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Atelier LAPIS(アトリエ ラピス)の様子から 2016年9月 9月29日

 

9月も終わり間近、金木犀の香りが漂う頃になりました。

 

市が尾にある古典技法の教室 Atelier LAPIS には

額縁会社にお勤めだったり額縁工房での勤務を経験された方など

その道のプロの生徒さんもいらっしゃいます。

NAさんも現在、額縁会社にお勤めしている女性です。

とても几帳面で丁寧な作業をなさるNAさんの姿勢には

わたしもとても感化されています。

 

今月、長らく制作をしていたNAさんの額縁が完成しました。

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お婆様の古い帯を娘たち(NAさんのお母様達姉妹)で分けたもので、

お母様の分をNAさんが裏打ちして額装しました。

お婆様は佐渡のご出身で、帯布の鳥はトキです。

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NAさん銀箔に初挑戦。

金箔とは違ったむずかしさと楽しさがあります。

シンプルな木地にボローニャ石膏、布から採った

菊や梅の模様を盛り上げで入れ、赤色ボーロに銀箔の水押しです。

アトリエでは記念の写真を撮って、

アクリルを入れたりという作業はご自宅で。

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銀箔もとても綺麗に仕上がりました。

きっとお婆様、お母様がお喜びのことでしょう!

この布と額縁も、家族にずっと伝わっていくと良いですね。

NAさん、記憶に残る素敵な額縁を作って下さり

ありがとうございました。

 

額縁の重さを考える 9月26日

 

先日、ごはん屋さんで隣になった女性が鉄の造形作家の方で

すこしお話することができました。

「鉄の額縁の作り方」を考えたのですが

その方いわく「とにかく鉄は重いのが問題。

壁に取り付けるにも壁の補強や設置が大変で

結局わたしは額縁を作るのをあきらめた」とのこと。

 

小さい額縁なら作れるけれど、大きいのはダメ。

でも鉄の強い表情や錆びた色、肌合いは魅力的だし

鉄なら外に設置出来て、経年変化も楽しめるのだけど・・・

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結局、最近は良い塗料があって「鉄風」の表現ができるから

額縁にするなら塗料を工夫するのが良いかもね・・・

という結果に落ち着いたのでした。

 

鉄など金属、焼き物、漆喰、

色々と額縁を作ってみたい素材はありますが

重さはひとつのネックになります。

でも工夫次第、かな?

 

 

Trial and Error 9月22日

 

ねこの黄金背景テンペラ画の準備をしています。

にゃー。

今日は赤色ボーロを塗って純金箔を水押しします。

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黄色いテープでマスキングしているので、下絵が隠れて

ねこなのか何なのか分からない状態になっています。

 

古典技法の教室 atelier LAPIS の生徒さんからの質問で多いのは

「ボローニャ石膏は何回(何層)塗るのですか」

「100㏄のニカワ液には何グラムの石膏を入れるのですか」

「ボーロはどれくらい塗れば良いですか」というものです。

この質問の答えは・・・いつも迷います。

というのも、作る額縁(あるいは絵)のデザイン、

仕上がりのイメージ、そして作り手の癖などを考慮する必要があるから。

本などによると、ボローニャ石膏は5~6層、

ボーロは3~4回塗り重ねる、と紹介している場合が多いでしょうか。

その一方、ボーロは1回で十分だ!と仰る先生もいらっしゃいます。

石膏もボーロも薄くするほどシャープな仕上がりになりますが

その代り技術が必要です。

LAPISのレッスンでは、それぞれの生徒さんの状況を見ながら

ちょうど良さそうなところまで(何とも中途半端な表現ですが)

塗ったり溶いたり、という作業をしていただいています。

 

古典技法には基本となる方法はありますけれど、

実は石膏やボーロの溶き方などには、お菓子のレシピのような

キッチリ決まった分量はありません。

ニカワ液に石膏を溶くにしても、何㏄に何gと答えられない。

ほとんどが「こんな感じ」としか説明できないことが多い・・・。

制作者それぞれの好み、技術に左右されるのです。

わたしの答えとしては

「LAPISでの方法(つまりわたしのお勧めの方法)でまず作って、

機会があれば他の先生の方法や本の方法も試してみて、

自分のレシピと方法を見つけてください」

なのです。

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わたしも様々な先生の方法を教えていただき

本の方法を試してみて、失敗も繰り返して、

沢山の情報の中から「良いとこ取り」をして

わたしの好きな方法とバリエーションを組み立てています。

 

今の方法よりもっと良い方法が見つかるかもしれません。

これからもわたしの試行錯誤はつづきます。

 

 

金継ぎ 作業4 9月19日

 

磨きに磨いて、木地が丸出しになってしまった補修部分は

先生にご相談して、とにかく整形をしっかりしてから

黒呂色漆を塗った上に朱漆を塗って、最後に磨きましょう

という計画になりました。いやはや。

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上の写真は磨き終えたところです。

朱漆の下に黒呂色漆が見えて、図らずもまるで根来塗。

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そして更に黒呂色漆を塗って、数日待ちます。

それからまた、磨きます・・・。

 

ああ、なんて長い工程、長い待ち時間。

わたしの技術が未熟だから、というのはもちろんですが

我慢強い心が必要です。

 

