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ラテン語額縁の使い方 7月25日

 

ジュエリーブランドgermedeur の kanekoさんから頂いた

ご注文額縁は無事完成してお届けいたしました。

先日はグラッフィート(搔き落とし)が

終わった時点までご覧いただきましたが

いつものように古色をつけてアンティーク調にします。

 

 

上の写真、左が今回のラテン語額縁

右は以前に作ったことわざ額縁です。

ラテン語額縁はまだ黒々として金もピカピカですが

ことわざ額縁の擦り切れコッテリ仕上げを目指します。

 

 

スチールウールで擦って傷をつけ

ワックスでこってりと汚しをつけてお化粧。

 

 

さぁ、完成しましした。

この額縁は黒い別珍布を貼ったボードを額装して

いわばお盆のように平らに置いて

ジュエリー展示に使っていただく予定です。什器ですな。

 

額縁にもいろいろな使い方があります。

絵や写真などを入れるだけではなくて

アイディア次第でぜひご活用いただければと思います。

 

 

 

どこもかしこも 7月22日

 

先日、ドイツ人でベルリン在住の友人Kと電話していたのですが

彼女は自分のお店(自作の革製品を販売するお店で奥は工房になっている)

を閉じようと思うとの話。

あんなに頑張っていたし楽しそうにしていたのに、なぜ?と聞くと

「お店のある通りは今はほとんどのお店が閉めてしまった。

人通りも減ったからお客さんも来ないし、

賃貸料の支払いも大変だし・・・」

 

Kはネットでの販売もしていますが

「2018年頃は売れ行きがすごく良かったけれど、コロナ後は全然。

食品の価格も倍になったし、3つ目のバッグを買う人はいないのよ。」

との事でした。

 

 

ミラノ在住でフィレンツェ留学時代の友人Fの話。

彼はとても有名な家具修復工房の3代目で

腕も人柄も良くて安泰と思いきや

「いわゆるクラシックな古い家具って大きいから広い家が必要だけど

若い人はもう大きな家に住む余裕は無いしね。

それにこうした家具は時代遅れでもう好まれないからさ、

今ある修復の仕事はすべて以前からのお客さんで

それもお年寄りばかり。

彼らが亡くなったら家具は二束三文で売られちゃうか

捨てられるだろうね。」と言っていました。

超絶技巧で作られた家具、昔は箪笥2竿でマンション一件分の価格でした。

今まで繰り返し修復し大切にされてきたけれど、それらも顧みる人が居なくなる。

時代の流れ、と言えばそれまでだけど。

 

 

どこもかしこも(ドイツとイタリアだけですが)

嬉しい話はあまり聞けません。

バイデンさんとトランプさん、ゼレンスキーさん、プーチン氏、

イスラエルとパレスチナ、その周辺、そして中国、北朝鮮。

他にもわたしが知らないだけで、もめ事は尽きない。

 

回りまわってわたしたちの日常も不穏ですね。

どうしてこうなってしまったのだか。

考えても考えても、じゃぁこうすればよい

という答えは見つかりません。

 

 

額縁の作り方 グラッフィートの下描きをどうするか問題 7月18日

 

先日ご覧いただいたラテン語フレーズを入れた

額縁の装飾過程をすこし。

 

箔の上に卵黄テンペラ絵の具を塗って乾いたら

絵の具を掻き落として箔を見せる

「グラッフィート graffito 」という技法です。

もう何度もご紹介しておりますので

ご興味があればぜひ続きをご覧ください。

 

さて、ボローニャ石膏地にカーボン紙で

デザインを転写しまして、これをニードルで線彫りします。

グラッフィート装飾は、基本の方法としては

この線彫りはしません。

石膏地に箔を貼り磨き、

まっさらな箔地にテンペラ絵の具を塗り、

乾いたところに模様を転写して掻き落とします。

わたしは何故に石膏地に線彫りするのか

(ひと手間増やすのか)と言いますと、

線があることで薄っすらと凹凸と陰影が出来て美しいと思うこと。

それから、テンペラの上に転写する必要がありませんので

カーボン紙等の跡が残らないこと。

 

 

上の写真は搔き落とし開始の様子です。

黒い絵の具層の下に金箔があります。

薄っすらと文字の線彫りが見えていますので

このラインをなぞります。

今回は黒ベースですので黒色の上にカーボン紙を使っても見えませんし、

例えば白いチャコペーパー等使って跡が残ると厄介です。

逆に明るい色のテンペラを塗って、その上に転写する場合でも

やはりこの転写跡ってとても気になるのです。

完成度がぐっと落ちてしまうような。

そんな訳で、ひと手間増えてもこの方法が気に入っております・・・。

 

 

さぁ、グラッフィート(搔き落とし)が終わりました。

あとは古色仕上げをして完成でございます!やれやれ。

 

 

子どもに与えるもの 7月15日

 

イタリアの美術館で、可愛らしい小さな額縁に入った聖母子像や

教会で使う道具のような美しい小物が展示されていました。

かわいいなぁ・・・と単純に眺めていたのですが

後から聞いたところによりますと

 

 

その昔、貴族の次男は家督を継げないので僧侶になり

教会のヒエラルキーで上位を目指す、

そして生家に利をもたらす・・・という道が敷かれていたとか。

将来が決められていた子供たち

幼いころから教会の「お道具」などを模ったおもちゃを与えられ、

馴染まされていたのですって。

将来、実際に教会の聖具に触れても違和感なく受け入れられるように。

 

 

それを聞いて以来、単なる「美しい小さなもの」と

鑑賞できなくなりました。

そして後から、実は結構な驚きとショックを受け

でもどこかで納得したことに気づきました。

この美しい「遊び道具」にまつわる様々な思い、

人々の・・・特に両親の心境、

イタリアの文化と芸術と宗教などなど、

連綿と続いた物語に思いを馳せたのでした。

 

 

それを「ど忘れ」と言って良いのか 7月11日

 

昨日の午後、魚ニカワ液をつくろうと思ったのでした。

このニカワ液は、古典技法の箔貼りにいつも使っているので

もう何百回と繰り返し作っています。

板になっている乾燥ニカワを小さく刻んで水にふやかし

翌日に湯煎で溶かせば完成です。

 

 

上の写真、右のシート状のものが魚ニカワ。

製菓で使う板ゼラチンとそっくりです。

左の瓶は魚ニカワを水に漬けたもの。

 

で、ですね・・・。

この何百回も作っているニカワ液ですが

1リットルの水に魚ニカワ4枚というのが大体の決まりと言いますか、

わたしがイタリアの学校で習った分量です。

昨日「さて作ろう」とおもったのですが、はて・・・。

突然、本当に突然この分量が思い出せなくなりました。

あれ、水1リットルに1枚だっけ?え、250ミリリットルに1枚だっけ・・・?

