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黒ツバメが来た町 10月07日
皆さんは、黒いツバメの物語をご存じですか。
古い古いお話です。
昔々のある日、町の教会に真っ黒なツバメが巣を作りました。
町の人々は全身が黒いツバメを見たことがありませんでしたし
黒い生き物は不幸を運ぶという言い伝えを信じてしまう人もいて、
黒ツバメの巣を3つの卵ごと壊してしまいました。
可哀そうな黒ツバメは涙を流しながら
教会の周りをぐるぐる飛び続けました。
町の人々も教会の神父様も、その様子を毎日見ていました。
そして3日3晩飛び続けた黒ツバメは
とうとう力尽きて教会の回廊に落ちてしまったのでした。
回廊の壁には、ずっと昔に描かれた美しいフレスコ画がありました。
天使が楽しそうに飛んでいて、そこには森の小鳥たちも
描かれているのでした。
倒れた黒ツバメはこの絵を見上げながら
「こんな風に楽しそうに生きたかったなぁ」と思い、目を閉じました。
明くる日の夜明けに神父様がこの絵を見ると、
あの黒ツバメが絵の中で生き生きと
飛んでいる姿が描かれているではありませんか。
昨日までは無かったはず、不思議なことがあるものだと
絵の中に生まれ変わった黒ツバメの話はあっという間に町中に広まりました。
町の人々は絵を見ながら
「ああ、なんて可哀そうなことをしてしまったんだ」と
黒ツバメと同じように涙を流しました。
そうして、町の人々は今ではツバメを大切にしながら、
黒ツバメの伝説を子供たちへ伝えているのでした。
でも真っ黒なツバメは、二度とこの町に巣を作ることは
ありませんでした。
・・・なんちゃって。
こんな物語があったような無かったような。
黒ツバメの小箱、いかがでしょうか。
カフェオレの香りがする額縁は有りか無しか 10月03日
古典技法で金箔を貼るには
磨いた石膏地の上にボーロと呼ばれる箔下地材(粘土)を
ニカワ液で溶いたものを塗り乾かします。
そこに普通の水、つまり水道水ですけれど
水を塗って箔を乗せます。
そんな風にして作業をするとき
飲み物を横に置いていることがあります。
なかなかに神経を使う作業ですので、リラックスする為に。
▲散らかった机は見逃してください・・・
上の写真、右のマグカップは箔用の水
左がカフェオレです。
そうです、ご想像の通りでございます。
筆をカフェオレに突っ込みました。
いつかやるだろうと思っていた失態、
とうとうやりました。
筆を入れた瞬間に「ギャッ」と気づいたので
幸いにもカフェオレで箔を貼ることにはなりませんでした。
ほんのりとカフェオレの香り漂う
額縁になったのかもしれない・・・と想像します。
でもでも、牛乳はカゼインでしょ、接着剤にもなっているでしょ
もしかしてもしかしたら水より牛乳で箔を貼った方が
より丈夫に仕上がったりして!
・・・水貼りで十分頑丈ですし
虫やらカビやらが寄ってくる方が心配ですね・・・。
▲大切なマグカップ、欠けてしまったので道具として更に活躍。
古典技法の長い長い歴史の中で
同じ失敗をした職人はぜったい、いる。
なんならワインだったかもしれないし!
そんなことを考えながら、そっとカフェオレを飲み干しました。
筆を突っ込んだことはすっかり忘れていました。
明るくなくたって良いんだ 9月30日
今までになく暗い小箱が完成しました・・・。
もとい、黒い小箱です。
黒地に白いラインの線彫りです。
古色をつけてアンティーク調に加工しましたら
黒が深くなってラインの白も暗くなりました。
模様のデザインは以前から使っているものでも
加工方法を変えてみたら楽しくなりました。
先日ご覧いただいたモスグリーンで細長い
「旅の思い出風小箱」と同じ加工方法です。
内側の布は明るくしようかと思いましたが、いっそのこと中も暗く。
いつものように家族に見せましたら
「わはー!これまた暗ぁいぃぃ~!」と爆笑でした。
何が可笑しいのかしら、心外だ。
はいはい、暗いですよ。
でも明るきゃ良いってもんでも無かろうよ。
何事も明暗ありきじゃ。
気を取り直して違う写真を撮りましょう・・・。
明るい場所で撮っても黒い箱は黒いのでした。
でもなかなか趣があって落ち着いていて
本棚にでもちょこっと置きたい雰囲気に仕上がったと思います。
うむ、可愛いじゃないの~。(自画自賛失礼!)
