diario
完成に向けて準備しよう 3月29日
このブログで2020 Firenze として
昨年のフィレンツェ滞在記を
話し続けておりますが、
あの旅は額縁彫刻修行でした。
グスターヴォさんの工房に通い
必死で作った額縁は
ひとまず彫刻を完成させて帰国しました。
ですが、じつはまだ外側に一周
縁彫刻があるのです。
作業の合間に完成させましょう!
▲持ち帰った彫刻木地と参考にした本の写真
いつもいつもお世話になっている
千洲額縁さんにお願いして
ジェロトンの細い棹を送って頂き、
外周に取り付けました。
▲ボンドで貼り付けてから彫ります。
上の写真、金属の輪(というかC字型)
で固定していますが
この金具もグスターヴォさんから
お土産で分けていただきました。
バネの利いたC をぐいっと開いて
はめると思いの外しっかり固定します。
▲C をあてた部分には小さな穴ができるけれど・・・
留学先の修復学校でも使っており
日本で探したのですが見つかりません。
それもそのはず、職人さんが自作するとか。
古いベッドのスプリングなのですって。
これまたアイディアですね。
やっぱり似て非なる 3月25日
同じサイズ、同じデザインで
装飾技法を変えた小箱を
作ってみました。
グラッフィート装飾と
純金箔の上に卵黄テンペラを塗り
模様に沿って絵具を掻き落とし
下の金箔を見せる方法
パスティリア装飾です。
石膏盛り上げ。ボローニャ石膏地に
ボローニャ石膏液を垂らし描きして
レリーフ状も模様を作る方法
左のパスティリアには
錫箔を貼りました。
同じサイズの小箱だけど
錫のほうが大きく見えるような。
面白い。
似て非なるふたつです。
兄弟というか、いとこくらい?
春っぽく 3月22日
バラの絵のための額縁が完成しました。
ピンク色のバラ2輪が大きく描かれた
F3号の油彩作品のために作りました。
純金とクリーム色、装飾部分は
少しトーンを落としたベージュです。
艶消しにしたので穏やかな雰囲気。
春っぽいな、と思っています。
いかがでしょうか。
「works」内「classical」にこちらの額縁をアップいたしました。
どうぞご覧下さい。
Firenze 2020-16 3月18日
朝一番で乗り込んだピッティ宮殿の
パラティーナ美術館ですが
日曜日なのになんと休館!
受付の女性に
「今日だけ休みなのよ~残念ね」と
慰められてしまい・・・さて。
せっかくなのでピッティ宮殿のお庭
ボーボリ庭園へ参りましょう。
なにせ日曜の朝一番でしたので
わたしひとりの貸し切り状態。
聞こえるのは鳥の声と風の音、
そして砂利道を歩く自分の足音のみ。
それはそれは素晴らしい朝でした。
▲人っ子一人おらず、現実離れした雰囲気で
ついうっかりメディチの奥様気分になってしまう。
この庭はわたくしのもの。ホホホ・・・
▲けっこうな山坂がある庭園なのです。
▲ロマンチックな小道の先にある建物。
こんなところに住んでみたい。
▲本当に誰もいない。ちょっと不安になるくらい。
▲かの有名な(?)ヴァザーリの回廊の終着点。
▲「TI AMO」(あなたを愛している)
こんな落書きは世界共通ですな。
▲丘の上には素敵な建物。
以前はカフェテラスだったけれど今は閉まっていて残念。
▲そして振り返ると街が一望できる。
今年2021年のいま、トスカーナ州は
コロナの感染状況による措置により
オレンジゾーン(部分的にレッド)
半ロックダウン状態だそうで、
美術館、博物館などは閉鎖されているとか。
この春の一番美しいときに
誰も訪れることのないボーボリ庭園は、
きっと2020年2月におわりに
わたしが行ったときとおなじように
朝だけではなくて午後も夕日の時間もずっと
鳥のさえずりと木々を揺らす風の音だけが
響いているのだろうなぁ、と
寂しく美しい様子を想像しています。
つぎにイタリアへ行けるとき、
どんな季節であっても
(寒風でも真夏のカンカン照りでも)
また人がいない朝一番で乗り込んで
ボーボリを鳥といっしょに
ひとり占めするのだ!
だってきっとわたしだけではなくて
ボーボリの森に帰りたがっている人は
沢山いるはずですから!
・・・と、今から作戦を練っております。
うう~、イタリアに行きたい。
額縁の作り方 33 錫箔を貼る 比べると 3月15日
先日お話しました錫箔ですが
とても使いやすい箔でした。
銀箔ともホワイトゴールドとも
ちがう深い色です。
比較してみました。
上の写真は左が今回作った錫箔箱
右はホワイトゴールド箔の箱です。
ホワイトゴールドとは、金に
パラジウムや銀などを混ぜた合金だそうです。
ホワイトゴールドは反射が白く
繊細で華やかな輝きな印象、
錫は輝きは少ないけれど
暗い色で重厚感がある。
錫はよりひんやりしています。
同じようで全く違う箔の色です。
海外の額縁工房では
銀箔ではなくホワイトゴールド箔を
使うことが多いようです。
錆びないからでしょうかね、やはり。
ちなみにイタリアの額縁史の先生に
伝統的に錫箔をに使うことはないのか
聞いてみましたが
「無い。金箔か銀箔のみ。」
とのお答でした。
錫は古くからある金属ですのに
なぜ使われなかったのでしょうね。
いろいろ比較して楽しみました。
ほかの箔も試してみたい!
