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額縁の作り方 34 金の繕いには 5月31日

 

久しぶりに「額縁の作り方」の

本当に額縁です。

小箱ではなく・・・。

 

さて、古典技法による額縁の

最大の特徴は箔の水押しと言えるでしょう。

日本の伝統的な方法

漆やニカワを糊にして貼り付けるのに対して

ヨーロッパの古典技法では

石膏下地にボーロと呼ばれる

箔の下地材を塗り、その上に

水を塗って箔を押し付ける。

そしてメノウ石で磨き圧着させる

(ものすごく簡単な説明ですが。)

と言うような手順です。

 

凹凸のある彫刻などに

古典技法で箔を貼るのは

どうしても箔に亀裂ができて

破れた部分の「つくろい作業」が

必要になります。避けて通れません。

 

ある程度の繕いは、小さく切った箔を

細い筆を使って穴埋めするのですが、

細かく沢山で「どうにもこうにも」な場合は

金泥を使います。

 

わたしは京都の堀金箔紛さんで買った

「純金泥鉄鉢入」を使っています。

筆もこの金泥専用の面相筆を準備します。

この金泥を使う方法は、わたしはずっと以前に

鎌倉にある「井上箔山堂」の井上さんより

教えていただきました。

なにより素晴らしいのは

この金泥はボーロの上に塗って乾けば

メノウ磨きができるということ。

ただ、平らな面や目立つ場所では

やはり見分けがついてしまうので要注意。

凹凸の凹の影、点のように小さい部分

などには大変おススメです。

 

 

Firenze2020-19 5月27日

 

念願のモスカルディ訪問

そのつづきです。

 

地図を確認しつつでしたが

わたしひとりではちょっと

たどり着けない・・・というか

薄暗い路地で入る勇気がない

というような雰囲気の場所に

突如モスカルディらしい

赤いショーウィンドウがありました。

 

中は倉庫のように広く雑然として

お店と言うより、まさに工房でした。

アルノ川沿いにあったエレガントな

お店の雰囲気とは様変わりしていて

一抹の不安。

ここがあのモスカルディ・・・??

 

だけど雑然とした部屋には

目が爛々とするような額縁の数々。

「ああ、これ、これが見たかったの!」

と叫びたくなるような額縁でした。

どの額縁も、古くても50~60年前のもの。

うう~、あるところにはあるのだ。

これがフィレンツェなんだなぁ・・・

と感慨深くなっていたら

奥の段ボール箱を抱えてきた

モスカルディさん(ご当主40代くらい)。

箱の中には無造作にこんな宝物が!

彫刻された額縁木地です。

ご覧ください、この繊細な仕事を。

▲どれも30~40センチほど。かわいいにも程がある。

 

モスカルディさんいわく

「60年前くらいのサンプルだね。

今はもうこんな職人はいないから・・・」とのこと。

 

着色もされていない木地からは

彫った職人の息遣いや視線のリアルさと、

だけどその職人はもうこの世にいないという

寂しさと不安が感じられるのでした。

 

 

分かっているからきっと 5月24日

 

読んでいる本の

登場人物のセリフで

「期待しない。

期待すると自分が壊れてしまうから。」

とか

「焦らないで。」とか

 

糸井重里さんの言う

「落ち着け」とか

 

時計の針がちくたく進む音が

頭の中に響くような毎日の中で

こうして目に飛び込んでくる言葉は

「自分にいま必要な言葉」

「無意識に求めている言葉」

なんだろうな、と思っています。

 

 

ヨーロッパやアメリカでは

着々と再開が準備されて

イタリアのラジオからは

ヴァカンス旅行の広告が流れて

じゃあわたしたちは?

と考え込んでしまう。

 

期待しないで焦らないで落ち着いて。

それともうひとつあるとすれば

「でも希望は失わないで」です。

 

 

ムスカ大佐化する夜 5月20日

 

グスターヴォ額縁は

いい加減に呼び名を変えなければ・・・

箔を貼り、メノウで磨きました。

 

なんと言いましょうか、

箔作業って一投入魂!という

集中力もをもって作業しますので

はたと気づいた時には

箔貼り中の写真を撮ることも

忘れておりました・・・。

 

まだ箔の繕いがありますけれど

とりあえず、磨き上げまして

一息ついたところでございます。

 

▲四辺中央の平坦な部分には

 箔を2枚重ねで貼りました。

 重厚感が加わります。

 

そして、四隅の彫刻部分には

点の刻印が入るのです。

▲点をひとつひとつ打ちます。

 とんとんとん・・・こつこつこつ

 永遠に終わらない気がする作業

 

いやはや本当に、純金の輝きは

目によろしくありません。

相変わらずムスカ大佐風に

「目が、目がぁぁ~!」と叫びつつ

夕刻には無事に打ち終えました。

 

 

花は小さくとも 5月17日

 

ことし初のバラが咲きました。

手入れもほとんどされずに

けなげに植木鉢で生きているバラは

花がとても小さいけれど

薫り高いのです。

数日後にはもううつむいてきていたので

切り花にして近くに置くことにしました。

記念写真を撮りましょう。

左向きが良い?

