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シルヴァーノのカルトッチョ 3 考えた結果 6月04日

 

シルヴァーノ・ヴェストゥリ氏のカルトッチョ額縁

イタリア・フィレンツェの額縁スタイルのカルトッチョ。

そのつづきであります。

 

分厚い石膏で繊細さがかくされていた彫刻木地、

一晩悩みましたが、石膏をすべて取り除くことに

意を決しました。

 

ボローニャ石膏は水溶性ですので、何年たっていても

水分を与えれば溶解します。

全部を取り除くとなれば、もう全体を濡らすしかありません。

たらいに入れた水をまわし掛けながら慎重に作業します。

修復用のヘラと歯ブラシを使いました。

▲水に漬け込んではいけません。

水を流しかけてはやさしくこすって取り除く。

慌てず焦らず赤ちゃんを沐浴させるような気持ちで。

 

濡らしてしまったことで木がふやけてケバ立ったり

膨らんでしまったりするのは仕方のないこと。

ですが紙やすりはかけません。

 

ちなみに

この木地は比較的新しいので直接水をかけても耐えられますが

古いの額縁修復時などにこの方法は使えません。

コットンで湿布をして石膏を柔らかくします。

くれぐれも古い木地にはご注意ください・・・。

 

一晩乾燥させてから彫刻刀でケバを取り除きます。

▲奥や葉の裏側など取り除けなかった石膏があります。

でもこれ以上の水の作業は負担です。

 

彫刻刀の素早い動きも感じられるような

シャープな切り口、繊細なラインが復活しました。

さて。

石膏をさらに取り除いてワックスを塗って

木地のまま仕上げにする選択もあります。

シルヴァーノ氏の彫刻を愛でるならそれもあり。

どうしよう、なにがこの額縁木地にベストか・・・。

 

さらに悩みはつづきます。

 

 

額縁の本「THE SANSOVINO FRAME」 6月01日

 

ひさしぶりに本のご紹介です。

「THE SANSOVINO FRAME」

ロンドンにあるナショナルギャラリーで2015年に

開催されたサンソヴィーノ額縁展のカタログです。

サンソヴィーノ額縁とは、主にイタリアの

ヴェネツィアで作られて流行した額縁デザインです。

下記にカタログ裏表紙の解説(機械翻訳)を添付します。

「16世紀後半のヴェネツィアでは

これまでに考案された最も独創的な額縁が作成され、

大胆な巻物、グロテスクなマスク、

人物が彫り込まれ装飾されていました。

彫刻家であり建築家でもあるジャコポサンソヴィーノに

ちなんで名付けられたこれらは、華やかで複雑なものから

静かで繊細でシンプルなものまでさまざまです。

ナショナルギャラリーでのサンソヴィーノフレームの

展示に伴うこの本では、作者は30を超える例、

採用された材料と技法およびそれらと図面、

版画、現代的な装飾、家具、木製の天井、

漆喰の丸天井との関係について説明しています。

16世紀のヴェネツィア。

この権威ある研究は、収集と展示の歴史、

そして特別なタイプの家具の理解に貢献します。」

▲裏表紙に上記が書かれています。

▲前半は歴史や解説、後半には展示された額縁の詳細

 

数年前にサンソヴィーノ額縁を作ってみて

その難しさと魅力をおおいに感じました。

▲2019年4月に完成させたサンソヴィーノ風額縁

平面的なリボン状の巻物とウロコ模様が

サンソヴィーノの分かりやすい特徴です。

 

展覧会をご覧になった方々も、きっと

ゴージャスでありながらすっきりと洗練された線、

すこし男性的とも感じられるデザインを楽しまれたでしょう。

こうした「額縁の展覧会」を公立の美術館で開催されるのが

羨ましい限りです。

人々の意識、興味と理解の違いは額縁史の長さの違い。

日本でも額縁に興味を持ってくださる人を増やすため、いつか!