 

ネットで検索してみたら自分が昔書いたブログに行き当たり

無事に1リットルに4枚と確認できた次第です。

そうだそうだ、そうだった。

昔のわたし、書いてくれてありがとう・・・。

 

だけど、ニカワ液が作れて安心しつつ

自分の脳を心配しつつ、なんともドンヨリした午後でした。

いやはや。

 

 

美しいラテン語 7月08日

 

完成間近になっている額縁は、ラテン語装飾です。

ジュエリーブランド「germedeur」のkanekoさんからのご注文

ジュエリー展示に使っていただけるように作っております。

 

昨年「ことわざ額縁」と名前を付けた額縁を

ご覧になったkanekoさんが、

ガラスケース内で使えるサイズで文字を入れて・・・

とご注文くださり、さて文章はどうしよう?

ご相談を重ねました。

 

▲満を持してラテン語文章の装飾を額縁に転写する。

 

アルファベットの文章で、ぱっと見て意味は

すぐに分からない言葉(英語でもフランス語でも無くて)・・・

で、ラテン語に収まりました。

kanekoさんが日本語で文章を作り自動翻訳でラテン語に訳し

じゃぁこれで行きましょう!となったのです。

が、ご存じのように自動翻訳ってまだまだ危うい・・・

額縁を作り始めてしまったら

文章を変えることはとても難しい。

ここはひとつイタリア人に尋ねるが吉。

 

そうしましたら案の定「ええと、言いたいことは分かるけど

文章として微妙というか美しくない。」とのこと。

添削してもらいました。

 

kanekoさんによる日本語文章

「ジュエリーを通じて希望と喜びを分かち合う」

これを自動翻訳では

「Spem et laetitiam per ornamenta participes sumus」

そして添削後

「Spei laetitiaque per ornamentum participes sumus」

 

構成の変更はなかったけれど、小さな言い回しなのか

単語の活用など変更されていました。

(変更理由など説明してくれたのですが

わたしのイタリア語能力ではいまひとつ理解できず!)

ハッキリ言ってよー分からんのです・・・。

とにかくこれで「正しくてエレガントなラテン語」になったはずです。

 

イタリア人にとってラテン語は

どんな位置なんだろうと、つねづね思っていました。

日本人にとっての古文?もっと近いのか遠いのか。

きっとある程度勉強したり興味を持っている人なら

読んで理解はできるでしょう。

でも作文や添削となると別、と言った感じです。

そして「より美しい文章」となると、これはぐっと難しくなる。

 

このイタリア人の友人には感謝です。

きっと高校時代は頑張って勉強したんだろうなぁ・・・と思います。

 

 

CHAOS & ORDER 7月04日

 

先日ご覧いただいた楕円形額縁は

無事完成しましてお客様にお届けいたしました。

 

 

ご注文くださったのは刺繍作家の坂田あづみさんです。

リンクからぜひ彼女の作品と世界をご覧ください。

 

 

坂田さんのお話によると、ご自身の作品には

楕円形額縁が一番しっくりくるとのこと。

正円だとバランスがとり辛いそうです。

でも四角でもない・・・。

そうした、作家だからこその感覚はとても理解できます。

こればっかりはご本人次第、

そしてこうした感覚が一番大切だったりします。

 

9月に坂田さんは個展を控えていらっしゃるそうで

この額縁もその時にお使い下さる予定です。

その際にはぜひ、作品と一緒になったこの額縁もご覧ください。

またご案内いたします。

 

額縁外側寸法:217×166×20mm

木地にボローニャ石膏、パスティリアと点打ちで模様と文字装飾。

赤色ボーロに純金箔水押し、メノウ磨き。

側面に黒アクリルガッシュで彩色、ワックスによる古色仕上げ。

 

 

あなたは何て呼ばれたい? 7月01日

 

わたしの名前は、ハルコと言います。

アルファベットで書くと HARUKO となりますが

イタリア語では H を発音しません。

HAHIHEHO(はひへほ音)はほぼ全て AIEO の母音のみになる。

で、わたしの名前は彼らイタリア人にとっては大変発音し難いようです。

大抵の人たちは「アル~ゴ~」と、ルにアクセント

そしてなぜかコはゴになることが多くて

ちょっと笑っちゃって楽しいのだけど、釈然としません。

るこ、と呼んでください」と一度だけ説明して

きちんと呼んでくれている人は数人います。

とても嬉しい。

 

ちなみにわたしの工房名というか屋号というか・・・

「KANESEI」かねせい、ですが、こちらは

イタリア人の皆さんには違う意味で難しいのかもしれません。

イタリア語で CANE は犬、SEI は助動詞の二人称単数

「Cane sei」と言うとつまり「お前は犬」と言う意味に取れます。

そしてCane は犬の他に「嫌なやつ、無能なやつ、情け知らず」

というような悪い意味もあって、ううう

イタリアで「Cane sei!!」カネセイ!と誰かに向かって言ってはいけません。

 

 

フィレンツェでわたしの小箱を扱って下さるお店 Eredi Paperone で

わたしの小箱解説にはKANESEIの文字は無くて、

わたしのフルネームでご紹介くださっています。

最初は「なんでかな、屋号は知らせたはずだけどな・・・」と思っていたのですが

ある時に「もしかして」と気づいたのでした。

わたしはあえて尋ねませんし、お店の皆さんは何も仰いません。

ただ屋号は使わず名前で紹介してくださっている。

そこに皆さんの優しさを感じます。

 

ずいぶん昔、留学時代に友人Lは愛称といいますか

短くした呼び名で呼ばれていました。

わたしも同じように呼んでいたのですが、ある日Lが

「・・・その呼ばれ方、本当は好きじゃないんだ」と

ボソッと、でもきっぱり言ったことがありました。

その日以来、彼の名前は短くせずにきちんと呼ぶことにしたのでした。

 

呼び名、呼び方って難しい。

それは自国でも外国でも同じことなのですけれど

相手に敬意を持っていれば自然と「お互い気持ちの良い呼び方」

に導かれていくのだから、何も難しいことは無いのだな

・・・と思っています。

 

 

一年は厚かった 6月24日

 

2023年の一年間、曹洞宗の月間冊子「禅の友」の表紙に

KANESEIの額縁写真を使っていただきました。

このブログでもたびたびご覧いただいておりました。

1年間分、12冊分って結構な量だな・・・と

思っておりましたが3回の撮影が楽しすぎて

終わってしまったのが残念でなりませんでした。

 

その1年間分12冊の「禅の友」をまとめた1冊が作られて

わたしにも贈って頂きました。

 

▲2023年 第881~892号

 

表紙に1月号~6月号の表紙額縁

裏表紙に7月号~12月号の額縁がモノクロで印刷されていて

やぁやぁ、とてもカッコ良い。

12冊をそのまままるっと綴じてありますので

表紙も裏表紙もそのまま。

 

▲2月号の裏表紙の小箱と、3月号の表紙額縁。

 

▲10月号の裏表紙の小箱、そして11月号の表紙額縁

 

