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雄牛の胆汁 なぜ今も 4月17日

 

雄牛の胆汁を買いました。

 

ご存知の方もいらっしゃると

思いますけれども、これは

水彩画やテンペラで使う「はじき防止剤」

つまり界面活性剤の働きをします。

磨き上げた金箔の上に卵黄テンペラで

彩色するとき、絵具が金にはじかれて

定着しませんが、この液を数滴いれると

伸びが良くなり、しっかり定着してくれます。

とても役に立つのです。

これがあればグラッフィート装飾もスイスイ。

 

ルネッサンス初期の技法書にも載っています。

この液体を絵具に混ぜてみようと思った

最初の人は素晴らしい発想と勇気の持ち主。

 

いまは合成で無色透明無臭、

商品名だけ「雄牛の胆汁」として

販売されているものもあるようです。

でも今回わたしが購入しましたのは

イタリアのマイメリ社製で、

精製されているけれどまさに牛の胆汁。

薄黄色でちょっとした臓物臭もあります。

浮遊物もちらほらと。(何かは知りたくない・・・)


いまとなってはわざわざ牛の胆汁を買わずとも

合成の方が良いのかもしれませんが

古典技法を常とするKANESEIとしては

古い処方の物が手に入るならば

やぶさかではありません。

臭いけど。

 

ちなみに上の写真、左にあるのは

ずいぶん昔にフィレンツェの画材店

ゼッキで買ったものです。

経年ですこし色が濃くなりましたが

そして何やら白く沈殿していますが

買った当初から濃い茶色、そして

その臭いたるやもう苦くて塩っぱい

強烈な異臭を発していました。

思い出してもグワーッときます。

 

ゼッキ製のフタを開ける勇気は

もはやありません。

でも「謎の毒薬」風の枯れた佇まいは

なんだか気に入っています。

「これを飲むと手がヒヅメになるよ

フフフ・・・」とかなんとか。

飲み物に混ぜてもあまりに臭くて

すぐにバレそうであります。