 

この展覧会を見ることは叶いませんでしたが

カタログを眺めつつもうひとつ

ちいさなサンソヴィーノを作る計画を練っています。

 

「THE SANSOVINO FRAME」

The National Gallery

2015年発行

 

シルヴァーノのカルトッチョ 2 どうする? 5月28日

 

欠けてしまった木片を接着して

亀裂にはボローニャ石膏を塗ったところの

カルトッチョ額縁です。

 

乾いた石膏を磨きつつ、彫刻刀で分厚い石膏を

リカットしてみたのですが

▲白いところは彫刻刀で削った石膏部分

 

いやはや、やはり石膏が厚すぎです。

彫刻のラインが消えていて、リカットどころではない。

 

せめて貝のモチーフ部分だけでも塗りなおそうと

部分的に石膏を取り除くことにしました。

▲筆で水をひたひたにして

 

▲石膏がふやけたところをヘラでやさしくこそげます。

 

▲彫刻ではこんなに繊細な線が入れてありました。

 

▲4つの貝殻の石膏を取り除いたところ

 

これではほかの部分も推して知るべし。

このまま続けるか、いっそすべて石膏を取り除くか

一晩考えることにいたします。

 

ちなみに

カルトッチョというと日本では紙包料理を

指すようですが、イタリア語でカルトッチョとは

つまり紙包・・・。

この額縁デザイン、額縁の解説本によりますと

巻紙をイメージした装飾が特徴とのこと。

(紙というか葉に思えますが、さておき。)

 

シルヴァーノ・ヴェストゥリ氏彫刻の

カルトッチョ “a cartoccio” ですが

“a Scartoccio”(スカルトッチョ)と呼ぶこともあるようで

フィレンツェではスカルトッチョ、他地域ではカルトッチョ。

おそらく方言的なことだと思われます。

▲フィレンツェのパオラが書いてくれた

シルヴァーノの名前と「スカルトッチョ」

グスターヴォさんもスカルトッチョと呼んでいました。

 

さらにつづきます。

 

 

シルヴァーノのカルトッチョ 1 5月25日

 

2月のフィレンツェ滞在時に手に入れた

小さな額縁は “a cartoccio” と呼ばれる伝統デザインで

今は亡き額縁彫刻師シルヴァーノ・ヴェストゥリ氏が

手がけたものです。

わたしの額縁師匠パオラから石膏と黄色ボーロが

施されたものを買い受けました。

 

フィレンツェから日本へ送った荷物のなかで

細かい細工部分が折れてしまったのですが

▲外側220×175mm、中にははがきが入るくらいのサイズです。

 

とにかく早く直さねば、と思い立ったが吉日。

ひとまず折れてしまった木部は接着します。

▲くるりと立ち上がった葉が折れてしまいました・・・。

 

シルヴァーノ氏には残念ながらお目にかかる機会は

ありませんでしたけれど、腕も人柄も良い

繊細な人だったと各所で聞いていました。

その上でこの額縁を眺めてみると、どうも

彫刻の繊細さが石膏の厚みで隠されている気がする。

きっと彫りはシャープで細かいラインがあるはず。

 

ううーむ。ひとまず直したけれども。

なんだか違和感がぬぐえません。

石膏でモッタリしている部分は彫刻刀で

リカットしてみることに決めました。

▲なにか違和感が。

 

つづきます。

 

 

イタリア語に訳してみたら 5月21日

 

イタリア語の勉強を続けている・・・と

言えるのかどうか微妙ではありますがとにかく、

毎日イタリア語に触れるよう努めております。

 

いつも手元にあるのはイタリア語教材ですが

ちょっと気分を変えたいと思ったときに

ふと見てみたのが、自分のブログのイタリア語版。

つまり翻訳サイトで機械翻訳された自分の文章を

読んでみるというものです。

▲液晶画面を写真に撮ると水面になる・・・

 

自分で書いた文章がイタリア語に訳されると

こうなるのか、と新鮮な気持ちになったり

(機械翻訳なのでニュアンスが違う気もしますけれど)

自分が好む言い回しや単語が見えてきて面白いのです。

翻訳サイトによって訳され方も少しずつ違って

比べてみるのも興味深い。

わたしにとって翻訳サイトの新しい使い方になりました。

 

面白がってばかりでなかなか覚えられないのが

目下の悩みであります・・・。

 

 

そんな時もある 5月18日

 

ご注文を受けて作る額縁ではなくて

「こんな額縁どうだろう?」などと

思いついて試作を作る時のおはなし。

 

頭の中で描いた額縁の完成図があって

でも制作を進めるほどに、どんどん完成図から離れてしまう。

この額縁とわたしは相性が悪いのか 計画が甘いからか

何をどうしても額縁が、まるで小さな子供のように

「イヤ!」「それはダメ!」「違う!」

と叫んでいるように感じることがあります。

このまま作業を続けてもダメなものはダメ。

いったんこの額縁から離れます。

 

sora2  

 

しばらく時間をおいて考えて、それでもダメだったら?  