1冊の冊子は40ページ弱ですが

12冊合わさると厚い。そして重いです。

こつこつと毎月発行しておられる編集部の方々

ありがとうございました。お疲れ様です。

毎年この総集編が出ることで達成感も強く感じられる事と思います。

 

▲厚くて重い

 

とても嬉しく、感慨深く、大切な1冊です。

 

 

満ち足りてしまったから、その時が来るまでは 6月17日

 

先日のこと、あまりに出不精になって

リハビリが必要なレベルかも・・・と

友人と話したことがありました。

本当にもう、我ながら社会性がどんどん失われるんじゃないかと

(もともと希薄なのに!)思っています。

その良し悪しを考え始めると止まらない。

 

どうもこの傾向は2020年、コロナ禍以降顕著になったようです。

きっと世の中全体が引き籠りせざるを得なくなって、

でもその時期も終わって、皆さん否応なく元の生活に戻られたことでしょう。

そしてわたしですが、作業部屋が自宅の一角にあること

元から出不精だったこともあって、

コロナ禍が終わってもそのままの生活を引きずっています。

 

あの友人、かの人はどうしているかなと思って連絡はするけれど

出向いて会うまでに至らないことが増えた。

「あの展覧会、見たいな、会期はあと1週間しかないな」と思っても

出かけて行くことが減った。出かけたいと思わなくなった・・・。

 

どうしてこうも出不精に拍車がかかったのかな、

以前のようにもっと友人と会ったり美術展や

遠くの大きな本屋さんに出かけたりしなくなったのかな・・・と考えたのですが

 

 

つまり、小箱制作が楽しすぎて充実しすぎて

それで満足しているからなのです。

2020年春から本格的に作り出した小箱が

図らずもわたしの人生に対する姿勢まで変えてしまったのでした。

 

 

楽しくて仕方がない小箱制作と額縁制作を

ひとりで引き籠れる部屋で毎日好きなように続けることが出来て、

それらを喜んでくださる方々が居て、満ち足りている。

それなら別に、人付き合いが悪くても(もともと良くも無い)

最新の美術界情報に疎くても

今のところはまぁ、良いんじゃないの・・・という結論に至りました。

こんな風に認めるには時間がずいぶんと必要でしたが

それも併せて良いと、自分に言い聞かせています。

 

 

きっとわたしも、否応なくこの生活を変える時が来るでしょう。

その時まではこのままで。

ひとりでニヤニヤと制作を続けられる幸せを噛みしめています。

ありがとうございます。

 

隠れた異空間 6月10日

 

2024年フィレンツェ滞在記、つづきます。

 

カッライア橋のロータリーからボルゴ・オンニッサンティを進むと

右側に謎めいた施設がありました。

教会かな?でもなんだか違うな、と思いつつ

ごめんくださーい・・・図々しくドアを開けてみると

 

 

なんじゃこりゃぁぁ・・・!

 

素晴らしいエントランスでした。なんだろう、ここ。

広くないけれど迫力満載。

 

 

フィレンツェにしては珍しくバロックバリバリ。

天井画もだまし絵になっていました。

お、おもしろい・・・人が降ってきそう。首が痛くなりました。

 

 

シモーネ・デ・ピエロ・ヴェスプッチの記念碑。

ここは旧サン・ジョバンニ・ディ・ディオ病院でした。

病院本体はすでに郊外に引っ越し、現在は

どうやら本部施設の一部が残っているとか。

 

ヴェスプッチと言って思い出すのはアメリゴ・ヴェスプッチ(1454~1512)

アメリカ大陸を発見した(インドと思っていたらしいけれど)冒険家です。

アメリゴはこのシモーネの子孫だそうです。

ヴェスプッチ家はこのオンニッサンティ界隈の有力貴族で

シモーネさんがこの病院の創設者、1382年のこと、

日本では室町時代が始まってようやく50年と言った頃です。

 

700年近く前に設立された病院が今も続いていて

その跡地が改修を重ねつつも大切にされている・・・

素晴らしいことです。

 

 

階段を背に振り返った風景。

正面のガラスドアの向こうはボルゴ・オンニッサンティです。

ガラスドアを隔てて、これまた別世界が広がっていました。

ガイドブックには載っていない場所

地元の人もあまり立ち入らないような不思議な場所。

 

先日ご紹介したカスターニョの最後の晩餐画がある

サンタポッローニャ修道院跡やこの旧病院など

フィレンツェには無料で入れる素晴らしい空間があります。

そしてどこも、外界とバシャッと断ち切られたような

空気が変わる異空間なのです。

 

通りがかりで立ち入り可能なのはこのエントランスまで。

奥には美しい中庭が見えていました。

きっとヴェスプッチ家の美しいお屋敷と庭が続いているのでしょう。

次回、もうちょっと時間の余裕をもって再訪しようと思います。

あわよくば守衛さんにお願いして中庭だけでも覗かせてもらおう・・・。

 

 

リセットは必要 6月06日

 

結局、完成した小箱はまた黒なのでした。

 

 

少々抵抗して・・・というか、

自制して黒以外の箱も作りましたが

定期的に黒小箱を作ってリセットしてから

新たに色付き小箱を作る、というのが良いペースなのです。

とは言え、真っ黒ですけれど内側には

濃いバラ色の布を貼りました。

「真っ黒だな~」と何気なく開けてみて

あらびっくり、実は乙女チック!

 

 

この小箱はすでにインスタグラムでご紹介したのですが

その際に「外は真っ黒でも内側は乙女薔薇色

ツンデレ小箱」などと書きました。

ツンデレってすでに死語なのですね。そうですか、

使えるようになってきたらもう死語・・・そんなものですね。

ちなみにきっと、と言うか確実に「乙女チック」も死語。

 

 

この小箱は角に溝を入れてみたのですが

その影響なのかペルシャのような天平風なような

エキゾチックな異国情緒漂う雰囲気になりました。

 

▲パスティリアで入れた模様はイタリアの古い額縁から拝借しました。

 

 

黒い小箱を作って落ち着きましたので

また気持ち新たに明るい色の小箱を作ることにします!

 

 

身体は食べたもので作られる・・・ 6月03日

 

相変わらずダラダラ続く2024年2月の

フィレンツェ滞在記でございます。

 

なにせ普段は家族と暮らしておりますので

ひとりで家で食事をする機会はほとんどありません。

ですので、ひとり分、それも自分のためだけに準備するとなると

どうにも面倒くさい気持ちが先立つのでした。

 

言い訳はそのくらいにして、何を食べていたか少々ご紹介など。

手抜き食事の風景です・・・。

 

▲ひたすら手を抜いた晩御飯。切らない。加熱もしない。

冷蔵庫から直行野菜。

 

▲プチトマトを買うのは切らなくてよいから。

ルッコラと人参もパックから出すだけ。

でもアボカドとモッツァレッラは切った。がんばった。

 

▲この日のお昼ご飯。トスカーナのサラミとプチトマト。

パックを開けて並べました。

もちろんこれだけじゃ足りなくて、ポテトチップスなぞバリボリと。

 

▲もう見飽きたいつものサラダ。

あまりにひどいので豆追加。缶詰開けただけ。

 

▲生ハムもわすれずに。そしてお煎餅をバリボリ。

 

▲この夜はビーツもあるし、豪華に蒸し野菜もある!

