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「額を紡ぐひと」 11月29日

 

ここしばらく、何人かの方から

ある本についてのお話を伺いました。

今年2018年に新潮社から出版された

谷瑞恵さん著「額を紡ぐひと」

という小説についてです。

 

まず、わたしはまだ拝読もしておらず、

読んだ数人の方に伺ったお話からだけの

印象と内容ですので

ブログに書くことで不特定多数の方に

「発表」するのは憚られますが、

KANESEIとこのご本の内容を

リンクして考えておられる方がいらっしゃる

可能性が無きにしも非ず、ということで、

こちらでお話することをお許しください。

 

この「額を紡ぐひと」というご本と

KANESEIは一切関係ございません。

取材もお受けしておりませんし、

主人公の「額装師」の女性とわたしは

経歴、仕事方法、そして広い意味での

額縁、額装に対する考え方も違います。

 

このご本によって額縁と額装に、

そして額縁を作る仕事について

興味を持って下さる方が増えて、

わたしも額縁を仕事とする者として

とても嬉しく思っております。

また「額を紡ぐひと」という小説に対して

批判する意思は一切ありません。

わたしの勝手な思い込みで

お気を悪くする方がいらっしゃいましたら

申し訳ございません。

お許しください。

 

以上、どうぞご理解くださいますよう

お願い申し上げます。

 

 

Mr.Cによる伝技「気泡必殺の術」 11月26日

 

ボローニャ石膏の作業で

気になる失敗のひとつは気泡です。

石膏地に気泡の跡(ピンホール)が残ると

金箔を磨き終えてもブツブツが残ります。

石膏液の気泡を抜くこと、そして

塗った面に上がってくる気泡をいかに消すか、

長い間の悩みの種でした。

 

先日、アメリカで活躍しておられる

金箔師チャールズ・ダグラスさんが

気泡を退治する処方を教えて下さいました。

処方の石膏液をいつもと同じように木地に塗ると

表面がいつもよりツルンと光っているようです。

乾燥後にも気泡が見当たりません。


 

この方法、わたしは初めて知りましたが、

日本でもご存知の方がいらっしゃるみたい。

国内であまり広まっていないということは

秘伝にしたいと思う方がいらっしゃるのかも・・・?

はたまたこの処方に副作用もあるとか??

 

チャールズさんは快く教えてくださいましたが、

それをわたしがブログで発表するのも

どうかと思いますので、悩みましたが

ここでお話するのは自粛いたします。

 

さんざん自慢しておいて方法は秘密だなんて

なんだか意地悪ですよね。

すみません。

長年の悩みが解決できた喜び、お許しください。

 

ぜひチャールズさんのHPもご覧ください。

N.Yやシアトル等で箔教室も開催中です。

CHARLES DOUGLAS GILDING STUDIO

インスタグラムもなさっていますよ。

 

 

地球上で眠るということは。 11月22日

 

ふだん、北北西をまくらに寝ています。

先日とつぜん思い立って

南西をまくらにしてみました。

 

理由はあるのですよ。

わたしの昔からのクセで

右を下に横向きで眠るのですが

左を下にした方が体が楽になる

と聞いたので試してみたくなったのです。

そうすると諸事情で布団の向きを

約90度回転する必要がありました。

こんなときベッドだと大変ですけれど

布団だと簡単です。

 

で、向きを変えてみたのですけれど

寝覚めは変な感じでした。

いつもと同じ部屋、同じ布団のはずなのに

どうにも居心地がよくなくて、

左を下にしなきゃ、という暗示もあってか

夜中に何度も目が覚めました。

 

自分が地球儀に寝転がっている図を想像すると

南西まくらで左が下の寝方ですと

ほぼ逆立ちして更に背中側から朝日を受けるポーズ。

そりゃあ寝心地も変わるかもねぇ

・・・と変な理屈で納得した朝でした。


それなら東まくらなんてどうなるの?

頭から朝日に突っ込んでいく感じ?

まさかね!ばかばかしいと笑いつつも

子どものような疑問がふつふつ。

今夜は南南東を向いて寝てみようと思います。

左を下に、も忘れずに。

明日の朝は逆立ちしながら朝日に向いて目覚めます。

どの方向が一番楽かちょっと楽しみです。

 

 

祭壇型額縁を作る3 渦巻きを彫る 11月19日

 

今日からいよいよ本体を手がけます。

イオニア風の柱、上部の渦巻きを彫りましょう。

トレーシングペーパーで作った下描きを

カーボン紙で写します。いつも通りです。

 

彫り彫り。

となりにモデルの写真を置いて確認します。


もう少し垂直方向に深いですね。

さらに彫りすすめます。

 

さてと。

左右がおおよそ彫れてきたところで

同じ深さ、バランスになっているか確認します。

 

egg&dart も仮留めして見てみます。

ふむ。


もう少し細かい調整が必要ですが、

ひとまず木地はかたちになりました。

 

わたしは木彫を留学時に学びましたので

今も留学当時に買った彫刻刀を使っておりまして、

21本のpfeil社製彫刻刀と

日本の彫刻刀3本でやりくりしています。

でもこれは決して多くない本数です。

道具があれば良いという訳ではないけれど

もっと様々なカーブの彫刻刀があれば!

