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鎌倉へ 懐古趣味一長一短 12月31日

 

年に一度、暮に鎌倉へ行くお話をして8回目。

このブログも8年目をむかえました。

 

さて、毎年30日に行く鎌倉ですが今年は29日。

特別理由は無いのですが、1日早く行ってみました。

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例年通り大にぎわいの小町通り入口の鳥居です。

今回はじめて良く見てみたのですが、上部には

「八幡宮近道」とあるではありませんか。

確かに普段はそうでしょう。けれど年末は人ごみで

もしかしたら一番時間のかかるルートかもしれません!

 

鎌倉の古き良き町並みはどんどん変化して

最近はすっかり観光地、歩き食べの若い人ばかりになったのは

昨年の「鎌倉へ」でもお話したのですけれど、それでも

わずかながらポツポツと古いお店も頑張っています。

その中でもフレンチのコアンドル、その奥の古美術銀杏堂

そして交差点を挟んで斜め前にある古書店「藝林荘」の一角は

懐かしい小町通り、昔のままです。

昨年の30日にはすでに年内営業を終えていた藝林荘に

ことしはお邪魔することができました。

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ずいぶんきれいに改装されて、でも積み上げられている

本の山は以前どおり、つい長居したくなる空間なのでした。

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小町通りに新しいお店が立ち並ぶ中、古いお店を見つけて喜び

神奈川県立近代美術館の閉館で感傷に浸るわたし。

骨董が好き、作る額縁もアンティーク仕上げが好き。

懐古趣味ばかり、それで良いのか?

もっと新しいもの、新しい環境に興味を持って

感覚を柔軟にしたい・・・

などと考えながら帰路についた2015年の「鎌倉へ」でした。

 

2015年も大晦日です。

今年も一年間ご覧くださり、ありがとうございました。

また、仕事でお世話になりました皆さま、ありがとうございました。

今年は展覧会を開催することができ、思い出深い年になりました。

来年は改めて、額縁の仕事を大切に過ごす所存です。

どうぞよろしくお願い申し上げます。

良いお年をお迎えくださいませ。

 

古いニカワの香り 12月28日

 

先日、イギリスの額縁修理をしました。

5mm厚のペーパーボードに油彩で描かれた作品が納められています。

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裏板は無く、作品を釘で留めて模造紙を貼り込んであります。

この「裏板無し」スタイルはヨーロッパで良く見られ、

珍しくありません。

裏板でガードするのが普通の日本では、ちょっと心配。

なにせ、作品の裏側はほぼむき出しですから。

酸化して破れた紙を取り除き、新しく裏板を取付けることになりました。

 

この紙、額縁木枠にはもちろん、作品の裏にも

ベッタリとニカワで貼りつけられていたのでした。

豪快というか適当(失礼!)というか…トホホ。

パリパリになった紙はもう粉になりながら簡単にはがれる状態。

ですが、作品の裏に付いたニカワは取り除けません。

作品裏に関しては額縁修復の範疇外ですので仕方ありません。

今後もし問題が発生するようなら、絵画修復師のもとで

処置をして頂くことにしましょう。

niou (2)

さて、木地に残ったカリカリになったニカワは

しっかりと紙やすりで丁寧に取り除きます。

 

ところでこの古いニカワは、不思議な匂いがするのです。

甘い砂糖のような、キャラメルのような。

新しいニカワは動物的な臭さがありますから、その変化が謎なのです。

この不思議な匂いを嗅いだとたんに

フィレンツェ留学時代の木工修復教室の匂いを思い出しました。

懐かしいキャラメルの匂い。

 

ノスタルジックな気分になりながら磨いた木地は

補彩、補整してバンパーを入れてスッキリ蘇らせましょう。

niou (3)

作品を戻し入れ、新しい裏板で閉じたら完成です。

 

Buon Natale 2015 12月24日

 

メリークリスマス!

 

旅先でサンタクロースに会いました。

可愛らしいキャンディーケインも頂きました。

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その後、森の中にあるサンタさんの教会へお邪魔すると

大きなクリスマスツリーがありました。

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教会にはもう誰も居なくて、室温は恐らく氷点下。

それはそれは寒い午後でした。

でも、薄暗い教会内に明るく輝くツリーがあって

まるでそこだけ暖かいかのような雰囲気。

さっき会ったばかりのサンタクロースが心を込めて

せっせと飾りつけをしたりプレゼントの準備をしている様子が

絵本の1ページのように想像できるのでした。

 

暖かくして、心穏やかなクリスマスをお過ごしください!

 

新しいfrido 12月21日

 

frido の名前をつけた額縁シリーズがあります。

frido-1 のデザインから展開させたものです。

箔を変えて色違いだったり、模様デザインを変えてみたり。

今回また新しいfrido が増えました。

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木地はfrido-1 より幅広で大きなものです。

模様と銀箔を使っている・・・というところがシリーズ。

frido-1 はハガキサイズの小さな額縁ですから

模様のバランスや雰囲気も変化が出て

作っていても新しい発見がありました。

 

上の写真は銀箔を磨き終わったところ。

仕事部屋の蛍光灯が反射して眩しいようですが、

これからいつものようにアンティーク仕上げにします。

 

 

ジヴェルニーの食卓 12月17日

 