いかがでしょうか・・・。
一匹狼が三匹 9月26日
東京はある日突然に、秋になりました。
去年の秋の始まりもこんなでしたっけ?
出不精のわたしですが、久しぶりに会った友人二人と
お互いに最近の経験と考えていることを話し合って
そして励ましあって、ずいぶんと元気になりました。
分野は違えどひとりで制作している
またはフリーで活動している友人ですので
一匹狼気質といいましょうか、改めてそんな共通点を感じたのでした。
▲夏に食べたプラム、美しい色
わたしたちに「気づき」を与えようとしている人がいて
でもその人たちは言葉で何かを与えてくるのではない。
きっかけだけを提示して、こちらの様子をうかがっている。
どんな気持ちでこの作品を作ったのか?
あなたは自作のものに対して、どの程度の考えを持って発表しているのか?
などなど・・・。
それをわたしたちが受け取るか受け取らないか
(受け取る気にならないか)は、
そして考えて答えるにはタイミングが大切だよね、と言うこと。
なんだかお互いに共感して
「うんうん、そうだよねぇ・・・」を繰り返した午後でした。
そんな時間が必要だったのでしょう。
もし入れるものが決まっているのなら 9月23日
過日、ご注文頂いていた小箱が完成し
お引渡ししました。
お客様でもある知人の方とは
定期的にお目にかかる機会があるので
お互いの様子や好みも分かっていましたし、
ご注文の際にとても分かりやすく
ご希望を伝えてくださっていました。
ですので制作も大変に順調に進みました。
そして、この小箱はお客様にとって大切な、
とても思いの籠ったものを入れるために
ご注文下さいました。
わたしは光栄な気持ち、そして
厳かな気持ちでお引き受けいたしました。
デザインやお好みの打ち合わせも大切ですが
小箱の目的をお聞かせいただく事は
制作をする気持ちの上でとても大切なことです。
完成してお引渡し後を想像しつつ作ることが出来ました。
さてさて、その小箱ですが。
豆小箱の面取りをして
パスティリア(石膏盛上げ)で蓋にはイニシャルを、
側面にはポチポチを入れて欲しい、
仕上げは金箔に古色をつけて・・・とのご希望。
▲ K・W イニシャル。箔を磨いて装飾を終えたところ。ピカピカです。
▲パスティリアによる側面ポチポチ。
指が映るほどピカピカの金箔ですが
ここから磨り出しをしてワックスとパウダーで
アンティーク調に加工しまして、完成でございます。
金箔に深みが出ました。
パスティリアで凸になった部分は
擦り出して下地の赤ボーロが見えています。
打ち合わせ時に「中は何色にしますか?」と尋ねましたら
「グリーンにしてください、一番好きな色ですので!」
と即答してくださいました。
さてグリーンと言っても色んな緑色がありますね。
一瞬「ふぅむ」と思いつつも、そういえば彼女
腕時計のベルトがモスグリーンだったな、
冬はコートの色もモスグリーンだったなぁ・・・
と思い出し、その色を。
お引渡しの時、「ああ、この色~これこれ!」と
喜んでくださって、わたしも大変うれしく思ったのでした。
またひとつ、わたしの小さな娘(小箱)が
生まれて嫁ぎました。なんたる幸せ。
暗いって怖い 9月19日
またもや、忘れたころに登場のフィレンツェ滞在記です。
フィレンツェ旧市街、ドゥオーモから北東に
サンティッシマ・アンヌンツィアータ教会があります。
教会前広場があって、横には私が大好きな美術館
「捨て子養育院美術館」もあります。
▲前方の白いアーチがサンティッシマ・アンヌンツィアータ教会
わたしが大学卒業後すぐに留学したころ
この教会前広場はドラッグ売買がされたり薄暗いイメージで、
夜にはあまり近寄らない場所でした。
最近はすっかり印象も変わって整備されて
居心地の良い広場になっています。
さて、そんな場所にありますので留学時代は近寄らない教会でしたが
わたしの彫刻師匠グスターヴォの工房からほど近く
