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中世の本のような 3月18日

 

2023年にペルージャの国立ウンブリア美術館に行った時

誰もいないとても静かな空間で

思う存分に黄金背景テンペラ画を堪能できました。

その時に見た数々の作品に登場する聖人や司教など

聖書を持って佇む様子が沢山あるのでした。

 

その人物が誰であるとか

持っているのが本当に聖書なのかどうか等々はさておき

その本の装飾に見とれました。

大抵描かれているのはは赤とか青とか

ハッキリした色の本に金で模様が入って、

そうして金具で閉じられているのです。

 

それら絵の「金具で閉じられた聖書」のイメージで作りました。

 

 

古い黄金背景テンペラ画にご興味をお持ちの方でしたら

「ああ、よく見るあの感じね」と思われるような

そんなデザインです。

 

 

当時の聖書は羊皮紙に描かれて厚い皮表紙が付いて

とても重くてとても貴重な品だったようです。

重い聖書をきちんと閉じるために

こんな感じの蝶番のついた金具が取り付けてあるのは

写本の展覧会などでも見ることができます。

 

この小箱には「なんちゃって蝶番金具」を着けたくて

石膏下地を磨いた後、パスティリアで金具のベースの形を盛り上げて平らに磨き

さらにその上にもう一度パスティリアで釘風に小さなポチポチを乗せました。

金具で閉じられたように感じていただけるでしょうか。

 

 

クリーム色でちょっと明るく可愛くなっちゃったかしら・・・

で、中はキリリと紺色の別珍を貼り込みました。

 

いかがでしょうか。

 

 

お終いのとき 3月14日

 

わたしの額縁師匠パオラとマッシモについては

何度もお話しているのですが、

もう少しお付き合いください。

 

今回のフィレンツェ滞在で一番に連絡したけれど

なかなか会うことが出来なかったパオラ。

週に1~2度、体調の良い午前中だけ動けるとのことで

滞在後半にようやく会いました。

小柄でとても痩せていて身体が強くないパオラは

昨年秋から体調を崩していて

今は酸素ボンベを携帯しつつ吸入する生活になっていました。

昨年暮に夫のマッシモが亡くなり自分の体調も限界

これが潮時なのよ、と工房を閉じることに決めたと話してくれました。

 

▲「CORNICI」額縁。

シャッターが閉まっている時間がほとんどになった。

 

今はとにかく最後の注文額縁をどうにか仕上げること

(これは無理かも・・・と言うけれど古くからのお客様だから待ってくれるはず)。

その後には大量の材料や道具、荷物を片付けること

見本として店舗に掲げていた額縁を売りきること

そして空にした「元工房」店舗を賃貸に出すこと。

 

店にはまだ額縁が沢山かけてあって、

でもところどころ歯が抜けたように額縁が無くなっている壁には

かつてあった額縁の跡がうっすらと残っている。

あの額縁もこの額縁も、わたしを見習いで

受け入れてくれていた頃からあって、いつも眺めていた額縁でした。

なかにはマッシモを手伝ってわたしも制作に参加した額縁もありました。

 

 

現実問題として、この大量の物の仕分け、

業者を呼んだり売ったり捨てたり、事務手続き、

それらは今のパオラには無理なのでは・・・

かといって、わたしが出来ることはほとんど何も無い。

せいぜい荷物運びゴミ捨て掃除程度の肉体労働で

そんなのは最後の最後。

パオラのひとり娘(裁判所勤務)や友人知人がすることであって

わたしが出る幕では無いのだと頭では理解しつつも

でもこの寂しさ心細さはとても辛い。

次にフィレンツェに行った時、それが今年か来年か数年先か

その時にこの工房はもう姿を変えているのだろうと覚悟をしました。

 

店の見本額縁はすでに予約済みのものも沢山あったので

わたしはひとつだけ小さな額縁を買うことにしました。

パオラと、今は亡きマッシモの合作、ふたりの工房の残照。

 

 

懐かしの天使 3月11日

 

イタリア滞在から帰国して

オンラインショップも再開するのを機会に

新しい商品も載せることにいたしました。

新作ばかりではなくて旧作もいろいろと。

 

 

純金箔と純銀箔の双子額縁、かれこれ・・・

大変大昔に作ったものです。

その頃はエージェント事務所に所属しておりまして

マネージメントを担当してくださっていた方の

アイディアでアンティークの布を入れました。

な、なつかしい・・・

 

 

天使の模様が織り込んであるシルクを

クッションになるようにして(キルト芯を入れて)

ふかふかにしてあります。

帰宅後に外したアクセサリーを乗せたり

お店の展示にも使って頂けたら・・・と思っています。

 

 

このふたつの額縁を作っていた頃

なんだか無駄に色々と悩んで考えていたような記憶が蘇っています。

この頃に比べれば今は自分との付き合いが

ずいぶんと楽になりました。ハハハ。

 

オンラインショップでどうぞご覧くださいませ。

KANESEIショップ

 

 

ところ変わればお好みも変わる 3月07日

 

さて、今回のイタリア・フィレンツェ滞在の

目的1はマッシモのお墓参りでしたが、

もうひとつの目的は小箱販売継続に向けての諸々でした。

 

昨年2月の滞在時に友人Lに手伝ってもらって

ようやく辿り着いた「KANESEI小箱販売店代理店」の

EREDI PAPERONE へ、納品小箱を担いで行って参りました。

 

フィレンツェ特産工芸品のマーブル紙や革を使った

高級文具店の奥の一角にあるガラスケース、

そこに我が娘たち(小箱)が並んでおりました。

Lが写真に撮って送ってくれていましたが

自分の目で見ると喜びもひとしおでした。

▲お送りしたショップカードも置いてくださっている

 

鍵付きのガラスケースでライトアップされていて

安心安全にキラキラ輝いています。

なんだか授業参観に来た母の気分と言いましょうか。

 

今回は新しく10個の小箱をお預けしました。

20個持って行ったうち、売れ筋10個を

お店の奥様スザンナさんに選んでいただきました。

 

実は箔を使ったものが売れているような気がしていて

今回半分は箔小箱を持って行ったのですが

意外にもスザンナさんが選んだのは色小箱、

それも明るめの色の小箱でした。

そういえばショーウィンドウに残っているのは箔小箱が多い、

そしてホワイトゴールド、錫箔はず~~っと前から残っている。

日本ではというと箔の小箱がメインですし

色小箱もシックな色が人気だったりして。

ところ変わればお好みも変わる。

 

そうかそうか、ふむふむ。

このお店で買って下さるお客様の傾向が半年経って

少しずつ見えてきました。

 

▲素敵なウィンドウを見て、通りがかりで立ち寄って下さる方も。

2月なのに気温20度近くあった日、半そで姿とダウンが共存・・・

 