覚悟を決めてやり直すしかありません。

塗装も石膏もすべて取り除き、木地に戻してリセット。

そしてまた試行錯誤をはじめます。  

 

「その時」は辛いし面倒だし、もう捨てちゃおうかな!

とヤケにもなるのですが、でもまぁ結局、

作り直して後悔したこともないのです。

リセット~再開も「時間はかかるけど悪くもない」と思っています。

 

 

新しいことを始める 5月14日

 

何が苦手かとたずねられましたら

数字と虫と即答できるわたしですが

計算機を片手に寸法を出しております。

 

▲この雑然とした机は混沌としたわたしの頭の中とおなじ

 

新しいプロジェクトの準備です。

いままでになく大きな

わたしの身長より高くなるような

祭壇型額縁制作のご依頼をいただきました。

 

鼻息も荒く張り切っております!

 

 

振り返って思い出した 5月11日

 

金箔を磨き終えてあまりの派手さにおののいた

バルディーニ美術館所蔵額縁の摸刻は

すこしの古色を足して完成しました。

ぎんぎらぎんの金箔がおちついて

彫刻の凹凸、陰影がより見やすくなりました。

 

今回はオリジナルの額縁の雰囲気を追って

磨り出しはしていません。

古色用のワックスを薄く塗って磨いておしまいです。

後日に虫食い穴をまねて作るかもしれません。

 

裏には特別な吊り金具を付けました。

イタリアの友人から譲っていただいた鉄の吊り金具は

鍛冶仕事で手作りされた現代のもの、

釘はイタリアの数百年前のものをあわせました。

▲本当に古い吊り金具のよう。

 

正面から吊り金具の茶色いあたまがひょっこり見えて

なんともかわいいくてたまらんのです。

 

印象が強くて、あまり需要は無さそうな額縁ですけれど。

どうしてこの額縁を作りたいと思ったのだったかなぁと

振り返ってみたのですが、

この強烈な力強さが感じられるデザイン

内側から外側にむくむくとあふれ出すような

「末広がり感」に惹かれたのだ、と思い出しました。

 

「works」内「classical」にこちらの額縁をアップいたしました。

どうぞご覧下さい。

 

 

会うことを決めている 5月07日

 

自宅待機が長くなることになりました。

皆さまいかがお過ごしですか。

延長は予想していたとはいえ・・・

いやはや。なんとも。

心と体の健康を保ちたいと思います。

 

今年の暮れ12月、どのような状況なのか

まだあまり想像できませんけれども

毎年のルーティーン「小さい絵」展に出品できるよう

小さなテンペラ画を模写しました。

フィリッポ・リッピの聖母子像から男性横顔の部分と

ルドゥーテのバラから部分です。

 

テレビもラジオも消して、音楽をちいさくかけて

遠くの小鳥の鳴き声と風の音を聞いて

ぼんやりとしながら模写する午後などには

まるで何事もなかったころのような気分になります。

会いたい人にはやく会いたいですね。

「これが終わったら、わたしはあの人に会うのだ」

と心に決めています。

 

 

短期集中可能期間につき 5月04日

 

例によってバルディーニ美術館の

額縁摸刻作業のご報告でございます。

なにせ自宅にこもりきりですので

集中して作業を進めることができます。

これもまぁ思いがけない良かったこと、

と思うことにして。

 

前回に内側の細い部分から箔を置きはじめた

写真をご覧いただきましたが

ひきつづき外側の渦巻き状の部分にも

もくもくと箔を置きまして

メノウ棒で磨いて、金箔の穴を繕ってまた磨いて

ああ、いつまですればいいのでしょうか・・・

と気が遠くなりかけたころにようやく箔仕事が完成します。

ぎんぎんぎらぎら金箔光る・・・

派手にもほどがありましょう。

でもまぁ、一仕事終えて満足。

今夜は晩酌が美味しくなりそうです。

 

 

ボーロの色もそれぞれ 4月30日

 

石膏を塗り、恐怖の紙やすり磨きを終えた

バルディーニ美術館の額縁摸刻は

金箔下地のボーロを塗るところまで来ました。

 

このボーロには基本的に赤・黄・黒があります。

イタリアでは時代と場所によって

ボーロの色に特徴があるのですが

今回は茶色にしました。

 

このバルディーニ所蔵の額縁、わたしの予想では

フィレンツェの1800年代のものかなぁ!

