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サンソヴィーノチャレンジ ひとまずお終い 4月29日

 

ほぼ1年がかりでガサゴソと作った

サンソヴィーノ額縁

これにて完成といたします。

 

うず巻きの角度が釈然としない。

シャープさが足りない・・・。

サンソヴィーノ額縁と名のるには躊躇いたしますので

ひとまず「サンソヴィーノ風 Gusto Sansovinesco 」

とさせて頂こうと存じます・・・。

 

真鍮の特製金具を取付けました。

丸い金具がぴょこんとのぞく姿は

やはり愛らしくて気に入っています。

それにしてもキョーレツな額縁です。

サンプルとしても持て余す予感であります・・・。

 

「works」内「classical」にこちらの額縁をアップいたしました。

どうぞご覧下さい。

 

 

「イタリア美術夜話」修理 4月26日

 

先日、神田の古本まつりに行ってまいりました。

これ以上本を増やすまいと言っていたのは

誰だったっけな・・・と思いつつ。

買おうと手に取った途端に

裏表紙がポロリと外れてしまったのは

三輪福松先生著「イタリア美術夜話」

昭和32年の本でした。

カバーもケースも無くなった300円の古い本。

読み始める前にまず修理でございます。

▲裏表紙にはフィレンツェの地図。まっぷたつ。

額装に使う無酸のテープを貼ってどうにかこうにか。

表は綿テープ、内側は紙テープで丈夫になりました。

▲こうしたテープが家にあるのは便利です。

見栄えもなにもありません。テープで補強のみ。

でも読むのはわたしだけですからまぁいいか。

 

秘蔵の紙で カバーをかけて仕上げ!

と思いつつも、カバーは読むには邪魔ですので先送り。

とにかく読み始める準備は整いました。

また読後に感想などお付き合いください。

 

 

サンソヴィーノチャレンジ つづき⑤ 4月24日

 

いつから作りはじめたのかもはや

記憶がさだかでないサンソヴィーノ額縁、

調べてみたら昨年2018年6月でした。

構想時間もふくめるとほぼ1年。

やれやれでございます。

 

前回は金箔を貼っている作業を

ご覧いただいたのですが、今日は

いよいよ満を持して(?)仕上げです。

 

白木部分には水性ステインという

木部着色剤を塗ります。

磨いた金と茶色のコントラストが生々しい。

 

そして古色付け。

叩いて凹ませ、磨り出して下地の赤を見せて、

茶色のワックスを塗り込み「ほこりパウダー」をはたく。


満身創痍の身に油と粉塵を塗りたくるという

まさに「額縁の拷問」、可哀想ですけれど

心を鬼にして。

 

さて、汚しを付けたらパウダーがなじみ

ワックスが乾くまでしばらく寝かせます。

やわらかいウエスで磨いて、足りなければ

同じ作業を繰り返し、好みの「古さ」を表現します。

完成目前です。

 

 

思い出を共にした人へ 4月22日

 

小さな額縁が完成しました。

 

17mm幅の木地、白で模様を入れたスペースの幅は

5mmしかなくてほとんどミニチュア額縁です。

筆さばきもなかなか大変でしたけれども、なんとか。


中央部分の星が気に入っています。

 

この額縁には昨年フィレンツェで買った版画を入れて

ベルリンに住むドイツ人の友人へ贈る予定です。

昨年秋、12年ぶりに再会することができた友人K。

彼女がいなければわたしは留学3年間を乗り越えること

――楽しいことは山ほど、辛いことも同じくらい――は

できなかったと思っています。

 

4月21日(今年はイースター!)が誕生日のK、

間に合わなかったけれど、そして

彼女への感謝にはささやかすぎる贈り物ですが

フィレンツェ風の額縁に、フィレンツェ風景を納め、

2018年秋のフィレンツェの思い出を籠めて。

 

「works」内「classical」にこちらの額縁をアップいたしました。

どうぞご覧下さい。

 

 

Firenze 2018 tempo calma №9 4月19日

 

2018年の秋にフィレンツェに1ヵ月間

滞在した時のことをお話しております。

1ヵ月間という旅行としては長く

住むというには短い期間、

小さなアパートを借りることにしました。

 

 

