diario
Firenze 2020-6 9月28日
ひきつづき外食ご紹介編です。
なにせ気ままなひとり旅(ひとり滞在?)ですので
気が向いたらぽいっと行って好きなものを食べる。
とても気楽で楽しいけれど、たまに寂しい・・・
でもまぁそれも醍醐味でございます。
週末はグスターヴォさんの彫刻授業も
パオラの工房手伝いもありませんので、思い立って
「捨て子養育院」美術館のカフェへ。
ここは様々なガイドブックやネット記事で紹介されていて
ご存じの方もたくさんいらっしゃるでしょう。
美術館付属ですけれど、カフェだけ行きたい!
という場合もOKなのがまた素敵なところ。
▲ドゥオーモを北側から眺める。
捨て子養育院だった建物の洗濯物干し場、つまり
屋上テラスが数年前にカフェに改装されたそうで
なにせもう眺めが素晴らしいのです。
日当たりも良くて空いていて、のんびりした雰囲気。
この日はランチ目掛けていきましたので
カジキマグロのカルパッチョとクラフトビール。
紙袋には数種類のパンが入っていて、
トスカーナの塩なしパンとカルパッチョの塩味が
絶妙なのでした。
▲お昼からビール・・・良いのです、休日ですから。
イタリアでもクラフトビールは盛んで、白ビールが美味しかった!
ガラスに覆われた室内は2月でもサンルームのように
ポカポカして、目の前にはドゥオーモの絶景があって
ひたすらぼぉぉぉ~~~っとしてしまう。
あまりに気に入ったので後日友人とまたランチです。
この日はランチタイムを過ぎていたけれど
快くランチ対応をしてくれてさらにファンになってしまう!
(空いていたからという理由もありそうですが。)
▲この日はツナサラダ。パンと席料込み16ユーロだったでしょうか。
日本なら二人分はありそうなサイズにびっくりです。
安くはないけれど、このボリュームとロケーションなら
まったくもって悪くないと思います。
観光客があふれるフィレンツェで、ゆっくりできて
気持ちの良い場所ってあまり見つかりませんけれど
ここはとても良い場所、おすすめです。
あまり知られて混まないでほしいなぁ・・・などと
思ってしまいつつのご紹介でした。
サンソヴィーノの双子 ひとつ完成 9月24日
ふたつ同時に作りはじめたサンソヴィーノ額縁は
練習台になっていたものが一足早く完成しました。
目に刺さるような派手さだった「出来たてほやほや」に
磨り出しをしてワックスとパウダーで汚して
アンティーク風に仕上げて・・・ようやく落ち着きました。
▲吊り金具は現代の手作り。釘は古いもの。
どちらもイタリア製。
下の写真、ひだりページの額縁を
参考に今回の額縁を作りました。
オリジナルは全面金ですけれども。
このオリジナル額縁のデータとして本には
「サイズは225×240mm、おそらく1560~1580年頃に
作られたかなり小さくシンプルなサンソヴィーノ。
大きな額縁をサイズダウンしたのではなく、
元々この小さなサイズで作られた。」とのこと。
ちなみにわたしが作った額縁は
外側寸法が242×225mmです。
この額縁にはどんな作品が納められていたのでしょう。
プライベートコレクションですので
知る由もないのが残念です。
前回につくったサンソヴィーノ額縁・・・いえ、
「サンソヴィーノ風額縁」は厚みが足りなくて
悔しい思いをしましたが、今回はまぁなんとか
自分で合格点を与えたいと思っております。
楽しくて学びの多い製作でした。
「works」内「classical」にこちらの額縁をアップいたしました。
どうぞご覧下さい。
ワシントン・ナショナル・ギャラリー参百景 9月21日
いつもの行きつけの大きな書店の美術コーナーで
じぃいいっとわたしを見つめた美女は
ワシントンにあるナショナルギャラリー所蔵の
レオナルド・ダ・ヴィンチ作
「ジネヴラ・ド・ベンチの肖像」であります。
著者は存じ上げない方だな、と思って開いてみたら
▲ぼんやりとご紹介。ゴッホの女性像に17世紀中部イタリア
(と思う)のサルヴァトーレローザ額縁が。
美術館に展示してある状態の作品写真がたくさん!
