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「なんちゃって」の・・・ 8月29日

 

今日8月29日は「文化財保護法施行記念日」だそうです。

1950年の8月29日に国宝や重要文化財を保存し活用させるため

この保護法が施行されたとか。

文化財保護法のお蔭で今 安全な美術館で気軽に

素晴らしい美術品に接することができている・・・

それを思うと感慨深い思いです。

 

さて こちらは「美術品」ではないけれど

わたしが「保護」している大切なもののお話。

毎日毎日 自宅にいる日は朝から晩まで使っている

出西窯のマグカップですが

うっかり手を滑らせて 飲み口を欠いてしまいました。

割れて壊れず一安心・・・ではありますが

なんともかわいそうな姿でしたので 一念発起(?)しました。

名付けて「うそ金継ぎ」です。

本来なら漆で整形し金で仕上げるのでしょうけれど

わたしは漆をパテで代用です。

額縁に使った金箔の破片も貼りつけました。

雰囲気はとりあえず・・・一見「本物」みたい。

洗剤で洗って毎日使っても今のところ大丈夫です。

美しい仕上がり とは言えませんけれど

なんだか愛着が増したようです。

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これから機会を作って 本格的な金継ぎを勉強してみたい

と思っています。

 

 

 

La nostalgia in Italia 2011 Firenze -Castorina- 8月26日

 

イタリアの郷愁 2011 フィレンツェ -カストリーナ-

 

右岸にある宿で一休みしてから向かったのは

カライア橋を渡って左岸すぐ サント・スピリト通りにある

Castorina というお店です。

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入り口は小さく 早歩きでは見逃しそうなお店ですが

一歩入れば壁いっぱいに展示されている飾り彫刻の

豊富な種類には驚くばかりです。

そしてわたしは嬉しさのあまり目移りするばかり!

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額縁に限らず 家具や室内の装飾に使うオーナメントが

数えきれないほど並びますが 店員さんに

「これとこれとあれ 幾つずつ」と言うと

間違えることなく奥から商品を持ってきてくれるのです。

観光客や「ちょっと見るだけ」なお客さんはまず訪れないらしく

静かな店内は足音と作業の音だけが響きます。

あまりな静けさに 少々緊張してしまいました。

 

奥の机(壁同様に商品が展示されている机)では

家具にゴンマ・ラッカ(シェラックニス)を塗る職人さんの姿。

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「写真を一枚良いですか?」と尋ねると 無言で頷いて下さいました。

とたんにちょっと照れくさそうな表情と動きになって

これがまたいかにもフィレンツェの職人さんらしいのでした。

 

zecchiと並んで フィレンツェに行ったら必ず寄りたいお店のひとつ。

頂いたカタログ代わりのCD-ROMを見ながら

今から次に行ったときに買いたいオーナメントを選んでいます。

Castorina : http://www.castorina.net/

 

 

額縁と作品が接するところには 8月22日

 

いま古い額縁の修復をしています。

表側はベージュと金の装飾で凝っていて かなり華やか。

制作年代ははっきりしませんが

販売当時かなり高額だったと推測します。

ですが今は亀裂や欠け 浮き上がりがあるので

とにかく剥落止めをしてこれ以上壊れないようにして

そして洗浄して充填・・・と作業をすすめます。

 

さてこの額縁に納められていた作品は

キャンバスに油彩で薄塗りに描かれた風景画なのですが

作品の縁近くを見てみましょう。

IMG_0501

写真中央上 キャンバスの縁に白い部分がありますね。

そしてその下 前景の草が描かれたあたりにも

白い部分が連なって見えています。

これは絵具がこすれて剥がれてしまった いわば傷痕です。

拡大写真を見てみると

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絵具 そして絵具層の下塗りに当たる白い地塗りも剥がれ

キャンバスの布目まで見えるほど擦り切れ えぐれてしまっています。

この症状を「額擦れ」と呼びますが

その原因は 名前のとおり残念ながら額縁にありました。

 

この作品の額縁にはガラスが入っていませんでした。

つまり額縁とこのキャンバスは直に接していたのですが

その接していた部分 額縁の「かかり」と呼ばれる部分が

平らに整えられておらず 凸になった部分に長い時間こすれて

キャンバスに穴が開く寸前までに至る大きな傷を作っていました。

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上の写真はその額縁を裏側から見た状態です。

額縁の内側の縁に モジャモジャと白い線が見えますね。

これを拡大してみると

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額縁の内側の縁(かかり)の白いクリームが垂れているような部分は

木地に塗った石膏(あるいは胡粉等)下地が垂れたもので

いわばバリのような余計な部分です。

この垂れた凸部分が長い時間をかけて 作品に傷を作っていました。

これは本来 額縁を制作する段階で磨いて取り除くべきものです。

なぜこんなに立派な本額縁の「かかり」が整えられていないのか

職人さんが忘れただけなのか・・・不思議ではあります。

 

とにかく! 何はともあれ!!