などと言っておりましたが大きな間違い、

イタリアの額縁史に詳しい方に教えていただいたところ

トスカーナ地方またはエミリア地方で(Toscoemiliana)

1600年代に作られたものでしょう、とのこと。

▲上の写真はフィレンツェのバルディーニ美術館にある

 オリジナルの額縁。2018年訪問時に撮った写真です。

 

また、その時代のトスカーナでは

主に茶色のボーロが使われていたとのお話から

黄色ボーロに黒と赤を混ぜたものを作りました。

ちなみにエミリアは暗い赤、

ローマ、ナポリなど中央以南は黄色、

ロンバルディア、ヴェネトはオレンジ色の

ボーロを使っていたのが特徴だそうです。

 

純金箔も当時1600年代イタリアと

おなじ技法と道具で置いて(貼って)います。

激しい凹凸、側面まで貼り込んであるので

金箔の消費量も恐ろしいことになりそうです。

 

 

下地の色は大切 4月27日

 

先日彫り終えた額縁木地  に

水性ステインを塗りました。

仕上がりは金色艶消しなのですが

木地を茶色に染めておくことで

金の発色に深みが出て穏やかになり

かすかな揺れができてきます。

▲沢山の色がシリーズで発売されていますが

 わたしは「オーク」色を使う機会が多いように思います。

 

下地に色を塗るか塗らないか

何色を塗るのか、どのように塗るのか・・・

仕上がりを左右する

とてもとても重要な工程です。

 

 

小箱を贈る 4月23日

 

ご覧いただいておりました小箱は

無事に完成し、贈り物にしました。

イタリアの友人へささやかな感謝と励ましに

雑貨とともに送りました。

普段より日数はかかりましたが

無事に手元に届いたようです。

▲側面は黒一色です。

 

▲蓋と身の合印として中央に赤を少しいれました。

 写真だと見づらいのですが・・・。

 

蓋をぱかっと開けますと

今回は中に貼った別珍も黒です。

黒が好きな人ですので、お好みに合わせて。

 

イタリアの友人知人に元気に再会できる日が

一日も早く来るように願いつつ

わたしに何ができるか考えています。

 

「works」ページ内「other」にアップいたしました。

どうぞご覧下さい。

 

 

今年の福の神様は 4月20日

 

毎年かわらずに美しい花を咲かせてくれる

KANESEI自慢の黄色いモッコウバラは

KANESEIの福の神様でもありまして、

毎年この花が咲くころは大忙しなのです。

たいてい5月の大型連休の頃、遊びに行きたい

真っ盛りの時期なのですが。

今年はほかの植物同様にモッコウバラの

満開がずいぶんと早いようです。

この春、福の神様モッコウバラの花は

慰めと励ましの神様にバトンタッチ

なのかもしれません。

桜もつつじもお花見に出かけることができず

ひたすら息をつめて待機しているわたしたちに

「まぁまぁリラックスして、わたしをご覧」

と話しかけてくれているように感じています。

 

 

ご機嫌取りの日 4月16日

 

最近は皆さまと同様に外出も減って

自宅での作業時間が伸びています。

 

しばらく放置していたこの額縁

フィレンツェのバルディーニ美術館所蔵の額縁摸刻

制作を再開することにいたしまして

先日ボローニャ石膏を塗りました。

 

 

なにせ急いではおりませんから

パーツ毎に丁寧に塗りました。

上の写真では側面はまだ塗っていません。

内側の細かい彫りにまず塗って乾かして、

周囲のおおきな彫り部分に塗って乾かして

そうしてようやく側面に取り掛かろうと思います。

こうして時間をかけて自分のために作業できるのも

今だからこそかもしれません。

 