池袋東武百貨店での「小さい小さい絵展」は

16日水曜に無事終了いたしました。

ご高覧下さり、またご購入いただきまして

誠にありがとうございました。

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10月26日にご紹介した「楽園のカンヴァス」

とても面白かったので、同じく原田マハさん著書の

「ジヴェルニーの食卓」を読むことにしました。

こちらの方が先に出版されていましたし話題にもなりました。

giverny

タイトルの「ジヴェルニーの食卓」はモネの物語、

そしてコート・ダ・ジュールが舞台のマティス「うつくしい墓」

パリのドガの「エトワール」、同じくパリのゴッホ「タンギー爺さん」

4つの短編が納められています。

 

それぞれの物語で中心になる作家とその作品、そして

それらを巡る人たちや場所の描写が美しくて立体的で

目の前に情景が広がるようでした。

どの作家も作品も有名すぎるほど有名なので

気持ちもすぐに物語に入っていくことができます。

4編それぞれ魅力がありますが、短編なので密度が濃く色鮮やかです。

わたしは「うつくしい墓」の主人公マリアの気持ちが

手に取るようにわかって(気がして)引き込まれました。

 

「楽園のカンヴァス」のスリルや謎解きは無いけれど

読後もふと、物語の情景を思い出すことがあるような本です。

機会がありましたらぜひお読みください。

 

「ジヴェルニーの食卓」

著者 原田マハ

株式会社 集英社

2015年6月30日 第1刷発行

 

 

Bocca della Verità a Kamakura 12月14日

 

シリーズにするつもりもありませんでしたが

気づけば第3弾になる“真実の口”シリーズです。

 

今回も田町と同じ占いマシーンと化したトリトン。

Bocca della Verità. (Bocca・・・くち Verità・・・真実)

DSC_6197

右上には「良く当たる!!イタリア製」の文字。

イタリア製?!

「ラブ運 マネー運 健康運 仕事運 生活運」を占えるとか。

5種類も選べる?!

わたしなら何を占ってもらいましょうか。

仕事運もマネー運も健康運も気になるけれど(生活運とは?)

やはりイタリア製の占いならラブ運でしょう。

俄然気になり始めました。

こうなったら100円を握って田町の飲み屋街にある

トリトンに会いに行くしかありません。

・・・挫折しそうですけれど。

 

微笑ましいような物悲しいような

日本の街角Bocca della Verità シリーズ第3弾をお届けしました。

第1弾 http://www.kanesei.net/2011/03/21.html

第2弾 http://www.kanesei.net/2013/10/31.html

 

 

冬の朝 箔置きの心得 12月10日

 

寒くなりました。

昨日の朝は今季初の最低気温だったとか。

そんな朝にKANESEIの作業部屋に入ると

吐く息が白くて手もかじかみます。

まずはともあれ暖房をONにして、箔の準備を始めます。

 

箔床、箔ナイフ、メノウ棒などの道具、そして使う金箔。

寒い時期に忘れてはいけないのが

「暖かい室温に戻すこと」です。

キンキンに冷えたナイフや箔は、自分の息の暖かさで結露して

(KANESEIの作業部屋の寒さ、推して知るべし…です。)

箔がナイフに貼りついてしまったりで

二進も三進もいかなくなってしまうのです。

 

焦らず急がず、まずは部屋を暖かくして道具も温めて

かじかまない手で作業をすること。

KANESEIの冬朝、作業心得です。

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用途に応じて 12月07日

 

アクリル絵具の材料は色々なメーカーから出ています。

同じ名前の絵具でも、メーカーによって発色も

テクスチャーも違うのが面白いところ。

それぞれ使う人の好みがあります。

わたしが好きなのは、アクリル絵具はターナー、

そしてアクリルジェッソはリキテックスとターレンスです。

ガバッと広い面にはリキテックス、

細かい部分にはターレンス、といった感じ。

おそらく体質顔料の種類で出る違いなのでしょう。

乾燥後の手触りが、リキテックスはビニール状に粘りがあり、

ターレンスはよりサラリとして、ボローニャ石膏近い感触です。

様々なメーカーの少量入りのものを取り揃えて試してみると

その違いには驚かされます。

お好みのジェッソやペーストを見つけてみてください。

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ターレンスのジェッソとモデリングペーストは

きっと今後も手放せません。

扱っているお店が少ないのがさびしいところです。

 

 

 

たまごいろ、くわいいろ 12月03日

 

烏骨鶏(ウコッケイ、あるいはアローカナ種?)のたまごを頂きました。

広い庭を走り回る鶏のたまごは、大小様々で殻も硬い。

不思議な、それはそれは美しい色をしているのでした。

ukokkei

青? 緑? すこし紫? そしてうすい灰色です。

このたまごの色をみて思い出したのは、くわい。

ひとつひとつが少しずつ色が違うのも同じです。

毎年暮にお節を準備している時、くわいの皮をむきつつ

なんてきれいな色なんだろう、と思っていました。

800px-Sagittaria_trifolia[1]

(写真はwikipediaより)

 

くわいの色も、烏骨鶏のたまごの色も、

絵の具で表現するのでは届かない色のよう。

「似て非なる色」になりそうです。

 

この色には名前があるのでしょうか。

平安貴族の衣装の色に、実は「くわい色の直衣」

「烏骨鶏のたまご色の小袿」なんてものがあったたかも?

あったら良いな、と思っています。

 

もう12月。はやいですね。

お節の準備でくわいの皮をむく時期がやってきます。