで擦ったり

ウエスで拭きこんで、さぁ完成です。

 

額縁のデザインや時代、額装する作品、

飾るお部屋や家具の雰囲気、

それらを考慮し、お好みで調整しましょう。

 

下の写真は古色を付ける前と付けた後。

金の反射が落ち着いて、黒に艶が出ました。

いかがでしょうか。


パーティー好きで熱気みなぎる気の強い娘から

酸いも甘いも噛み分けた妖艶なマダムに変身・・・

そんなイメージです。

 

完成した様子はこちらでもご覧ください。

 

 

額縁の作り方 20 色を塗る 6月08日

 

ボローニャ石膏地に部分的に金箔を置いて

さらに色を塗る場合、

どんな色材を使いましょうか。

フィレンツェの師匠マッシモ氏は

水彩絵の具を使っています。

わたしは水彩、卵黄テンペラを使う場合もありますが

今回は アクリルグアッシユにします。

完成色は黒の予定ですが、まず下色から。

ベネチアンレッドとローアンバーの混色、

つまりは赤色ボーロの様な色です。

入り組んでいるので細い丸筆で塗りました。

箔に絵の具が付いてしまっても

その日のうちなら取り除けます。

 

赤茶色が乾いたら黒を重ねます。

輝く金箔とつや消しの黒、なんとも派手になりました。

この写真では分かりづらいですが、

黒の下に赤茶色があることで深みと奥行きが増します。

また、そこはかとなく暖かみもかんじられます。

白い石膏地に直接黒を塗る場合とは

やはり歴然と違いが出ます。

 

ひとまず今日はここまで。

次は古色をつけて、いよいよ完成です。

 

 

額縁の作り方 19 ジョットの弟子になった気分で 5月25日

 

こうして「額縁の作り方」なんて言って

おこがましくガサガサ書いておりますけれど

興味を持ってくださっている方は

いらっしゃるのでしょうか。

・・・めげずにつづけます。

何せ diario 「日記」ですからね!

開き直り気味です。

 

さて、凹凸に金箔を置いて繕いもして

磨き終えました。

はみ出した金箔はコットンや柔らかい筆で

払い取りましたが、取りきれませんでした。

次は色を塗る作業がつづきます。

下の写真、白い部分です。

 

ここでまた例の疑問が再燃してきます。

ボーロや箔を色で塗りつぶしても良いか。

ですが今回は「良し」とします。

先日の講演で福永先生の調査によると、

ジョットの黄金背景テンペラ画では

金箔は大胆に貼り、はみ出した部分、

聖母子の顔など大切な部分であっても

テンペラ絵の具で塗りつぶしている。

チマチマと削り取ったりしていない。

それでも500年以上絵具層は保たれている!

(もちろん保存修復されたうえで。)

 

わたしの基本姿勢は、やはり今まで通りに

必要な部分にだけボーロを塗るけれど、

箔がはみ出したら乾拭きで取り除く程度にして

少々残ってしまった箔は塗りつぶしでOK

そんなところでしょうか。

 

結局ボーロ塗り分けの手間は省けないけれど、

この「箔を塗りつぶすか問題」は

わたしの長年の疑問でしたので

気持ちがすっきりしました。

 

そんな訳で、わたしもジョットを見習って

今回は塗りつぶし作戦に出るつもりです。

次回、まずは下色を塗ります。

 

 

額縁の作り方 18 彫刻木地に金箔を置く 5月14日

 

今回の木地は、金と黒で装飾します。

前回17で迷いながらもボーロを塗り分けました。

今日は彫刻木地に箔を水押ししましょう。

 

凹凸に箔を置くって、面倒です。

順番としては、高いところ凸から

低いところ凹に箔を置いていきます。

つまり水が流れる順番です。

この額縁は外側寸法が16センチ程度です。

金箔はおおよそ2cm角くらい、小さめにカットしました。

 

凹凸の箔水押しのコツとしては、

水を塗る場所を見極めるのが大切。

凹の谷底まで箔を入れるためには

凸に水が付いていると、そこで箔が

ひっかかって奥まで入りません。

Vの字の中に入れるなら、Vの片面だけに

水を塗って箔を差し込む必要があります。

片面ずつ箔を置いてもよいし、

上手になれば片面に水を塗って、大きな箔を入れて

横から水を垂らしこんで反対側も箔を付ける、

なんてこともします。

 

むむう、文章で説明するのも難しい。

「何が何やらよく分からん」説明ですね。

百聞は一見にしかず、そして

百見は一経験にしかず、と言えましょう・・・。

箔の技術についてご興味のある方は

古典技法額縁制作の教室 Atelier LAPIS

どうぞお越しください。

 

 

額縁の作り方 17 塗るべき塗らないべきか、それが問題だ。 5月07日

 

石膏を磨き終えた彫刻木地に

ボーロという赤褐色の箔の下地剤を塗ります。

今回は金箔と黒色の組み合わせに

することに決めました。

箔を置く部分にだけボーロを塗ります。

 

いつも考えるのですけれど、

こうして箔と色と組み合わせる場合、

ボーロも塗り分けるべきか、それとも

色を塗る部分もすべてボーロを塗ってしまうか。

塗り分けるより、全面塗ったほうが

ずっと楽で時短ですから。

きっと、全面ボーロ塗りして、

必要な部分にだけ箔を置いて、

はみ出した箔もボーロも色で塗りつぶしてしまえば

それはそれで大丈夫なのだとは思うのです。

特に今回のように黒色の予定の場合など。

 

だけど、ううーむ・・・。

後の工程や仕上がりを考えて、やはり。

結局いつも、ボーロは必要なところにだけ

塗るようにしています。

だけど、ううーむ・・・。

全面塗っちゃっても大丈夫な気がしないでもない。

悩むなら実験すれば良いのですけれど!

 

 

額縁の作り方 16 紙やすり選びの重要性 4月27日

 

彫刻をほどこした額縁木地に

石膏を塗って、さて。

丁寧に塗ってきれいに仕上がっても、

やはり磨かねばなりません。

 

細かい凹凸や入り組んだ形は

磨き辛いですね。

凹凸やカーブのある石膏地を磨くには

紙やすりの「コシとやわらかさ」が重要です。

バリバリと硬くて厚いと凸カーブに沿いません。

やわらかすぎてコシの無い紙やすりでも

凹の奥が磨けません。

ハリがあるけれどしなやかで指に沿い、

研磨剤が落ちづらく、目詰まりもしづらい

そんな紙やすりが理想です。

 

石膏の粉で指が乾きアカギレになるので

わたしは指サックを使っています。

紙やすりも滑らず磨けます。

 

つらい石膏磨き作業をいかに効率よく

美しく完成させるかは、ヤスリに

かかっていると言っても過言ではない。

・・・と思っています。

自分に合う道具と材料選び、重要です。

 

 

額縁の作り方 15 彫刻木地に石膏を塗る 4月13日

 

先日ご覧いただいた彫刻木地

ボローニャ石膏を塗りました。


今回のように彫刻で凹凸がある場合

平面やちょっとした曲面に塗るときとは

すこし勝手が違います。

いつものように塗ると凹部分に石膏液が溜り

彫刻を美しく表現するのがなかなか難しい。

ではどのようにするか?