出かけたり人に会ったりする機会が減って

気分が鬱々とすることもありますけれど

いままで先延ばししていたことに手を付けたり

「自分のご機嫌をとってなぐさめる日」というのも

悪くない過ごし方かなぁ、と思っています。

 

 

小箱のたのしみ 5 4月13日

 

小箱制作のつづき、そろそろ仕上げです。

装飾を入れ終わった小箱には

フィレンツェのゼッキで購入した

gommalacca シェラックニスを塗ります。

このニスでテンペラ絵具が箔とより密着し

安全に扱えるようになります。

▲奥に見えるガラス瓶が gommalacca

 アルコールベースのニスです。

 

このニスはすぐ乾きますので、引き続き

古色付けの箔磨り出しをします。

スチールウールで角を擦って下地を出します。

グラッフィート模様の上は触らずに。

そしていつもの古色ワックスを薄く塗り

乾いたら磨いておしまいです。

 

内側には黒い別珍を貼りました。

これで大切なものを入れても大丈夫。

この小箱制作の手順はいつもの額縁制作と

同じなのです。

ただ小さくて立体で、というだけ。

でも気分が変わって、好きな模様を入れられて

手のひらに乗せて眺めることができて

とても楽しい作業です。

 

 

薄皮一枚のこして 4月09日

 

1900年代にイギリスでつくられたという

とても立派でうつくしい祭壇型額縁の

修復をしています。

この額縁、ほんとうは金の輝きも鮮やかに

上品な半艶消しで仕上げられていたはず。

(美術館に入っている同作家の額縁を見る限り)

でもわたしの手元に届いた時には

過去の幾たびかの修理・修復のときに付けられた

古色加工・・・というか汚し加工がされていました。

なぜか?

修理・修復の跡を隠すためでしょう。

石膏が欠けて真っ白な部分も

新しく継ぎ足したけれど色があっていない部分も

全部ひっくるめて濃い茶色のベールのように

汚し加工で覆ってしまえば、全体のトーンは揃って

ぱっと見は整ったように見えるのです。

 

それはそれで、まぁ考え方ですから

その時は良かったかもしれませんけれども。

わたしとしては、これは1900年代という比較的新しい額縁、

オリジナルは古色加工を求めていないデザイン、

参考となる資料もあるし、納められる作品を考えて

今回の修復作業で「汚し加工」を取り除くことにしました。

▲祭壇型額縁を真上から見た部分。

 綿棒でぬぐうと真っ黒になり、下からは

 オリジナルの美しい金箔が見えてきました。

 

▲そうとなれば、少しずつ薄く剥がすように

 汚し加工を取り除きます。

 

とはいえ、全部ごっそり取り除くとそれはまた

バランスが崩れますし、あまりに印象が変わりすぎ。

(なにせ何年も「汚れた状態」だったわけですから)

汚し加工の薄皮を1枚のこすような気持ちで

全体の様子を見ながらゆっくり洗浄しました。

もしもっと洗浄が必要となれば、それはその時に。

もしやっぱり汚し加工された雰囲気が良いとなれば

それはまたその時に。

 

 

小箱のたのしみ 4 4月06日

 

ひきつづき小箱制作についてご紹介します。

前回テンペラ絵具をのせてグラッフィート装飾の

準備を終えました。

今日は乾いた絵具のうえに模様を転写して

掻き落とし、つまりグラッフィートします。

▲トレーシングペーパーに描いた下描き模様を

 細い棒でなぞって転写しますが、この場合は

 カーボン紙等使わず、絵具に凹み線を作ることで

 模様が見えるように転写します。

 

上の写真の中央、黒い絵の具の部分

うっすら白い線で模様が転写されているのが

見ていただけますでしょうか。

カーボン紙を使うこともありますが

今回は細かい装飾模様なので下描きも細い線で。

凹み線のみの転写にしました。

 

さて、いよいよ掻き落とし、削り出し、です。

普段は竹串やネイル用のオレンジウッド等を

細く削って掻き落としに使っていますが

今回は細い線を出すために、Gペンを使うことにしました。

▲箔を傷つけないように慎重に掻き落とします。

 

▲ちょっと厚めに絵具層を作ったので

 思いがけず絵具が硬く掻き落としにも苦労します。

 