ものすごくがんばった。

 

鬼平犯科帳と日本のニュースを見ながら

白ワインなど片手にノンキなものです。

色んな種類をまんべんなく食べましょう、ええ、分かっています。

でもほら、期間限定ですのでね、ちょっと勝手気ままにやりました。

 

▲お隣にお招きいただきました。

オレンジとモッツァレッラのサラダが美味しかった!

 

今回のアパートは2軒長屋のようになっていて、玄関が共同でした。

で、お隣に滞在中の日本人女性の方が夕飯にご招待くださったのです。

きちんとした家庭料理、正しいお食事。

この前菜の後には沢山の種類の野菜と豆のスープと

カリッと焼いたパン。美味しくて楽しい夜でした。

 

 

ミラノの友人が沢山の差し入れを持って来てくれた後は

一転して豪華になりました。

トリュフ風味のバジルペーストを混ぜたパスタに

美味しいオリーブオイルと美味しいパルミジャーノレッジャーノを。

(自分では買う勇気が出ない食材)

ルッコラも張り切ってトッピング。

 

友人が来てくれた時にはガサゴソと作りました。

 

 

鶏手羽先とブロッコリーのトマト煮。

白いのはポテトピュレです。これは買いました。

作ったのは煮込みだけ。この一皿の前に例によっていつものサラダ

(モッツァレラとプチトマトとルッコラと人参)も出しました・・・。

友人は優しいので喜んでくれましたよ、たぶん。

 

 

最後の夜にも友人が来てくれました。

前日に友人LとCちゃん宅でビステッカをご馳走になり

残りのお肉を持たせてもらったので(まるで実家のお母さん・・・)

ビーフシチューを作りました。

トルテッリーニと一緒に食べたら中々の美味。お肉が美味しいから。

ちなみにトルテッリーニは市販品です。

ビーフシチューの素も日本から持参・・・。

 

今回の滞在、実は初めて風邪をひかずに済みました。

ひとえに寒くなかったからだと思います。

前回はあまりに寒くてLに「凍死したくなければダウンを買え」

と言われたけれど、今回はコートが暑いくらいでした。

今までは「食事内容が悪いから免疫が落ちて風邪ひくんだ・・・!」

と思っておりましたけれど、そうじゃなかった!たぶん!

と言う訳で、きっと次回(可能ならば)の滞在でも

引き続きこんな食生活になると思われます。

まぁいいか!ハハハ

 

 

幸せな娘時代を思い出すマダム風 5月30日

 

現在、ご注文を頂いて作っている額縁は楕円形です。

白木(無塗装)の額縁木地を日本で調達する場合、

木工所に頼むか、木地メーカーから購入するか

既成の木地を買う。おおむねその3パターンです。

そして日本で楕円形の木地を手に入れるのは困難なのです。

需要が少ない上にサイズ調整もできないし

板を刳り貫くので材料費もかかる・・・

入手困難もやむを得ないことでございます。

 

今回の木地は、ご注文下さったお客様ご自身が購入されて

KANESEIに持ち込んで下さったものです。

イタリア製だとか。いいなぁ、楕円・・・

 

さてさて、デザインはすぐに決まりました。

パスティリア(石膏盛上げ)で模様と文字

「CHAOS」「ORDER」を入れることになりました。

木地に石膏を塗り磨きまして、わたしの好きな技法

パスティリアで左右に模様。

そして上に CHAOS 上に ORDER とゴシック体で入れます。

文字アウトラインに線刻を入れて

 

▲額縁サイズはB5の縦長な感じ

 

純金箔の水押し。古典技法真っ只中を進みます。

 

▲ボーロは赤。やはり赤が一番美しく仕上がると感じます。

 

今回、楕円形の額縁の箔作業は初めてでした。

ずいぶん昔に作った楕円額縁は木地仕上げでしたので・・・。

箔作業は、貼り始めの場所を記憶しておくことが必要

(次の作業の開始場所でもあるので)ですが、

四角など角が無い形、始まりと終わりが無い

繋がった形ですので不思議な感覚でした。

楕円(正円)の額縁制作の注意点を知る。

途中、どこから始めたか分からなくなってしまって気づきました・・・。

 

▲机の上の散らかり様は見て見ぬふりでご容赦ください・・・

 

箔を貼り磨き、部分的に黒で彩色して、

文字の中をマイクロ点々打ちをして、さて。

楽しい楽しい古色付けです。

キラキラ輝く金箔をスチールウールで擦って傷をつけ

ワックスで汚して、ボロボロ加工をしてアンティーク調にします。

輝く金と艶やかな真っ黒な色が

この加工でしっとりと落ち着いてきます。

 

勝手なイメージですけれど、古色加工前の額縁は

「露出度高めの黒いドレスを着た若い女の子が

瞳をキラキラさせて楽しくパーティーへ向かう!」

という雰囲気だったのが、古色加工をすると

「50年後、その女の子は沢山の人に愛されて沢山の経験をして

奥底から湧き上がるような美しさを湛えるようになった。

そうして幸せな娘時代を思い出して微笑んでいる」

というような変化。

 

そんな感じになったら良いなぁフフフ・・・

と思いつつ、今日も嬉々としてガサゴソ作っています。

 

初夏の乾いたイメージ 5月27日

 

小箱を展示した際など、お客様の様子を拝見していますと

意外な色味の小箱を選んてくださる方がいらっしゃいます。

散々こちらでお話しています通り、わたしは

黒と金の小箱ばかり作ってしまうのですが、

当然ながら明るい色や茶色がお好みの方も沢山いらっしゃるのです。

 

ええと、つまり、明るめの色の小箱を作ってみました・・・

と言うことでございます。

 

 

白地に金泥と銀泥で模様をいれました。

 

 

純金箔で帯を入れて、下部は濃い緑色です。

 

 

内側はペールグレー、布は純白で爽やかに。

初夏のような陽気の日に色を選んだら

こんな組み合わせになりましたけれど、

なんだか平安時代の着物の重ねのような・・・

いや、ちょっとおこがましいですかな。

 

 

パリッとした小箱(当社比)、いかがでしょうか。

 

 

2人きりで夢の時間を 5月23日

 

唐突に登場するフィレンツェ滞在のお話です。

 

フィレンツェ歴史地区にある

アンドレア・デル・カスターニョ(1421~1457)の

「最後の晩餐」フレスコ画は、無料で見られるのが不思議なほど

(有難い限り)素晴らしい作品です。

サンタポッローニャ(サンタ・アポッローニャ)修道院の

食堂だけが残っていて、平日午前中に公開されています。

ここは彫刻師匠グスターヴォの工房から中心街への通り道なので

工房に行った日は必ず立ち寄るのです。

 

 