イメージからイメージをつなげる 3月11日
最近は小箱のおはなしが続いておりましたが
額縁も作ります・・・もちろん。
暖かな印象のバラの油彩画のために
淡い色の額縁を作ろうと思います。
木地にボローニャ石膏を塗りみがき
内側の端先に純金箔の水押し。
そして角に線刻で模様を入れましょう。
あまり目立ちすぎないように
柔らかでクラシカルなイメージで考えます。
ふむふむ。
線刻道具はわたしの愛用五寸釘・・・。
そして淡いベージュに全体を塗りましたら
模様部分に一段暗い色をのせて
線刻がやんわりと見える程度まで持ち上げて
さて。どうだろう。
今回、額装予定のバラの作品は
すでにお客様のお手元に納まっており
わたしは昨年秋に一度拝見しただけ
あとは写真からの印象で製作しています。
なかなか作品の印象がさだまらず
額縁のイメージが決まりづらく
悩み深い製作になっております。
イメージからイメージをつなぐのは
たしかに悩み深いけれど
やりがいのある面白い作業です。
額縁の作り方 32 錫箔を貼る 3月08日
なにせ小箱ばかり作っておりますので
作品例が小箱ではありますけれど
古典技法ですので額縁にも応用できます。
ぜひご参考になさっていただければと
思いつつ、ご紹介します。
興味本位で京都で手に入れて以来
死蔵されていた錫(すず)箔を
小箱に使ってみようと思いました。
ヨーロッパの古典技法では
ボローニャ石膏地にボーロを塗り
箔押しの下地作りをします。
これはすべての箔に共通の下地ですが
純金箔を貼る場合は水のみ、
わたしはその他の箔を貼る場合には
薄いニカワ水をボーロに塗って箔を押します。
今回の錫箔には魚ニカワを使いました。
魚ニカワは、1リットルの水に対して
4シートの板ニカワを溶きます。
錫箔の印象。
とにかく丈夫です!かなり厚い。
シャカシャカ、キュルキュルしています。
石膏盛り上げ(パスティリア)の
凹凸でも破けることがありません。
(繊細な金箔では大抵破れてしまう・・・)
素手で持っても大丈夫ですが、
後々に指紋がサビて浮き上がりそうなので
やはり竹箸を使いました。
ただ、丈夫で厚いのはよいけれど
箔ナイフでは上手に切れませんので、
アルコールで拭いたハサミで切りました。
▲京都の堀金さんで購入しました。
金箔より一回り大きく、銀箔と同サイズ。
メノウ磨きは金箔よりだいぶ
早いタイミングで磨き始めたほうが良さそう。
とは言え丈夫な箔ですので
ハラハラ気分はずっと少なく済みます。
これは良い!
錫箔はかなり良いですよ。
色味もモダンで力強い感じ。
次回は完成した錫箔小箱を
ご紹介しようと思います。
Firenze 2020-15 3月04日
サンタ・マリア・ノヴェッラ広場に面して
タッシナーリというお店があります。
こちらは刻印屋さんです。
▲TASSINARI
Incisore : 彫板
Timbri : 印
Targhe : 表札
Stampi per doratura : 金箔細工用刻印
こんなものを扱っているお店です。
▲Brunitoi Agata
箔用のメノウ棒も。ガラス窓に
サンタ・マリア・ノヴェッラ教会が写ります。
▲こちらの印は、おそらく革細工用。
我らの古典技法には細かすぎるのですが
とても美しい道具です。
こちらで道具をいくつか購入しました。
回転式の印を3本と、刻印1本。
これらすべて、お店の裏手にある工房の
手作りだとか。刻印は古いものに
あたらしい柄を取り付けてありました。
▲刻印はピンボケ・・・すみません。
ゆるいアール状に点が5つ並んでいます。
▲これまたピンボケ・・・花模様
▲ギザギザカーブ模様
▲点々模様 タコ足風・・・
回転式のものは、買ったは良いけれど
まだ使いこなせていません。
練習が必要。
とても商売熱心で親切なおじちゃん(失礼!)が
いろいろと説明しつつ見せてくださいます。
外国人の対応にも慣れている様子です。
オーダーメイドの印も作ってくれるそうで
「漢字でもなんでも大丈夫!」とのこと。
時間を忘れて滞在してしまうような
楽しいお店です。
50123 Firenze
響いて届いた言葉 3月01日
もう何年も前に、カウンターの席で
偶然となりになったオジサマから
突如いただいた、ある言葉があります。
お店の紙ナプキンにボールペンで書かれていて
お酒の席の一興といった感じで帰り際に
「この言葉を君にあげよう」と渡されたのでした。
わたしの身の上話もしていませんし
お悩み相談をしたわけでもなく、
わたしは同席した方々の話を
聞いていただけだったのですけれど。
だけど、その時のわたしの心と脳に
ドカーーン!と入り込んで、
あまりの衝撃にぎょっとした記憶と共に、
未だにこの紙ナプキンは見えるところに置いています。
いまは目に入るたび、肩をポンとたたいて
励まされている気持ちになります。
そうして「ああ、そうだな」と落ち着きます。
「心配するな、工夫せよ」
タイミングと言葉 必要とする人にバシッと届いて
ガチャッとはまった瞬間だったのですね。
ものすごく個人的だけど、
ものすごく衝撃的な出来事ってまれに起きます。
このオジサマ、どなただったのか
なぜわたしにこの言葉をくださったのか
もはや知る由も無し。永遠に謎なまま。
でも知る必要もないのかもしれません。
この言葉、生涯たいせつにします。