今までメールでのやり取りばかりでしたが

今回スザンナさんと3日に一度は顔を合わせて

送金についてや税金について手続き諸々やら

打ち合わせをすることが出来ました。やはり手っ取り早い。

そして実際のお店やお客様の様子を見ることが出来て

本当に良かったと思っています。

 

スザンナさんとお互いに人となりも分かって来た安心感も大きい。

(笑顔が素敵でとても優しくて機嫌の良し悪しを表に出さない、

手間も惜しまないキッチリしたスザンナさんでした。

語弊があるけれどイタリア人とは思えない・・・

日本人同士のような感覚で接することが出来ました。)

これからまだまだ長いお付き合いが出来るよう期待しつつ

あわよくば将来的に小さい額縁(写真やハガキサイズ)も

置いてもらえたら良いな、ウヒヒ・・・

などと小さな野望も抱いております。

 

今はとにもかくにも、良い小箱を作ってお届けしたいと思います。

EREDI PAPERONE Bottega d’Arte

Via del Proconsoli,26r Firenze

10::00~13:00/14:00~19:00

 

 

ありがとうはどこからでも 3月04日

 

フィレンツェ滞在から帰国いたしました。

1か月弱の期間、とてもとても充実した盛沢山の時間を過ごしました。

 

出発前のブログ(1月22日)で、わたしの額縁師匠マッシモが

昨年12月に亡くなったとお話しました。

今回の滞在でマッシモの墓前にご挨拶することを

大きな目標にしていたのでしたが、

結局叶えることは出来ませんでした。

 

 

マッシモの妻でわたしのもう一人の師匠である

パオラは現在体調を崩していて、

週に1~2度ほんの少し体調の良い午前中だけ動ける様子です。

すでに工房はほとんど使われておらず

見本として壁に掛けていた沢山の額縁も

「もう作れないから必要ない」とどんどん販売している状態。

そんなパオラに「マッシモのお墓に連れて行ってほしい」とは言えず

墓地の場所もフィレンツェ郊外でバスで行けるものの

「ものすごく広い墓地だから、あなた一人で行っても

お墓の場所が分からないでしょ・・・」と諭されてしまったのでした。

つまり「そんなに必死になって行く必要はないでしょ、

もう亡くなってしまったのだから」と言うことなのかな、と思いました。

 

日本のお墓参りの感覚とイタリアのそれと

大きな違いはないように感じます。そして

「お墓に大切な人の存在を感じるか感じないか」が

人それぞれなのも同じ。

最近のイタリアでは火葬が多く、

散骨(散灰)も増えているのだとか。

 

 

フィレンツェには驚くほど沢山の教会があって

そのどれもに、大切になさっている方々の存在を感じます。

お花、蝋燭の灯、清められた床などなど・・・。

マッシモに「ありがとう」も「さようなら」も言えなかったけれど

手入れの行き届いた教会に立ち寄るたびに

なんとなくマッシモを思っていたので、

きっと伝わっていたであろう

伝わっていてほしいと思っています。

 

 

錬金術師の名前 2月29日

 

ホカホカマリア様?」でお話したイタリア語の単語

「Bagnomaria」(湯煎)のつづき。

気になって追及しましたが、ご興味あればぜひ。

 

湯煎は古典技法絵画だけではなく

いちばん使われるのはお料理の分野でしょうか。

チョコレートを溶かしたり卵を少しずつ加熱したり。

イタリアに料理修行に来られる方も

沢山いらっしゃいますので、きっとこの

「Bagnomaria」に「はてな❔」と思われた方は

沢山いらっしゃるのではないかと期待しております。

 

さて、わたしの手持ちの伊伊辞書をまず引いてみます。

 

▲イタリア語によるイタリア語の辞書。Novitaとあるが古い・・・

 

 

「容器に入れたものを熱湯に浸す。加熱する。」ですって。

いや、そりゃ分かっておるのじゃよ・・・!

語源が載っているかと思ったのだけど。

 

次なる手段、イタリア人に聞く。

そうしましたところ、こんなスクショが送られてきて

「わたしも知らなかった」ですって。

まぁこんなこといちいち気にするのは

我ながら煩いと思いますからね、ハハハ。

 

 

「この言葉の元はおそらく、モーセの姉で錬金術師の

Myriam (ミリアム;ヘブライ語のマリア)に由来しており、

この調理法を初めて使ったのがミリアムとされている。

”マリアのお風呂”と呼ばれる調理法。」

つまるところ、モーセの姉が

「わたしが開発したこの方法、わたしの名前を付けるべし!」

だったのかも?という伝説・・・へぇえええええええ!

Maria は聖母マリア様ではなくて、もっと古い

旧約聖書の時代のMaria (Myriam) だったのでした。

 

これにて一件落着!ついでに etimologia (語源、語源学)

という単語も知ることが出来て一石二鳥。

モーセの姉がミリアムであり、ラテン語でマリアになる。

これも初めて知ることが出来ました。

一石二鳥、いや四鳥で友人には感謝でございます。

 

モーセの姉ミリアム。

弟のモーセが十戒の石板を掲げている横で焚火に大鍋をかけて

何やら怪しい薬草や鉱物を湯煎でグツグツ・・・

「フフフ!これぞ新しい技法、わたしが発明したのよ!」

と呟いていたりして。

変な風景を想像しています。

 

 

 

ホカホカマリア様? 2月26日

 

イタリア語を少しご存じで

古典技法の経験がある方ならば

あるいはイタリア料理を勉強なさった方なら

きっとご存じのイタリア語単語

それは「bagnomaria」、湯煎という意味です。

 

古典技法で欠かせない石膏地はニカワ液に溶いてありますから

必ず湯煎で温めて液状にして(冷えるとゼリー状になる)使います。

 

▲右上のガラス瓶に石膏液が入っています。

普段は冷蔵庫に入れておいて、使う時に湯煎で温めています。

下に敷いた紙がびしょ濡れなのは、湯煎して瓶を拭かなかったから・・・。

 

キャンバスや板絵の下地、額縁にもKANESEI小箱にも

一番ベーシックな石膏下地、つまりニカワで溶いた石膏を

湯煎して塗ってあります。

 

▲パスティリア(石膏盛上げ装飾)も湯煎した石膏液で垂らし描き。

 

で、このイタリア語の湯煎という単語「bagomaria」

バーニョマリーアと発音しますが、バーニョはお風呂またはトイレ

マリアとは言わずと知れた聖母マリア様です。たぶん。

この単語を見るたびに湯船につかってホカホカしたマリア様とか

トイレに座ったマリア様とか(大変に失礼ながら!)

イラスト的な画像が頭に浮かんでしまう。

 

なぜ湯煎が bagnomaria という言葉になったのか

気になりだすと止まらない。

 

もしかしたらお風呂もトイレもマリア様も

全く関係ないところから来た単語だったり?