とても広い食堂には今はもう何もなくて、そうして大抵だれもいない。

 

▲ライオンも厳かに絵を見上げる

 

足音が響き渡るほど静かな場所で、誰もいない空間を独り占め。

カスターニョの作品と二人きりで過ごすのは大変に贅沢な時間です。

ここはカスターニョの美術館となっていて

最後の晩餐がメイン作品ではありますが

わたしはこちらのピエタが好きです。

 

 

タイトルは「Cristo in pieta tra angeli」、直訳すると

「亡くなったイエス様と天使」と言ったところですけれど

復活したイエス様が棺から出るのを天使が手伝っている図

と勝手に解釈しております。

(全く違うかもしれません。あくまでわたしの勝手な想像です。)

 

3日間を石の棺で横になって過ごしたイエス様、

手足には穴が開いて、胸には槍で刺された傷もあって

立ち上がるのも一苦労な様子です。

ようやく体を起こしたイエス様を天使がかいがいしく支えています。

ううう・・・と唸るイエス様の隣で

右天使「はい、大丈夫ですよ~、ゆっくりゆっくり~」

左天使「足上げて~、さぁ出ましょうね~」

なんて言っているんじゃなかろうか。違うかな。

 

▲下描きも残っている。迷いのない線の上手さ素晴らしさ!

 

 

そして、「最後の晩餐」の左上には無事復活して

旗を持って天に戻るイエス様の姿が描かれています。

あの細長い窓を開けたら何が見えるのかな、と想像したりして。

 

これらの絵を描いた時、カスターニョはたったの26歳だったそうです。

その10年後、36歳でペストに感染して亡くなってしまった。

無念だっただろうな、家族や恋人はいたのかな、

描きかけの絵はどんな作品だったのだろう、

もっと長く生きたらどんな作品を描いたかな、

彫刻はしたのかな・・・

 

まさにこの場所で、若きカスターニョが立って絵を描いていた。

そしてきっと、お弁当も食べただろうし

日々喜んだり怒ったり不安になる時もあったかもしれない。

600年前の、まさに、ここで!

 

この場所は想像が膨らみすぎて(なにせ誰もいないので)

頭がパンパンになってしまいます。

そうしてボォォッと過ごしてから大通りへの扉を開けると

大学生が闊歩していて、バスやバイクが走っている現実にもどる。

 

カスターニョと夢の時間を過ごせる場所です。

 

 

やりすぎちゃった? 5月20日

 

黒い小箱ばかり作っているとまた家族に笑われそうなので

(良いんですけどね、別に!開き直っております。)

ちょいと色味のあるものを作るべし・・・と

ダマスク模様をブルーグレーの濃淡で入れてみることにしました。

 

 

パスティリア(石膏盛上げ)で

箱縁にポチポチを入れて純金を貼り磨き

そしてベースに明るい青、模様をブルーグレーで入れています。

 

 

模様入れた。できた。金もキラキラ。

・・・でも、なんだか、こう・・・

既視感が漂いすぎるような。ありがち。

 

じゃぁ!ということで、ひび割れ加工をしまして

濃い色に調整したワックスを塗りたくりまして

 

▲ワックスコッテコテ

 

磨き上げて完成としました。

 

▲ピンぼけ失礼いたします・・・

 

 

鮮やかだった青が、ほとんどグレーになりました。

 

 

ひび割れ加工の割れ目にワックスが入って、古色感満載です。

・・・ちょっとコッテリやりすぎちゃった?

色のある小箱のつもりが、またもや暗路線・・・?

いや、でも良いのですこれで。

 

なんだかほら、ヴェネツィアの裏路地にある薄暗い骨董店で

埃を被っていそうな雰囲気になりましたでしょう?

「これはね、さるお屋敷から出たイワク付きの小箱でね、

特別なお客にしか見せていないんだ。だから秘密だよ・・・」

なんて、眼光鋭い店主が話し出しそうでしょう?

・・・ね?!(「うん」と言って下さい。)

 

このひび割れ加工小箱、ちょっと楽しくなってきました。

またやってみます。

 

 

販売禁止の理由が気になる 5月16日

 

思い出した時に登場、フィレンツェ滞在記です。

 

イタリアに行く度に必ず買うもの、それは薬です・・・。

怪しい。でも日本の薬とは違う良さ(変な表現ですが)があります。

それはとにかく「早く良く効く」です。

 

薬に対する考え方は人それぞれで、

できるだけ薬は飲まずに過ごしたいという方もいらっしゃれば

わたしのように「薬があるなら我慢せずにさっさと飲んでしまう」

と言う方もいらっしゃるでしょう。(もちろん容量用法を守った上で)

 

今回のフィレンツェ滞在ではいつもの

咳止めトローチ「Benactiv」と、もうひとつ買いました。

メラトニン1mg の錠剤です。

Benactiv は薬局で買いましたので薬の扱いだと思いますが

こちらメラトニンはエルボリステリア(直訳すると薬草店)

で買いましたので、サプリメント扱いかもしれません。

 

▲左がBenactiv 右がメラトニン

 

メラトニンは寝つきが悪い時などに効きます。

日本のドラッグストアで販売されている睡眠サポートサプリとは違うものです。

メラトニン剤は日本では販売禁止だそうで

(理由は詳しく知りませんが)もしかしたら

悪影響もあるかもしれません。自己責任ということで。

ちなみに持ち帰る際に申請手続きなど必要なく

特に何も問題ありませんでした。

 

▲Benactiv は16錠(2シート)入り、メラトニンはこのシートが3枚入り

 

ええと、とにかくですね、

このメラトニン錠剤、時差ボケに大活躍なのです。

わたしは眠りたい時間の30分前に1回3~4錠飲みますが

途中で目が覚めることなく6~7時間眠れます。

体調によっては寝覚めが少々重い時もあります。

イタリアと日本の時差は7~8時間あって

これは中々キツイものがありますので、

とにかく早く現地時間に慣れる(戻る)には

メラトニン錠剤が大いに助けてくれます。

旅行や出張の際にも初日・二日目はなかなか寝付けず

悶々とするのですが、その心配もだいぶ減ります。

 

日本でも解禁したら良いのだけど・・・

禁止されている問題は何か、気になるところです。

海外のサプリメント等を販売するオンラインショップでは

普通に販売されているようですが

どういう仕組みなのでしょうね。

 

なんだかメラトニンお勧め!な感じになっておりますが

ひとつの経験談として。

もし時差や寝つきに心配がある方

機会があればお試しになってみるのも

ひとつの手かもしれませんよ・・・程度に

お読みいただけたら幸いです。

 

 

暗かろうともわたしは 5月13日

 

完成した小箱をまとめてイソイソと並べていましたら

それを見た家族が

「うわぁ~暗ぁぁい~・・・」とのたまう。

 

 

黒がベースだけど金が入っているし、そんなに暗くないでしょ?