今回ご紹介する塗り方も、わたし個人の

経験からのお話ですので、参考程度にお聞きください。

 

少々薄い石膏液を作るところから始めます。

いつものニカワ液(水10:兎膠1)に

石膏をふり入れて石膏液を作りますが

いつもの石膏液よりも6~8%程度石膏を減らします。

そして出来上がった石膏液を60℃程度

「けっこう熱いな」と思うくらいまで

湯煎で温めます。

 

ちなみに兎膠は70℃以上になると

煮えて接着力が無くなってしまいますから

ご注意ください。

 

そして温まった石膏液に、筆にひとすくいの

ぬるま湯を足して下からゆっくり混ぜましょう。

これを下ニカワを塗った木地に、丸筆を使って

手早く丁寧に塗っていきます。

凹みに液溜りができないように。

塗り残しがないように。

凹も凸も、できるだけ厚さが同じになるように。

いつもより薄い層を3~4回塗り重ねます。

KANESEI石膏塗りのスローガン

注意深く丁寧に、でも手早く!!

これに尽きます。

 

石膏を上手に塗ることができれば

その分、つらい石膏磨きの労力も減ります。

がんばりましょう!

 

 

トッポジージョの穴 3月23日

 

金箔を水押しで貼り終えたら小さな穴や破れを繕います。

わたしは「つくろい」と言いますが

つまり小さな箔片で穴うめをします。

箔盤に数ミリ角の箔片をたくさん切って準備し、

左手には水用の筆、右手には箔を運ぶ筆を持つと

両手使いで「穴に水を置き箔を乗せる」 という

一連の流れがスムーズに進みます。

イタリア留学時代、額縁師匠マッシモ氏にある朝

“Allora,fai ai topi.”と言われました。

「ネズミをしなさい」?

しばし考えて「金箔の繕いをしなさい」と気づきました。

Topo とはイタリア語でネズミの意味です。

トッポジージョはネズミのジージョなのです。

日本で言う虫食い穴のことをイタリアでは

小ネズミ達がかじった穴と呼ぶのでしょうね。

トッポジージョがクネクネしながら

金箔額縁をかじっている絵を思い浮かべたら

ひとりニヤニヤしてしまいました。

 

 

額縁の作り方 番外 避けて通れぬ刃物研ぎ 3月19日

 

週末に、まとめて刃物研ぎ。

今日は彫刻刀を12本研ぎました。

 

atelier LAPIS の生徒さんの中にも

最近は彫刻刀をご自分で揃える方が

増えてきました。

自分の彫刻刀を持つからには

手入れも自分でしたいもの。

でも「研いでも余計に切れなくなる」

なんてお話もちらほら聞きます。

切れない刃物は怪我につながりますから

これはよろしくない。

 

そうですね、彫刻刀ふくめ刃物を

砥石で研ぐには練習が必要です。

研いでも切れない理由は、

刃物を砥石に当てる角度が合っていない

また前後させるときに角度がぶれてしまうこと。

恐々やって、必要な力が伝わっていないかもしれません。

砥石も粗いものから極細かいものまであるので

粗、中、細と3種類はあると良いでしょう。

刃こぼれしていないなら中と細があれば大丈夫。

 

彫刻刀を持ったらわきを締めて、ゆっくりと。

すこし研いだら刃先を良く見て

どの部分が砥石に当たっていたか確認します。

なるべく一定のスピードと力加減で

少しずつあてる場所をずらしていきます。

(これはわたしのやり方ですけれど。)

 

・・・と言うは易し。

でも練習すればきっと出来るようになります。

最初は上手くいかなくても、

砥石に当たる刃物をよく見て観察して

すこしずつ動きを改善させましょう。

自分の道具を上手に手入れできると

ちょっとした達成感も湧いて、

制作ももっとスムーズにはかどり、

そして楽しくなりますよ。

 

 

キッチリしないのが大切 2月09日

 

ちいさな額縁を作っています。

フラ・アンジェリコの天使を描いた

テンペラ模写を入れる額縁です。


今回は全面に金箔を貼り、

刻印で模様を入れることにしました。

デザインは15世紀にイタリア・トスカーナで

作られた額縁を参考にしています。

フラ・アンジェリコと近い時代の雰囲気に。

 

刻印をきっちり打つのではなくて

なんとなく、ランダムに打つように心がけると

おおらかな優しい雰囲気になります。

 

きっちりしないこと。

これが必要なときもあります。

 

 

額縁の作り方 番外& Atelier LAPISの様子から 2017年12月 12月15日

 

今日はMAさんの古典技法箔道具作りをご紹介します。

古典技法の箔作業で使う道具は独特で

一般的な画材店や国内の箔屋さんでは購入できません。

でも自分で作ることができるものもあります。

MAさんは箔盤作りに挑戦です。

(箔盤あるいは箔床、箔台。クッション状で

箔のまな板のようなものとお考えください。)

 

必要な材料、A4サイズ程度9㎜厚のシナ合板、ガンタッカー

脱脂綿、太鼓鋲、革、テープ (革か布どちらでも)を揃えます。

革は牛か羊、厚すぎず薄すぎず、色はお好みで。

 

さて、まず脱脂綿を3枚分切ります。

2枚は板のサイズ、1枚は1センチ四方小さくした脱脂綿を切り

板サイズの2枚の間にひと回り小さい1枚を挟みます。

以前、サイズの違う脱脂綿をピラミッド状に3~4枚

重ねると習いましたが、試した結果

あまり段差が無い方が使いやすいように感じます。

 

つぎに革のスエード側を表にして

脱脂綿と板を重ねたものを包みます。

裏からガンタッカーで打ち付けましょう。

革をしっかりと引張ってきっちりと。

この革の張りが甘いと箔を上手に切ることができません。

キャンバス張機やペンチで引張っても良いでしょう。


箔ナイフを差し込むベルトも付けましょう。

今回は革の端材を利用しました。

 

側面周囲にテープを巻いて太鼓鋲で留めます。

これは装飾でもありますが、側面は傷みやすいので

ガードの役目もあります。

そして紙やすりをかけてスエードの毛を整えます。

毛足をある程度短くして、表面を滑らかにします。


仕上げにベビーパウダーを磨り込んで完成です。

 

自分で作った道具は愛着がわいて、箔作業も楽しくなりますよ。

製作のコツは革をしっかり引張ってタッカーを打つこと

そしてタッカーは隙間を開けず細かく打つこと、です。

どうぞお試しください。

 

 

額縁の作り方 14 古典技法額縁ができるまで早送り 11月09日

 

古典技法の額縁を作りましょう。

夏にご紹介しました venezia-2 の作業写真でご覧ください。

 

サイズ、デザインを決めて、仕上がりイメージが出来上がったら

木地を組んで、下ニカワとボローニャ石膏を塗って丸1日乾かします。

下はボローニャ石膏をちょうど塗り終わったところ。

乾いたら紙ヤスリでみがきます。

#180、#240、#360、#400を使って美しい表面を作ります。

角の凹みは難しいので慎重にゆっくりいきましょう。

 

模様をカーボン紙で写して

線刻や石膏盛り上げ(パスティリア)の装飾を入れ

魚ニカワで溶いた赤色ボーロを塗ったら箔置き開始!