それもまた興味津々であります!

 

今度イタリア人に聞いてみよう・・・

 

 

忘れていない 2月22日

 

すっかり小箱制作ばっかりね

と思われているかもしれない・・・ですが

こちら額縁も忘れておりません。

 

 

隙間時間にガサゴソと制作。

1700年代イタリアの額縁風のデザインにしました。

外側には果物と葉。この果物のリース模様は

ぜひ一度作ってみたかったデザインなのです。

中央にはリボン巻き巻き、端先は・・・

これ何と呼ぶデザインでしょう

変形「lumb’s tongue」のような。

 

次はボローニャ石膏を塗り磨き、

ボーロを塗り金箔を貼ってメノウで磨いて、

ちょいと古色を付けたら完成です。

なぁに、あっという間ですよワハハ・・・ハ・・・

 

 

星ちがい 2月19日

 

シンプルな小箱・・・いや

KANESEI小箱としては、シンプルな小箱が出来ました。

 

 

こちらも星のような模様を入れてありますが

いつもの青ベースに金の星ではなくて

パスティリアで小さな点々をで集めて盛上げて

その周囲をマイクロ点々を打ってキラキラとさせてみました。

 

 

蓋の縁はひと回りぐるりとベルト状に一段高くして

格子のようなウロコのような模様が細かく入っています。

この写真だと暗くて見えませんが・・・

 

ちなみに箱の下の本は2023年フィレンツェ滞在時に

書店で立ち読みして、時代物だけどこれなら読めそう・・・

と買った小説です。1年経って結局まだ読んでいない!

表紙がギルランダイオの「ジョヴァンナ・トルナブオーニの肖像」

なのは偶然です。いや、無意識に惹かれたかもしれません。

 

 

ジョヴァンナのような貴族の娘さんが

この小箱をこっそり持っていたら

どんな風に使ってくれたかな、なんて。

 

いつか政略結婚することは貴族の家に生まれた運命

だけど、密かな恋人もいて、その人から贈られたという

2人のイニシャルが刻まれた指輪が入れられていたりしたら・・・?

 

なんちゃって。少女漫画の世界まっしぐら。

 

いつもと一味違う金の星、いかがでしょうか。

 

 

星いろいろ 2月15日

 

ウルトラマリンの青をベースに金の星を並べるデザインは、

それこそジォットのフレスコ画の頃から

(それ以前からかも)ある不朽のデザインでして、

わたしも小箱になんども繰り返し入れています。

 

今回は平たい正方形の箱に紋章風に入れてみました。

 

 

金の部分はすべて純金。

いつもの純金箔水押と、星模様と細い線模様は純金泥です。

 

 

この写真では分かりにくいのですけれど

やはり金泥で描くと絵の具の「金色」とは全く違うのです。

輝きが奥深く繊細といいましょうか。

描いていて楽しいのはもちろん金泥です。

 

 

中の布はグレーを選びました。

今あらためて見ると地味ですね。

 

 

斜光でみると筆跡がけっこうクッキリ見えます。

これはお好みですし程度もありますけれど

わたしは少々筆跡が残っているところに

ワックスで古色を付けた表情が好きです。

 

単調にならず、力強さや人肌が感じられる。ような。

 

いかがでしょうか。

 

 

信じるべきは手 2月12日

 

額縁の修理をしています。

 

作業部屋では天井の蛍光灯の明かりに加えて

手元のライトも使っています。

斜光ですと凹凸や傷がより見分けやすくなります。

欠けてしまった部分を再形成した時など

特に斜光でいろいろな角度から見る必要があるのです。

 

 

でも最終的な良し悪しを判断するのは

目視ではなくて触覚です。

目は疲れた夕方や気分(恥ずかしながら。)で

「まぁ良いんじゃないかな」と判断してしまうことがあるけれど

指先の感覚はぶれません。嘘が付けないというか。

 

ここで目の判断に流されてしまうか

もうひと我慢して手の判断に従うか

ここで完成度が決まるのです。

もうそれは残酷なほどに完成度が違うのです。

 

この壁を超える、つまり手の判断を受け入れるのには

結構しんどい時もあります。人間ですもの。

そんな時は手の判断を受け入れてから

つづきは翌朝に繰り越します。

そうすると気持ち新たに向き合うことが出来たりして。

 

今できることは先延ばしにするな

なんて言いますけれど、それはそれ

急がば回れとも言いますしね。

臨機応変に。そして着実に。

それを目指して精進しております・・・

 

 

どちらがお好み? 2月08日

 

以前に「『小箱の同じデザインは二度と作らない』というのはやめた」

つまり同じデザインを再度作ることを宣言(大げさ)しました。

今回の小箱も以前に作った模様を技法違いで作ったものです。

 

 

上の写真が新作。

石膏地に模様の輪郭を線彫りして箔を貼り磨き

模様の内側を点々打ちしました。

今回の点々はマイクロサイズではないので

よりクラシカルというかルネッサンス風味に

なったような気がしています。

 

ちなみに以前作った時はこの模様を

パスティリア(石膏盛上げ装飾)で入れました。

 

 

同じサイズの箱、同じ赤色ボーロに純金箔で

磨り出しのアンティーク仕上げですが

模様の凹凸の差で印象も違うものです。

 

 

パスティリアの方が華やかな印象。

 

 

点々打ち装飾は比較的スッキリ。

どちらがお好みですか?

 

わたしはですねぇ、わたしは・・・

その時の気分で変わります!

そんなもんです、ハハハ。

 

 

思い入れの有無と距離 2月05日

 

先日BGM代わりにテレビをつけていましたら

ぬいぐるみ作家の方のインタビューでした。

ひとつずつ違う手縫いのぬいぐるみは

個展でも即完売で、注文も数年待ちだとか。

 

その方のぬいぐるみ購入者は女性や子どもだけでなく

大人の男性のファンもいるそうで、

家に迎えたら家族のようにペットのように

大切にする方が多いそうです。

 

インタビュアーがその方に「自分で作ったぬいぐるみを

手放す(売る)のは辛くないか、思い入れはあるのか?」と聞いたところ

きっぱりと「思い入れはしないようにしています。」

と答えていらしたのが、とても印象に残っています。

 

 

わたしは小箱や額縁をまるで

自分の分身のような娘のような気持になって

それこそ思い入れ盛沢山でいるのですが、

そうではない作家は一体どんな心境で制作しているのだろう?