ほら、中は黒じゃないし暗くないよ!と開けて見せましたら

 

 

えー、やっぱり暗いぃぃ・・・とのたまう。

 

いいよいいよ、暗くて結構

わたしゃ人間性が暗いんで作るものも暗いんじゃ!と

灰色の整理用箱に片付けましたら

「暗い箱の中に暗い小箱がいっぱいぃぃ~!

アハハハハ!」と笑う家族。

 

 

ほっといてくれ!と叫びつつも改めて眺めれば

うむ、暗いっちゃ暗い。確かに暗いかもしれん。

 

わたしは額縁も小箱も、無意識に作ると黒と金になります。

これはやっぱり、ヨーロッパの額縁からの影響が大きいでしょう。

金の隣に来る色は黒が一番美しいと思うのです。

古色加工をすると、さらにその美しさが際立つ。

 

暗かろうが何だろうが、黒と金が好きなんじゃ~!

もうしばらく我が道を突き進みます。

 

 

写真の古典技法 5月09日

 

某日、友人の篠田英美さんの写真展レセプションに伺いました。

 

彼女はいろいろな国で成長し

今も海外と強い繋がりを持っている人で、

撮る写真もまた外国なのに日本のよう

また日本の風景なのに外国っぽい・・・

英美さんの世界はとても広く居心地が良いのです。

 

今回の写真展に、わたしが作った額縁2枚も

参加させてくださいました。

2015年に銀座のギャラリー林で

わたしたち2人の額縁と写真の二人展を開催しまして

その時の作品2点です。

 

ギャラリーの方とのお話しで

写真にも古典技法があると言いうことを知りました。

今やデジタルがメインになった写真の世界。

フィルムで撮影し現像、プリントして完成する写真は

もはや古典技法なのだとか。

デジタルとフィルムによる「古典技法」と

作品にはどちらも特徴があって

好みの世界としか言いようがありません。

 

 

古典技法で古色を付けた額縁に、古典技法で撮影・現像した写真。

 

 

懐古主義ではない(つもり)ですし

奇をてらってわざわざ、という訳ではありません。

古典技法と呼ばれるものに惹かれるのは

結局は雰囲気や肌触り、質感の好みとしか言えないのだけれど。

 

 

篠田英美さんの展覧会「銀河は高く歌う」は

中野のギャラリー冬青で5月25日まで開催です。

ぜひお越しください。

 

ギャラリー冬青

 

 

庭の攻防 5月06日

 

我が家は東京都23区内とは言え

(よく言えば)自然豊かな場所にありまして

ささやかな庭があります。

父がお仏壇から下げたご飯を鳥用の餌台に入れて

食べに来る様子を家族で楽しんでいます。

来るのは主にスズメとヒヨドリ。

 

▲ヒヨドリはいつもひとり。

ひよどりひとり。韻を踏む。

 

▲スズメはふたりで来る。

 

餌台、変な形と思われるでしょう・・・

この形に至るまで色々とありました。

この台は父の労作でして、数年前に完成した時は

額縁の付いた美しいお盆状のでした。

今はこの状況・・・

白い小さな器はお豆腐が入っていたケースを下げています。

小さい!そして下部の青い三角はネズミ返し・・・。

昔、社会科の授業で弥生時代の高床式住居を習いましたでしょう

その時に覚えたのが「ネズミ返し」、アレです。

柱を上ってきてもこの「返し」でそれ以上登れない仕掛けです。

美しい広い台だと植木からネズミが飛び移ってくる。

ネズミ返しがないと柱をネズミが駆け上ってくる。

 

なぜ小鳥は良くてネズミはだめなの?!同じ生き物でしょうに!

実際、庭を駆け回る(そうです、居ます・・・)

小さな野ネズミはとても可愛らしいのです。

ベアトリクス・ポターの絵本そのままの姿です。

でもねぇ、家に入ってくるのが、そして子孫繁栄しちゃうのが問題でねぇ。

 

そんな訳で、我が家の庭には小さな攻防戦が繰り広げられております。

今のところ餌台は父の勝ち、となっております。

 

 

必要か必要ではないのか、それが問題だ 5月02日

 

わたしの制作に純金箔は欠かせません。

必要なのですから買います。

ええ、買いますとも、必要ですからね。

たとえ懐が痛もうとも。

 

▲主に4号箔を使っています。

 

金は時価ですからいくつかの金箔メーカーの価格を比較して

その時々で選んでおります。

 

それにしても、た、たか・・・

 

いや、これ以上は言いますまい。

タイムマシンがあったら大学時代に戻って

金箔を大量購入したいと思います。

当時に比べたら4倍近いお値段なのですもの・・・嗚呼。

 

額縁も小箱も生活必需品ではありません。

命にかかわる事でも無し。

わかっちゃいるけど。

金箔の価格で嘆くなんてねぇ・・・。

世界を見回せば、わたしの周りの狭い世界の

なんと穏やかなことよ・・・。

 

 

ふたつ並べば 4月29日

 

先日完成しました点々打ち装飾の水箔小箱です。

 

隙間時間に制作しましたので

着手から完成まで思いのほか時間がかかりました。

 

 

水箔(金と銀が半々くらいの合金)は

いつも磨き上げて終わっていたのですが

今回はじめてアンティーク調の古色仕上げにしてみました。

 

 

箔の表面を擦って下地を出し

ワックスで少し汚しをかけた仕上げなのです。

反射が抑えられてワックスの色味が加わって

落ち着いた表現になりました。

いつものキラキラ輝く美しさも良いけれど

今回の落ち着きもとても良い感じ。

なんで今まで水箔の古色仕上げをしなかったのかな。

・・・我ながら謎です。

 

さて、この小箱は実は双子というか姉妹でして

先に金箔小箱が生まれていました。

 

 

 

ふたつとも同じ模様、同じサイズです。

並べると可愛さ倍増・・・親バカですみません。

 

 

今年の秋、いくつか展覧会に参加させていただく予定です。

どこかの機会でお披露目出来たらと思っています。

その際には改めてお知らせいたしますので

どうぞ実物をご覧になりにお越しください。

 

 

誰が誰のために 4月25日

 

先日お話しましたアンティーク市「骨董グランデ」で

何に出会ったか、ご紹介させてください。

「いや別に、どこで何に出会おうがどうでも良い」ですって?

まぁまぁ、そうおっしゃらずにお付き合いください・・・。

 

わたしが骨董市で鼻息を荒くする物は

もうご想像通りなのですけれど、額縁です。

ヨーロッパの小物を扱うお店の最奥のガラスケース

その中の一番後ろにあったのがこの額縁なのです。

 

 

サイズは縦16センチ、横が10.5センチと小さいのに

それはそれは繊細な彫刻が施されています。

 

 

上部にバラと蔦の葉

 

 

下部にはグリフィンです。

バラの花ひとつが1センチに満たない。

グリフィンの顔は小指の先ほど。

楕円の窓も細い枠もすべて彫り出してあります。

 

▲裏面

 

なんというかもう、超絶技巧すぎてため息も出ないと言うか

まさに「息をのむ」。

フランスの1850~70年頃のものだとか・・・

それが本当かどうか、わたしには分かりませんけれど

はっきり言ってそんなことはどうでも良いと言うか(良くも無いけれど)

こんな額縁をカリコリと作った人がいて、

それが200年近く大切にされてきた

(残念ながら葉が一枚だけ欠けている)と言うことなのであります。

 

どんな人が作ったのかな、神経質そうな初老男性かな

でもこの細かさは天才的な新進気鋭の若者彫刻師かな。

どんな人が持っていたのかな、やっぱりブルジョワの奥様かな

それとも若くして亡くなった女性の肖像画(写真かも)を

入れるために家族が注文したのかな。

・・・とか!

