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「世界にひとつ、あなただけのために」とは 1月30日

 

フル・オーダーメイドのものを

例えば宣伝したり印象付けたいときに

使うフレーズ

「世界にひとつだけ」

「あなただけのために」

など、あります。

いささか使い古された宣伝文句です。

 

これを聞くと、その「もの」が

とても貴重で珍しくて得難い感じ、

それなりに高価でステイタスを表す。

そしてそれを持つ「わたし」もまた

特別な人物である気持ちにさせられます。

なにか心をくすぐるフレーズなのです。

 

先日ぼんやりと湯船につかりながら

考えていたのですが、

「世界にひとつ、あなただけのために」

作られたものって実は珍しくないな、ということ。

 

例えば、朝早起きをして作られたお弁当とか・・・

家族が作ってくれたか、自分で作ったにしたって

とにかく「世界にひとつ、あなただけの」お弁当。

 

 

あるいはプレゼントや旅先からの絵葉書も、

たとえその「もの」は市販品で沢山あっても

「あの人はきっとこれが好きだろう」

「これが欲しいと言っていたから・・・」

「遠くに来ているけれど、あなたを思い出している」

そんな気持ちは、広げすぎかもしれないけれど

やっぱり「あなただけのために」なんだなぁ。

気持ちが加わることで、ただの市販品から

「あなただけのため」のものに変わるんだ。

 

世界にひとつ、あなただけのために。

それはそこかしこに隠れていて、

大切で暖かな、そしてやっぱり貴重なことを

表しているんだなぁ・・・と思ったのでした。

 

 

そんな訳でして

KANESEIでもフル・オーダーメイドの

小箱をお作り致します。

あなたやあの人のイニシャルを入れて、

またはお好きな色とデザインで。

これもまた「世界にひとつ、あなただけのために」

のひとつのかたちです。

 

 

技法比較 その2 1月26日

 

以前の比較につづきまして

今回また同じ模様で技法違いの小箱です。

左はグラッフィートで艶消し、

右はパスティリアで古色は付けずピッカピカ仕上げ。

模様はイタリアの古い額縁からお借りしています。

 

 

どちらも古典技法額縁では良く使われる装飾技法です。

グラッフィートとは、まず全面に純金箔を貼り磨き、

その上にテンペラ絵具(今回の場合は黒い卵黄テンペラ)を塗り、

竹串等尖ったもので絵具を搔き落として

金箔の模様を出す、という技法です。

パスティリアは、すでに何度かお話しておりますが、

石膏液をたらし描き、模様をレリーフ状に作る技法です。

 

▲輝く純金箔を写真に撮るのは難しい・・・

 

グラッフィートは黒と金のコントラストが

スッキリとして、繊細な線の表現です。

パスティリアはふっくらとした

レリーフが女性的で金の輝きも華やかです。

 

 

どちらがお好みですか?

 

本業と副業 1月23日

 

いままで小箱制作はなんとなく

「副業」的な気分でおりましたので、

ホームページ内にあります「works 」には出さずに

「diario」でご覧いただくだけでした。

 

今回必要もあって、いよいよ「works」に

小箱を出すことにいたしました。

それにしても写真がひどくて恐縮です。

途中にある小箱の集合写真は

フォトグラファー浅野カズヤさんに

撮って頂いたものです。

プロの仕事の美しさ!

 

なぜ今まで出さなかったのだろう?

わたしは自称「額縁制作者」でありたいのだと思います。

小箱制作が片手間とか、額縁が上で小箱が下とか、

そんなことでは無くて・・・

やはり自分の根、基本、原点が額縁だからなのだろう、と。

 

 

わたしは「変化」が苦手なのです。

でも自分の変化って一番気付きづらいですけれど、

やっぱり様々変化しているのですよね。

自分も環境も変化しているのだから

その時に「これぞ」と思う事をすれば良い。

額縁も小箱も、今やどちらもわたしにとって

「これぞ」と思う事です。

そして「これぞ」と思える物に辿り着いたことに

感謝したいと思います。

 

 

 

諸行無常、有為無常

額縁制作者であり、小箱作家でもある。

今はそれで良し、でございます。

 

 

技法比較 その1 1月19日

 

以前に作った小箱の、同じ模様を

違う技法で作ってみようと思い立ちました。

なるべく同じデザインのものは作らないように

――そっくりそのまま同じ小箱をもうひとつ、とか――

心掛けているのですが、技法違いなら面白いかも、と。

 

こちら左はアクリルグアッシュ彩色、

右はパスティリア(石膏盛り上げ)レリーフに

純金箔、古色仕上げです。

 

 

教会のタイルを参考にした模様です。小箱のサイズはどちらも同じ。

 

 

模様は同じでも、陰影、色味、線の強弱

艶の違いなどで差が出て面白いです。

 

どちらがお好きですか?

 

 

極小に極小を 1月16日

 

ホワイトゴールド箔を使った豆小箱です。

極小の小箱に極小の点々打ちで模様。

 

 

ホワイトゴールドとは

純金50%、純銀50%の合金です。

輝きが明るく錆びづらい。

銀より深くプラチナより華やか。

そんな雰囲気の金属です。

 

 

箔貼り作業も純金箔より純銀箔より

扱いやすくてとても作業しやすい。

古典技法にもおすすめです。

 

 

いかがでしょうか。

 

なぜかそこにいつも 1月12日

 

以前、やはりわたし同様に

ひとりで物を作っている方と

おしゃべりをしていました。

 

その方いわく

「特別に気に入っているわけでもなくて

でもなぜか売る気にもならなくて

ずっと家にある作品があるの。

気が付くといつも『傍らにいる』のよ。

なぜだか知らないけど、とにかく

いっつも近くに『いる』のよ!