場所は中心街の中心、どこに行くにも

――パオラの工房もグスターヴォさんの工房も、

アルノ川の右岸も左岸も――とても良い場所。

変な話、お手洗いに行きたくなったら

アパートに帰る、といった感じでした。

▲背中側にベッドスペース、窓の向かいがキッチン。

右にバスルーム、玄関がつづきます。

 

きちんとしたキッチンが付いているダイニング

カーテンで仕切れば独立するベッドスペース、

▲白が基調の部屋にドライフラワーや花のパネル。

フェミニンですが落ち着インテリアです。

 

洗濯機、冷蔵庫、電子レンジや食器も完備

お湯がたっぷり出るシャワーもあります。

▲右奥のカーテンの中に洗濯機があります。

 

部屋は2階ですがエレベーターがあるので

大きなスーツケースも大丈夫でした。

歩いて数分でスーパーマーケットにもすぐ。

ひとり暮らしには十分快適です。

 

つかの間のひとり暮らし、気ままに

好きな時に好きなものを食べて寝て、

夜遊びで遅くなっても気を使わず。

留学時の友人と再会して当時を思い出し、

お互い歳を取ったねなんて尽きない話をして。

滞在たった1ヵ月、されど1ヵ月、

とても思い出深い部屋になりました。

またいつか行きたいな、と企んでいますが

その際にはぜひともまたこの部屋を

お借りしたいと思っています。

早く計画たてなくちゃ。

 

 

雄牛の胆汁 なぜ今も 4月17日

 

雄牛の胆汁を買いました。

 

ご存知の方もいらっしゃると

思いますけれども、これは

水彩画やテンペラで使う「はじき防止剤」

つまり界面活性剤の働きをします。

磨き上げた金箔の上に卵黄テンペラで

彩色するとき、絵具が金にはじかれて

定着しませんが、この液を数滴いれると

伸びが良くなり、しっかり定着してくれます。

とても役に立つのです。

これがあればグラッフィート装飾もスイスイ。

 

ルネッサンス初期の技法書にも載っています。

この液体を絵具に混ぜてみようと思った

最初の人は素晴らしい発想と勇気の持ち主。

 

いまは合成で無色透明無臭、

商品名だけ「雄牛の胆汁」として

販売されているものもあるようです。

でも今回わたしが購入しましたのは

イタリアのマイメリ社製で、

精製されているけれどまさに牛の胆汁。

薄黄色でちょっとした臓物臭もあります。

浮遊物もちらほらと。(何かは知りたくない・・・)


いまとなってはわざわざ牛の胆汁を買わずとも

合成の方が良いのかもしれませんが

古典技法を常とするKANESEIとしては

古い処方の物が手に入るならば

やぶさかではありません。

臭いけど。

 

ちなみに上の写真、左にあるのは

ずいぶん昔にフィレンツェの画材店

ゼッキで買ったものです。

経年ですこし色が濃くなりましたが

そして何やら白く沈殿していますが

買った当初から濃い茶色、そして

その臭いたるやもう苦くて塩っぱい

強烈な異臭を発していました。

思い出してもグワーッときます。

 

ゼッキ製のフタを開ける勇気は

もはやありません。

でも「謎の毒薬」風の枯れた佇まいは

なんだか気に入っています。

「これを飲むと手がヒヅメになるよ

フフフ・・・」とかなんとか。

飲み物に混ぜてもあまりに臭くて

すぐにバレそうであります。

 

 

額縁の本「Pandolfini: Cornici antiche e dell’ottocento」 4月15日

 

これは本、ではありますけれども

オークションのカタログです。

昨年のフィレンツェ滞在で訪ねた

古本のお店で見つけることができました。

写真も豊富で、とても良い資料です。


Pandolfini パンドルフィーニとはフィレンツェにある

大手オークションハウスです。

2018年の4月18日に行われたオークションに

かけられた額縁カタログですので、開始価格と

落札予想価格も載っているのが興味深いところ。


予想価格が低い額縁で€700(130円換算で

91.000円)くらい、高い額縁ですと€9000

(1.170.000円)ほどと紹介されています。

ほほう・・・

どんな人が落札したのでしょうか。

 

広大な屋敷の奥にある薄暗い展示室には

膨大な額縁コレクションがあって、

壁一面に新旧問わず素晴らしい額縁が飾ってある。

そこに今日、18世紀の額縁が新たに加えられた。

これから先は門外不出、人目に触れることも無い。

部屋の主は夜な夜な絹のクロスで額縁を磨き

ひとりごとのように額縁に話しかけている。

使用人はみな不気味がってこの部屋には近づかない。

でも主は、これら額縁を作ったいにしえの職人たちの

姿と声を毎夜感じ、聞き続けているのだ。

 

額縁オタク。

妄想してしまう。

この本に掲載された額縁たち

どこから来て、どこへいくのでしょうね?