木地の形によりますが、今回の外流れの木地は右上から

そして内側から箔を置き始めます。

午前中に箔を置いたら夕方前からみがきます。

メノウ棒でピカピカに輝かせましょう。

線刻の中、レリーフの縁も忘れずに。

マスキングした場合は特にテープの縁をきちんと磨きます。

磨り出しをして赤色ボーロを覗かせたら

つや消しにして

ワックスとパウダーで古色をつけて深みを出し

アンティークな雰囲気にしたら完成です。

 

途中、抜けた写真もあってかなり早送りですし

同じ金箔を使った額縁でも仕上げの方法や順番が

違うこともありますけれども・・・

だいたいこんな手順で作っています。

楽しいですよ。

 

 

額縁の作り方 13 「見る」が大切 10月23日

 

先日ご覧頂いた額縁 s-2 を制作するときに

紙やすりを使って余分な金箔を取り除く作業をしました。

木地にはボーロは塗っておらず、いつものように

水押しで純金箔を貼りましたが

どうしても余分な金箔が白木地に付着してしまいます。


周囲の金に傷を付けないようによく見ながら、慎重に丁寧に。

あらゆる角度から「よく見ながら」紙やすりをかけます。

さぁ、きれいになりました。

 

古典技法額縁の制作で、なかなか難しいのは

石膏地などを紙やすりで磨く作業でしょう。

Atelier LAPISの生徒さん方もこの作業は苦労しておられます。

 

立体で凹凸のある木地や装飾の形を紙やすりで整えるとき

一番多い失敗が磨き過ぎ、つまり削り過ぎ。

石膏地が無くなって木地が出てしまったり、えぐれてしまったり

という失敗の原因は・・・ずばり「見えていないから」です。

今、自分が磨いているピンポイントが大きな紙やすりに隠れて

見えていないから、つい頑張って磨き(削り)過ぎているのです。

または磨く石膏地を見ずに、無意識に紙やすりを見ている、とか。

自分の作業が見えていないって、意外だとお思いでしょうけれど

実はとても多いのですよ。

 

解決方法その1

細かい部分や凹凸を磨くとき、また額縁の角や端先を磨くとき

紙やすりは指の中に納まるくらい小さくカット&たたみます。

指先から紙やすりがほんのすこし出ている程度に持ちます。


そうすると紙やすりで隠れてしまう部分が最小限になって

どの程度まで磨けたか見ながら作業することができます。

「指先=紙やすり」で感触を確かめながら進みます。

 

解決方法その2

磨く部分が広くても狭くても、細かくても平らでも、

なんとなく漫然と作業せずに、よーーーく見ましょう。

今、やすりがどこに当たっているか、どこを削っているか

意識して観察するのです。

見辛かったら角度を変えて、あるいは覗き込んで、

こまめに確認することが大切です。

 

「見る」を意識し、確認しながら作業できれば

紙やすり磨きは決して怖くありません。

恐れずにいきましょう!

 

 

額縁の作り方 12 木地に直接盛り上げ装飾をつくる 10月02日

 

わたしは、最初に教わった日本人の先生が

石膏盛り上げと呼んでおられたので

いまだにそう呼んでいますけれど、 多くの場合

特に海外ではイタリア語の Pastiglia パスティーリアと呼ぶのが一般的です。

そのパスティーリア石膏盛り上げ装飾は

石膏地にのせることが多いのですが

木地に直接のせることも出来ます。

何故かあまり見かけたことがありませんけれど。

 

木地全面にボローニャ石膏地を作る場合は

まず木地に吸込み止めの下ニカワを塗りますが

部分的に石膏盛上げ装飾を作る時は 特に下ニカワは塗りません。

下ニカワが無いからといって脆いとか 亀裂やシワが入る事は

今までの経験ではありませんでした。

(とはいえ、ご心配な方は万全を期して 下ニカワを塗ることをお勧めします。)

盛り上げ装飾には紙やすりはかけません。

やわらかな、ふっくらした形が失われてしまいますから。

はみ出した縁を削り取るだけにします。

紙やすりが必要無いように、手早く盛ります。

コツは石膏液の表面張力を利用すること。

 

ボーロは木地に付かないように気をつけて 石膏のみに塗ります。

箔はいつものように置いていきます。

余分な水が木地に吸い込まれますので

乾くのがいつもより早いことを念頭に

乾燥状態をまめにチェックして、メノウで磨きましょう。

木地に付いた箔は、磨き後にコットンで

乾拭きしますとおおよそ取り除けます。

残った箔は小さく切った紙やすりで慎重に。

後は木地にステイン等で着色してひとまず完成です。

全面石膏に盛り上げ装飾は豪華ですが

木地に部分的に石膏盛上げを入れるのも

軽やかなアクセントになります。

 

 

額縁の作り方 11 角に塗るときどうするの ボーロ、絵具と石膏の違い 8月31日

 

2017年8月もとうとう終わり。

秋が見えてきたでしょうか。

 

先日の筆の持ち方に続いて、Atelier LAPIS の生徒さんから

なんどか受けたご質問があります。

それは「角に筆でボーロや絵の具を塗る時、どうしたらいいの」です。

 

額縁は4本の棒を四角に(ほとんどの場合)組んであります。

棒の接続部分にそのまま塗り進めたら、角だけ2重になる?

その場合、角だけ分厚くなって色味やテクスチャーが変わってしまわない?

それとも片方の角だけ塗りながら順番にぐるっと塗る?

 

額縁職人ひとりひとり、好みや癖、そして理論があって

わたしの方法がベストではなく、「わたしはこうしています」

というご紹介を前提としてお話しますと、

下の写真のようにおおまかに45度の角度で塗ります。

今回はボローニャ石膏地に弁柄色を塗った上に黒を塗っています。

絵の具の濃度が適切であれば、特に濃い色の場合は

角が2重になっても問題は無いと思います。

 

ボローニャ石膏を塗る時は、角から角へ一直線に塗ります。

(写真のように45度で止めず、木枠の端から端へ筆が抜けるように。)

すると、角は2重になります。

この「角がわずかに厚い下地」があることによって

完成した額縁は、何と言いましょうか、上品な趣が生まれます。

豊かな安定感のような、おおらかさのような。

その他にも、角はどうしても欠けやすいので欠け防止のために、

あるいは留め切れ防止に和紙や布を貼った場合には

きちんと隠す必要があります。

ただ、角だけ2重と言うことは他の部分より乾くのが遅い訳ですから

角に塗り重ねていくときは筆の運びに注意を払う必要があります。

下の生乾きの層を崩さないように。

そしてもちろん、木地の形によってはあえて重ならないように

塗る場合もあります。

細かい装飾(彫刻など)がある場合は臨機応変に。

 

ということで、今日のご質問への答え。

「ボーロや絵の具は角は45度で。すべての厚さをできるだけ均一に」

「ボローニャ石膏は角を心もち厚めに(2重に)、慎重に」

以上、ご参考にして頂けましたら幸いです。

 

 

思い通りに塗るために 筆の持ち方 7月31日

 

突然ですが、筆はどの様に持っていますか?