 

「あえて自分とぬにぐるみに一定の距離を取るようにしています。

名前も付けませんし、モノとして扱う。」

というようなことを仰っていました。

特にぬいぐるみなど顔があって気持ちを込めやすいものを作っていると

距離を保つのは自分のためにも必要かもしれませんね。

 

そしてぬいぐるみに名前を付けたり気持ちを込めるのは

購入してくださる方の特権であって、

その「余白」は作者が入っていく場所では無いのかも。

思い入れモリモリの品は、人によっては重くかんじるでしょうし。

 

 

「心を込めて作られた品」は、その品物への

愛情が豊かでリスペクトもあって、という感じですが

「思い入れのある品」って、執着とか

しぶしぶ手放すような暑苦しさも感じられる・・・

品物を作って売るからには「心を込めて」が

お客様も自分も気持ちが良いのだろうなぁ。

 

小箱・額縁とぬいぐるみ・・・

完成する「もの」は違うけれど、制作する気持ちや

「自作のもの」に対する葛藤は共通なものを感じました。

 

そうか、なるほど。

手放す前提の品とは心の距離を保つ。

偶然だったけれど、貴重なお話を聞くことが出来ました。

 

 

時間は不明だけど 2月01日

 

小箱についてお話するとき

「ひとつ作るのにどのくらい時間がかかるのですか」

というご質問は度々お受けします。

もちろんデザインやサイズにも寄るのですが

実は「ひとつだけ集中して作る」と言うことが無いので

ひとつ作る必要時間はわたしにも不明だったりして・・・。

 

下地作りはいくつかの小箱をまとめて作業します。

 

▲今回の下地作りは22個

 

ご注文の品があればまずそれを優先して、あとは

「なんとなくデザインのイメージが出来つつある」用の箱を選んでおきます。

そして下ニカワとボローニャ石膏塗りまで終えて

丸一日乾燥させて待機。

 

いつまで待機するかは、その箱の運命であります。

すぐにご指名がかかることもあれば

いつまでも待機しているサイズの小箱もあったりして。

 

デザインはず~~っと頭の中でこねくり回して

ようやく表層に上がって来たものを掬い上げて描き起こす感じです。

デザインが決まれば、ようやく石膏磨き、デザイン下描き

箔や彩色、乾くのを待って箔のメノウ磨き

仕上げ塗装、内側の布貼りで完成を迎えます。

 

これは簡単な場合でして、パスティリア(石膏盛上げ装飾)や

マイクロ点々装飾(細かい刻印打ち)、アンティーク風加工をしたり

作業時間は増していきます。

たいていの場合、2個同時進行します。

3個は多すぎに感じる・・・。

 

▲左の瓶、大きいのがボローニャ石膏液、小さいのがニカワ

 

そんな訳でして、ひとつ作るのに

どのくらいの時間がかかるか?とのご質問の答え

それは・・・1か月以上、場合によっては3か月、とか・・・。

流れ作業で心のこもらない制作にならないように

という期間でございます。・・・長いですよね。

 

できるだけお待たせしないように、励んでおります。

 

四角以外も 1月29日

 

最近ようやく完成した小箱は、外側を削った変形型です。

いつもの通り箱義桐箱店製の美しい桐小箱を

ガリガリとヤスリで削りました。

 

▲まだ削り途中。

 

箱木の厚さや強度を考慮して

でもギリギリ削れるところまで攻めてみました。

 

 

この箱は石膏下地を磨き終えて、あとは装飾!という段階で

ず~~~っと放置、いえ「お昼寝」させていました。

なかなか気に入るデザインが思い浮かばない。

本当は昨年秋の小箱展に出したかったのですが間に合いませんでした。

 

適当に落書きのようにデザインを考えていて

ある日ポカッと浮かんだ模様を入れてみたら

あら、悪くない(当社比)んじゃないかい?

 

 

中は王道クラシックに木地部分は茶色に着色

濃い緑の別珍を選びました。

磨り出しはせず、少しだけワックスを付けて

アンティーク調にして、ふむ、いかがでしょうか。

 

なにせ小さな箱ですが、制作時間は結構かかっていたりして。

 

 

今度はもう一回り小さく、または大きく

それとも水箔(金と銀半々の箔、ほとんど銀色)でも良いかも?

いろいろバリエーションを作ってみようと思います。

 

 

厄は落ちたか拾ったか 1月25日

 

昨年暮の大晦日間近の日

とつぜんポカッと時間が出来たので

ガサゴソと小箱制作をしていました。

純金箔を貼ってさて、メノウ棒で磨きましょう

・・・と思った時、手から滑り落ちて折れてしまったのでした。

 

 

細くてすこしカーブしているので

落とせば折れやすい形ではあるのです。

だけど、これと同じメノウ棒を折るのは2回目。

1本目は留学時に買って、数年後に落として折った。

今回のは2011年にようやくフィレンツェに行って買って、また折った・・・。

何ということでしょう。

古典技法の道具は日本では手に入り辛い、そして高価なのです、トホホ。

 

きっとこれは2023年の厄落としである!

 

そう勝手に思い込みまして。

だけど現実的に、このメノウ棒が無いのは大変に不便です。

金箔を磨くにもタイミングを逃すと

美しく輝きませんので「まさに今必要」なのです。

 

手元にあったゼリー状の瞬間接着剤で張り付けてみました。

このメノウ棒という箔を磨く道具、結構力や体重をかけて磨くようで

一代目は接着してもダメだった記憶があり、今回もダメ元でした。

 

そうしましたら、しっかり接着出来て早速使うことが出来ました。

折れ方が良かったのか、接着剤の進化か。

とにかく作業も出来て二代目復活、一安心したのでございます。

 

その夜にお風呂でふと思ったこと。

壊れたのが厄落としだったら、直したら厄は戻ったのか??

折角落としたのにまた拾っちゃったんだったら

ものすごく嫌だな・・・なんて。

 

でもまぁ、都合よく考えることにします。

厄は落ちた。直したメノウ棒はもう新たなものである!

rinascimento これぞ再生、ルネッサンスでありますよ!