最近は工房からの帰りに寄り道していました。
グスターヴォ曰く「フィレンツェで一番美しい教会だと思う」とのこと。
入口すぐには明るく美しい回廊のポーチがあって
いざ教会内に入りますと、こちらは別世界なのでした。
▲窓の外は青空だけど、中は別世界
歴史は古く、1481年に完成したそうですが
内部の装飾はバロック様式。
濃いグレーの大理石のせいか、暗く厳かな雰囲気です。
▲天井装飾もまるでローマの教会のようです。
入ってすぐ左には銀器が並ぶ小礼拝堂があって
▲ミケロッツォによる小礼拝堂
天使の天井画も美しい。
なのですが、どうにもこうにも怖いのです。
恐らく、暗いこととライティングの効果とは思うのですが
冬に日が暮れてから訪ねると、寒さと静けさとお香の香りと
何もかもが押し寄せてくるような。
信仰の重みと歴史の重みと、外界と隔てられた空気の重みが
圧し掛かってくるような。
大好きなサン・ミニアート・アル・モンテ教会と
サン・レミージョ教会、川向うのサンタ・カルミネ教会、
そしてこのサンティッシマ・アンヌンツィアータ教会が
わたしにとって4大「怖い教会」です。
いえ、怖いなんて失礼極まりますね。
前述の通り暗いのが一番の理由です、きっと。
(でもそれだけではない気がしています・・・。)
怖い怖いと言いつつ、必ず何度も訪れてしまう教会。
まるで落語のようです。
旅の記憶と小箱の物語 9月16日
これは、モロッコ・タンジェのスークと
イスタンブールのバザールを歩いた時の記憶を
思い出しながら作った物語です。
。。。。。。。。。。。。。
香辛料とコーヒーと人々の体臭と
ありとあらゆる匂いが積み重なったバザールで、
私は出口を見失っていた。
道を尋ねようと思ったその店は薄暗い路地にあった。
入口横には安そうな土産物が並んでいる。
私はただ道を尋ねるのも悪いと思い
商品を選ぶふりをして店に入った。
狭い間口とは裏腹に案外奥は深く
いくつかの小部屋が続いている。
4つ目の部屋に差し掛かった時
ふと目に留まった小箱があり、手に取った。
五十がらみの退屈そうな店主がいつの間にか
音もなく私の後ろに立っていて驚いた。
「これは俺の爺さんが集めた骨董の残りだ。
爺さんは骨董商をしていたけれど俺が生まれる前に死んだ。
だから、今残っているのはこの棚にあるだけだ。」という。
聞けば彼の父親は骨董に興味が無く
祖父の死後ほどなく土産物店にした。
だが奇特な外国人観光客がたまに買っていくから
そのまま並べているそうだ。
「この箱がいつのものか?さぁてね
爺さんがどこで買い付けていたのか知らないから、もう分からない。」
「何に使われていたか・・・?それを知ってどうするんだ?
箱は箱さ。持ち主が好きなものを入れるためにあるのさ。」
道を聞くために入った店で、古びた小箱をひとつ買って出た。
新聞紙で包まれたその小箱を握って
ぼんやりと使い道を考えながらしばらく歩いたが、
ふとバザールの出口を聞くのを忘れたことに気付いた。
その店があった場所はすでにいくつかの路地の向こうで、
もう戻る道は分からなかった。
。。。。。。。。。。。。。
なんちゃって・・・そんな旅の思い出に
誰かが持っていそうな小箱、のイメージ。
彼が買った小箱が本当に骨董品だったのか
似せて作られた物だったのか
わたしにも分かりません。
さて、わたしが作った新しい小箱ですが
模様は西洋の本にあったものなのですが
完成してみたらいつの間にか
いずことも知れぬ雰囲気になっていました。
124×58×20mm
あっちとこっちと、感覚は違う 9月12日
小箱に装飾をしながら小さな額縁も作る。
どちらも木地にボローニャ石膏を塗って磨いて
ボーロを塗って箔を貼って磨いて・・・と、
材料も手順も同じだけれど、なにやら向き合う気持ちは違うのです。
箱は5面(4側面と上面)に対して
額縁は1面もしくは彫刻で3Dだから?
