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サンソヴィーノチャレンジ つづき④ 1月31日

 

もうお忘れかと思いますが、

サンソヴィーノ額縁の制作は 続いております。

「いい加減に終わらせなさい!」との

お声が聞こえてくるようですので

そして今年のKANESEIスローガン

「スピードアップ」に則りまして

迅速に完成させる意気込みでございます。

 

という訳でして、ようやく金箔です。

この額縁は彫刻が入り組んでいますし

箔は部分的に置きますので 面倒な様に感じますが、

箔部分は平らな面が多く帯状ですから

唸らずに箔置きが出来ます。

次回は箔をメノウで磨きあげた

ピカピカの金をご覧にいれます!

完成まであと少しでございます・・・。

 

 

Firenze 2018 tempo calma №4 1月28日

 

フィレンツェは以前にも増して

外国人の姿が増えていたように感じました。

アジアや南米の方々のグループ旅行、

アメリカの若い人たち(おそらく留学生)

EUの方々の個人旅行などなど。

そしてイタリア国内各地からのお客様も。

11月のフィレンツェはオフシーズンと思いきや

美術館も教会も朝から長蛇の列なのです。

それでも夏に比べればずっと短いとか。

▲サンタ・クローチェ教会入場の列。あともう少しなのですが

この日は時間切れで列から退散しました。

 

パオラ曰く、ユーロになってからイタリアは

景気が悪くなる一方とのことですが

こうして旅行者が大幅に増えて街は賑わい

若い人の仕事も増えたように感じたのでした。

古いお店が無くなった場所には今風のレストランや

バール、素敵な土産物店が立ち並んで、

暗くなると立ち寄りがたかった界隈が

オシャレスポットに様変わりして安全になっていたり

土日の夜まで開いているスーパーマーケットが

できていたり(これが一番驚いたけれど!)。

有名な教会はすべて入場料が必要になって、

その代りとてもきれいに整備・管理されて

働く人々も増えていた印象です。

 

そうそう、トラムができていましたし!

大学病院のあるカレッジ(わたし、ここで

親不知を抜いてもらいました・・・)や

もうすぐ空港もトラムでスイーッと

行けるようになるそうです。

 

わたしの思い出の「古き良きフィレンツェ」が

消えてしまった一抹の寂しさはあるものの、

8年ぶりに様変わりしていたフィレンツェは

さらに生き生きとした街になっていたようです。

 

 

道具には合わせて作られた道具がある。 1月24日

 

わたしが日々使っている彫刻刀は

スイスのpfeil社製のシリーズで、

木槌で打って使えるのが特徴です。

 

いままで日本の木槌(キヅチ)、

いわゆるカナヅチと同じ形状で木製のものを

使っていたのですが、ようやく

ヨーロッパで彫刻に使われている

縦型と言うのでしょうか、そんな

木槌を手に入れました。

 

下の写真は左が Atelier LAPIS にある

筒井先生が揃えてくださったpfeil社の木槌、

右は作ってもらったわたしの木槌です。

ずいぶん前からLAPISにあることは知っていました。

「へんな形、使い勝手はどうなんだろう」と

長い間眺めていたのですが、使ってみたら

まぁなんと便利なのでしょうか。

手元を見ずに打ってもきちんと当たるし

木槌の重心が軸の延長上にあるので

振るのが楽なのです。

さっそく「マイ木槌」をお願いしたのでした。

 

なるほどなぁ、ヨーロッパの彫刻刀には

ヨーロッパの木槌が合うのですなぁ。

そして日本の鑿(のみ)にはきっと日本の木槌で

打つのが一番良いようになっているのですね。

彫刻刀(鑿)のおしりの形状や重さそれぞれ

違いがありますから。

合うように作られて何百年も使われているのですから

当然といえば当然なのですけれど。

 

真新しい木槌、これから使い込んで

凹みや艶が出てきてくれるのが楽しみです。

 

 

古色再考 やっぱりそうだった 1月21日

 