絵を描く時はもちろん、額縁制作では石膏やボーロ塗り

身近にはお化粧の時にも、筆は使います。

 

市が尾の古典技法教室 Atelier LAPIS の 生徒さん方から

筆を使う作業時に 「上手く塗れない、ムラになってしまう」

「液溜まりができてしまう」との相談があります。

それらはもしかしたら筆の持ち方を直せば

楽に上手に仕上げられるようになるかもしれません。

 

女性の方に多い持ち方が、下の写真です。

つまむようにして、薬指と小指を立てています。

手首だけで振るようにして動かしています。

勝手に名付けて「オナゴ持ち」

この持ち方では筆がグラグラ安定せず力が一定に保てません。

筆にどの程度の絵の具が含まれているか、

どのくらいの圧力がかかっているか、手にも伝わりにくい。

 

上の写真のように、指を4本揃えて持ちましょう。

位置は、心もち根本近くを。

筆が太くても細くても、しっかりと持ちます。

手首も腕もいっしょに動かします。

筆と手が一体になって、動かすのもうんと楽。

感覚もしっかり伝わって、圧力、絵の具量を

コントロールし易くなるでしょう。

 

リップブラシ、ネイルも、 そして繊細なアイライナーも

指を揃えると上手に引けると思います。

筆を持ったら、どうぞ思い出してみてください。

 

 

古い水はやわらかい 5月25日

 

古典技法、水押しで金箔を貼るとき

箔下地のボーロに水を塗り、箔を置きます。

水はただの水、普通の水道水を使うのですが

わたしのイタリアでの師匠、マッシモ氏いわく

「新しい水より、何度も使った古い水の方が良い」とか。

何故でしょうね。

最初は不思議でしたが、だんだんと分かるようになりました。

新しい水は固いというか、弾くというか。

 

上の写真の水は「古い水」、何度も筆を出し入れしたので

うっすらと赤ボーロの色が溶けています。

恐らくですが、使ううちにボーロや膠が少しだけ溶け込んで

ボーロ地になじみやすくなる、ということなのでしょう。

広口のビンを使って、水が減ったら継ぎ足しています。

まるで焼き鳥やうなぎの「秘伝のタレ」のようです。

軟水と硬水の違いがあるのか、は分かりません。

 

 

側光線で見る 5月08日

 

ボローニャ石膏を磨くことは

古典技法額縁制作の作業の中でも

地味だけど注意力が必要になる

なかなか大変な仕事です。

上からの照明では 真っ白な石膏地の凹凸や筋跡が見づらい。

特に紙やすりによる線状の跡は消しておきたい。

石膏磨きの時には、照明ランプを横に置きます。

いままで反射して見えなかった凹凸がはっきり!

違う角度からの光で見る、何ごとにも大切であります。

 

 

石を持て 2月06日

 

フィレンツェ留学中の修業先、額縁工房のマッシモ氏に

一番最初のころに注意されたのが

「メノウ棒は柄を持つのではないよ、石を持ちなさい」でした。

もちろんメノウ棒の種類にもよりますけれど、

正確には石と真鍮の軸のつなぎ目辺りを持つ、という感じです。

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それまでわたしは自己流で、鉛筆を持つようにして

メノウ棒の木製の柄を持ち、手首を振ってメノウ棒を動かしていました。

 

残念ながらマッシモ氏から理由は教わっていませんが

それ以来わたしが石部分を持って作業した感想としては

・石膏地や箔の感触がより繊細に感じられる

・余計な力が入らないので石が滑って箔に傷がつくことが少ない

・メノウ石と真鍮の軸が緩んだり外れたりすることが少ない

・腕全体を動かすので疲れが少ない

などでしょうか。

慣れるまですこし磨き辛く感じるかもしれませんが、

メノウ磨きは「石を持て」、お勧めです。

 

 

めざせ使い切り! 7月30日

 

石膏地を磨き終わり、さて次の作業の箔置きです。

ボーロ(箔下とのこ)をニカワで溶いて準備します。

 

ボーロは作りたて、塗りたて新鮮!のほうが

箔の作業仕上がりも良い(ように思う)ので

出来る限り一度で使い切る量だけのボーロを作りたい。

(というのも、毎日箔置きをするほどの作業量が無いからですが。

作業量の多い工房では、昨日の残りに新しく足して

使っていくので使い切る必要はありません。)

目分量で作りますので、ぴったりの量ができた時は

大変に気分よく、大げさですが清々しい気持ちで

次の箔置き作業に入れるのでした。

boro

毎度「めざせ使い切り!」の心でボーロを作ります。

 

 

留め切れの美醜 6月18日

 

古典技法の額縁制作では、木地にニカワで溶いた石膏を塗り磨き

その上に箔をはったり色を塗ったりと装飾を加えます。

この石膏地というのが曲者(?)です。

水押しで箔を貼り磨くには最適の硬度であり、また

垂らし描きで作る盛り上げ装飾もこの石膏ならではです。

でも湿度や温度によって、そして木地の収縮によって

四隅の接合部分にひび割れが入ることがあります。

これは「留め切れ」と呼ばれる現象です。

木地の切断や接着に工夫をしていますが

留め切れが出来てしまうのは古典技法の宿命のようなもの。

額縁の強度や構造には全く問題ありません。

ご注文をいただく前、打ち合わせ時にお客様にはご説明し

ご理解いただけるようにしています。

tome (1)

確かに、せっかく注文して作った新しいピカピカの額縁にひび割れがあるのは

嫌に思われるお客様もいらっしゃいますし、当然です。

ですがこの留め切れ、アンティーク仕上げにするには歓迎される場合もあります。

割れ目にワックスや「ニセモノほこり」の汚しが馴染み

意図して作ったヒビで無いだけにとても自然に古い雰囲気を出します。

イタリア留学時代、お世話になっていた額縁師匠マッシモ氏に

「角が割れてしまったけれど、直したほうが良いか」と訊ねたら

「なぜ直す必要がある?自然な割れがある方がさらに綺麗だろう?」と

言われたことがありました。

留め切れが出来てしまうなら、それを生かす方向も。

美意識はさまざまです。

 

* 「works」内「classical」にこちらの額縁をアップいたしました。

どうぞご覧下さい。

 

どちらのジェッソを使う? 6月01日

 