いや違うな、額縁も5面ですな・・・
やはり大きな違いは塊りか枠か、ですかね・・・。
ともあれ、箱に疲れたら額縁に行き
額縁に行き詰まったら箱に行き・・・そんなことをしています。
この額縁も箱に石膏を塗るタイミングにあわせて木地を作って
まとめて石膏を塗っておいたもの。
いつも頭の片隅にあって、どんなデザインにしようかな・・・
と呑気に考えていました。
そしてこれまた箱にパスティリア(石膏盛上げ)をするタイミングで
この額縁にもパスティリアでポチポチを並べました。
何の変哲もないデザインなのですけれど
角をカットしたことで少し柔らかさが出たかな、と思います。
ポチポチのサイズや間隔でも実は結構な変化が出るのです。
ポチとポチの間が詰まるほどクラシカルな印象になったり
ポチのサイズが大きくなると迫力は増すけれどバランスは難しくなる、とか。
ああでもないこうでもない・・・と
下描きで試しながら考える時間はとても楽しくて
完成した額縁を眺めてひとりでニヤニヤしています。
今年も12月に箱義桐箱店 谷中店で
小箱の個展をさせていただく予定です。
その際にこの額縁を含めたハガキサイズの額縁を
数点ご覧いただけたらと思っております。
写真と額縁と 9月09日
先週9月6日から、中野にあります写真専門の画廊
「ギャラリー冬青」にて開催の展覧会に
KANESEI の額縁を使って頂いております。
匿名の写真家 H.J 氏によるフィルム写真作品です。
▲70年代に撮影された作品。被写体は当時の恋人、現在の奥様。
額縁は全部で11点使って頂いておりますが
(その内の2点は同時開催の名古屋での展示に使用)
どの額縁もしばらく前に作ったものです。
上の額縁は本銀箔の艶消し仕上げ。
写真の空の青、車の輝きとコンクリートの乾いた感じと
とても良く合っています。
今回の額装はすべてコーディネートされた
渡部さとるさんとギャラリーの方によるものです。
わたしのアトリエにお越しくださり額縁を選び、
写真とのマッチングをしてくださいました。
▲とてもクラシカルな額縁だけど、服のチェック模様や
木漏れ日の影に不思議と合っている。
こうして作品を納めた額縁の姿をギャラリーで見たとき
自分の手元にあった時の記憶が薄れて
知らない額縁を見たような気持ちになりました。
晴れがましいような寂しいような、不思議な気持ちです。
▲内側の側面にアワビ貝を貼った額縁は
輝く車体とつながるイメージ。
美しく詩的で力強さもあって、青春とノスタルジーと切なさと苦しさと
色々と混ざった感情が沸き上がる写真作品に、
わたしの額縁を使っていただく事が出来たのは幸せなことです。
▲この額縁は他社製。これもスッキリとして美しい額縁です。
わたしの青春の地であるフィレンツェの
サンタ・トリニタ橋の風景があったことも
わたしの気持ちを揺さぶった理由の一つでした。
H.J氏による写真展「melody」は、ギャラリー冬青にて9月26日まで。
もうひとつ名古屋で同時開催のH.J氏写真展「eyes」は
もしご興味をお持ちいただけましたら、ぜひお出かけください。
編み物シリーズ 9月05日
勝手に命名「編み物シリーズ」として作っている
竹編み風デザインの小箱です。
数年前にひとつ作って、あまりに気に入ったので
展示会初日に友人に押し売りしたのですが
その後ふたつ作ったけれどあまり人気はない様子・・・
でもでも!きっと好んで下さるかたもいらっしゃるに違いない、と
思い込んで(思い込みは制作にある程度必要!)