著者の松岡將氏は在ワシントン日本大使館に勤務された方で
美術史研究家等ではいらっしゃらないのでした。
掲載されている写真もすべて松岡氏の撮影によるもの。
なので、内容も写真も、まるで松岡さんのお宅に伺って
懐かしい写真を見せていただきながらお話を聞いているような
親密な懐かしさを感じられるのです。
(写真も一部はピンボケだったり切れていたりするけれど
プロの撮影でなければこうだろうな、といった感じ)
▲セザンヌの作品が16世紀ボローニャ(と思う)の
額縁に入れられている。素敵。
15世紀のイタリア絵画からはじまって、もちろん
祭壇型額縁やトンド(円形額縁)も見られますし
18世紀、19世紀絵画に16~17世紀イタリアの
ゴージャスな額縁がつけられていると
なるほどな、そうなのね、と納得してしまう。
かねがね美術館のカタログでも展覧会カタログでも
額縁が載っていないのを残念に思っていたのです。
こうして作品と額縁一体になった姿を見られる、
それも遠いワシントンの国立美術館所蔵の宝物の姿を
見ることができるなんて、もう嬉しい限りなのです!
額縁の有無、デザインで絵の印象は大きく変わります。
この本の作品写真を眺めながら
「この絵をあの額縁に入れたらどうだろう?」
「この絵と額縁の組み合わせを思いつかないな~」
などと想像を膨らませるのもひとつの楽しみ方です。
「ワシントン・ナショナル・ギャラリー参百景」
松岡 將
株式会社 同時代社
2020年7月7日初版第1刷発行
サンソヴィーノの双子 強烈・・・ 9月17日
金箔を磨き終え、いよいよ箔塗りつぶしで
黒彩色をいたします。ううむ。
フィレンツェの師匠パオラは水彩絵の具を使いますが
わたしはアクリルグアッシュのジェットブラックと
カーボンブラックを混ぜたもので彩色します。
金の上は水溶性塗料ははじかれてしまいますので
これまたいつものように Fiele di bue 雄牛の胆汁液を
少量絵具に足します。
▲7mmの平筆と0号の細密用の筆を使って彩色します。
でも、あれなんだか、えーっと・・・
わたし、こんなに強烈な額縁を作るつもりは
あまりなかったのだけど。
と思うような額縁になりつつあります。
▲金と茶色や黒の組み合わせのサンソヴィーノは
存在するのです。左の額縁を参考にしたのですが。
男性的な(わたしのイメージですが)彫刻に
コントラストの強い金と黒となれば
否応なく強い印象になるのは分かっていたけれど
それにしてもこれは強烈。
このサンソヴィーノ額縁が流行したのは16世紀ですが
当時はこんな完成したばかりの真新しいサンソヴィーノ額縁に
肖像画を入れたりしていたのです。
この額縁が引き立て役に回るくらいの肖像画・・・
さまざまな想像が膨らんでしまいます。
▲金も黒も生々しくて目に刺さる派手さ。
さて、今回の実験「金塗りつぶし作戦」は
今のところ問題なさそうです。
当然と言えば当然か。
塗りつぶす場合ときっちり分ける場合とでは
ラインのイメージがほんの少し違うけれど、
それを改めて理解できたように思います。
あとは古色付けで完成です。
この強烈コントラストでは終えられません・・・。
Firenze 2020-5 9月14日
夕方になるとほぼ毎日通っていたパオラの工房では
もっぱらわたしは力仕事担当でして、石膏磨きや
画材店Zecchi へのお使いで走ったり。
そして模様入れ担当だったマッシモが不在な今、
及ばずながらわたしにバトンが回ってきました。
▲左の額縁が見本。右の額縁に同じ模様を描きます。
▲描きました。まだ金も色も生々しい。
▲そして翌日行くと古色が施されていた。
▲ピンボケすみません。まだ金が黄色い。
これからさらに古色を追加します。
そして閉店間近になると、愛犬と散歩中のグスターヴォさんが
あいさつに立ち寄ってくれるのです。
じつはパオラの工房とグスターヴォさん宅は目と鼻の先。
元保護犬のラーラがかわいくてかわいくて仕方がない様子です。
▲とても賢くおとなしいラーラ、眼差しがいじらしい。
パオラが「この子(わたしの事。ほぼ母心のパオラ)の様子はどう?
毎日あなたの工房に通っているんでしょう?」と
グスターヴォさんにたずねると
「うん、がんばっているよ。
だけどね、とにかく仕事が遅いよ。遅い!」
と言われてしまったー!反省です。
留学当時にもマッシモに「仕事が遅い」、パオラには
「時間はお金だからね、早くしないとだめよ」と
言われていたのです。いやはや、成長がない。
でも、その後にグスターヴォさんとパオラが
「仕事が丁寧で細かいのがきみの良いところだから!」
「丁寧さを生かす仕事の仕方をすれば良いのよ」と
言ってくださったのでした。
ふたりのお師匠様に慰められてしまって
反省しきりな夜でございました・・・。
サンソヴィーノの双子 自称ジォットの弟子として 9月10日
いよいよ箔作業をいたします。
この額縁、オリジナルは全面金箔が貼られていますが
今回はアレンジで金箔と黒色の組み合わせにする計画。
どこを金にしてどこを黒にするか検討・決定しまして
ひたすらに箔を貼ります。
ちいさな額縁ですので、使った金箔は4枚+αでした。
▲こちら参考にした額縁は全面金箔。
そしていつものように夜なべをしてメノウ磨きです。
必要部分だけ磨いたあと、コットンで強めに拭くと
ボーロに残った余分な箔が取り除けます。
▲とはいえ黒にする予定部分にも箔が残っています。
今回の悩み、といいますか以前からの悩み。
金と色の組み合わせのデザインの場合、余分な金をどうするか。
色で金を塗りつぶすか、きちんと取り除いてから色を塗るべきか。
それが問題なのでございます・・・。
以前はボーロを箔部分にだけ塗り、余分な金は取り除き
2手間多く作業をしておりましたけれど、今回は思い切って
もう全面にボーロを塗っちゃって、余分な金は塗りつぶしちゃう!