いま画材店で「ジェッソをください」と言うと

手渡されるのはおそらくアクリルジェッソでしょう。

これはアクリル樹脂で作られた下地材で、手軽で便利です。  

一方、古典技法でジェッソといえばウサギ膠で溶いた石膏下地

(ボローニャ石膏あるいはムードンや白亜)を指します。

またイタリアでgesso とはこのボローニャ石膏下地

または石膏そのものを指す場合がほとんどです。  

どちらも白い溶液ですし、板や麻布等に

塗り重ねて使う というのは同じです。

大きな違いは、アクリルジェッソは乾くと水に溶けないけれど

膠で溶いた古典技法のジェッソ(石膏下地)は

乾いた後も水に溶けてしまう。

やすりで表面を整えるとき、アクリルジェッソは

固くかつ粘りがあって やすりの目が詰まりやすいけれど

古典技法のジェッソはアクリルジェッソより柔らかく 

やすりがけが容易。 そして色味でしょうか。

下の写真、右の細い枠がアクリルジェッソ下地

左の装飾されている額縁が古典技法のジェッソ下地です。

gesso2015

純白のアクリルジェッソに比べて古典技法のジェッソのほうが

黄色を感じる白なのがお分かり頂けるでしょうか。

この色の違い、そして水分の吸い込みの違い

また乾燥スピードの違いなどで 

次に塗る色の発色にも違いが出ます。

わたしの印象ですけれど、アクリルジェッソのほうが

より鮮やかに発色させてくれるような気がします。  

何よりの違いはこれ、準備の手軽さです。

アクリルジェッソはお店で買えばすぐに使えますが

古典技法のジェッソは前日から膠液を作って

湯煎して石膏を入れて・・・と自ら作らなければなりませんから。  

ちなみに古典技法の箔の貼り方である水押しは

アクリルジェッソでは上手くいきません。  

KANESEIでは デザインや仕様によってどちらも使います。

どちらのジェッソも違った魅力があります。

もし現代にレオナルド・ダ・ヴィンチが生きていたら

必ずやアクリル系の新しい画材にも誰より興味をもって

精通していただろう!と思っています。    

 

 

無精製綿で押さえる 3月23日

 

古典技法の箔の貼り方はいくつかありますが

代表的なのが水押しです。

石膏地にニカワで溶いたボーロを塗り

その上に水を塗って箔を乗せる・・・というような方法です。

 

水の表面張力で箔を乗せ 水が引いた頃合いをみて

綿で箔をしっかり押さえる必要があります。

空気を抜きシワをつぶし ボーロと箔を密着させるのですが

その時に使うのは 薬局で売っている綿

(カットメンあるいは清浄綿などの商品名)を使います。

 

この綿は化粧用のコットンと違い その都度必要な大きさを

ちぎることができ 高価ではありませんから心配せず使えます。

でも本当は・・・精製されていない綿が良いとされています。

2015-02-23 11.36.24

上の写真は無精製の綿 綿花から摘んでそのままのものです。

片手にふわりと乗る程度の量で綿花1~2つ分。

色は精製綿のように真っ白ではなく ベージュがかっています。

すこしだけ綿花の殻の欠片も雑じっていますが問題ありません。

 

水押しの箔置きで なぜ精製綿より無精製綿が良いか?

それは無精製綿なら油分が水を弾いてくれるから。

箔の下にまだ残っている水分を綿が吸ってしまう心配が減ります。

ご存知のように 箔の上に水や膠液が付くと色が変わってしまいます。

これを極力防ぐためには 油分の残っている無精製綿が良いのです。

 

以前見学させて頂いた老舗の工房では 古い布団を分解して

これまた古い布団綿を使っていました。

昔の布団には無精製の綿が使われていたのだそうです。

現在はこうした綿を手に入れるのも難しくなりました。

生花店でたまに綿花を売っていますので

それで精製綿と無精製綿の違いを試してみるのも良いでしょう。

 

 

寒い日には 2月02日

 

私の好きな技法「石膏盛り上げ装飾」は

湯煎にかけて溶かした石膏液で 垂らし描きするようにして

模様をレリーフ状に入れる方法です。

この技法を上手に仕上げるコツは 何と言っても

石膏液の温度を適温に保ち 粘度を下げないこと。

湯煎鍋の温度をこまめに管理しつつ

石膏液の水分が蒸発していないか筆の感触で常に確かめます。

2015-01-30 13.49.30

寒い雪の日に作業をしたら 部屋を暖かくしていても

湯煎鍋の温度はすぐに下がってしまいました。

コンロに鍋をかけたり下したり。

焦りは禁物です。

あたたかいお茶で かじかむ手も温めながらの作業でした。

2015-01-30 11.02.05

 

 

役割は変わっても 2月24日

 

額縁に入れる模様がきまったら

原寸大の型紙をつくって カーボン紙で

額縁に描き写します。

四角の額縁の場合 最低4回多ければ8回は

デザイン線をなぞって転写する必要があります。

以前作った額縁と同じデザインで・・・という場合

繰り返し繰り返し同じ型紙を使います。

それぞれの方法があるかと思いますが

わたしはこの方法で通しており

型紙はとても大切な宝物になっています。

 

たとえばボールペンやシャープペンシルで

線をなぞることも勿論可能ですけれど

型紙にいくつも線がついて オリジナルの線が

行方不明になったり 型紙も傷みが早いようです。

 

そんな時に登場するのが ガリ版用「鉄筆」。

以前 骨董市で見つけたデッドストックのものです。

これならペンのようにインクの線が付きませんし

比較的軽い筆圧でも きちんと転写できます。

筆記用具として作られていますので 使い勝手も抜群。

teppitu

ガリ版は いまはもう見かけることもなくなった謄写版技法ですが

わたしが小学校に入ったばかりの頃は まだ使われていて

父兄へのお知らせや漢字テスト 文集などになった

ガリ版印刷物の わら半紙とインクの匂いを覚えています。

ちなみに 謄写版技法はエジソンの発明なのですって!

知りませんでした。

 

わたしの手元にある「鉄筆」3本は 役目は変わりましたが

未だに絶賛大活躍中。

骨董市で買った実用品で 一番の働きものです。

 

 

 

銀の表現いろいろ 11月21日

 

銀箔を使った額縁の仕上げには

ニスやラッカーでコートして酸化を防ぐ必要があります。

せっかくの銀の白い輝きも 数年後には錆びて

真っ黒!という結果になりますから。

 

でもあえて 銀を錆びさせた仕上げにすることもあります。

淡い錆びから真っ黒な錆びまで あるいは

酸化させる薬剤によっては 黄色味の錆び 青味の錆び

さまざまな変化を作ります。

淡い錆びが欲しい場合 薬剤の濃度や塗布する回数がむずかしく

なかなか思ったように仕上げるのが困難ですが

その分 上手く美しい錆びが出た時の趣は格別です。

 

