diario
幸福の丘 8月12日
丘の上にあった古いガラスの温室には人の気配も音も無いけれど
所せましと並ぶ植物から発せられる生気が満ちていました。
でも そんな植物も管理人しか愛でる人も居ないようでした。
柱や滑車に浮いた錆びの退廃的な美しさと
植物のざわめきが聞こえそうな瑞々しい美しさ
対比も鮮やかでした。
その温室は「幸福の丘」と名付けられた場所にありました。
世の中に辛いこと 悲しいことがあっても
この温室内は隔絶され 特別な幸福に満ちていて
世界の終わりが来ても ここだけは今のままの姿で存在するのかもしれない
そんな錯覚を思わせる不思議な空間でした。