・・・そう思うが吉、でございます。

 

 

その時に言うべきこと 1月22日

 

1月24日の水曜日から、フィレンツェに行って参ります。

 

いつもは帰国後にご報告でしたが

今回は先にお知らせしてみることにしました。

とは言え、イタリア滞在中もブログは予約投稿いたしますので

変わらずご覧いただけますと嬉しいです。

イタリア滞在記はまた帰国後に。(2023年滞在記も中途半端ですが。)

 

大学卒業後すぐに留学したフィレンツェで

一番お世話になったのが額縁工房corniceria del’agnolo の

マッシモ&パオラ夫妻でした。

修行先探しに難航したなか、受け入れてくれたのはマッシモでした。

2年間毎日毎日、半日を彼らの工房で修行させていただき

親知らずを抜くときは工房のお客様の歯医者さんを紹介してもらい

(おかげ様で緊急対応していただけた)

頭痛の時の鎮痛剤選びから食事のこと

(激安ワインを飲むくらいならビールを飲みなさい、とか!)の心配、

たまに家に招待してもらって

暖炉の炭火焼きステーキをご馳走になったり・・・

まだまだ精神的に子供だったわたしにとって

本当に「イタリアの両親」でした。

 

その後、彼ら夫婦にも様々なことがあって

数年前からマッシモは額縁の仕事から離れてしまい

わたしがフィレンツェに行った時も挨拶と少しのお喋りだけ

という状況だったのでした。

 

パオラから「残念ながらマッシモが数日前に亡くなった」

と連絡があったのは昨年12月でした。

 

 

2月に会った時 Come sta? (お元気ですか?変わりない?)と聞いたら

Si, cosi cosi… (うん、まぁぼちぼちね。)との返事でした。

「ちょっと痩せたな」と思ったものの、

その時は慌ただしい挨拶で終わりました。

それが最後になるなんて、もちろん思いもせず。

 

この人に一体どれだけお世話になって

支えられて、助けてもらっただろう。

その感謝はきちんと伝えただろうか。

せめてマッシモの墓前でご挨拶だけはしたいのです。

 

後悔先に立たず、人生はいつ何があるか分からない、

一日一日を大切に、一期一会、

そんなことは頭では知っていたけれど。

 

会いたい人には会っておかないといけない。

せめて感謝は伝えておかないと、と今更思っています。

 

 

その扱いの違いを比べる 1月18日

 

2024年、辰年です。

年男、年女の皆様おめでとうございます。

 

毎年の年始のご挨拶に干支の動物が描かれた

中世~ルネッサンス時期の絵を探して

自作の額縁と組み合わせたりなんかして

(図々しいけれどお許しを!ハハハ・・・)いるのですが、

今年の辰は困りました。

 

辰は龍、日本ではとても演技が良くて神様にもなっています。

だけど、西洋での龍(ドラゴン)、どうも悪者なのです。

毒の息を吐くとか、炎を吐いて焼き尽くすとか、確かに邪悪。

 

▲ウッチェッロ作「聖ゲオルギウスと竜」 1470年頃

 

悪者退治で槍で突かれる竜・・・これは年賀状には使えません。

鳥のような足と爪、蛇のような尻尾にコウモリ風の翼

目を突かれて血を吐く、ひどい姿で描かれています。

 

▲「アンティキオの聖マルガリタ」

 

上の絵なんて、日本の竜とはずいぶんと印象が違います。

笑っちゃうような姿。

ちなみにこの聖マルガリタはドラゴンに食べられちゃったけれど

手に持っていた十字架が竜の胃袋を傷つけたので

無事に生還できた、というお話。

そんな訳で聖マルガリタのガウンの残り布を吐出し中・・・?

 

方や中国~日本での龍は威厳があって近寄りがたく

この世ならぬ姿で天を駆け巡っています。

地上にいる姿って見たことが無いような?

 

▲海北友松「雲竜図」

 

日本の龍も、そうは言っても

ユーモラスな表情をしている絵が結構ありますね。

上の龍も鼻やら目つきに人間味があったりして。

頭の形も剝げたお爺さん(失礼!)みたいだし。

だけど邪悪さは微塵もない。

日本の龍は毒を吐いたり焼き尽くしたりしませんものね。

なにせ水の神様ですからね。

 

ドラゴンも龍も起源としては近いらしく

紀元前に蛇や爬虫類の姿から始まったとか。

蛇と言えばキリスト教では「悪」ですから

土着宗教の想像上の動物だったドラゴンが

キリスト教に追いやられて(表現が難しいですが)

徐々に「悪」のシンボルになって行ったのかしら・・・と思っています。

 

文化と宗教を遠くから眺めて比較するって面白い。

人間っていろんなことを考えてきたものですね。

 

辰年、充実した一年にしたいと思います。

 

俺の家 1月15日

 

俺は白い熊だ。

 

おう、俺の自慢の家を見てくれ。

 

 

ゴールド&ブラック、ゴージャスだろ?

まさに俺にピッタリだ、そう思わないか?

 

中を見せるぜ・・・

 

 

絨毯は黄色だぜ!

 

 

どうよ、俺の硬い尻(!)も痛まないぜ。

 

ちなみに俺の座高は4.5センチだぜ・・・

 

 

どうだい俺の家、気に入ってくれたかい?

 

外側寸法:55×55×25mm

桐小箱にボローニャ石膏下地

赤色ボーロに純金箔水押、メノウ磨き

黒アクリルガッシュで彩色

ワックスによる古色仕上げ

 

Firenze 2023-効くか効かないか 1月11日

 

ダラダラと続けております2023年1月~2月の

フィレンツェ滞在記です。

 

わたしがフィレンツェに行くのは、以前は11月

最近は専ら2月メインです。

なぜなら一番安い時期だから。

そしてなぜ安いかと言えば、寒いから。

 

海外からイタリアへ旅する方々にとって

イタリアの魅力と言えばやはり

美味しい食べ物もさることながら

燦燦と輝く太陽と青い海・・・が大きいようで

2月の暗くてジメジメで寒い時期は

わたしのような「海は特に・・・」

の人間には穴場時期です。

 

さて、そんな「寒い時期」ということは

やっぱり風邪をひきやすいのです。

滞在中、毎度毎度風邪をひいて

(発熱したり寝込むことは無いけれど)

のどのイガイガと鼻水に苦労する。

薬局へ駆け込みます。

 

数年前のブログでも書いたのですが

イタリアののど飴がとても優秀です。

「Benactiv」もうこれ一択!と思って

(言いふらしすぎて数人の方から

イタリア土産に頂戴したほど)いるのです。

だけど今回、違うのど飴も入手しました。

 

フィレンツェの街角には結構な数の薬局があって

(ドラッグストアではなくて、いわゆる町の薬屋さん)

薬剤師さんの考えで提案してくれる薬が違うのです。

それぞれの薬局で「のどが痛くて」と言って

出してくれたのが下の写真のもの。

 

▲箱に点字があるのも素晴らしい。新鮮。

Benactivも箱側面に点字があります。

 

一番下の箱がお気に入り「Benactiv」

その上は違うメーカーだけどBenactivと成分はほぼ一緒です。

一番上はどうも成分が違う。

使い方を読むと、下ふたつは「24時間に8粒まで。

1つ食べたら次まで3~6時間開けること」とあるけれど

一番上は1~2時間に一粒食べること、とありました。

効能が優しいのですね。

これを薦められた薬局は住宅街のオシャレなお店

だけど薬剤師さんはザ・イタリアンなマンマで

「なるべく強い薬は使わないように」と考える感じでした。

 

下ふたつ、食べるとほんのり苦くてよく効く。

一番上は、レモン味の美味しい飴。

効くかと言うと、やっぱりBenactivには敵わないのでした。

 