今回は黄色味のある錆びが出る薬剤をつかって

真っ黒な強い錆びを作って仕上げる予定。

写真の右の額縁は 銀箔を貼って磨いたばかりで

まだ初々しい(?)銀の輝きがあります。

左の額縁には酸化させる薬剤をひと塗りしたところ。

さっそく酸化がはじまっています。

一晩待つと 翌朝には全体が黒のグラデーションになります。

キャプチャ1

人間の体が酸化するのは困りますが

酸化した銀の額縁は 偶然の色の変化や発色があって

作業中もワクワクします。

完成した額縁は 近々こちらでまたご紹介いたします。

 

 

 

額縁の作り方 12 銀箔を使う 9月17日

 

久しぶりの「額縁の作り方」です。

 

額縁に使う箔は 金箔のほか銀箔もあります。

その他プラチナ箔や代用箔など様々ありますが

今日は銀箔についてお話します。

 

銀箔の水押しによる貼り方は 基本的に金箔と同じで

ボローニャ石膏地に魚膠で溶いたボーロを塗り乾かし

下地を作ったところに貼ります。

そしてメノウ棒を使って磨き上げるのも同じです。

大きな違いは 金箔はボーロに水を塗って

箔を置いていきますが 銀箔は水の代わりに膠液を塗ること。

理由はおそらく銀箔は金箔より厚いから でしょうか。

(とは言え金箔は厚さ0.1μ 銀箔は厚さ0.2~0.3μの違い)

そして金箔は箔刷毛で移動させますが これまた

銀箔は厚いため刷毛では持てず 湿度を与えたコットンを使います。

 

銀箔のもう一つの注意点は 錆びる点です。

銀箔で装飾した額縁には 必ずニス(ラッカー)を塗る必要があります。

また銀箔の保存も 極力空気に触れないようにすること。

なんだか銀箔は扱いにくいような印象ですが

金箔より厚い分 手で触れても大丈夫という便利さがあり

(触らないに越したことはありませんが)

錆びることも利点ととらえて 錆びによる趣を与え

様々な表情を作ることも可能です。

金箔と銀箔 どちらも甲乙つけがたく好きな材料です。

 

 

額縁の作り方 番外 魔法の石 7月12日

 

箔を貼った後にメノウ棒で磨く段階になって

乾きすぎてしまったり 箔の上に膠分が上がってしまって

メノウがきしんで箔が剥がれてしまう・・・

ということになっても 焦らずに解決しましょう。

それまでどうにも磨けなかった部分に この石の成分を乗せれば

まるで魔法のようにスムーズにメノウが滑り出します。

この魔法の石は パラフィン。

コットンでパラフィンをさっと撫でて

きしむ箔の上を軽くポンポンと触ります。

それだけでOK。

この方法はフィレンツェの額縁師匠マッシモ氏に教わりました。

上の写真のパラフィンも マッシモ氏が工房で使っている

大きなパラフィンの塊から分けて頂いたものです。

小さな欠片ですが わたしが一生使うには十分の量。

 

ちなみにパラフィンの代用として

ローソク(つまり蝋)や乾いた固形石鹸も使えます。

お試しあれ。

 

 

額縁の作り方 11 5月24日

 

本日の「作り方」は金箔を使った額縁の装飾技法についてご紹介します。

これもとても古くからある技法「刻印」です。

kokuin11

いつも通り 石膏地に箔下トノコを塗って

水押し技法によって金箔を貼ります。

メノウで磨いた後 まだ石膏地に水分が残って

少しの柔軟性があるときに 刻印を打ちます。

石膏地に水分がありすぎると 刻印のエッジが

もったりとしてしまい 乾きすぎているとひび割れてしまう。

作業できる時間に限りがある技法ですので

朝一番に箔を貼って 午前中に磨き 昼食は後回しで

とにかく刻印を打ち終わるまで ひたすら作業を続けます。

革細工などで用いる模様のある刻印も使えますが

今日ご覧いただいている作品は 点で打っています。

(写真の作品は「atlier LAPIS」の筒井先生製作の見本板で

7㎝×7㎝ほどの大きさです。)

kokuin2

面を点で埋めていく 根気のいる作業ですが

金の濃淡(点を売った面は明るく 打たない面は暗く)で

表現でき 細かなデザインも入れられるのが特徴です。

 

 

額縁の作り方 10 4月26日

 

久しぶりの「額縁の作り方」です。

前回から続いて3回目 装飾技法について。

1回目に線刻 2回目は盛り上げ技法をご覧頂きましたが

今回は「グラッフィート」技法をご紹介します。

 

グラッフィート(graffito)とはイタリア語で

引っ掻き傷 錨などを指しますが 同時に

掻き絵 陰影線も意味します。

今回ご紹介する技法は 下の写真にあるように

下層に金 上層に絵具をぬり 絵具層を掻き取って

金箔層を出し コントラストで表現する方法です。

(写真の作品は「atlier LAPIS」の筒井先生製作の見本板で

7㎝×7㎝ほどの大きさです。)

graffito1

石膏地をつくり 箔下トノコを塗って全面に金箔を貼り磨きます。

ここまでの作業はいつもと同じ。

つぎに金箔の全面に濃色のテンペラ絵具を塗り

箔の面をすべて覆い隠してしまいます。

 

絵具が乾いたら下絵を転写して いよいよ「掻き絵」作業開始です。

線を掻く道具は わたしは竹串を使います。

柔らかすぎるとテンペラ絵具層が綺麗に掻けず

固すぎると金箔層に傷をつけてしまう恐れがありますが

今のところ 竹串が一番良い様に思っています。

仕上げには必ずニスを塗って絵具層を保護してください。

全面に金箔を貼る必要があるので 中々贅沢な技法ですが

細い線をシャープに表現したい場合に向いています。

graffito2

わたしもフィレンツェの修復学校を修了するときに作った

スペイン・ゴシック風額縁の装飾にこの技法を使いました。

http://www.kanesei.net/2009/09/11.html

 

ちなみに この「graffito」(グラッフィート・伊)という単語は

英語の「graphic」(グラフィック)につながります。

また 「grafica」(グラフィカ・伊)はグラフィックアートや印刷美術 筆跡

「grafico」(グラフィコ・伊)は図表 図式 表グラフを表します。

すべてギリシア語の「graphico’s」から派生した

ラテン語「graphicus」を基にした単語だとか。

ギリシア語からラテン語 そしてイタリア語と英語へ。

技法の歴史と言語の歴史の関係・・・面白いですね。

 

 

古典技法額縁の作り方 番外 ZECCHI 9月15日

 

古典技法額縁の制作方法はヨーロッパ伝来です。

なので材料の中には日本では手に入り難いものもあります。

先日 フィレンツェから一時帰国する友人にお願いして

ドゥオーモ近くにある古典技法の材料が豊富に揃っているお店

「zecchi」(ゼッキ)からこの魚の膠を買ってきていただきました。

zecchi

「冷静と情熱の間」という映画をご存知でしょうか?