新たにふたつ作りました。
水箔(14カラットの金箔)で仕上げたもの
▲三本立ての四ツ目編み風。
▲パカッ 中は濃い青にしました。
それから太くふっくらとした四ツ目編み風。
こちらは22カラット金箔。
▲行李っぽい雰囲気。
▲パカリンコ・・・内側は濃いベージュとモスグリーンです。
編み物シリーズ、数年前に
六つ目編み風のデザインも作り、手元にあります。
3つ並べてみたら、あらカワイイ~と親バカを発揮しております。
いかがでしょうか。
今年11月には神楽坂、12月には京都でのグループ展
そして谷中の箱義桐箱店谷中店での個展を予定しております。
そのうちのどこかでご覧いただきたいと張り切っております。
箔の上にもできますよ、の種明かし 9月02日
先日Instagramに、金箔2種類の貼り分けを載せたところ
思いがけず沢山の方にご興味を持って頂けたようでしたので
こちらブログでもご覧いただけたらと思います。
ヨーロッパ古典技法の箔の技法に「ミッショーネ」と言って
箔用の接着剤で貼る方法があります。
一般的にはテンペラ絵の具などで彩色した面の上に
例えば衣装の模様や天使の後輪などを入れる技法です。
今回は箔の上に箔を貼ってみます。
まずベースにはいつもの水押し技法(ボローニャ石膏地にボーロを塗り
箔を水で貼ってからメノウ磨き)で貼り磨いてから
その上にミッショーネ液(箔用の糊)で模様を描きます。
そして糊が半乾きの頃にもう1種類の箔を乗せます。
▲今回は4号箔(22カラット金箔)を水押しし
その上に水箔(14カラット金箔)を乗せます。
奥にある白い液体瓶がミッショーネ液。水性です。
そして、しばらくしてから筆で優しく掃うと
糊を置いた部分に模様が残る、という流れです。
▲これが一番楽しい瞬間
わたしは石膏地に模様を線彫りしてからベースの箔を貼り磨きます。
そうすると次の作業のミッショーネ液塗りが楽ですし、
わずかな凹凸でも立体感が出ますので。
▲こんな感じになります。ミッショーネ部分は磨けないので艶消し。
言ってみれば、いつものミッショーネ技法と同じなのですが
箔の上にも出来るよ、という事なのでした。
知り合いの古典技法作家の方が「水押しで貼り分けているのかと思った!
どうやっているのかと思った~」とおっしゃっていましたので
種明かし。でした。
ぎりぎりを攻める 8月29日
桐木地の小箱の形を変えるとき
一番悩むのが「どこまで削るか」です。
箱に使われている板の厚さ(おおよそ4mm)を鑑みて
箱の強度と安全性が保たれるギリギリラインまで攻めるのです。
▲これはもう少しだけ攻められそう。
もともと四角い箱を、どうにかして変化をつけたい!その一心です。
全ての角を丸くする、エッジをつけて丸くする
あるいは角を面で切り落とす・・・
4mmの間でいかに変化をつけるか、難しくも楽しい作業です。
まだバリエーションは増やせそう!
「むぅぅ」の行きつく先は 8月26日
ある日の出来事、どうでも良いけれど
どうでも良くない出来事の日記です。
前夜の寝る直前にsnsで嫌な発見があって
「むぅ」と思いつつも、まぁ仕方がない
そんなもんだ、と振り切って眠りました。
そうしたら案の定、とても嫌な夢を見て
これまた「むぅぅぅ」と起き上がりました。
またもやボンヤリとsnsを見ていたら
友人の幸せな様子が目に飛び込んできて、慌てて目を逸らす。
こんな時はとにかく無心になるのじゃ!と思って
それっ!とばかりに作業部屋に駆け込んで
自分の幸せを数えて(昭和の歌詞のようだけど)
黙々と作業をいたしました。
なにせ頭と心と手と目の接続が悪い時ですので
単純作業が吉。ひたすら点々打ちに没頭しました。
▲わたしを慰めてくれるのは、やっぱり制作なのでした。
夕方近くには気分もすっきりして
「やれやれ」と思っているところにメール着信。
クレジットカード会社から「4500円の
不審なカード使用があったから本人使用か確認したい」とのこと。
その「不審な使用」はつい2分前なのでした。
2分前なんて点々打ちに没頭していた時です。
もちろん「わたしは使っていません」と返信しました。
あっという間にカードは停止され
番号も変わるとの知らせが来ました。
(確認したところ幸いに不審な使用はその時のみ)
新しいカードが届くまで2週間程度かかるとか。
その間はオンラインで買い物できませんし
諸々登録してある支払い(保険ですとか)も番号変更手続きが必要・・・
