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シルヴァーノのカルトッチョ 2 どうする? 5月28日

 

欠けてしまった木片を接着して

亀裂にはボローニャ石膏を塗ったところの

カルトッチョ額縁です。

 

乾いた石膏を磨きつつ、彫刻刀で分厚い石膏を

リカットしてみたのですが

▲白いところは彫刻刀で削った石膏部分

 

いやはや、やはり石膏が厚すぎです。

彫刻のラインが消えていて、リカットどころではない。

 

せめて貝のモチーフ部分だけでも塗りなおそうと

部分的に石膏を取り除くことにしました。

▲筆で水をひたひたにして

 

▲石膏がふやけたところをヘラでやさしくこそげます。

 

▲彫刻ではこんなに繊細な線が入れてありました。

 

▲4つの貝殻の石膏を取り除いたところ

 

これではほかの部分も推して知るべし。

このまま続けるか、いっそすべて石膏を取り除くか

一晩考えることにいたします。

 

ちなみに

カルトッチョというと日本では紙包料理を

指すようですが、イタリア語でカルトッチョとは

つまり紙包・・・。

この額縁デザイン、額縁の解説本によりますと

巻紙をイメージした装飾が特徴とのこと。

(紙というか葉に思えますが、さておき。)

 

シルヴァーノ・ヴェストゥリ氏彫刻の

カルトッチョ “a cartoccio” ですが

“a Scartoccio”(スカルトッチョ)と呼ぶこともあるようで

フィレンツェではスカルトッチョ、他地域ではカルトッチョ。

おそらく方言的なことだと思われます。

▲フィレンツェのパオラが書いてくれた

シルヴァーノの名前と「スカルトッチョ」

グスターヴォさんもスカルトッチョと呼んでいました。

 

さらにつづきます。

 

 

シルヴァーノのカルトッチョ 1 5月25日

 

2月のフィレンツェ滞在時に手に入れた

小さな額縁は “a cartoccio” と呼ばれる伝統デザインで

今は亡き額縁彫刻師シルヴァーノ・ヴェストゥリ氏が

手がけたものです。

わたしの額縁師匠パオラから石膏と黄色ボーロが

施されたものを買い受けました。

 

フィレンツェから日本へ送った荷物のなかで

細かい細工部分が折れてしまったのですが

▲外側220×175mm、中にははがきが入るくらいのサイズです。

 

とにかく早く直さねば、と思い立ったが吉日。

ひとまず折れてしまった木部は接着します。

▲くるりと立ち上がった葉が折れてしまいました・・・。

 

シルヴァーノ氏には残念ながらお目にかかる機会は

ありませんでしたけれど、腕も人柄も良い

繊細な人だったと各所で聞いていました。

その上でこの額縁を眺めてみると、どうも

彫刻の繊細さが石膏の厚みで隠されている気がする。

きっと彫りはシャープで細かいラインがあるはず。

 

ううーむ。ひとまず直したけれども。

なんだか違和感がぬぐえません。

石膏でモッタリしている部分は彫刻刀で

リカットしてみることに決めました。

▲なにか違和感が。

 

つづきます。

 

 

イタリア語に訳してみたら 5月21日

 

イタリア語の勉強を続けている・・・と

言えるのかどうか微妙ではありますがとにかく、

毎日イタリア語に触れるよう努めております。

 

いつも手元にあるのはイタリア語教材ですが

ちょっと気分を変えたいと思ったときに

ふと見てみたのが、自分のブログのイタリア語版。

つまり翻訳サイトで機械翻訳された自分の文章を

読んでみるというものです。

▲液晶画面を写真に撮ると水面になる・・・

 

自分で書いた文章がイタリア語に訳されると

こうなるのか、と新鮮な気持ちになったり

(機械翻訳なのでニュアンスが違う気もしますけれど)

自分が好む言い回しや単語が見えてきて面白いのです。

翻訳サイトによって訳され方も少しずつ違って

比べてみるのも興味深い。

わたしにとって翻訳サイトの新しい使い方になりました。

 

面白がってばかりでなかなか覚えられないのが

目下の悩みであります・・・。

 

 

そんな時もある 5月18日

 

ご注文を受けて作る額縁ではなくて

「こんな額縁どうだろう?」などと

思いついて試作を作る時のおはなし。

 

頭の中で描いた額縁の完成図があって

でも制作を進めるほどに、どんどん完成図から離れてしまう。

この額縁とわたしは相性が悪いのか 計画が甘いからか

何をどうしても額縁が、まるで小さな子供のように

「イヤ!」「それはダメ!」「違う!」

と叫んでいるように感じることがあります。

このまま作業を続けてもダメなものはダメ。

いったんこの額縁から離れます。

 

sora2  

 

しばらく時間をおいて考えて、それでもダメだったら?  

