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なんとドロ足とは! 9月30日

 

先日「額縁の作り方 22 」で

ドロ足のお話をしましたが、わたしは

「ドロ足」の名前の由来はわからないままでした。

ドロ足とは額縁の裏側に取り付ける材木で、

額縁が作品に対して高さ(厚さ)が低い場合

足す部分を指します。

▲金色の額縁本体より一段高くなっているところがドロ足。

この額縁は裏にグレーの紙を貼っています。

 

Atelier LAPIS で「ドロ足とはなんぞや」と話していたとき

MAさんがぽつりと「ドロ足って、昔は泥の木を

使って作ったのが最初だからって聞きましたよ」

と話してくださったのです。

さすがMAさん!額縁制作会社にお勤めなので

こうしたことにもお詳しいのです。

生徒さん方と「へぇぇ~~!!」が止まりませんでした。

 

泥の木について調べてみたら

日本に古くからあるヤナギ科の木で別名ドロヤナギ

成長が早いけれどあまり良い材ではないとのこと。

昔はマッチの軸木になっていたのですって。

(そういえばガサガサして折れやすい木だった記憶。)

現在はランバーコアの芯に使われることもあるそうです。

家具や建材には使えないけれど安価だから

裏側の高さ調整に使っていたということでしょうか。

 

え、じゃあもし泥の木とは違う材木を使う習慣だったら

たとえば「杉足」とか「桐足」なんて呼ばれていた

可能性があるということ??

 

現在は「ドロ足」の名称だけが残っていて

市販の額縁でも実際に泥の木を使うことはほとんどないでしょう。

とにもかくにも、ドロ足の名称由来が謎だったのは

わたしが単に「泥の木」を知らなかったから、に尽きますな。

ご存じの方にとっては「何をいまさら」ですしね。

大男が泥んこの足でドスドス歩く風景が(やめてほしい!)

いつも頭に思い浮かんでいたわたしです。

ドロ足はドロノキ・・・なるほど。

ひとつ学びました。

 

 

Firenze 2018 tempo calma №19 9月27日

 

Giovanni dal Ponte

ジョヴァンニ・ダル・ポンテという画家をご存じですか。

ゴシックとルネッサンスの端境期に

フィレンツェで活躍したそうです。

わたしはこの本を手に取るまで知りませんでした。


▲黒い布表紙。紙カバーがないのが珍しい。

 

フィレンツェのレプッブリカ広場にある書店

「Red」はとても広くて軽食がとれるスペースもあり

街の中心にある素敵な本屋さんです。

フィレンツェでたびたび行く書店のひとつ。

回廊になっている美術書売り場でこの本を見つけました。

画集ですが、どうやら2017年3月まで

アカデミア美術館で開かれていた展覧会カタログのようでした。


▲立ち読みでこの絵を見て、買うことを決めました。

 

ジョヴァンニ・ダル・ポンテ(1385~1438)は

マザッチョが影響を受けた人とありましたが

ほかにもロレンツォ・モナコ、マゾリーノ、

そして我がフラ・アンジェリコも影響されていたとか。


▲若きダル・ポンテ20代の作品。1405年ころ。

 

▲そしてアンジェリコ、こちらも20代前半の作。

1415年頃の作ですから、上の絵の10年後です。

 

アンジェリコはダル・ポンテの10歳下、

会ったこともあったかもしれません。

同時代に生きていたら影響も受けたでしょう。

だけど上の絵を見ると陰影、動きのあるポーズなど

10年という小さな時代の流れを感じます。

 

47歳で亡くなってしまったジョヴァンニ・ダル・ポンテ。

もう少し生きることができたら・・・

もっと影響を受けた画家、弟子もいたかもしれません。

日本であまり知られていない(わたしが不勉強なのですが)

この画家を知ることができて良かったと思っています。

 

 

足りないもの 9月25日

 

最近「決まらない」ことが多い。

なにを見ても何を考えてもピンと来ません。

レストランでのメニューも、額縁のデザインも。

ううーむ。なぜじゃ。

 

 

インプット不足と決断力不足。

ひらめき、自信の不足もありそう。

それだけではなくて、なにか、こう・・・

瞬発力とでもいうのでしょうか。

重く足踏みしている気分です。

 

以前にもあった「この感じ」ですから、きっと脱出します。

ちょっと落ち着いて、深呼吸などして

それからお風呂にゆっくり入ろうかと思います。

 

おすすめの脱出方法がありましたら教えてください。

 