昨夜から続く「むぅぅぅ」っとした気分が
ここで最高潮になりました。
いつどこで番号が盗まれたのか
だれがどこの国で何を買おうとしたのか
もう分かりませんけれど・・・
カード会社の対応のスピードからして
珍しい出来事ではない様子ですし
漠然とではありますが気をつけないと、と思うのでした。
▲庭のモジャモジャを見て深呼吸
幸いにも金銭的な被害はなかったけれど
心のショックと恐怖と「むぅぅ感」は増しました。
でも不幸中の幸いと言えるのでしょう。
誰も気づかなかったら被害額は増えて
心的疲労も恐怖心も倍増ですもの。
むぅぅ・・・と思っていると
「むぅぅ」な出来事を引き寄せるのでしょうか。
意識して朗らかに過ごしたほうが良いだろう!と頷いたのでした。
ラテン語額縁大活躍の巻 8月22日
6月に完成してお届けした「ラテン語額縁」
(ラテン語のフレーズを装飾として入れた)は
おかげ様で大活躍したそうです。
ご注文下さったのはジュエリーブランド
germedeur の主催者 kaneko さん。
8月、新宿伊勢丹1階で germedeur の
ポップアップショップが1週間オープンして、
ラテン語額縁はガラスケースの中で
美しいジュエリーを展示するお手伝いをしていました。
▲最終日に駆け込みでご挨拶に伺いました。
額縁は伊勢丹の担当の方やお客様にもご好評ですよ!と
kaneko さんから嬉しいお言葉を頂きました。
フル・オーダーメイドの古典技法額縁は珍しいようです。
kaneko さんには額縁以外に小箱も使って頂いておりまして
これまた嬉しい再会です。
▲豆小箱に指輪がひとつ。ピッタリサイズ!
▲錫箔の箱も嬉々として働いていました。
それにしてもなんという下手な写真でしょうか。
実物の展示とジュエリーはもっともっと素敵なのですよ!
・・・それはさておき。
我が娘(額縁や小箱)が嫁ぎ先で大事にして頂き、
さらに喜んで頂いているとは母としてこれ以上の喜びはありません。
また頑張って作ろう!という励ましと
kaneko さんの自信とエネルギーを分けて頂いて
晴れ晴れとした気持ちになりました。
さぁ、残暑は厳しいですが秋は目前、がんばります。
今にして分かること 8月19日
小箱制作では、ある程度まとまった数の小箱に
石膏下地を施しています。
ボローニャ石膏を塗り重ねて乾かしておけば
いつでも思い立った時に装飾作業が出来るという流れ。
今日もウサギ膠にボローニャ石膏を溶いて石膏液を作りました。
そしてふと、フィレンツェ留学時代に
弟子入りしていた額縁工房でのことを思い出しました。
午後に工房へ行くと、同じころに来たパオラがひとこと
「あ!今日の石膏液は良い感じにできてるねぇ!」
それを聞いたマッシモが
「でしょ?午前中に作っておいたんだ。フフフ・・・」と
2人でホクホク喜んでいました。
わたしはその「良い出来」の石膏液を
混ぜたり触ったりして「へえぇ」と思いつつ
今ひとつ「何が良いのか分からない」のでした。
そして今日、小箱用に作った石膏液は、とても良い出来でした。
トロリとなめらか、少しふんわりとしている・・・
とても美味いポタージュのような。
あの時、ふたりが言っていた「良い出来」の石膏液は
きっとこんなだったのかな、と思い出していたのです。
そうして振り返ってみれば
今のわたしは当時の2人の年齢に近づいて来ました。
結局、そういう事なのですよね。
制作をずっと続けて、ああでもないこうでもないと経験しつつ考えて
ようやく積み重なって、石膏液の良し悪しだとか
「どうして今日の石膏液が良くできたか」が理解できるようになった。
しみじみと感慨にふけった午後でした。
未だわからない 8月15日
小箱に金箔を貼って、その上に彩色して模様を入れました。
何色を塗るかは、あっさりと決まる
(その時の気分によって選ぶ)時と、
数日の間、本を見たりして悩んでから決まる
という2パターンあります。
今回は悩んだバージョンでした。
選んだ絵の具の色名はクリムソン
臙脂色というか、青味のある暗い赤色です。
今まで金と赤の組み合わせはあまり選んできませんでしたが
少し違う雰囲気の彩色も良いかしら・・・と選びました。
だけど、なんだか、気に入っているようないないような
未だ釈然としません。
そうこうするうちに彩色も完成しました。
なかなか華やかな雰囲気。
これからアンティーク風に古色をつけて仕上げます。
どうなる事やら??