 

 

貼るのか置くのか問題 4月12日

 

以前「祭壇型額縁をつくる 8 」でも

お話したのですけれど、

金箔は額縁に「貼る」のか「置く」のか。

独り言のような内容でございます。が、

留学を終えて帰国当時からなんとな~~~く

気になり続けている貼るのか置くのか問題。

言い方ひとつではありますが、でも

言い方って大切ですから。

 

日本の額縁制作の世界では、箔は

「貼る」ではなく「置く」と表現します。

日本の額縁創成期は漆工の職人さん方の

活躍が多かったそうなので、

そのまま伝統的な「箔置き」という言葉が

使われ続けてきたのではないでしょうか。

 

 

一方、KANESEIのお客様などからは

「金箔が貼ってあるのですか」とのお言葉が

多いところから鑑みるに、日本語では

一般的に金箔は「貼る」のでしょう。

薄い紙状のものをくっつけるのは「貼る」です。

 

さて、イタリアの職人さんはなんと言うか。

Io metto foglia d’oro. わたしは金箔を置く。

「置く」“mettere”という動詞を使います。

やっぱり「箔を置く」のですよ。

なんでだろう。

どうしてでしょうね??

 

実際に西洋古典技法で箔の作業をしてみれば

たしかに「箔を置く」という感覚ではあります。

おそらく漆工の世界の感覚でも、箔は

置くと表現するのが相応しいのでしょう。

極めて薄い金箔を、日本は竹挟みではさんで、

あるいは透けるような和紙につけて、

イタリアは繊細な刷毛に静電気でつけて持ち上げて、

対象のもの――漆器や仏像、額縁――に

フンワリと置いて、そしてそっと押さえる。

 

「箔を貼る」は完成品を見ている人の感覚

「箔を置く」は製作の作業をしている人の感覚

から出てくる表現、でしょうか。

 

 

となると、他のアジアの国で漆工に携わる職人さん、

ロシアのイコン制作の方々、

ポーセレンや写本の世界などでは

どう表現しているのか知りたいのです。

む~ん・・・箔を「置いて」いるような気がする。

辞書や翻訳サイトでは出てこない

いわば現場の表現ですからね、

いつか職人さんご本人にお聞きするチャンスが

あれば面白いなぁ、と思っています。

 

 

まるい。 4月10日

 

我が家のまえには立派な桜の木があって

桜吹雪が庭にも道にもいっぱい舞います。

それはそれはうつくしい。

 

あれ、花びらの跡がまるい。

 

下はマンホール。

たくさん集まるとピンクもより濃く華やかです。

 

午後の強い風のあと、もう消えていました。

ほんのしばらくだけの、まるくきれいな風景でした。

 

 

回廊の記憶 4月08日

 

白いアーチの並ぶ回廊

濃い色の空

強いコントラスト

イタリアの画家ジョルジョ・デ・キリコの

描いた風景に似ていませんか。

 

ここはフィレンツェ、捨子養育院の中庭。

美術館となった今、子供はもういません。

 

キリコの風景画は、イタリアの人にとって

どこかで見たことのある風景に感じるとか。

日本人のわたしにとっては

とても特別で不思議な風景でしたが

この中庭で「イタリアには本当にあるなぁ」と

驚きつつ納得しました。

 

 “Mystery and Melancholy of Street” Giorgio de Chirico 1914
Private Collection

 

数年前にリニューアルした捨子養育院美術館は

お客さんがとても少ないのが不思議なほどに

素晴らしい絵画コレクションが、

ギルランダイオの傑作が待っています。

ぜひ晴れた日に来てください。

 

捨て子養育院美術館:Museo degli innocenti

 

 

生まれた時は大きかった 4月05日

 

修復でお預かりした額縁の裏の角。

木材が欠損しています。

でも、なんだか変ですぞ。


上の写真、額縁左上角には木片が45度の

角度で差し込み留めてあります。

本当ならこの木片は下半分にも突き抜けているはず。

▲角の接合部分に細い木片(サン)が差し込まれ

強度を与えている。本来ならこうなっていたはず。

写真はAtelier LAPIS よりお借りしました。

 

おそらく、この額縁はサイズ変更されたのでは?