それとも右向き?

はい、右に向きたいですね。

ではブロマイドを。

まだ蕾がいくつか枝にあります。

この切り花とお別れしても

また会えるでしょう。

 

Firenze 2020-18 5月13日

 

久しぶりですが

相変わらずのペースで

2020年2月のフィレンツェ滞在記を

ご紹介させてください。

 

わたしが留学していたころ、

ヴェッキオ橋とサンタ・トリニタ橋のあいだ

アルノ川沿いアッチャイウオーリ通りに

それはそれは美しくて高級な額縁店が

あったのでした。

 

2011年に行ったとき、たしかにありました。

あいにく営業時間外だったので

外から見ただけだったのですが。

2011年滞在記:モスカルディ

 

▲こんな繊細な額縁を作るお店でした。2011年撮影

 

だけど2018年に何往復もしたけれど見つからず

お店の名前も忘れてしまっていて

結局「あのお店はもうないんだ」と

ショックと寂しさを受けてあきらめました。

 

それが今回、パオラと偶然に

そのお店の話になって

「ああ、モスカルディでしょ。

川沿いのお店は売って引っ越したのよ」

とのこと。

そして後日に知人と話していたら

「ああ、モスカルディなら

ちょうど行く予定だから一緒に行く?」

と言うではありませんか!

 

いつものように鼻息荒く付いていくことに。

だけど新しいお店は以前とすっかり

様変わりしていたのでした。

 

つづく・・・

Cornici Moscardi

 

 

気が抜けた~ 5月10日

 

4月末に大きな仕事が終わって

どっと気が抜けたゴールデンウィーク

だったのですが、

せっかく心身に余裕ができたのだから

自分の作業も進めよう、と思って

石膏を磨いて放置していた

グスターヴォ額縁の

2020年2月にフィレンツェで

木彫師グスターヴォさんに

教わりながら作ったので

こんな呼び名になってしまった・・・

作業を再開いたしました。

作業部屋の冷蔵庫には

いつもニカワや石膏液は

準備してありますので

黄色ボーロと赤色ボーロを

湯煎した魚ニカワでちゃちゃちゃと

溶きまして、ベベベと塗りました。

今回は黄色も赤も厚めです。

クラシカルで重厚な雰囲気に

仕上げる予定でおります!

 

 

それは君が考える必要ないよ 5月06日

 

またしても小箱の話・・・

なのですけれど

「ああ、そうだなぁ」と

つくづく思ったことの話。

 

小箱を作りはじめたころ

昔から額縁でお世話になっている方に

「いまこんなものを作っております・・・」

と相談に乗って頂いたことがあります。

とはいえ、仕事ついでに気軽に

「見てみて~ちょっとかわいいでしょ」

なんて感じでもあったのですが。

 

▲小箱の内側には布を貼っています。

大切なものを入れてもできるだけ安全なように。

 

この小箱たちを売り出すにあたって

形もサイズもさまざまだけど

いったい何を入れるために売るか?

どうやって買っていただく??

おすすめの使い方はあるかな???

・・・と考えていたのですが

その方いわく

「入れるものを君が考える必要はないよ。

買った人が入れたいものを入れるのだから。

思いもよらない素敵な使い方をする人が

いるはずだよ。」

 

目からうろこが落ちました。

そりゃそうだ。

空の箱を売るのですから

入れる物を指定する必要は全くない。

 

▲こんな長細い小箱ですが

なにか素敵なものを入れていただきたいのです。

 

とかく視野が狭くなるわたしです。

この頂いたひとことで、なんだか

こころがぽわ~んと軽くなりました。

 

 

ブラックレター装飾 5月03日

 

装飾に文字を入れるのが大好きなのは

もうずっと昔から変わりません。

それも、ゴシック体が好きです。

日本のフォント・ゴシックもありますが

「ブラックレター」の方を指しています。

ラテン語の慣用句などを探し出して

小箱に描きこんでいます。

身近な言語だと文章の意味を強調しすぎて

意味深な小箱になってしまうのですが

ラテン語ですと、パッと目に入っても

ひとまず文字装飾に見えますし

中世の雰囲気が好きなので

ラテン語を選んでおります。

(でもこれはわたしの感覚です。

分かる方が見れば意味深かも・・・)

今回の小箱、なかなか好きな感じに

仕上がりつつあります。

小箱作り、つくづく楽しいです。