覚悟を決めてやり直すしかありません。

塗装も石膏もすべて取り除き、木地に戻してリセット。

そしてまた試行錯誤をはじめます。  

 

「その時」は辛いし面倒だし、もう捨てちゃおうかな!

とヤケにもなるのですが、でもまぁ結局、

作り直して後悔したこともないのです。

リセット~再開も「時間はかかるけど悪くもない」と思っています。

 

 

新しいことを始める 5月14日

 

何が苦手かとたずねられましたら

数字と虫と即答できるわたしですが

計算機を片手に寸法を出しております。

 

▲この雑然とした机は混沌としたわたしの頭の中とおなじ

 

新しいプロジェクトの準備です。

いままでになく大きな

わたしの身長より高くなるような

祭壇型額縁制作のご依頼をいただきました。

 

鼻息も荒く張り切っております!

 

 

振り返って思い出した 5月11日

 

金箔を磨き終えてあまりの派手さにおののいた

バルディーニ美術館所蔵額縁の摸刻は

すこしの古色を足して完成しました。

ぎんぎらぎんの金箔がおちついて

彫刻の凹凸、陰影がより見やすくなりました。

 

今回はオリジナルの額縁の雰囲気を追って

磨り出しはしていません。

古色用のワックスを薄く塗って磨いておしまいです。

後日に虫食い穴をまねて作るかもしれません。

 

裏には特別な吊り金具を付けました。

イタリアの友人から譲っていただいた鉄の吊り金具は

鍛冶仕事で手作りされた現代のもの、

釘はイタリアの数百年前のものをあわせました。

▲本当に古い吊り金具のよう。

 

正面から吊り金具の茶色いあたまがひょっこり見えて

なんともかわいいくてたまらんのです。

 

印象が強くて、あまり需要は無さそうな額縁ですけれど。

どうしてこの額縁を作りたいと思ったのだったかなぁと

振り返ってみたのですが、

この強烈な力強さが感じられるデザイン

内側から外側にむくむくとあふれ出すような

「末広がり感」に惹かれたのだ、と思い出しました。

 

「works」内「classical」にこちらの額縁をアップいたしました。

どうぞご覧下さい。

 

 

会うことを決めている 5月07日

 

自宅待機が長くなることになりました。

皆さまいかがお過ごしですか。

延長は予想していたとはいえ・・・

いやはや。なんとも。

心と体の健康を保ちたいと思います。

 

今年の暮れ12月、どのような状況なのか

まだあまり想像できませんけれども

毎年のルーティーン「小さい絵」展に出品できるよう

小さなテンペラ画を模写しました。

フィリッポ・リッピの聖母子像から男性横顔の部分と

ルドゥーテのバラから部分です。

 

テレビもラジオも消して、音楽をちいさくかけて

遠くの小鳥の鳴き声と風の音を聞いて

ぼんやりとしながら模写する午後などには

まるで何事もなかったころのような気分になります。

会いたい人にはやく会いたいですね。

「これが終わったら、わたしはあの人に会うのだ」

と心に決めています。

 

 

短期集中可能期間につき 5月04日

 

例によってバルディーニ美術館の

額縁摸刻作業のご報告でございます。

なにせ自宅にこもりきりですので

集中して作業を進めることができます。

これもまぁ思いがけない良かったこと、

と思うことにして。

 

前回に内側の細い部分から箔を置きはじめた

写真をご覧いただきましたが

ひきつづき外側の渦巻き状の部分にも

もくもくと箔を置きまして

メノウ棒で磨いて、金箔の穴を繕ってまた磨いて

ああ、いつまですればいいのでしょうか・・・

と気が遠くなりかけたころにようやく箔仕事が完成します。

ぎんぎんぎらぎら金箔光る・・・

派手にもほどがありましょう。

でもまぁ、一仕事終えて満足。

今夜は晩酌が美味しくなりそうです。