45度の接合部分を切って(サンも同時に切られる)

すこしだけ切り取ってから

また接合したけれど、接着剤と釘固定で終えた。

角にあったサンの残骸は経年で落ちた。

つまり大きなサイズだった額縁を切って

小さいサイズに作り直した。

・・・と想像します。

 

なんと乱暴な!とも思うのですが、

違う作品のために額縁のサイズを変える

というのは珍しいことではありません。

ヨーロッパの古い額縁が修復に来ると

たまに出会います。

フィレンツェのパオラとマッシモの工房にも

お客様の依頼でのサイズ変更仕事がありました。

小さい額縁を大きくするのは難しいけれど

大きい額縁を小さくすることは

デザインさえ大丈夫なら可能です。

 

古くてすてきな額縁が手に入ったけれど

サイズが合わないから、あきらめる?

気に入っていた額縁だけど、合うサイズの

作品が手元にもうないから、お払い箱?

一概には言えませんし、サイズが合う作品に

出会うまで倉庫で待てれば良いけれど。

加工して再利用可能なら、して頂きたい。

でもその際の加工は丁寧に、と思います。

 

さて、今回の額縁ちゃん。

裏の角ですからほとんど見えないし

強度にも影響はほぼありませんが

失くしてしまったサンの代わりの木片を

貼りつけました。

▲三角の木片を接着して

▲水性ステインで着色

 

額縁の裏側はその額縁の歴史が見えて

とても面白いのです。

裏側をじっくり見ることができるのも

額縁修復の醍醐味でございますよ。

 

 

Firenze 2018 tempo calma №8 4月03日

 

パオラは骨董市や工房に訪ねてくる業者から

古くて良い作りだけど壊れている額縁を

手に入れて、修復して販売もしています。

 

わたしが行ったとき、お店には修復が

終わったばかりの額縁があったのですが

気になって気になって。

迷った挙句に売ってもらうことにしました。

わたしにとってはなかなかの出費でしたけれど

古いものとは出会いが大切です。

逃せば2度と会えませんから。


17世紀風のデザインですが、作られたのは

20世紀初頭の額縁ですのでさほど古くありません。

なんだかとても「イタリアっぽい」額縁です。

 

さて、どこが修復されているでしょうか。

お分かりですか?

答えは裏から見ると分かります。

 

左の長手(裏から見ると右)と

上下の花状装飾部分です。

▲上部、小さなパーツは欠けやすい。

セロテープの跡が残っているけど気にしない・・・?

 

▲ヤスリの跡も豪快に残っていますがへっちゃら?!

最下部の半円に割れて継いだ痕跡が見える。

 

パオラが買った当時、花状装飾はすでに

昔に修復がされていて、左長手が無い

状態だったとか。

パオラが新しく作った長手は、裏からみれば

修復後と分かるよう白木のままにしたそうです。

 

ちなみにこの長手の彫刻、グスターヴォさん

手によるものだとか。

お世話になったふたりが修復した額縁、

愛着もますます湧きます。

 

いまはまだ空っぽの状態ですけれど

古いガラスの鏡を入れたらかっこいいな。

鏡の古色加工(と言うのでしょうか)もしてみたいな!

傷や白い斑紋、黒い錆びが浮いたような

ぼろっちい鏡をつくってみたい。

などと企んでおります。

いつになるやら、ですけれども。

 

 

プリンセスにはリボンが必要ですから 4月01日

 

今回できあがった額縁ったらもう

ペールピンクにゴールドのリボンという

甘々スイートな額縁です。

ディズニープリンセスのキャンバス作品に

あわせて作りました。

ピンクとリボン。

お姫様には欠かせないですからね。

 

我ながらかわいらしい額縁ができました。

 

リボンのオーナメントはずいぶん前に

骨董市で買ったフランスの古い金具から

型取りしたものです。

古典技法ではないけれど、こんな額縁もつくります。

 

 

この額縁、ホームページでご紹介するのに

classical   modern どちらのカテゴリーか

悩んだのですけれど、modern といたします。

でも、ううむ、釈然としませんがひとまず。

 

という訳でして

「works」内「modern」にこちらの額縁をアップいたしました。

どうぞご覧下さい。