中に納める作品に傷をつけてしまう額縁など本末転倒です。

今回は特に珍しい例 そして重症な例ではありますが

古い額縁に長い間納められているキャンバス作品に

「額擦れ」は決して珍しい症状ではありません。

そして「額擦れ」は中々防ぐのが難しいのが現実ではありますが・・・

大切な古い作品をお持ちの方は

額縁と作品が接する部分を気を付けて観察してみてください。

そして残念ながら目立つような擦り傷があったら

可能ならプロの絵画修復師に処置をご相談ください。

作品の修復とともに額縁の改良も行って頂きたいと思います。

具体的には 額縁と作品の間にクッション材を挟む等

様々な改良方法があります。

そして安心してまた額縁と作品が寄り添って過ごせるように。

 

 

冬の海と夏の海 8月19日

 

ずいぶん以前のトピックで 「海は冬が好き」と

お話したことがありました。

鎌倉に行ったときのことだったでしょうか。

それは今も変わりません。

 

今年訪ねた下田の海には

強風で人影もなく 美しい風景が広がっていました。

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陽射しあふれる空と白い雲 透明で真っ青な海は

今にも階段を駆けだして 歓声を上げながら飛び込みたい美しさです。

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実はこの写真を撮ったのは半年前 真冬の2月。

あまりの寒さで人がいない時でした。

同じ日の夕暮れに 別の角度から撮った写真は明らかに冬です。

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茶色にかれた草と 足跡は靴ばかり。

8月の今 きっと砂浜は海水浴客で賑やかになって

草は青々と茂り 裸足の足跡が沢山ついているでしょう。

その風景も見てみたい。

でも暑いのでしょうね・・・。

 

 

La nostalgia in Italia 2011 Firenze -Extra 9 Loro camminano – 8月15日

 

イタリアの郷愁 2011 フィレンツェ -番外9 彼らは歩く-

 

歩き疲れた午後に 宿にいったん戻って一休み。

部屋に上がるのも面倒で 暖炉の燃える暖かなサロンの

ソファーで気分転換することにしました。

ナポレオンをテーマにしているのでしょうか

壁には沢山の額がありました。

高い天井に緑の壁・・・不思議と落ち着きます。

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日が暮れるにはまだ早い時間 窓からは

道を歩く人々が見え なかなか面白い観察でした。

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まずはこの男性。

わたしの印象と記憶では フィレンツェの冬に

一番多く見かける男性ファッションです。

ジーンズに大きなハーフコート。(ジャケット?ジャンパー?)

これは黒だったり深緑だったり革製だったり。

でも靴はほとんどの人が茶色な印象。

30代から70代くらいまで幅広い年齢層で見られます。

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次にあらわれたのは 歩く姿も美しい女性二人組。

奥の人は歩きやすそうな柔らかいブーツに

鮮やかなオレンジ色のパンツを ブーツインしています。

街の中に屋根瓦のオレンジ色や明るい色の木製品があるせいか

このパンツの色も風景に馴染んでいました。

手前の女性は全身モノトーンで 大きなバッグや

ワンポイントの入ったタイツはわたしも好きです。

そして驚くほど高いヒールでも 膝の後ろをきっちり伸ばし

石畳を歩きぬける・・・その動きが一番のお手本でしょう。

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最初に観た男性が 商店や工房の方だとしたら

こちらの男性は まさにサラリーマンですね。

磨かれた黒い靴にビジネスバッグもコートも

そして手袋も黒。

お仕事中なのか かなりの早足で通り過ぎました。

フィレンツェではミラノやローマより

サラリーマン的な服装の男性は少ない印象です。

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最後の男性は 年齢は写真からはよく分かりませんが

手にする紙袋に目が留まりました。

なんだか・・・富士山の絵に見えませんか?