蓋の模様はフィレンツェの旧サンタッポローニア修道院

(旧聖・アポローニア修道院)入り口にあった

テンペラ画の衣装模様をお借りしました。

この旧修道院はカスターニョの最後の晩餐で有名な場所ですが、

このテンペラ画はカスターニョではなくて・・・

作者名をメモするのを忘れてしまいました。やれやれ。

▲聖人の衣装のすそ模様だった・・・。

 

ひとまず全面に模様を入れ終わりました。

保存しておいた絵具で修正をして

なんだか気に入らなかった部分に追加で刻印を打って

今日の作業は終わりです。

 

 

小箱のたのしみ 3 4月02日

 

先日ご覧いただいた小箱制作のつづきです。

ピカピカに磨き終えて刻印を打ったら

グラッフィート装飾のためにテンペラ絵具をのせます。

グラッフィートとは、磨いた箔のうえに

テンペラ絵具を塗り、絵具が乾いたら

細く尖らせた木製の棒(竹串なども可)で

絵具を掻き落として下の箔を見せるという技法です。

 

さて、箔の上にテンペラ絵具をのせるにあたり

とにかく同じ厚さになるように、というのがコツ。

ヒタヒタに絵具を塗るというか置きます。

卵黄の量は・・・まぁいつもと同じくらいで大丈夫。

今年イタリア滞在中に見たグラッフィートは

いままでわたしが行っていたよりも

絵具層が分厚い、ということが分かりました。

ですので、ちょっと今回は厚めにこってり

絵具をのせることにしました。

ちなみにテンペラ絵具は乾くと卵黄が

酸化重合して水には溶けなくなり

一度乾いた絵具を使うことはできませんが

ラップをしてさらに密封容器に入れておくと

3~4日は使うことができます。

その場合、卵黄に防腐剤を入れることを忘れずに。

▲混色して作った絵具はグラッフィート修正用に保存。

 

絵具が乾きましたらいよいよグラッフィートで

装飾模様を入れます。

これがまた楽しいのですよ。

 

 

笑顔のために 3月30日

 

市が尾にあるAtelier LAPIS で毎週月曜に

古典技法額縁と黄金背景テンペラ画模写の

講師をさせていただいて、かれこれ9年目です。

始めたばかりの頃、自分の技術や

制作に対する心構えのようなものを

ほかの人に渡す(お教えする)のは、ある意味

心身の一部を切り取って譲渡するような気持ちで

不安があったのでした。

 

でも、今となればそんな心配は無用も無用、

月並みではありますが「得るもののほうが多い」

という充実し励まされる仕事になりました。

 

そんなLAPISの講座ですが、先日思いました。

生徒さんが「これで良いですか?」と確認を求めて

わたしに見せてくる時、まだまだ作業が足りないと思えても、

それはわたしの感覚では足りなく感じるだけで

この生徒さんにとってはこれで精一杯なのかも?

それとも「まぁぼちぼちで良いかな」と思っておられる?

もうこの作業が退屈になって先に進みたいんだろうな、

でもあと一息、あと一歩頑張ればずっと良い出来になる。

励ましてもっと追及してもらうか。

「良いですよ」と言ってしまうのは簡単だけど。

 

その迷いで、つい

「あなたがこれで良ければ、これで良いですよ。」

という発言をしてしまったのでした。

 

だけど、この言い方は失礼でもあり、怖いですね。

「わたしは納得しないけど、あなたの好きにしたら良い」

という突き放した言葉ですから。

 

生徒さん方は、LAPISにたのしみに来ていらっしゃる。

励まして無理に続けさせても辛いだけなら

楽しく作業していただいたほうがずっと良い。

でもこの人ならもっと出来るはず!