ここのところお話しております古色、

つまりアンティーク風の仕上げについて

しつこく考えている・・・といいますか

ふとした時に思い出し続けています。

「もう古色話は飽きました」とおっしゃるのも

重々承知なのですけれども、あとすこし

おつきあいくださいませ。

 

メディチ家所蔵の豪華絢爛な額縁は

500年経っても壊れていないし汚れていない。

金はうつくしく磨き上げて完成されていて

いまもその状態が保たれています。

 

ずいぶん前から気になっていたことに

「古色仕上げは昔からあったのか」なのですが

今回フィレンツェの旅で改めて理解できた気がします。

ルネッサンス時代には金箔をほどこした額縁に

古色仕上げはあり得なかった、ということです。

蝋燭の灯る薄暗がりで輝かすために施す金を、

なぜわざわざ汚したり古く見せる必要がある??

 

▲同じデザインの額縁。左が金そのままの輝き、右が古色つき。

 輝きも色も全く違う。

 

古色仕上げの額縁が作られるようになったのは

せいぜいここ200年くらいなのかもしれません。

建築技術が高くなって窓の大きな家が出来て

室内がとても明るくなった。

教会だけでなく家で絵画を楽しむようになった。

蝋燭からランプ、電灯になって・・・

人々の生活も考え方も好みも、幅が広がった。

そうして額縁装飾の幅も広がった、

ということなのではないでしょうか。

 

そうそう、

かすかにグレーのベールがかかったような

古い金箔の輝きを再現する方法、

ひとつの案を思い浮かべています。

近々にも試してみなければ。

乞うご期待!でございます。

 

 

祭壇型額縁をつくる6 ボローニャ石膏みがき 1月17日

 

ボローニャ石膏を塗り終え

しっかり乾燥させたら、次の作業

石膏を紙やすりで磨きます。

 

これはもう、ひたすらがんばるしかありません。

コツと言えるほどではありませんけれど、

あらゆる方向から確認して

磨き残しを作らないこと、

そのためにランプで斜めの光を当ててみること、

紙やすりは使いやすい物を準備して

ケチらず使うこと。

スクレーパーや金ヤスリ、当て木など

臨機応変に使い分けること。

マスクと髪をおおう物、場合によっては

ゴム手袋なども使って身体を守ること。

 

石膏磨きは古典技法額縁制作で

いちばんハードな作業ですけれども

おろそかにすると必ず後悔します。

「終わりが無い石膏磨きは無い。」

「続ければ終わりは来る。」

と思ってがんばる。

それに尽きます。

 

 

額縁の本 「CORNICI DEI MEDICI la fantasia barocca al servizio del potere」 1月14日

 

この本は先日「古色再考 つづき」で

お話したときに参考にした本です。

メディチ家所蔵の額縁を紹介しています。

現在ピッティ宮殿内にある銀器博物館の一室が

「Sala delle Cornici」(額縁室)

として一般公開されており、その所蔵品が

メインに取り上げられているようです。

 

1500年代初め、コジモ1世からはじまり

1700年代初頭フェルディナンド3世の時代までを

紹介しつつ、額縁と額装されている作品も

同時に見ることができます。

▲ラファエロの女性の肖像。絵は本やネット上で

 何度も観ているけれど額縁を見る機会は少ない。

 

額装された状態と空っぽの額縁。

並べてみると、なるほどなるほど。

▲古い額縁の金の輝きは薄いグレーに感じる。

 

額縁だけ見ると彫刻も全面の金箔も

装飾過多で強烈すぎるように感じても、

作品--大抵は人物画――を額装された

状態でみればすんなりと見られるのです。

美術館などで見慣れている

という理由もあると思いますけれど、

やはり額縁は作品を入れてこそなのだと納得します。

額縁は面白いです。

 

この本を買った古書店が栞を入れてくれました。

8€の割引して頂いた記録も一緒に。

思い出です。

 