 

荻太郎先生「バレリーナ」の額装 9月23日

 

大学時代の先輩からいただいたご注文は

荻太郎先生の版画作品の額装、

frido-1 のデザインです。

 

荻太郎先生のゼミ員だった先輩の

思い出がたくさん詰まった作品を

額装させていただけるのはとても光栄です。

作品が納められた額縁の様子は

あまりご紹介できず、空っぽの額縁ばかりですが

今回は先輩に許可をいただいて、額装した姿を

こちらでご覧いただこうと思います。

 

 

ガラスをいれてしまうと反射が写ってしまい

せっかくの作品を正面から撮影できず。すみません。

 

荻先生はいつもお好みのデザインが決まっていて

額縁からも先生を感じられるのですが

今回は先輩がKANESEI額縁シリーズから

選んでくだいました。

荻先生の作品を見慣れている方には

ちょっとびっくりかもしれません。


荻先生の代表テーマのバレリーナ。

凛としたほほえみ、涼しい色使い。

額縁には艶消し純銀箔の明るい白さと

下地に使った赤ボーロの微かな温かみで

なかなか良い雰囲気に仕上がったと思います。

 

いかがでしょうか。

荻先生に見ていただくことが叶わないのが残念。

お許しいただけたか気になります。

厳しくも思いやりのある先生のご意見を

伺いたかったと思っています。

 

 

バルディーニの額縁 9月20日

 

ようやくここまで来ました

バルディーニ美術館所蔵額縁の摸刻

まだざくざく彫りですけれども。

Atelier LAPIS の講師時間にガサゴソと

作業しておりますが、生徒さん方にも

制作風景を見ていただけるのは良いかな

と思っております。

▲額縁の中に額縁。右横に木片を置き忘れて撮影。

 

だけどこの額縁。

四角い木地から曲線形を切り出す必要がありまして

・・・大変でした。

 

ちょっと分厚い木地なのです。

自宅の電動卓上糸鋸では対応できなくて

結局、手引きのノコギリで切り出し

ヤスリで仕上げるという、まったくもって

木地作りから「古典技法」になってしまいました。

気分だけはいにしえの職人。

いや、このありさまじゃ万年見習いですな。

断面はお見苦しくて披露できませんけれど

これから何とか整えます、はい。

 

ともあれ、部分的に荒くでも彫ってみると

なんとなくイメージが見えてきたように思います。

かわいい予感。

いかがでしょうか。

 

 

そうして決めたのは 9月18日

 

迷いに迷い、悩みに悩んだ(おおげさ)

チューリップ模写の額装ですが、

けっきょくベージュの別珍に納まりました。

▲額縁木枠は購入しました。

 

無難といえば無難であります。

でもまぁ、花びらの紫と補色の黄色系で

コントラストありつつもまとまったかしらん・・・

と思っております。

お部屋もぱっと明るくなります。

いかがでしょうか。

 

 

Firenze 2018 tempo calma №18 9月16日

 

フィレンツェについてから2週間が過ぎて

ようやく行ったサン・マルコ美術館です。

敬愛するフラ・アンジェリコの美術館

すぐにでも来たかったけれど、

なんだか勇気というか、フラ・アンジェリコの

作品に対峙する気持ちを整えないと行けない

という少々緊張の心持になっていたのでした。

 

さて、気持ちを落ち着けて、でもわくわくしながら

朝一番で向かったサン・マルコ美術館は

まだ誰もお客さんがいなくてひとりじめ。

階段下から見上げる受胎告知もひとりじめ。

2018年春に聞いたイタリア文化会館での講演

「アートと科学:広帯域の電磁波で観たフラアンジェリコの壁画」は

この受胎告知図がテーマでした。

天使の翼はすべて土系の顔料で描かれていた、など

その時に知ったさまざまなことを思い出しつつ見学です。

 

そしてマリア様の衣装、今は真っ白のワンピースに

青いガウンを着ているようなお姿だけど、

アンジェリコは白ではなくて赤に描いた、ということ。

たしかに白と青の服をまとうマリア様はめずらしい。

伝統的に赤と青の衣装と「決まって」いるのですから。

 

画面に近づいて見てみれば、確かに確かに。

フレスコの亀裂に赤い顔料が残っているのが確認できます。

そうなんだ、やっぱり赤だったんだ。

 

おそらく後世の修復時に赤い顔料が取れてしまう事故が

あったのではないか・・・とのお話でしたけれど、

一体何が起こったのでしょうか。

いやまったく、その時の修復家の心情いかばかりか!