そう思って、最近は「もう一息やってみましょう、

大丈夫、出来ますよ、わたしも一緒にしますよ」

と言うようにしています。

その一言を聞いたときの生徒さんの笑顔は

とても素敵なのです。

 

 

いまはこうした趣味の講座を開講するのも

むずかしい状況ですが・・・

またアトリエで皆さんと笑顔で再会できる日を

たのしみに待っています。

 

 

小箱のたのしみ 2 3月26日

 

純金箔をぴかぴかに磨いたら

刻印で模様を入れましょう。

 

刻印入れの方法にはいろいろとありますが

今回はメノウ棒を軽く打って入れます。

力を加減して点の深さ、大きさが揃うように。

点の刻印が入るとさらに金のキラキラが増します。

小さくてギュッと詰まった世界へ

作業を続けます。

 

 

小箱のたのしみ 3月23日

 

先日から、またひとりがさごそと

小箱を作りはじめました。

金箔の額縁を修復する作業の途中で

すこしのお楽しみです。

金箔はピカピカに磨けました。

これから装飾模様を入れます。

黒と赤でグラッフィートの予定。

イタリアのルネッサンス時代の模様です。

またこちらで制作過程など

ご覧いただこうと思っています。

 

 

荻太郎先生「顔」の額縁 3月19日

 

昨年ご覧いただいた「バレリーナ」に続き

荻太郎先生の作品を額装させて頂きました。

 

 

サインは入っていませんので

発表なさるご予定で描かれたものでは無いかもしれません。

だけどタッチの力強さと勢い、迫力には

見るたびに圧倒されてしまう。

微笑んでいる様子は仏様を思い出させます。

守られているような、叱咤激励されているような

そんな気がします。

 

額縁はごくシンプルに

細い木枠につや消し金、 線刻を入れました。

 

いかがでしょうか。

 

 

 

いつものデザインだけど 3月16日

 

イタリア・フィレンツェでの彫刻修行後

はじめての額縁彫刻ですので

なんだかちょっとワクワクするような

自分にハラハラするような

変な気分になっています。

あちらで入手したあたらしい彫刻刀も使いつつ。

フィレンツェ修行のおはなしは

もう少し落ち着いたころに、と思っております。

まずは日々できることを地道に。

 

 

花でも愛でて 3月13日

 

なんだか落ち着かない毎日ですね。

わたしは元々自宅でひとり作業が日常ですので

あまり変わらない日々を過ごしておりますが

やはり息苦しさを感じています。

庭のヒヤシンス一家は変わらずに今年も

美しい花を咲かせてくれています。

作業の途中で花を愛でております。

 

 

皆さまもどうぞお元気でお過ごしください。

 

 

Atelier LAPIS(アトリエ ラピス)の様子から 2020年3月 3月09日

 

先月に引き続きHAさんの額縁です。

白木の木地に彫刻をするところから始まり

長い時間愛情を注いで作った額縁が

ようやく完成しました。

 

木地に彫刻、ボローニャ石膏塗布

アクリルグアッシュで彩色、

洋箔をミッショーネで貼りました。

ワックスで強めの古色を付けて完成です。


▲鮮やかな青を塗ってから、最後に箔置き。

 使っているのはドイツ製のペン状の道具です。

 先にヘラ状の堅いゴムが付いていて箔を押さえます。

 

古色用のワックスは濃い茶色なので

塗りこんだら鮮やかな青のトーンも落ち着いた色に。

ラピスラズリのような大理石のような趣になりました。

 

この額縁、わたしが以前つくった額縁(下の写真)と

ほぼおなじデザインでHAさんがつくりました。

▲3年前(だったか?)完成させた額縁「hori-16c-1」

 内側寸法108×95mm、サイズも同じです。

 

おなじ木地、似たデザインで制作しても

彫りの深さや太さ、色や仕上げの違い、

作り手のイメージによってこれだけ違いがでます。

これぞ制作の醍醐味、ですね。

 

HAさん、美しい額縁を完成させてくださり

ありがとうございました!

 

 

五寸釘を握りしめて 3月05日

 

真夜中に、恨みの藁人形に打ち付けるのは

五寸釘・・・

 

ですけれど、わたしの五寸釘は打たずに使います。

それももっぱら日がある時間でございます。

線刻するニードルとして重宝しています。


 

この五寸釘、つまり長さ150mm、太さ5mmの大きな釘ですが、

さすがにそのままでは細くて作業がし辛い。

革テープを巻き付けて握りやすくしています。

▲これぞ本当の五寸釘。

 

▲ちょっと太くてシャープな線が彫れます。

 

この重くて太い五寸釘、これを深夜に生木に打つなんて

相当な気力体力が必要なことでしょう。

なんともはや。

 

この五寸釘、大学生の頃に道で拾いました。

誰が落としたんだろう。

藁人形と一緒に持っていた人でしょうかね。

あまり考えないようにしています。

 