この映画の絵画修復師の主人公(竹ノ内豊さん演じた)が

自転車に乗って買物に行っていたのもこのzecchiです。

懐かしい包み紙を開けてみましょう。

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魚の膠といっても見た目は食用の板ゼラチンと変わりません。

古典技法額縁の制作で ボローニャ石膏を溶くにはウサギ膠

そして箔の作業にはこの魚の膠が欠かせません。

ウサギ膠より固着力は弱いですがサラリとしているのが特徴です。

箔の作業にウサギ膠を薄めに溶いて使うこともあるようですが

私はもっぱら魚膠を愛用しています。

 

zecchi はインターネットからの通販も受け付けています。

日本ではとても高価なメノウ棒やラピスラズリの顔料 金箔

羊皮紙や古典技法の材料も購入できると思います。

日本語は残念ながらありませんが英語もありますので

ご興味のある方はぜひ覗いて見てください。

http://www.zecchi.it/

古典技法額縁の作り方 番外「完成」 9月06日

 

「古典技法額縁の作り方」でご覧いただいていたコーナーサンプルは

無事に制作につなげることが出来ました。

依頼して下さった方のご希望に添って サンプルよりも

すこしだけ装飾を小さく控えめにしました。

今日は完成した姿をご覧いただこうと思います。

 

黒いベースに石膏盛上げ装飾で植物モチーフの模様を入れました。

黒の下地には補色の赤褐色を塗っています。

金箔をあしらってアンティーク仕上げをしたのは

すべてコーナーサンプルでご覧いただいていた通りです。

額の内側にはライナーと言いましょうか 作品と額縁をつなげ

ガラスを押さえる役目をする内枠を入れました。

こちらも内側に金箔をあしらいグレーのベルベットを貼っています。

 

この額縁は来年の秋の展覧会で登場する予定です。

1600年代イタリアで描かれた作品が入ります。

まただいぶ先のことではありますが

皆様にご覧いただける時期が来たら またこちらでご案内申し上げます。

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古典技法額縁の作り方 9 8月28日

 

前回に引き続き装飾方法のご紹介です。

額縁制作の手順をおおまかにお話していた時にご覧いただいていた

黒地に金のコーナーサンプルに使っていた方法で

呼び名は色々ですが私は「石膏盛上げ装飾」と呼んでいます。

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石膏を塗って表面を整えたら模様を転写します。

そして湯煎で温めた石膏液使って描きます。

濃度のある液体なので絵の具のように描くというより

細い筆で垂らし描きするような感じでしょうか。

石膏が乾くと凸模様になります。

あまり細かい模様は入れられませんが

ゆるやかな盛り上がりで表現する模様は暖かな雰囲気です。

わたしの得意とする装飾方法です。

古典技法額縁の作り方 番外「黒い輝き」 8月25日

 

ひさしぶりに金箔をふんだんに使った額縁を作りました。

見え巾(木枠の太さ)は3センチほどではありますが

全面に金箔を使うとかなり豪華な額縁になります。

下の写真は金箔を貼り終えたところ。

コットンでしっかり押さえて乾かしている最中です。

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まだ磨いていないので艶消しで輝きも白い光です。

そしてこの額縁をメノウ棒で磨くと・・・

migaitaato

このように金本来の黄金色になります。

輝きは光を吸い込むような 黒味を帯びた色に変わります。

カメラを構える私の姿がボンヤリと映っております・・・。

この額縁はこうしていったん磨き上げた後に艶消しに仕上げる予定です。

 

ルネッサンス時代以降 華やかな額縁が作られていた頃に

こうした「磨いたままの金色」の額縁が作られていたのか

それとも当時から古色を出した額縁がつくられていたのか

以前から知りたいと思っていることです。

バロック時代の豪華絢爛な額縁はきっとこのような

黄金色の輝きで仕上げられていたのではないでしょうか。

蝋燭の明かりが灯る薄暗い貴族の館で ほのかな光を反射する額縁は

とても美しく幻想的に見えていたに違いありません。

古典技法額縁の作り方 8 8月18日

 

古典技法額縁の装飾方法は数多くありますが

今日は線刻をご紹介します。

木地に石膏を塗って整えたあと 模様を転写します。

その線をニードルを使って線彫りする方法です。

senkoku-1

転写した下書きを頼りに線を入れますが 下書きは目安程度にして

曲線などは手の動きに任せるように滑らかに入れたほうが

美しい仕上がりになるようです。

senkoku-2

線刻の溝は1ミリもない深さではありますが

上に彩色しても線はきれいに現れます。

彫刻など凸形の装飾より控えめで繊細な表現です。

古典技法額縁の作り方 7 8月15日

 

さて 装飾と彩色もおわったら仕上げです。

今日はアンティーク仕上げにする方法をご紹介します。

KANESEIのアンティーク仕上げ方法(「古色出し」とも言われています)は

フィレンツェでの額縁修行時代に師匠マッシモ氏から

教えていただいた方法と材料をベースにしています。

日本では手に入らない材料もありますが代用品を探しました。

古色出しの方法はそれこそ工房それぞれ違うはずです。

”十人十色”ならぬ”10工房10色”ですので参考程度にお考え下さい。

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まず角や凸部分を木槌などでたたいて傷をつけます。

特に角は強くたたくのではなく小さく何度もたたくと良い「味」が出ます。

石膏が欠けて木地が見えてもそれもまた「味」になります。

スチールタワシで擦って金箔下地のトノコ色を出したり

ベースの彩色部分も下地に補色を塗った場合は同様に下地を出します。

その上に茶色のワックスを塗ります。

ワックスはカルナバワックスをベースに作りますがレシピは秘密・・・。

 

アンティーク仕上げの最終段階に「ほこり」をまぶします。

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もちろん本物の埃ではなく 粉を調合して作った「偽ほこり」です。

上の写真はその「偽ほこり」をまぶした状態です。

ワックスが完全に乾く直前にこの「ほこり」をまぶして磨きこむと

装飾の凹部分に密着して いかにも”ちょっと汚れた古い雰囲気”に。

その他カッターなどの刃で亀裂を作ったり 細いドリルで虫食い穴を作ったり

それぞれのお好みで加工します。

できたてで初々しい額縁もあっという間にお婆さん(?)に変身です。

磨いたばかりの金は生々しくて光沢が強すぎる場合がありますが

アンティーク風加工をすることで落ち着きと調和が出るようです。

 

裏の処理をしてガラスや裏板の準備 金具の取り付けが済めば完成です。

古典技法額縁の作り方 6 8月12日

 

部分的に箔で装飾し磨き終えたらベース部分に色を塗りましょう。

今回は黒にすることになりました。

下地がボローニャ石膏の場合はグァッシュかアクリル絵の具を使います。

もちろんこれはKANESEIの場合であって

他の工房の方達にしてみれば「アクリル絵の具は使わない!」

と思われる方も多いかもしれませんが・・・乾くと耐水性になるアクリルは

なかなか便利な色材でもあります。

まずはこまかな装飾部分を細い筆で埋めてから広い面を塗りました。

今回は石膏地に直接黒のアクリルを使いましたが

黒を塗る前にまず補色の赤を塗ってから黒を塗ると

色が深みをおびてより重厚で品のある仕上がりになります。

アンティーク仕上げにする場合も磨り出しで下の補色が見えて

趣のある額縁になります。

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古典技法額縁の作り方 5 7月28日

 