(想像するだけで身の毛がよだつ。)

そして、事故であったならなぜ補彩で赤を再現しなかったのか。

いろいろと考えてしまいました。

 

だけど、こう言っては何ですが、

白い衣装とマリア様の表情がよく合って

赤い衣装より無垢なイメージを表現できているような。

・・・いや、これは単に好みの問題ですか。

そしてもう、わたしにとってこの絵は

「これ以外にはありえない」と思い込むほど見慣れて、

そして憧れているということなのだ、と思っています。

 

 

小さなかわいこちゃん3 やっぱりちまちま 9月13日

 

小さな祭壇型額縁をつくっています。

木地を彫って、ボローニャ石膏を塗り磨き、

ようやく金箔作業です。

 

以前に「祭壇型額縁をつくる」でご紹介した額縁は

これよりもうんと大きな額縁でしたけれども

大きくても小さくても、作業手順は同じでございます。

 

今回の小さな祭壇型額縁もまた、黄色ボーロを3層塗って

赤色ボーロを2層塗りました。

今回は少々厚めのボーロです。

ボーロの層が厚いと金がしっとりと仕上がり、

薄いボーロだとさっぱりシャープな雰囲気に。

デザインやお好みで試してみてください。

 

黄色と赤のボーロを塗る場合には

凹に赤を塗らないように注意します。


▲やはりボーロの色は独特で美しいのです。

 

金箔は、大きく切った箔片をばーんと置いてから

凹をこまかく繕うか、最初から小さな箔片を置くか。

わたしは額縁が大きかろうが小さかろうが

彫刻の凹凸には、結局小さく切ってちまちまと

箔を置くほうが上手くきれいに仕上がるようです。

これは作業する人それぞれ好みや得意があるでしょう。

磨り出しの仕上がりにも影響がありますから大切です。

 

さて、箔を置いたらその日のうちにメノウで磨きます。

▲め、目が!目が・・・! 反射光が眩しく刺さります。

 

なんだかお仏壇かお神輿かといった風情ですが

これからまだまだ装飾作業が続きます。

イタリアのルネッサンス風に仕上がる予定。

乞うご期待であります!

 

 

どうするどうする? 9月11日

 

ただいま悩んでおります。

どの色の布にしましょうか・・・。

 

 

数年前に完成したのに、むき出しでおいていた

チューリップのテンペラ模写、満を持して(?)

額縁におさめようと思うのですが、

バックの布の色が決まりませぬ。

 

ベージュは明るいけれど金と色が近いのです。

 

モスグリーンはシックだけど強すぎるでしょうか。

 

となると、この茶色がかったグレーかな。

でもちょっとぼやけていますか?

 

この絵が展示される「小さい絵」展は

12月ですので、冬使用の別珍で考えたいのです。

グレーかベージュか。

いまのところ2択まで絞られました・・・。

 

でも、白のモアレですっきりと!も良さそう。

どうしよう??

なんだかもう何が何だか分からなくなって

決まらない・・・そんな時は後日に持ち越し。

新たな気持ちで見直せばあっさり決まるものです。

 

どれがお好みですか?

 

 

吊金具の美 9月09日

 

先日ご紹介しました額縁本「CorniciXV-XVIIIsecolo」の

中央あたりには、吊金具を集めた写真が

掲載されておりまして、これが素敵なのです。

▲額縁本「CorniciXV-XVIIIsecolo」より

 

昨秋のフィレンツェ滞在で買った金具2種と

パオラが使っている金具、そして

KANESEIオリジナルで作ってもらった銅と真鍮2種と

形がそっくり同じような金具も載っています。

フィレンツェで--パオレッティさんのお店で--

買った2種とパオラの金具はどちらも鉄。

本に載っている古い金具も鉄ですので錆びています。

ちなみに日本で今使われている吊金具のほとんどは

錆びないステンレスです。

鉄とステンレス、だいぶお値段もちがいますが

腐食した鉄は額縁を安全に保持できませんからね。

 

▲上の2種がパオレッティさんで買ったもの、

下左がパオラのもの、その隣2つはKANESEIオリジナル。

 

だから日本が良くてイタリアがダメという話ではなく、

湿度の違い、習慣の違いなどあります。

そして恐らくですけれども、イタリアでも美術館等では

ステンレスの吊金具も使われているのではないでしょうか。

どの金属製の吊金具を使おうと、定期点検は

必要不可欠です、という前提でのお話です。

 