それからもうひとつ。

イタリアのエルボリステリア、直訳すると薬草店

つまり漢方薬店のような位置づけでしょうか。

そこに行ったときに「風邪気味で頭痛がする」

と相談して買ったのが下のひと箱です。

 

 

このお店はこの薬でちょっと名が知れていたみたいで

後から少し調べたら古くからあるもののようです。

薬剤師さん曰く「解熱効果はないけれど、痛みには効くわよ」と。

物は試しと飲んでみることにしました。1回2錠。

そして1日に2錠以上飲まないこと。

つまり一日1回飲めば長く効くということらしい。

 

薬草の薬ですから当然だけど草の味

見かけも正に「乾燥草団子」(!)です。

ほんのりミントが感じられるので

大粒の割にのど越しスッキリ爽やかで不思議な飲み心地です。

 

そして効きました。

人によって合う合わないがあるでしょうし

わたしは初体験の薬だから余計良く効いたのかもしれませんけれど

即効性があります。

内容はと言うと、ヤナギ、デビルズクロー(?)

トケイソウ(!)、カモミール、ラベンダー

レモン、マジョラム、ミント、

そしてナイアシンの植物抽出物と。

トケイソウって、あの時計草でしょうか??

ヤナギ、つまり柳は抗炎症作用、鎮痛効果がある、と書いてありました。

 

つまり何がどうなのか良く分からない・・・けれども

このひと箱(20粒入り)で15€。

1回1€50・・・日本円で240円弱。

ううむ、安くはない。

ハーブベースの割にあまりに効きすぎるような。

でも常備薬に良さそう。

薬ですから副作用の心配はありますが、

少ない回数で効いてほしいですものね。

 

その国によって薬も医療も歴史があって

人々の体質も体格も違って

医療に対する考え方も人それぞれです。

薬の効き具合、薬剤師さんの品格と優しさ

そんな面からもイタリア文化や考えの一端が見えるのでした。

 

 

鎌倉へ 気持ち穏やか 1月08日

 

2023年12月の終わりに鎌倉へ行きました。

毎年我が家の恒例行事、鶴岡八幡宮へのお参りと

由比ガ浜での深呼吸へ。

昨年は正面からお参りせず慌ただしいお参りでしたが

今年はやっぱり正面から伺わなくちゃね!と言うことで

鳥居をくぐってテクテクと歩きます。

 

▲中央の舞殿、お正月準備で美しい締め縄が飾られていました。

 

とにかくもう、人が多い。

毎年増えているのでは?と思うほどです。

老若男女、そして外国からの方が沢山。

聞こえてきたのは英語と中国語が多かったようです。

 

▲幸せそうなご家族。日本を楽しんでください。

 

▲お参りを終えて振り返ると、八幡宮から海まで続く道が見える。

 

▲「ニーーン♪」

 

2021年はマスク姿だった狛犬も今年は笑顔(?)

後ろの2代目大イチョウもスクスク育っていました。

 

さて、お昼にしましょう。

八幡宮入口の池の横にあるカフェテリアは穴場なのか

小町通などのお店に比べると並ばず静か

そして景色も良いので好きな場所です。

ここでおうどんをば。

 

 

写真が悪い・・・のですが!

関西風のお出汁にシンプルな具(牛煮込み、ネギ、温泉卵)で

それはそれは美味しいのでした!

このお出汁・・・たまらなく美味しくて

すっかり飲み干しました。

茶寮 風の杜

 

腹ごしらえも無事に済ませ

いざいざ由比ガ浜へ参りましょうぞ。

もう小町通は恐ろしいので

(人込みも歩き食べの食べ物もニオイも・・・)

若宮大路をまっすぐ突き進む。

 

段葛は着物を着せてもらった観光客がのんびり散歩しています。

のどかで良い風景です。

 

若宮大路も少しずつ小町通化してきていることに気づく。

いつも立ち寄っていた骨董店2軒は

いつの間にかふたつともとも無くなっていて

謎のパワーストーンのお店やら和雑貨店

そして食べ歩き用のおやつの店・・・

 

いや、もう何も言うまいよ。

わたしの記憶の鎌倉が遠くなるだけ。

今は今の鎌倉の姿がある。

祇園精舎の鐘の音を聞いたのでした。

 

 

変わらない由比ガ浜で気分転換です。

今年も良く晴れて暖かで気持ちが良い!

中学生くらいの女の子たちが

キャッキャと遊ぶ姿に昔の自分を思い出して和んで

 

 

太平洋の宝さがし。

今年はなにも見つからなくて

でも海風と日差しで気持ちも穏やかになりました。

広々とした場所でボォォォ~~ッとする時間は、人生で必要です。

 

帰りの車の窓からは、遠く

薄ぼんやりと頂上の雪だけが見える富士山が

「また来年元気においで」と言ってくれているようでした。

 

▲江の島の向こうに薄く薄く見えているのです。

 

鎌倉詣を終えて、2024年を迎える気持ちになりました。

さぁさぁ、今年も出来ることを出来るだけ

マイペースに頑張ります。

 

 

整理したい 1月04日

 

能登地震、飛行機事故で被害にあわれました方々へ

心よりお見舞い申し上げます。

 

今日4日から仕事始めの方が多いのでしょうか。

今年のお正月、お節も相変わらずの内容でした。

不穏な日々の中、こんな呑気な話をすることを

おゆるしください。

 

 

お煮しめは

三浦大根、金時人参、ゴボウ、蓮根、京芋、綱こんにゃく、くわいです。

銀杏と絹サヤを飾りました。

何だかそれでも足りなくて庭の葉など摘んで。

 

 

紅白かまぼこ、二色卵、鮒の甘露煮、コハダの粟漬け。

これらは買いました。

田作り、黒豆、紅白なます、キンカン煮、百合根の卵とじ

たたきごぼう、酢蓮、鰤の塩焼き、酢タコ、鶏の松風焼

海老の含め煮 数の子、の16種。

遅れていた数の子の塩抜きも何とか間に合って一安心でした。

 

酸っぱい物が多い我が家のお節です。

なにせ家族全員酒飲みですので

おつまみになるようなメニューになってしまいます。

 

▲そして今年も頂いてしまったお年玉・・・

 

▲お雑煮は鴨出汁に人参とゴボウの細切り

京芋、大根、小松菜、そして丸餅。

 

今年のお正月はとにかく眠いです・・・体力不足。

年齢ですかなぁ。

 

近くの神社へお参りに行きましたら

風が強くて並んでいてもビュービュー寒い。

でも余計なものが吹き飛ばされて清められて

氏神様はご機嫌良さそうな雰囲気でした。

勝手な想像ですけれど。

 

午後は眠気覚ましにお抹茶と花びら餅です。

 

 

いつものテーブルで、お茶入れも篩(ふるい)の

缶のままというスタイル、お湯もヤカンから直接です。

本来なら先にお菓子を頂いてからお茶・・・の順番ですけれど

いや、まぁ、一緒の方が美味しいし・・・。

お点前も何もありませんけれども、ハハハ、美味しかったです。

 

毎年、なんとなく、なんとな~~く考える抱負。

2024年は、ちょっと諸々を整理しようと思います。

したい事とやらねばならない事があっちこっち散らばっていて

方向と覚悟が定まらぬ。

自分のキャパシティも変化しているようなので確認したいですし。

仕事も日々の生活も頭の中も少しずつ整理して

やめられる事を「覚悟を決めてやめる」、そして

したい事とやるべき事を絞って注力できるようにしたいと思います。

 

・・・思います。いや、します、ハイ。

 

 

あけましておめでとうございます 1月01日

 

 

 

世界が変わったぞ 12月28日

 

最近なにか、「おお、これは!」と思われたことはありますか?