相変わらず激しく妄想を繰り広げています。

それもまた楽しい。

 

 

骨董グランデの会場奥深くで、わたしは

胸ぐらをつかまれた勢いで引き寄せられたこの額縁です。

今までの人生で、何度かこうした「呼ばれた」品

(古本やら道具やら)がありますが、

逃せばもう二度と会うことも無い。

もう運命、一種の諦めを持って呆然と立ち止まってしまう。

 

だけど、そうです、この日のお財布はほぼ空っぽ。

目を泳がせているわたしの隣で家族が

「そんなに欲しいのぉぉ・・・?

じゃあ誕生日プレゼントに買ってあげるぅ。

ハッピーバースデーフフフ・・・」と買ってくれてたのでした。

ちなみにわたしの誕生日は8月です。

先取も甚だしいですけれど、とても嬉しい。

 

さて・・・この額縁を作った職人に思いを馳せて

わたしもせっせと制作に励みます!

 

 

骨董グランデ 4月22日

 

わたしの出不精もすっかり定着してしまって

同じく出不精の友人と「リハビリが必要なレベル」

と言い合う最近なのですが

どうにかこうにか出かけてきました。

行先は東京ビッグサイトで開催されました

アンティーク市「骨董グランデ」です。

今年で第五回だとか。

 

 

初日(金曜日)のお昼に入場しましたが

まだお客様はまばらで空いていて歩きやすい。

ここぞとばかりに練り歩きます。

目に入るのは小さい物ばかり。・・・性でございます。

 

▲グリ模様彫刻の御香合。素敵。

 

▲こちらは七宝でしょうか。手のひらサイズ。

 

▲細かくてもラインがキチッとしていてぶれがない。素晴らしい仕事。

 

 

午後になって少しずつ人も増えました。

そして外国語もずいぶんと聞こえてきます。

中国や韓国(朝鮮)の骨董を扱うお店

イギリスのステッキ専門店など

それぞれそのお国の方が店主、

そしてお客様も外国の方・・・インターナショナル。

 

▲オールド・バカラのデキャンタ、キラキラと美しくて見惚れます。

 

▲おもちゃのお店も。

 

トッポ・ジージョを見つけてしまった―!かわいい。

言わずと知れたイタリア出身のキャラクターです。

ウフフ♡(←トッポ・ジージョ風に)

 

この日の骨董グランデは急遽行くことにしましたので

まぁ何も買わないかな・・・買わないことにしよう!と

お財布もほぼ空っぽで出かけたのです。

でも、そういう時を狙ったかのように

出会うものなのであります。

 

何に出会ったか、次回ご披露いたします!

引っ張り失礼致します・・・!

 

 

星の指輪入れ 4月18日

 

星の指輪入れが完成しました。

成城学園前にあるアンティークショップ

「attic」さんからのご注文で制作しました。

 

 

箱義桐箱店製のアクリルガラス入り指輪ケースに

いつものように古典技法で水箔(14K金箔)を貼り磨き

星の模様を点打ちで散らしています。

 

▲加工前の指輪ケース、桐の木地です。

 

18の小部屋があって、それぞれに

黒い別珍のクッションが入っています。

難点はアクリルガラスが取り外せないこと。

カバーはしましたが石膏の作業時には不便・・・。

ううむ、でも加工を前提に作られていませんから

仕方がありませんのです。

 

 

指輪はもちろんですが、こぶりのピアスも入れられます。

 

 

お店で使っていただく箱ですので、頻繁に開け閉めすること

不特定多数の方が触ることを考えて、

箔の表面をすこし厚めにコートしました。

その効果なのか、表面がいつもよりガラス質に見えて

それも良い雰囲気に仕上がったような。

 

 

成城学園のお近くにお越しの際には

ぜひ atticさんへお立ち寄りください。

星の指輪入れもお越しをお待ちしております。

 

attic

 

引き込まれて救われて 4月15日

 

なぜだか分からないけれど

どうにもこうにも嫌な考えのループに嵌ってしまう事があります。

そして自己嫌悪したりして。

 

昨今はウェブ上にそんな時の解決法がたくさん紹介されていて

瞑想する、運動する、自分を俯瞰的に見る、

そんな自分も受け入れる等々、いくつもあります。

 

だけど、ううむ、そうじゃないんだよ・・・

と、ひねくれ者のわたしは思う訳です。

運動したって一時しのぎでしょ(大体運動嫌いである。)

そんな自己嫌悪するような自分を受け入れましょうって、

そうしたら、そんな思考回路で止まってしまうじゃないか

・・・ブツブツ。

 

▲小箱ばっかり作っている場合じゃない。

小箱に逃げている。分かっておる。

 

そんなある日、偶然に北インドのシタール音楽を聴きました。

シタールはご存じと思いますが、ギターのように

左手で弦を押さえ、右手で爪弾きます。

そしてタブラと呼ばれる太鼓(二つセット)奏者と

2人で演奏するのが多い様子。

このシタール音楽が「ぐるぐる思考」からの脱出に

大変効果があることが分かりました。

・・・わたしだけかもしれませんが。

 

全く詳しくありませんので勝手な解釈ですが、

伝統的な演奏は短くて30分、おおむね1時間と長い。

そして曲の出だしはシタールのみでジャラララ~~~ン・・・と

地底から響くようにゆっくり始まります。

曲の半分頃にタブラがこれまたゆっくり加わって

そこから徐々にスピードが上がります。

 

タブラの「タンタカタンタカ」(右手)と「ムーンムーン」(左手)が

どんどん早くになって、シタールのメロディーも競うように早く複雑になって

聴衆の心拍数もどんどん上がる。

そして全員の興奮が最高潮に達したときにジャンッ!と終わるのです。

 

この、歌詞もなく(意味付けが無く)

聞く機会が少ない音楽なのもポイントに思われます。

少しずつ興奮の渦に引き込まれる時に

徐々にわたしも変な思考から引きずり出され

何も考えずにハラハラドキドキが高まって

ダンッと曲が終わるときにはまるで「サウナから出て

水風呂に浸かって整った」ようなサッパリ爽快な気分になるのです。

 

驚くほど効果があります。・・・わたしだけかもしれませんが。

長々と説明しても、この不思議な解放感は説明できません。

YouTubeやSpotifyでも「シタール」と検索すると

沢山聞くことが出来ます。

わたしは最近のオシャレなアレンジではなくて

いわゆる巨匠の演奏を選んでいます。(モノクロ写真の演奏)