だけど美しさに限って言えば、まぁわたしの好みですが

ステンレスより鉄の金具の方が断然美しい!と思います。

錆びた鉄と古色の付いた額縁の組み合わせ、

力強さと物語を秘めていると思いませんか。

▲額縁本「CorniciXV-XVIIIsecolo」より

 

錆びた鉄の吊金具は装飾としてつけて、

裏からステンレスのしっかりした金具で保持する・・・

なんて本末転倒な吊金具の使い方も考えてしまいます。

 

KANESEIオリジナルの吊金具2種

小さい方を真鍮、大きい方を銅で作ってもらっています。

ステンレスの無機質なイメージは無くて

鉄より劣化スピードが遅い(と思っていますが)ので

実用も兼ねた「見せ金具」としてはとても気に入っております。

繰り返しますけれど、どの金属の吊金具を使おうと

定期点検は必要不可欠でございます!

 

 

額縁の本 CorniciXV-XVIIIsecolo 9月06日

 

この夏、ようやく手に入れた新しい額縁本

「CorniciXV-XVIIIsecolo」です。

イタリアを中心に、巻末にスペインのものも含めて

15世紀から18世紀までの額縁が紹介されています。

 

著者のお一人 Fabrizio Canto氏とは

SNSでなんどかやり取りをさせて頂いており

この本のこともずっと気になっていたのですが

ある日Atelier LAPIS の本棚に入っているのを発見。

実物を拝見しても、やはり素晴らしい本で・・・

せっかくなのでCanto氏に連絡をしまして

ローマから直接送って頂いたのでした。

La Cornice Antica di Fabrizio Canto

 

ひとつの額縁に2ページをつかい

イタリア語と英語の解説があり、

裏面の写真もあります。

▲背景が黒いのが素敵。金色が際立ちます。

 

裏面が見えると木地の組み方も分かりますし

吊金具も見えて、とても面白い。

写真も鮮明で細かい技法や彩色のタッチも

ほんとうに良く観察できます。

 

こんな見開きページも。

じぃぃ~~~っと見ていたら1日が終わる。

そんな宝物の本です。

 

「CorniciXV-XVIIIsecolo」

Fabrizio Canto

Mario Mastrapasqua

REALITY BOOK

2015年発行

 

 

小さなかわいこちゃん 2 9月04日

 

千洲額縁さんから届いた祭壇型額縁木地、

小さなかわいこちゃんでありますが、

さっそく制作開始です。

 

下描きをしまして

 

彫りまして

 

石膏を塗ります。

 

細かい彫刻部分に石膏を塗るには

筆選び、筆に含ませる石膏液の量の調整が大事です。

細目の丸筆を使って薄く作った石膏液を少な目に含ませ

絵の具を塗るような感じで丁寧に塗ります。

液溜りができたらそのつど筆でぬぐうこと。

 

さて次の作業は、例によって石膏磨きです。

晩夏とはいえ残暑の中、石膏磨きはいつにも増して辛い。

マスクは暑い、石膏粉は肌に貼り付く

エアコンを付けると風で粉が飛ぶ・・・

いやいや、ぐちを言っている場合ではありませぬ。

やりますぞ。

 

 

家人間の悩みは深い。 9月02日

 

額縁の制作も修復も、いつも家の作業部屋で

ひとりきりで行っています。

朝から晩まで作業をする日は一歩も家から出ず

会話をするのも家族とだけ、なんてこともあります。

 

先日友人と話していたときに

「あなた、家で仕事をしている時って

どのくらい歩いているの?」と聞かれて

「300歩くらい?180無い日もあったな。アハ!」

と言いましたら心配されてしまいました。

「笑ってないでせめて散歩くらいしなさい!」ですって。

たしかに。ハイ。

でも携帯電話の歩数計での計測ですものね、

数時間立ちっぱなしの作業もありますし、

トイレに携帯電話は持って行きませんし!

・・・でもその誤差はしょせん微々たるもの?

 

▲家の中から外を眺めるって良いものです・・・。

 

運動きらい、外出きらい、家大好き、

家にいて退屈することは全くない。

スケジュール帳に予定がびっしり詰まると

安心する人とうんざりする人がいますけれど

わたしは絶対的に後者なのであります。

 

いや、でも。運動か。

しなければねぇ。そうですよねぇ。

むーん・・・家の中で出来ること(家にいたい)

階段の上り下りを沢山とか、どうですかね?

・・・だめ?