こうなったらもうきっと、死ぬまで

身近に持っているしかないのよね~」

 

ああ、そうなんだ、やっぱり。

わたしだけじゃないんだ・・・。

 

なぜだか自分でも分からない。

だけど、ふっと気づくといつもいつも

ほんの少し離れた場所——棚の上とか

本の陰とか――にじっと佇んで

こちらを見つめるように「いる」。

そんな小箱があるのです。

 

▲今日もどこかからわたしを見ている・・・

 

わたしは物を擬人化して考えるのが癖だから

「見られている」と感じるけれど

もちろんそんなはずは無くて。

きっと無意識に、その作品をくり返し見ることで

自分の内面の何かを切り替えるとか

紐づけて思い出すとか

あるのかもしれません。

 

 

これはきっとマッチョ 1月09日

 

わたしが「オジサン風」と表現していた小箱、

ある方が「マッチョ」と表現されて以来

すっかりわたしの中で「マッチョ」が定着したようです。

今日の小箱も、きっとマッチョであります。

 

▲どうです?マッチョでしょうか?

 

▲中はモスグリーンの別珍にしました。

 

 

面取りした木地に全面石膏を塗り

磨いた後に十字の帯状に石膏を塗り磨き、

さらにその帯にパスティリア(石膏盛り上げ)で

丸いポチポチを乗せ純金箔を貼りました。

黒いベース部分にはアカンサスの額縁のような

模様を線彫りしてあります。

なかなかに手が込んでおりますのです。

 

中世のお城、城主の寝室に隠してあった小箱が

数百年経って発見された・・・

と言うイメージでして、

ちょっと濃い目に汚しをつけました。

 

 

いかがでしょうか。

 

 

古典技法額縁の見本を作る 仕上げワニスと完成 1月05日

 

ぼんやりしておりましたら

年を越してしまいましたこのシリーズ

見本額縁制作、本日最終回でございます。

 

前回ですべての装飾入れを終え、

しばらく寝かせて乾かした額縁に

仕上げのワニスを塗ります。

 

今回は2種類を使いました。

下写真左はホルベインのテンペラワニス

右はゼッキのシェラックニス(艶消し)

どちらもアルコールベースのものです。

 

▲それぞれ特徴が違う

 

今回の額縁、右長手のグラッフィートと

ミッショーネは特に傷がつきやすいので

装飾したらあまり動かさず触らず

緩やかに乾燥させて速やかにニスで保護!

左下の銀箔も、これまた錆びて変色するので

あまり悠長にしておられません。

 

 

ホルベインのテンペラワニスは

・下短手左の銀箔

・右長手上半分のグラッフィート

 

ゼッキのシェラックニスは

・左上角の「磨く前の金箔見本」

・右長手下半分のミッショーネ

・側面黒テンペラ塗装部分

 

以上に塗り分けました。

その他の金箔部分には基本的に

ニス等を塗る必要はありません。

なにせ純金ですから、変色もせず

メノウ磨きした古典技法水押し箔は

とても丈夫なのです。

 

 

わー、完成しましたぞー。

 

グラッフィートとミッショーネ、

同じ黒テンペラと純金箔ですが

技法の違いで表現が随分変わります。

 

 

実物は来年3月にお披露目いたします。

また詳しくご案内させていただきます。

 

 

計画しよう 1月02日

 

明けましておめでとうございます。

 

今年2023年のお正月は週末ですので

お正月休みが短くて残念・・・ですけれど、

今日2日はまだ皆さまお正月休みでいらっしゃることと思います。

 

元日の初詣に近所の氏神様へ出かけましたら

近年見たことのない人出でした。

鳥居の下から数十メートル並んでお参りし

「やれやれ」と戻りましたら

帰るころには鳥居のはるか先の坂道まで列が続いていたのでした。

 

コロナ蔓延中で旅行や帰省はしないけれど

自宅待機でもなく、と言った感じのご家族が沢山。

なつかしい穏やかな雰囲気でした。

 

神社からの帰り道、タクシーや郵便局の車とすれ違い

介護施設には明るく電気が灯っていて、

お正月に働く方々を思いつつ。

 

31日は毎度のことながらお節作りで大わらわでした。

わたしはなぜか料理をする時は話しかけられるのが嫌いでして、

もくもくと淡々と作り続ける・・・

 

▲百合根とくわいを料理すると「お正月」な気分になる。

 

夕方には何とか料理を終え、カマボコや伊達巻の端っこなどを

つまんで年越しそばを頂き、さて。

今回もお重ではなくて大皿に盛ることにしました。

 

▲元日の朝に急いで庭から南天の葉を摘んで色どりに。

緑を足して取り繕う。

 

▲朝からお酒・・・お正月ですから!

 

▲そしていつものお雑煮。平和。

 

毎年お正月になんとなく、本当になんとな~く

抱負を考えるのですけれど

今年はひとつ挑戦を目前に控えているので

まずはそれを無事済ますこと。

 

この挑戦は成果が無くても良しとする、

いわば「誰にも頼まれていない、自分で勝手にやる事だし

ダメ元で!」と自分の負担にならない程度に、

でも熱血の本気でやってみようと思っています。

 

それから・・・

もう少し自分の人生に計画を立てた方が良いかもね・・・

あまりに行き当たりばったり、思い付きで

やり放題な人生を送って参りましたので

ちょっと人生の残り時間なども考えてみようではないか。

そんな風に考えているお正月です。

 

本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

 

 

あけましておめでとうございます 1月01日

 

 

旧年中はありがとうございました。

新春を迎え皆様のご多幸をお祈り申し上げますと共に

本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

2023年 元旦 KANESEI