 

物の心を感じるとき 3月02日

 

先日、ピアスを1組無くしました。

でもこのピアスとのお別れが早く訪れることは

以前から分かっていたことなのでした。  

無くしてから「分かっていた」と言うのもおかしな事ですが。

 

以前に行った骨董市で数千円で手に入れた イギリス製のピアスは

デザインも気に入って 迷わず買い求めたのですが

お会計を済ませて店主さんから手渡されたときに

「あれ、このピアスはわたしの物ではないのかもしれない」と

突然に思えて、我ながら頭の中は「???」でした。

 無くした理由はわたしの管理が悪かっただけ・・・ではありますが

ピアスがわたしを嫌って逃げ出して行ったとも感じています。  

「物に心があるなんて妄想も甚だしい」と思いますけれど、

ただ、古いものにだけは・・・

「古い物には心がある」と何やら確信をもって感じています。

 

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それにも理由があるのです。 2月27日

 

KANESEI額縁の側面には、金箔はあまり貼りません。

黄茶色の金箔に近い色を塗って仕上げます。

 

その理由を聞かれることがあるですけれど、

まずはフィレンツェの額縁師匠マッシモ&パオラが

そうしていたから、というのが始まりではありますが

わたしなりに理由を言うとすれば。

 

純金箔って結構な迫力があります。

特に古色を付けたりすると迫力に重みも加わって

ともすると額縁の印象が強くなりすぎてしまう。

また、デッサン用などの細く繊細な額縁で

側面にも箔を貼ると太く重く見えるような気がします。

 

額縁は真正面からより斜めからのほうが

人の視界に入る場面は多いのです。

側面に「金ではないけれど金に似た色がある」と

印象が軽やかに、薄味になると言いましょうか。

作品を鑑賞するために正面から観るときには

しっかり箔の装飾があり作品とバランスをとりつつ、

斜めから見たときには額縁の存在を主張しすぎない、と言うか。

 

上手く言えませんが「押しが減る」ように

わたしは感じています。

 

 

額装する作品やサイズ、額縁のデザイン、飾る場所

そしてお客様のご注文によって

側面に金箔を貼る額縁も、もちろんあります。

とくに祭壇型額縁など側面に貼らない選択はありません。

 

正面には金箔を貼るのに側面には貼らないなんて

手抜き、ケチ(びんぼっちゃま風?懐かしい)と思われると

残念なのですけれど、理由もあるのです。

結局のところ好みの問題ではありますけれども

ご参考にしていただけたらと思います。

 

 

額縁の作り方 28 石膏塗りの筆選び 2月24日

 

古典技法額縁の制作では

ボローニャ石膏塗りは大切な工程

かつ一番難しい工程と言えるのではないでしょうか。

「手早く丁寧に!」をスローガンに

適度な濃度で適温にした石膏液を塗るには

筆選びが大切です。

 

わたしがいつも使っているのは

水性用の平筆、12~15ミリ幅くらいのものです。

メーカーによって微妙に号数が違いますが

この写真の筆は世界堂オリジナル筆14号。

やわらかい毛がたっぷりしていて抜け毛も少ないく

このシリーズは愛用しております。

もちろん塗る対象――テンペラ用の板なのか

彫刻の入った額縁木地なのか――によって

選ぶ筆のサイズと形状は変わりますが

やわらかい毛の筆、というのはいつも同じです。

乾いた筆をいきなり石膏液につっこまず、

まずはお湯で(湯煎した鍋の湯で)ゆすいで

ホコリを落とし、空気を抜きましょう。

 

ボローニャ石膏液を扱う指南書がさまざまありますが、

著者によって選ぶ道具はちがいます。

ある本によるとブタ毛の堅い丸筆や刷毛で

筆跡を残してガシガシと塗るとありました。

でもわたしは、可能な限り筆跡を残さず

石膏液の表面張力を利用して滑らかに塗るのが好きです。

滑らかな表面なら、次の辛い作業「石膏磨き」で

削る必要が少なく(つまり時短)、そして

気泡が入りづらいと感じているからです。

 


翌日の朝、かわいた石膏地に気泡はありませんでした。

石膏塗り成功でございます。バンザーイ。