なぜかと言うと。
ジォットの作品を見たからなのであります。
▲ホーン美術館所蔵ジォット作「聖ステパノ」
色々な角度から見ていたら、頭の一部分は箔の上に
描かれているのが分かったのがわたしの大発見でした。
いちいち箔を取り除かず、気にしないで描いてしまう。
そうか、まぁそりゃそうかもね・・・と納得したのでした。
(マスキングテープも紙やすりも売っていない時代)
この発見といいますか、ジォットから学びまして
自称ジォットの弟子のわたしとしては箔塗りつぶしに
トライすることを決めました。
次回は「ジォット秘儀(?)塗りつぶし大作戦」決行です。
Firenze 2020-4 9月07日
前回は自宅のしがない食事風景ばかりを
お目にかけまして恐縮でございましたが
今回から外食編をご覧ください・・・。
パオラの工房をちょっとお休みしまして
留学時代の友人Gとアルノ川沿いにあるエノテカへ。
▲夕方のテラスからの眺め。ポンテ・ヴェッキオのすぐ横なのです。
生まれも育ちもフィレンツェの、フィレンツェ人らしいG、
彼はソムリエでありワイン卸売をしていますので
任せておけばおいしいワインに会えるのは間違いなし。
今回はGが双子のパパになったささやかなお祝いとして
ご馳走することにしました。
外食と言いますか、アペリティーヴォ(食前の集い?)です。
▲すっかり落ち着いたお父さんの顔になっていたG
子供がかわいくて仕方がなくて、話すだけで笑顔になる!
選んでくれたのはロゼワイン(双子は女の子だから!)
だけど、琥珀色のスッキリとしたおいしいワインでした。
このお店の良いところは、とにかく眺めが素晴らしいこと。
便利な場所で観光客が多いけれど、お店の方はフレンドリーで
とても親切ですし、モダンなインテリアで落ち着きます。
▲来たときの青空から徐々に黄昏に変わる空を眺めるだけでしあわせ。
ポンテ・ヴェッキオのお店に明かりが灯るとなんだか切なくなる。
2月のテラスは少々寒いけれど、ひざ掛けも貸してくれて
お酒と会話で体もポカポカ、つい長居してしまうのです。
店内ではワイン販売はもちろん、カウンターもあり
ちょっとした休憩にひとりで立ち寄るのも良いかもしれません。
サンソヴィーノの双子 石膏とボーロ 9月03日
サンソヴィーノの双子木地は
ひとつは練習台、もうひとつが本番として
どうにか彫り終わりに到着しました。
▲左が練習台。パテ部分を影に隠して記念撮影・・・
まずはパテが痛々しい練習台から石膏作業開始です。
今回使ったのはエポキシパテ木部用で、
彫った材より硬く密度も高いのですが
いままで何度か使った経験によりますと
石膏~箔仕上げの下地に使っても大丈夫なようです。
▲真っ白になってパテが隠れて一安心。
さて、いつもの辛い石膏磨きはのご報告は割愛しまして
箔の準備、下地のボーロでございます。
今回もまたいろいろと悩みはあります。
まずはどんな色のボーロにするか。
わたしの額縁史先生にご相談したところ
「真っ赤。典型的なヴェネツィアのボーロ色にするように。」
とのことで、普段あまり使わない赤ボーロを
ガサゴソと奥から探し出しました。
わたしが普段使っているシャルボネの赤ボーロより
赤が強いゼッキオリジナルの赤ボーロを使います。
▲ゼッキのボーロにおまじない程度シャルボネボーロを足しました。
あまり意味はないけれど、安心感のためと言いましょうか。
いつもより気持ち厚めに塗りました。
見慣れない赤色に塗りあがったサンソヴィーノ。
蛍光灯下で見ると乾いた部分が赤というか
紫がかったピンクに見えます。
▲紫ピンクもこれはこれで可愛らしいような。
さて、これで箔の準備ができました。
あとは箔を貼るだけ・・・ではあるのですけれども。
まだ悩みはあるのです。ううむ。