 

わたしが「こ、これは世界が変わった!」と思ったもの

・・・それは0.2mm芯のシャープペンシル。

「また大げさなことを言っている・・・」

と思われるでしょう?でも本当なのです。

 

▲その名もオレンズネロ。極細の芯でも折れにくい工夫がされている。

 

アトリエLAPISの生徒さんが使っていらっしゃる様子を見て

「こんなものが世の中に存在しているとは!」と驚きつつ

すぐさま購入しました。

 

ちょっとお高い・・・のですけれど

その細さと繊細さ、書き易さといったらありません。

トレーシングペーパー(わたしが描くと

線が太くなりがちな紙なのです)の細かい下描きだってお手の物!

今まで0.3mm芯を使っていましたが

別世界といいますか、壁の向こう側な感じ。

0.3mmでは描き切れなかった部分、

なんだかモチャッと潰れてしまった部分も

0.2mmですとハッキリ描ける。

変な例えですけれど、目が悪かった人が

初めて眼鏡をかけたような感じと言いましょうか。

0.1mmの差は大きいのです。

 

 

たしかにちょっと折れやすいけれど

ペンも色々と工夫してくれています。

Bの芯でも慣れると折れずにスイスイ。

一度手にしたら、もうこれ以外ない。

久しぶりに「おおおぉ・・・!」と感動した品でした。

 

いつ発売になったのか、もう以前からあったのか。

きっと有名な品なのでしょうけれど

とにかくシヤワセ~な気分になる書き心地。

 

もし細かい作業がお好きな方がいらっしゃったら

0.2mmシャープペンシルをぜひ。

 

 

Buone Feste 2023 12月25日

 

クリスマスの月曜日でございます。

皆様いかがな年末をお迎えですか。

 

海外のこの時期のご挨拶として「Season’s Greetings」

(イタリア語だと 「buone feste 良い祝日を」になると思います)が

ずいぶんと増えましたね。

クリスマスはキリスト教の大切な祝日ですから

クリスチャン以外の人には冬至前後に

「これから日が長くなって、春が近づいてくるよ。

新しい季節を迎えよう」と言う意味を込めて

挨拶する方が良いのでしょうね。

 

日本ではあまり深く考えることなく

楽しいイメージのクリスマスですから

日本人同士でメリークリスマス!と言いあうのは

なかなか素敵なことだと思います。

 

イタリアの友人知人で、クリスマスの礼拝に行く人は・・・

ひとりしか思い出しません。

他の人たちは、家を少し飾って、家族で集まって食事して

プレゼント交換まではするけれど、と言った感じです。

特に都会の人たちはそんな感覚が多い様子。

今の時代は宗教について話す機会も随分と減りましたしね。

 

・・・なんてことは、まぁ置いておいて。

皆様、今年のクリスマスも、どうぞ暖かくしてお過ごしくださいね。

 

 

 

記念にひとつ 12月21日

 

谷中の箱義桐箱店での展示会が無事終わり

放心状態だったとき、家族に

「なにか記念のものでも買ってみたらぁ・・・?」と言われました。

 

そうですね、せっかくの機会、記念に

何か手元に置いても良いかも・・・と思いました。

そして「これじゃ!」と買いましたのはこちら

 

 

「THE VISCONTI HOURS」

14世紀後半ミラノのジャンガレアッツォ・ヴィスコンティ公の時祷書です。

 

時祷書は、現存するものの中では

もっとも多く存在している中世装飾写本である。

内容はそれぞれ異なっているが、祈祷文や詩編を集成し、

内容に合わせた挿絵をつけて、ローマ・カトリック教会の

キリスト教徒としての信仰・礼拝の手引きとして

編集したものである。Wikipediaより

 

イギリスの古書店から送料含めておおよそ1万円。

安くはない買い物。でも欲しかった!

アトリエLAPISの書架にあって

以前から眺めていたのがようやく念願叶いました。

 

▲1972年ニューヨークで出版

 

▲目次 全編英語・・・

 

この本(写本)の特徴は、なんと言っても色使いでしょうか。

とにかく派手です。クリーム色の羊皮紙に金

そしてピンク・青・水色・緑・紫。

目がちかちかしそうです。

天平時代の色使いを彷彿とさせるような派手さを感じます。

 

 

悪趣味と綺麗のギリギリライン

中には「下品」と表現する方もいらっしゃるようですけれど・・・

 

▲確かにちょっとやりすぎ感は否めない

 

装飾模様の美しさ、大胆さに見とれてはまると出られない

ちょっと中毒性がある感じです。

有名な「ベリー公のいとも華麗なる時祷書」とは

まったく違う趣、確かにあちらの方が華麗だけど・・・

 

▲比較的落ち着いた色使いのページもあります

・・・比較的、だけど。

 

こちらも負けないくらい「思い入れ」たっぷりに描かれております。

受胎告知のシーンは厳かに、シックな色使いなのです。

ジョヴァンニーノ・ディ・グラッシと

ルキーノ・ベルベッロ・ダ・パヴィアという2人が描いたとか。

なんだかこの2人の自慢げな鼻息が感じられる気がします。

とても楽しく描きたいように描いた!と言ったような。

 

こうした「作者本人が楽しく充実した制作時間を持てたのだろう」

と感じられることが大切(わたしの勝手な想像だとしても!)です。

苦しみの中から生まれた作品には感動するけれど

わたしは身近に置くには修行が足りない・・・。

 

▲文章ページのレイアウトも聖書の雰囲気。

 

この本についての詳しい説明は省きますが

現在オリジナルの原本はフィレンツェの

国立中央図書館が所蔵しているとか。

この図書館、留学時の自宅も学校もとても近かった思い出の図書館

なんだか勝手に親近感がわいちゃったりして、

そしてとうとう手元に置くことを決めたのでした。

 

さて、せっかく入手した宝物です

汚さないようにカバーをかけました。

 

 

本体にはモリスデザイン、ケースにはピンクの紙

(頂き物の包装紙。捨てられない性格が発揮されます。)で包みました。

なんたる悪趣味!