今回、欠損につかった木片はアガチスですが

後日先生にうかがったところ、

「アガチスでも悪くないけれど、ヒノキを使うことが多い。

ヒノキは長持ちするし良い」とのことでした。

なるほど。

次回また木片を使うことがあったらヒノキにします。

 

 

看板用額縁 9月15日

 

先日「額縁 お色直し」でご覧いただいた額縁は

浅草にあるグラスとバーグッズのお店「創吉」さんからのご注文で

看板用の額縁でした。

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創吉さんから設置完了のお知らせと写真を頂いたので

こちらでもご紹介させていただきます。

 

今回の額縁は樹脂製で、アクリルのカバーを入れています。

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なにせ看板ですから外に設置して風雨や直射日光にさらされます。

水に弱い木材、錆に弱い金属の使用は避けて

強被膜ラッカーを吹き付けています。

屋外用の額縁・・・わたしにとってはじめてでした。

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ともあれ、デザインはお店にぴったり。

ロゴが映えて道行く人たちの目にも留まりやすいはず。

お客さんをさらに沢山呼び込んで活躍してもらいます!

 

創吉さんでは江戸切子の教室も開催中です。

所要時間は90分。

浅草寺にお参りして、名物の天丼でランチ、

そして江戸切子体験、夜は自作の切子グラスで乾杯!

・・・なんて休日はいかがでしょうか。

創吉:江戸切子体験のご案内

 

 

茶箱の本2冊 9月12日

 

いつもお世話になっている方から素敵な本を頂きました。

茶道でつかうお茶箱を沢山紹介した本2冊です。

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茶箱とは、小さな箱や籠にお茶碗、菓子入れ

布巾やお茶入れ、茶筅と茶杓など

お抹茶を立てるのに必要な道具が入っていて、

いわばお茶のピクニックセットです。

 

それぞれの道具が小さくて、ままごとのようにも見えますが

ひとつひとつ大変に凝っていて驚きます。

著者の堀内明美さんが、それぞれの道具を色々と取り集めて

組み合わせて完成したセットは、写真で見るだけでもため息が出そう。

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お抹茶用の茶箱とお煎茶用の茶箱の両方が紹介されています。

小さいものがきっちりギュッ入れられた世界はワクワクドキドキです。

秋になったらわたしも我が家の茶箱(母の宝物ですが)を借りて

友人と出かけてみようかな、と思います。

 

「茶箱遊び -匣筥匳-」

堀内明美

株式会社 淡交社

2012年3月14日 第1刷発行

 

「旅する茶箱 -匣筥匳-」

堀内明美

株式会社 淡交社

2015年2月17日 第1刷発行

 

入院中の天使 その後まだ 9月08日

 

先日ご覧頂いた、KANESEIに入院中の天使ちゃん

今日も療養中なのですけれど、

すこしずつ作業を進めています。

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上の写真で白っぽく見えている部分はすべて復元最中。

失われた部分の多い額縁ですが

修復が完成した時の喜びもきっとひとしおだと思っています。

 

実はまだまだ整形するべき欠損部分はあるのです。

それらを作り終えたら石膏を薄くかけて

ようやく次の作業、補彩へ進む予定です。

 

 

金継ぎ 作業3 9月05日

 

ガサゴソと進めております割れ皿の金継ぎですが

先日作った欠け部分の木片を取付けました。

木片には生漆を塗り乾かしてから、麦漆で接着。

そして隙間を刻苧漆(コクソ漆、パテ状の漆)で埋めました。

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刻苧漆が乾くまで1週間待ちます。

彫刻刀で形を整えて紙やすりで滑らかにします。

そして黒呂色漆を塗り、1日乾燥。

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そして磨きに磨きます。

黒漆の艶が消えて、絹のような手触りになります。

 

あ、あれ・・・下の木地が見えてきました。

でもまた平らになってないので、更に磨きます。

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うーむ、ううーむ。木地丸出し。

木片はもっと薄く小さく(欠けより一回り以上小さく)

作るべきだったのですね。納得。

裏はまだマシです。

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あらためて黒呂色漆を塗って乾燥させて、さらに磨きます。

また木地が出たら塗って磨いて・・・を繰り返し。

この磨きが完成度を左右しますから、頑張りますよ!

 

こうしてみると、額縁もお皿も修復する工程も

気持ちも似ているのでした。

 

額縁 お色直し 9月01日

 

お客様が購入されたレディメイドの額縁は

工場でモールディングを組んで作られたものでした。

木製ではなく樹脂で出来ています。

最近の技術は素晴らしいのですね。

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さて、お客様からのご依頼

「綺麗だけど、どうも思っていたより金の色味が強い・・・」

とのことで、お色直しをすることに。

まずは磨り出しをして凸部分の金を少し落とします。

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金の塗装が落ちて白っぽくなりました。

ここにプライマーをスプレーしまして・・・

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色を叩きこんでのせます。

上の写真、縦方向に白っぽいのは未塗装の部分です。

塗装した部分もまだ色が生っぽいですね。

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さらに古色加工をして、艶消しに仕上げて完成です。

最初の金が、何十年か経って錆びたようなイメージです。

お色直し、いかがでしょうか。