と思うこともしばしばです。

今後すこしずつ買い足していきたいと思っています。

 

 

サンソヴィーノチャレンジ つづき③ 11月15日

 

サンソヴィーノチャレンジ

地味に続いております。

間があいてしまいましたが先日とうとう

「金箔を貼るか貼らないか問題」に結論をだし、

金箔予定部分に石膏を塗りました。

そしてようやく石膏を磨き始めたのですが。

 

 

結論は「金箔は部分的に貼る」なのでした。

上の写真、白い石膏部分が金箔になる予定。

これまた安易な決着でございます。

ハハハ。

 

安易なうえに石膏層が薄すぎたことが発覚、

さらには石膏塗り忘れ部分も発覚。

なんともかんとも。

「心ここにあらず」が丸わかりですね。

片手間でつくるとこういうことになるよ!

という見本のような途中経過でございます。

ワハハ。

 

・・・笑いごとではありません。

キッチリ修正してバッチリ仕上げます。

 

 

そこにメッセージはありません 11月12日

 

「あなたはなぜ額縁を作るのですか」

「あなたにとって額縁とは何ですか」

と訊ねられて、はて。

何と答えるべきか。

訊ねた方は きっと

「運命の出会いだったのです」

「額縁こそがわたしの人生です」

というような答えを

想像されていたような気がします。

 

たしかにわたしはブログでも

自作の額縁を「娘たち」などとお話しますが、

これはまぁ、方便と言いましょうか、

とても大切に身近に思っているという

表現のつもりです。

 

さて、質問のこたえに戻りまして、

わたしにとっての額縁とは

「とても好きで興味があって、

熱中して作ることができるもの」 であり、

また シンプルに「なりわい」

(規模はとても小さくとも)

でありましょう。

 

KANESEIの額縁を求めて下さることで

納める作品を安全に、ご希望のイメージで

展示できるように心を砕きますが、

額縁に他の役割を与えてはいないつもりです。

意志の表現もしていません。

すべてはお客様が感じるままに。

そしてわたしの手を離れた額縁は、

その額縁の運命に任せています。

 

どのような額縁も安定した気持ちで誠実に、

もくもくと作業し、完成させたい。

 

わたしが作る額縁はただ額縁であり、

メッセージはありません。

額縁に納められたものが発するメッセージを

守るのが額縁の仕事ですから。

お客様との関係もとてもシンプルです。

 

メッセージ性がある物を作るのが アーティストなら

わたしはやはり額縁の職人なのだろう

と思っています。

 

 

祭壇型額縁を作る2 egg&dart 彫刻 11月08日

 

下描きをした半カマボコ形の竿を

egg&dart のデザインで彫りましょう。

 

私が使っている彫刻刀はスイスのpfeil社のものです。

ステンレスの長い刃に木製の柄で、鑿(のみ)

のように木槌で打つことができます。

デザインのカーブに合った刀で溝を打ち、

そして彫り進めていきます。

頭の中に、正面や斜め、真横など様々な角度の

3Dで完成したイメージをインプットしておき、

それに近づけて削ぎ取っていく、という感じです。

 

上下と両脇、あわせて6面分の egg&dart

彫り終えてペーパーをかけました。

 

全く縁遠いような話ですけれど、

木彫が好きな人は車の運転が好きなのではないかな、

首都高の合流や車線変更も苦にならない

と感じる人が多いのではないかなぁ・・・。

わたしが木彫好きのドライブ好きだからって

こじつけている訳ではないのですけれど、

なんとなく、そう思っています。

 

 

これで終わりじゃない 11月05日

 

先日、チャコペーパーで下描きを写し

石膏盛上げ(パスティリア)を入れた額縁に

金箔を貼り、磨きました。

 

そして、色を塗ります。

 

あ、もしかして嫌な顔をなさいましたか。

なんて悪趣味なピンク色だ、と思われましたね。

もうしばらくお待ちください

これから色を上に重ねますから!

 

つや消し金と淡いピンクになる予定でございます。

 

 

Atelier LAPIS(アトリエ ラピス)の様子から 2018年11月 11月01日

 

昨年のクリスマスに完成した

Oさんの祭壇型額縁に、聖母子像が納まりました。

 

今年の1月、フィリッポ・リッピの聖母子像の

模写準備を開始しました。

ボローニャ石膏を塗った板に下描きをして

マスキングテープを貼り、金箔を貼ります。

卵黄メデュームを作り顔料を溶いて

テンペラ絵の具で模写をすすめます。

5月から彩色をはじめ、途中すこし

額縁彫刻をしてみたりしつつも

すこしずつ完成に近づけていきました。

 

そうして10月のおわり間近になった先日、

とうとう模写も完成し、額装しました。


マリア様の赤い衣装に重ね着した

白いレースがとても綺麗に描けました。

マリア様の表情は、穏やかなOさん

そのままのようです。

額縁にかけたと同じ情熱の量を

模写にもかけてあって

額縁と模写がとても良いバランスです。

 

Oさん、長い制作をがんばってくださり

ありがとうございました。

これから毎日おそばに置いて

大切に楽しんでください!