でも良いの。強烈なカバーになりましたけれど

このフューシャピンクもモリスの色使いも

この時祷書の中で見覚えがあるのですもの・・・ムフフ。

自己満足満載になりました。

 

 

良い写真を撮りたい 12月18日

 

最近つくづく、ブログやインスタグラムにはとにかく

「美しくて目を惹く写真」が必要と痛感します。

 

大量に流れるSNSや情報を携帯電話で見るとき

流し見していることもありますが

その中で手を止めて見てもらうには、まず写真。

いつ、どこで、誰が見て下さるか分かりませんから

発表するからにはより沢山の方に「おや」と思って頂きたいのです。

 

それにしても小箱や額縁の金箔・水箔(銀色)を

撮影することも難しさと言ったらありません。

ギラギラしすぎず、自分の影が映り込まず、色も美しく

背景から浮かず、そして美しくて目を惹く写真。

・・・撮りたいけれども。

 

▲ひとまず暗くすれば雰囲気が出るだろう、という算段・・・

 

雨戸を閉めて、鏡台の上を片付けて小箱を並べ

角度やら背景を考えて(散らかった背景をいかに隠すか)

右往左往します。

なんだか、こう、釈然としない。

 

大学の卒業制作で黄金背景テンペラ画を描いていた時

製作途中の記録写真を撮るときの苦労を思い出します。

鈍い鏡のような金箔面に自分が映り込まない角度で撮影したり。

卒制展のカタログ写真をプロの方が

順番に撮影してくださるのですが、

その時にも「うぎゃー、金箔かぁ・・・」と言われた記憶。

美しい黄金色に撮影ってプロでも面倒なのですね。

 

箔を使っていない彩色小箱も

ちょっとした影や角度で表情が変わるのですから

もうどうしたもんか、どのポイントからがベストか

沢山撮って比べるしかありません。

 

▲ドイリーなんか敷いてみちゃったりなんかして。

 

重い一眼レフはもうすっかりお蔵入り

もっぱらiPhoneで撮っています。

 

でもなぁ、やっぱり最新機種が欲しいな

いや、ミラーレス一眼が良いかな。

いやいや、そもそも写真撮影の腕とセンスの問題では?!

 

むーんむーんと唸りつつ、今日も母(わたし)は

娘たち(小箱)のお見合い写真を撮る気持ちで励んでおります。

 

 

広がる夢のレパートリー 12月14日

 

いままではオーダーのご依頼といえば

ほとんど額縁だったのですが、

最近ようやく小箱のオーダーも頂けるようになりました。

谷中の箱義桐箱店での展示会でも

いくつもご注文を頂くことが出来ました。

お客様は皆さん「いつでも良いですよ

気長に楽しみに待っています」と仰ってくださるのです。

なんとも有難いお言葉で恐縮です。

 

とは言え、やっぱり出来るだけ早くお届けしたい。

まずはともあれ、着手します。

 

 

上の写真の大きな箱(とはいえB5より一回り小さい)は

指輪ケースです。

蓋に透明なアクリル板が入っているので中が良く見えて便利!

小箱装飾は蓋がメインですので

このスタイルの箱は目にとめていなかったのが正直なところですが、

なんのなんの、側面もたっぷり色々細工できますね。

 

奥の長細い青い小箱は乳歯入れ。

なので可愛らしい歯のイラストが印刷されています。

この箱、じつは3段のお重のようになっています。

中も細かく仕切られていて、とにかくかわいい。

小ぶりのピアス入れとか、小さな貝殻標本にしたり

想像が膨らみます。

これはご注文の品ではなくて、新しい試みで作る予定です。

完成したらご披露させてください。

 

 

指輪の箱、18個のマスに小さなクッションがペアで入れてあって

指輪を立てて入れられるようになっています。

このクッションはなんと箱義の上野本社の社員さんの手作りなのですって!

桐箱ふくめて正真正銘メイドインジャパンでございます。

作業のために一旦外します。

失くしたら大変!なので、きっちり保管。

 

本当に、小箱と一口で言っても箱義さんには様々な小箱があります。

(大きな箱もありますよ!)

これからレパートリーをさらに増やしたら

もっと楽しくなる!とワクワクしています。

 

 

ジョヴァンナお披露目 12月11日

 

今年もまたこの時期になりました。

「小さい小さい絵」展です。

秋に完成させましたギルランダイオ作

「ジョヴァンナ・トルナブオーニの肖像」部分模写を出品します。

 

展示即売会、でございます。

 

 

第29回 小さい小さい絵展

12月21日(木)~27日(水) 最終日は17時閉場

池袋東武百貨店6階1番地 アートギャラリー

03-5951-5742

池袋東武百貨店

 

名刺大の板にボローニャ石膏地を作り

卵黄テンペラで模写しました。

この絵「ジョヴァンナ・トルナブオーニの肖像」を

ギルランダイオが描いた当時と同じ技法と材料です。

額縁もまた、古典技法(木地にボローニャ石膏

端先に赤色ボーロに純金箔水押し)で制作しました。

 

まるっと全部を古典技法で制作しましたので

(一部の板と接着剤など以外)

雰囲気や手触りはルネッサンス当時を感じていただけると思います。

 

今年はこの1点のみの出品になってしまいましたが

その分だけ「濃い1点」になっております・・・。

12月末、暮れが押し迫ったお忙しい時期ですが

お近くにお越しの際にどうぞお立ち寄りください。

 

 

 

 

「いわくありげ」な小箱 12月07日

 

完成した小箱は家族に見てもらうのですが

その度に感想が面白いと言うか

それってどういう意味・・・と訊ねたくなります。

 

今日の小箱は最小サイズの豆小箱、黒と赤と金の装飾です。

側面にも模様を入れてみました。

 

 

これを見た家族の一言は「なんかぁ・・・ちょっと・・・

いわくありげな箱だけどぉ・・・」

 

???

いわくありげ(曰く有り気)って、どんないわく?

「だけどぉ」の続きが気になるんだけど??

結局この小箱に対する感想はそれでお終いで

わたしも追及しませんでした。

 

 

おどろおどろしい不穏な雰囲気が感じられ・・・

無くもない・・・かも知れない?!

赤と黒と金の色が成せる業、と言うことにしてください。

 

でもぉ、ぎゅっと詰まって可愛い小箱だと思うんだけどぉ・・・。

 

いかがでしょうか。

 

外側サイズ:35×35×23mm

木地にボローニャ石膏、アクリルグアッシュで彩色

ワックスによるアンティーク仕上げ