シタールの音は少し琵琶や津軽三味線のようですし

タブラも鼓のように聞こえる時があります。

 

もし気になる方がいらっしゃったら

もし聞いてみようかな、と思われたら

Ust Vilayat Khan aged 16 – rare video (youtube.com)

(↑3分ショートビデオ、英語の解説あり)

Shahid Parvez Raga Darbari (youtube.com)

Vilayat Khan – Raag Darbari (1968) (youtube.com)

上記YouTubeの演奏などぜひ。

長いですけれど、きっと引き込まれること請け合いです。

 

 

イニシャルいろいろ 4月11日

 

ご注文で制作したイニシャル小箱ふたつ

ご紹介させてください。

 

 

サイズはいちばん小さな豆小箱

指輪がひとつ斜めに入る程度のものです。

左は純金箔にKとMのモノグラム

右は水箔(14金)にMのイニシャルです。

装飾方法はそれぞれ違うのですが

 

 

純金の方はベースに蔦模様を線彫りしKとMを黒でペイント。

すこしの磨り出しをしてアンティーク調に仕上げました。

中は紺色の別珍張り。シックな雰囲気です。

 

 

水箔のMは、ベースの蔦模様は金と同様ですが

Mと蓋側面の点々をパスティリアで盛上げ装飾しました。

箔も磨き上げたままですので華やかでキラキラと輝きます。

中はすべて黒、コントラストできりりと引き締まります。

 

 

どちらもお客様と仕上げのイメージ、中の色などご相談をして作ります。

同じサイズのイニシャル小箱、と一口に言っても

箔の色、文字のフォント、装飾技法によって

また開けた時の中の色によってイメージは大きく変わります。

そんなところも楽しくなります。

 

 

記念におひとつ、いかがでしょうか。

 

 

猫とお肉とアフリカと 4月08日

 

2024年2月のフィレンツェ滞在記

相変わらず忘れたころに再登場です。

フィレンツェ滞在時には公私ともに(?)

お世話になりっぱなしの友人Lですが

今回の滞在でもLと奥さんCちゃん

そして猫のムジッチェとチョルニのお宅へお邪魔しました。

猫を愛でながらビステッカをいただくのです。

 

今回、わたしはベジタリアンCちゃん用に

ホウレン草の胡麻和えとポテトサラダを山盛り

そして頂き物のシャンパンとアマローネ

(赤ワイン)がありましたので持っていきました。

アマローネはイタリア北部ヴェネト州名産ワインだそうで

ヴェネト州出身のLは大喜び、そして

レアのステーキにはピッタリ!でございました。

シャンパンもアマローネも自分では選べない

(知識がない上に価格的にも)お酒でしたので、

大切な友人とシェア出来て何よりでした。

 

▲シャンパンと猫・・・至福の時。この子はチョルニ。

お行儀の良い女の子。でもテーブルに乗ってはいけません。

 

▲相棒のムジッチェは人懐っこい男の子、じっとしていません。

テーブルからは降りなさい~。

 

さて、今年もLが準備してくれた

美味しいお肉と記念撮影をしまして、

早速ジャジャッと焼いていただきます。

もちろんLが焼いてくれます。

Cちゃんとわたしは座りっぱなし!

 

▲満面笑顔のLをご紹介できないのが残念

 

 

フィレンツェのTボーンステーキは厚切り

それをレアで頂くのが定番です。

外側はカリッと香ばしく、中はほんのり暖かい。

そして血が滴ることはほとんどありません。

 

▲さらにもう一種

 

ステーキのつづきはイタリアンソーセージ

「サルシッチャ」です。

これは豚肉だと思うのですが、ハーブが効いていて美味しい。

そして半生・・・。

以前から不思議なのですが、イタリアでは

「生ソーセージのパニーノ」がありますし

こうして家やバーベキューでも半生で食べます。

日本では生の豚肉は絶対食べちゃダメ!と言われますが

イタリアと処理に違いがあるのか、未だに謎なまま。

そして謎なまま美味しいので食べてしまう・・・。

 

▲毎回ムジッチェが膝にやってきて、わたしはもうノックアウト。

 

「もうお腹いっぱいだ~!」と叫ぶ頃

ベストなタイミングで猫が膝に座ってくれます。

実は言葉が分かっていて、残り物をつまもうと

膝に乗っただけかもしれません・・・

でも良いのです。幸せなので。

(もちろん彼らには人間のご飯は食べさせません。)

猫の頭のにおいを嗅ぎながら食後のジントニック・・・

なんたる幸せ。

 

▲Cちゃんに抱かれて至福のチョルニ、それを見るCちゃんもうっとり。

 

女の子のチョルニはわたしには抱っこさせてくれません。

それもまた猫らしくて「くぅぅ~♡」となるポイントです。

 

LとCちゃんは2023年夏にアフリカ旅行をして

すっかりアフリカに魅了されたとか。

今年の夏も今度はボツワナに行くのだと張り切っていました。

写真を沢山見せてもらって、地平線や真っ青な空、

荒涼とした砂漠も力強いサバンナ、

そして野生動物の眼差しも美しい宿ももう別世界、

二人の興奮が伝わりました。

「一度は行った方が良いよ!

だまされたと思って行ってごらん!!」と

二人に勧められました。

・・・アフリカかぁ・・・遠い。

感覚的にも距離的にも、わたしにはとても遠い。

イタリアからアフリカって、南下すれば良いんだもんねぇ・・・

時差が無いのですもの。日本からよりずっと近い。

きっと日本人とイタリア人と

アフリカに対する感覚も違うのかもしれない、

実際イタリアの街にはアフリカ系の人たちも沢山いて

イタリア社会に馴染んでいます。

歴史的にも地理的にももっと近しいんだろうなぁ、と

酔った頭で考えていました。

 

アフリカに行く前に、まずは

南極とニューヨークと北インドに行きたい・・・

二日酔いの翌日に思っていました。

 

技術とセンス 4月04日

 

現在フィレンツェに滞在中の友人が

美しい写真を送ってくれました。

EREDI PAPERONE Bottega d’Arte の

ショーウィンドウに並ぶKANESEI小箱です。

 

 

写真のセンスと技術があると、こうも違うのですな…!

彼女の配偶者の方はフォトグラファーなので

やはりそんな所もお二人は通じているのかもしれません。

 

 

あれ、こんなにカッコいい雰囲気に展示されていたっけ?

 

 

おや、こんな美しい陰影が見えていたかな??

 

 

実物より良く見えている!?

 

 

この小箱たちが良いご縁に恵まれますよう。

もしフィレンツェにお越しがありましたらぜひ

EREDI PAPERONE Bottega d’Arte へお立ち寄りください。

 

EREDI PAPERONE Bottega d’Arte

Via del Proconsoli,26r Firenze

10::00~13:00/14:00~19:00