「CORNICI DEI MEDICI la fantasia baroccaal servizio del potere」

Marilena Mosco

Mauro Pagliai Editore

2007年発行

 

 

Firenze 2018 tempo calma №3 1月10日

 

フィレンツェの下町にあるパオラの額縁工房は

なんと言いましょうか、片付いていません。

サンプルとして展示されている額縁は

ちょっと傾いていたりするし、

床もカウンターもなにやら物だらけです。

ホコリを被った彫刻サンプルが転がっていたり、

制作途中の木地と書類が一緒に山積みだったり。

それなのに額縁と関係ない物は

一切置いていない不思議。

 

パオラ曰く

「この雰囲気に誘われてお客さんが来るのよ。

窓から眺めて、作業している様子がある方が

通りかかった人も入りやすいからね。

キッチリ片付いているとちょっと堅苦しくて

なかなか入りづらいでしょ。」

とのこと。

なるほど、毎日のお客さんの出入りの様子から

一理あるようです。

まぁ片付けが苦手というのも本当みたいだけど!

パオラのお喋りで親切、暖かな人柄が

お店の雰囲気に表れているのだと思っています。

 

 

古色再考 つづき 1月07日

 

フィレンツェの古書店をめぐって

手に入れた本、1500~1600年代のイタリアの

額縁を集めた額縁本をぱらぱらと眺めていました。

この本はメディチ家所蔵だった額縁を集めていますから

とにかく豪華絢爛、当時の最高の技術と材料で

作られた額縁ばかりが掲載されています。

 

はたと気づきました。

「思ったよりずっとキレイ。」

(ああ、どうか「いまさら?」とは

おっしゃらないでください!)

 

すこしの擦れと、たまに虫食いの小さな穴

木地の接合部分に割れや小さな欠けはあるけれど

金箔はどこまでも、隅々まで美しい。

凹みに汚れがたまっていることもありません。

しいて言えば、金箔の磨いたばかりの輝きに

かすかにグレーのベールがかかったような

印象に「感じる」程度です。

もしかして、修復時に箔を前面貼り直した?

それなら恐らく本に記載されると思いますし・・・

 

 

完成したときから管理・保存され続けたら

500年が過ぎても汚れないし擦れないし、

壊れないのです。

わたしはなにか勘違いしていたかもしれません。

 

この「かすかなグレーのベールがかかったような」

金箔の色味と艶――カサッとしていて

艶消しではないけれどギラギラではない、

反射の色が違う――を再現したい。

どうしたらいいだろう。

わたしが作る額縁とメディチ家所蔵の額縁を

比べて考えるのも図々しい話ではありますが

ここはやはり、理想は高く持ちたいものです。

 

パオラとマッシモの古色とも違う。

「古色付け」とひと言で言い表せないような

微妙で繊細な世界です。

立ち入るのが怖いような、でも立ち入らずにはおられない

そんな気分です。

 

 

荒々しく誓います 1月03日

 

あけましておめでとうございます。

 

とうとうまた新しい年がはじまりました。

ことし1年はどのように過ごすご予定ですか。


2018年末からの体調不良で

我が家の定例行事である鎌倉詣もできず

鼻詰りでボンヤリと作ったお節料理は

なんだか味が濃かったり薄かったり。

2019年のはじまりは釈然としませんが

この不調が2019年の厄落としということにして

シャキッと復活を誓う元旦でございます。

 

今年のお雑煮は奮発して鴨出汁です。

丸餅に輪切り大根、細切りのごぼうと人参

亀甲の里芋と小松菜はいつも通りですが

鴨出汁は濃厚で滋味あふれました。

 

2019年、皆さまに佳き年となりますよう。

KANESEIにも佳き年となりますよう

鼻息も荒々しく、がんばります!

 

 

あけましておめでとうございます 1月01日

 

旧年中はありがとうございました。

新春を迎え皆様のご多幸をお祈り申し上げますと共に

本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

2019年 元旦 KANESEI