はたまたセザンヌの絵? いやいや やっぱり富士山でしょう。

日本土産をもらったのか 何かの偶然か

(実は富士山はまったく関係がなかったか?!)気になります。

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さて・・・こうして人間観察をしている間に

棒のようだった足も 少し楽になりました。

これから目指すは 昨日は既に閉店していたお店へリベンジです。

もちろん わたしも歩いて行きます。

 

 

 

幸福の丘 8月12日

 

丘の上にあった古いガラスの温室には人の気配も音も無いけれど

所せましと並ぶ植物から発せられる生気が満ちていました。

でも そんな植物も管理人しか愛でる人も居ないようでした。

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柱や滑車に浮いた錆びの退廃的な美しさと

植物のざわめきが聞こえそうな瑞々しい美しさ

対比も鮮やかでした。

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その温室は「幸福の丘」と名付けられた場所にありました。

世の中に辛いこと 悲しいことがあっても

この温室内は隔絶され 特別な幸福に満ちていて

世界の終わりが来ても ここだけは今のままの姿で存在するのかもしれない

そんな錯覚を思わせる不思議な空間でした。

 

 

ドラキュラ伯爵のベッド ふたたび 8月08日

 

6月に完成したバースプーン用の変形額縁は

http://www.kanesei.net/2013/06/13.html

その後 二つ目のご注文をいただきました。

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ひとつ目の額縁はバースプーンを留めつけてあり

裏から木ネジで閉じる構造にしましたが

新しいものは額縁というより宝石箱のような構造です。

ガラスの入った蓋を蝶番で固定し 開閉できるように。

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底は前回同様に黒いベルベット仕上げですが

ベルベットの下には薄いコルクシートが貼り込んでありますので

軽いものなら虫ピンで刺して納めることができます。

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そして留め金で閉じます。

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この留め金に房飾り(タッセル)をつけたら良いな・・・

というのは わたしの個人的好みですけれど。

 

この額縁には葉巻に巻いてあるテープ状のラベルが

いくつも納められるそうです。

蓋の開閉が簡単なので ラベルの入れ替えも容易です。

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たとえば 標本の展示や長い首飾りの収納も良いかもしれません。

 

こちらの額縁も浅草にあるバー用品とグラスの専門店

「グラスファクトリー・創吉」さんでご覧いただけます。

どうぞお立ち寄りください。

創吉: http://sokichi.co.jp/

 

 

La nostalgia in Italia 2011 Firenze -Cornici Maselli- 8月05日

 

サン・ロレンツォ教会からサン・マルコ教会への道すがら

留学当時から気になっていた額縁工房の前を通りました。

「Cornici Maselli」という大きくて名のある工房です。

入り口は小ぢんまりしていますが 奥は広く

ショーウィンドウはいつも上品にまとめられています。

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手前のウィンドウには小さなピノキオ人形が可愛らしい。

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入り口左側のウィンドウにも手の込んだ高級額縁と一緒に

白いケースに大切に入れられた白木のピノキオが見えます。

どうやら「ピノキオ文化協会」という会があり

このお店の方は会員で 物語にある実物大のピノキオ人形を作ったとか。

額縁とともに手彫りのピノキオ人形も販売しているそうです。

物語「pinocchio」の舞台はフィレンツェ

額縁もフィレンツェの特産工芸品のひとつ

そしてどちらも木工職人の手仕事

という繋がりがあるのです。

 

この日 ひさしぶりに「Cornici Maselli」の美しい店構えを見て

本当はもっとじっくりウィンドウを覗き込みたかったのですが

なんだか気後れしてしまって そそくさ退散しました。

またいつか訪ねる日があったらきっと お店の中まで入って

Maselli氏にお会いしてみたいと思っています。

Cornici Maselli : http://www.cornicimaselli.com/index.php

 

黒い穹隅 8月01日

 

新しく完成した小さな額縁の名前は迷い

なかなか決まりませんでした。

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額縁の中に楕円の装飾板を入れたデザインは

古くからあってオーソドックスなものです。

おそらくこの形の額縁には決まった名前があるのだと思いますが

わたしは「黒い穹隅」(pennacchio-nero)にしました。

穹隅とは建築用語で三角小間のことだそうです。

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黒の下に赤を塗って すこしの磨り出しをしています。

もうすこし赤を感じられる仕上げにしても良かったかもしれません。

 

なかに何を納めましょうか・・・

肖像画 静物画 風景画 それとも モノクロの写真?

いつもは作品に合わせて額縁を作りますが

まず「額縁ありき」で作品を選ぶのも楽しいものです。

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* 「works」内「classical」にこちらの額縁をアップいたしました。

どうぞご覧下さい。

* また通販サイト「ahico」にて販売中です。

そちらのページもぜひご覧ください。

ahico artist market place: http://www.ahico.net/