水押し技法で貼った箔(金銀 真鍮 プラチナ問わず)は

すべて磨くことが出来ます。

箔磨きに使うのはメノウで出来た道具です。

このメノウ棒は額縁にかぎらず 写本やポーセレン カリグラフィーなど

およそ箔を使うヨーロッパの伝統技法全てで用いられる道具のようです。

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形も大きさもさまざまです。

私はもっぱら左から二番目のメノウ棒を愛用しています。

前回貼った金箔を磨きましょう。

箔の表面は完全に乾いており かつ石膏地はまだ水分を含んで柔らかい

という状態で磨くのが一番美しく仕上がるタイミングです。

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最初は様子を見ながら優しく 徐々に力を入れて磨き上げます。

深い輝きで自分の顔まで写ってしまうほどの艶に仕上げましょう。

古典技法額縁の作り方 4 7月23日

 

前回準備した箔下トノコに今日はいよいよ金箔を貼りましょう。

「水押し」技法です。

下の写真に箔を貼る道具を並べてみました。

右の紺色の台はスエードで作った「箔床」 箔を扱う際に乗せる台です。

それに竹バサミ 箔切ナイフ 紙に包まれた金箔 箔ハケ コットンです。

そして箔を貼る額縁(今回はコーナーサンプルですが) 筆と水。

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箔を竹バサミで箔床に乗せ、ナイフで切ってハケで移動させます。

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箔を貼りたい場所に筆で水をたっぷりと塗っておきます。

そこへハケで箔を乗せると水の表面張力で吸い付くように箔が張り付きます。

水分が石膏地に吸収された頃を見計らって

コットンでしっかり押さえ空気を抜き より密着させます。

なぜ水だけで箔が付くのか?と思われるでしょう。

下に塗った箔下トノコに含まれるニカワ成分が水に溶け出して

のりの代わりになるという原理…だそうですが

実際のところ私も不思議に思っています。

 

箔を貼る作業は細心の注意を要しますし慣れるまで経験が必要ですが

やってみるととても楽しくワクワクします。

この水押しは額縁制作の一番華やかな作業と言えるでしょう。

古典技法額縁の作り方 3 7月17日

 

今日は箔を貼る準備作業をご紹介します。

前回 木地に塗り終わって乾かしたボローニャ石膏を

紙やすり等で磨いて形を整えた次の工程です。

今回ご紹介するのは「水押し」という方法で箔を貼る作業の準備です。

下の写真の枠は装飾部分と内側の細い枠部分(茶色の部分)に

「箔下トノコ」または「ボーロ」「アシェット」などと呼ばれる下地材を塗ってあります。

黄色いラベルの物がシャルボネ社製の箔下トノコです。

アルミニウムを多く含む粘土状の天然土が主成分。

これをニカワで溶いて箔を貼る部分に塗っておきます。

赤 黒 黄の3色が一般的でこれらを混ぜて使うこともあります。

今回は赤と黒を半量づつ混ぜて茶色にしました。

この箔下トノコの色は金箔や銀箔の仕上がり色に微妙ながらも影響します。

特に金箔は10.000分の1~2ミリという極薄の箔なので

金属とはいえ下地のトノコの色がかすかに透けるようです。

またアンティーク風仕上げで箔の表面を磨ってトノコを出す場合は

仕上がりの雰囲気にとても影響があります。

イタリアでは普通「金には赤トノコ 銀には黒トノコ」と言われますが

日本では金にも銀にも赤トノコが好まれるようです。

日本の額縁ユーザーの好みや おそらく今まで作られてきた額縁の

伝統なども相まっての結果だと思われますが 面白いです。

tonoko

この箔下トノコを塗るのは水押し作業の

前日に済ませるのがベストだと思います。

トノコを塗ってから日にちが経ちすぎるとどうも上手く仕上がりません。

せめて1週間以内には次ぎの水押し箔貼り作業をしたいものです。

古典技法額縁の作り方 2 7月09日

 

前回の木材に続いて今回は次の工程である

ボローニャ石膏を塗る作業をお話します。

石膏と言えば水を足すと反応して硬化する焼石膏が一般的ですが

古典技法で使うボローニャ石膏は二水石膏または非晶質石膏といい

すでに水と反応して硬化した石膏を砕いて粉にした状態の物です。

つまり水を加えても硬化反応しません。

このボローニャ石膏を固めるためにはニカワ液を加えます。

古典技法に用いるニカワはウサギニカワです。

日本では鹿ニカワをよく見ますがヨーロッパでは兎ニカワ。

話し始めるときりなく続く…のですが

今回はニカワの詳しいことは省略します。

細かい粒状の兎ニカワを1に水を10加えて一晩ふやかしておきます。

これを翌日湯煎で溶かしボローニャ石膏を加え石膏液を作ります。

木地に下塗りとして一層ニカワを塗り乾かした後に

温かい石膏液を筆やハケで手早く額縁木地に塗ります。

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おおよそ4~6回程度塗り重ねて更に翌日まで乾かします。

気泡が入ったりムラになったりと慣れるまで少々難しい作業ですが

この石膏塗りが完成度を左右すると言っても過言ではありません。

下の写真はイタリアでの私の師匠 マッシモ氏です。

サンプル用の木片にボローニャ石膏を塗っています。

タバコ片手なのはご愛嬌…

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古典技法額縁の作り方 1 7月06日

 

まずは木材についてお話します。

KANESEIでは主に杉材を使っています。

杉は古典技法の石膏との相性も良く安定した材です。

また松などのようにヤニが出ることもありません。

杉のほかにはナラやサクラ チークや黒檀など

木肌を生かしたい時に使う木材もあります。

最近はアユースという比較的安価で加工のしやすい材も使います。

 

作る額縁のデザインや目的に合わせて木材を選び

まずは額縁の形に組むことからはじめます。

角を45度にカットした竿状の木材4本を組みます。

今は電動工具があって正確に楽に切ることができますが

ルネサンス時代は全てが手作業で重労働だったことでしょう…。

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古典技法額縁の作り方 序 7月01日

 

古典技法額縁製作は簡単に述べますと

まずベースに木材を使用し希望の大きさの額縁に組みます。

その上にボローニャ石膏をウサギニカワで溶いた石膏液を塗り

乾いた石膏を紙やすりで磨いた後に箔下トノコを塗り

金箔や銀箔を貼り磨き上げて完成という流れです。

(以上はあまりにも簡単すぎる説明かと思いますが・・・)

 

これから何回かに分けて古典技法額縁の制作過程や

材料 技法をご紹介してまいります。

皆さんが展覧会で素敵な額縁を見たときになど

どのような工程でつくられた額縁なのかご理解下されば

展覧会での楽しみをより豊かなものにして頂けると思っています。

200907011