今日は何の日 8月12日
「今日は何の日?」
「ダメダメの日」
どうにもこうにも細かい作業が上手く行かない日ってあります。
▲ブレちゃってずれちゃってもうどうにもこうにもいやはや。
オフホワイトの絵の具で模様を細く入れたい・・・
ですがブレブレのヨレヨレ。
そんな時はすぱっと止めて
事務仕事でもした方が有意義なのです。
分かっちゃいるけれど、「でもでもだって!
今はこれがしたいんだもの!」と叫ぶ気持ちもある。
仕方がないので、ここぞとばかりに秘蔵(?)の新しい筆をおろして、いざ。
そうして続けると、嗚呼・・・言わんこっちゃない。
・・・とは言いたくないけれど。
いさぎよさも随時必要でございますね。
ぶれた線は明日の午前中に修正します。
色のカタチ 8月08日
昨日8月7日より、松屋銀座で開催の
「色のカタチ」という催事に小箱を出品しております。
13個と数が少なく、わたしは会場でお迎えできないのですが
銀座にお出かけの際にお立ち寄り頂けましたら幸いです。
よろしくお願い申し上げます。
「色のカタチ」
松屋銀座7階 遊びのギャラリー1979
8月7日(水)~13日(火)最終日17時閉場
金に糸目はつけぬ 8月05日
ペンが一本ほしくて、駅前の文具店に行きました。
そうしたらついうっかり楽しくなってしまって
あれもこれも、そうだテープも・・・などとかき集めてしまって
お会計をしたら5000円ですって。
自分の頭の中では「えーっと、たぶん3000円くらいかな!」などと
能天気なことを考えていましたので一瞬ぎょっとしました。
▲これだけ買えば当然
でもまぁ、どれもこれも使いますし便利ですし
着ない洋服を衝動買いするより有効なのだ!・・・などと思っています。
と言うか、眺めてニヤニヤ、使ってホクホクしています。
先日、知人にわたしが「あの画材があると便利だよ~。
でもちょっと高いし少ししか使わないから勿体ないかもね。」と話しましたら
彼女は「いいの、買う!わたしは画材なら
お金に糸目はつけないから!」と言っていました。
ああ~!ここにもいた。画材には金銭感覚が変わる人。
わたしも同様なのですもの。
なんなんでしょうね、この感覚。
じゃんじゃん使おう 8月01日
額縁の吊り金具(額縁裏に取り付けて紐を通す金具です)
が無くなったので、購入しました。
画材店などでは数個ずつ売っていますけれど、割高ですのでまとめ買い。
そうしましたら、ひと箱1000個ですって。
某モ〇タロウでは1000個が最小ロット。
1000個の吊り金具って、額縁1枚につき2つ使いますから
つまり額縁500枚分です。
一般的な額縁工房ではこうした単位で購入しないと追いつかないはずです。
なにせ作る額縁の枚数が沢山ですからね。
500枚の額縁ですって。
アハハ!・・・死ぬまでに使い切りたいと思います。
いや、そんなことを言ってる間にジャンジャン作って
ジャンジャン金具を使いたいと思います!
いとも優雅なる中世の小宇宙 内藤コレクション写本展 7月29日
7月の始まりの頃
上野の国立西洋美術館で開催の西洋写本展に行きました。
あ、あつい・・・。
でも上野の公園口はすっかり整備されて横断歩道を待つ必要もなく
あっという間に美術館に到着しました。
いえ、以前から西洋美術館は駅から一番近い場所でしたけれど
そうは言ってもこのスムーズさは段違いに快適です。
タイトルにある「内藤コレクション」とは
この一連の写本コレクションを寄贈なさった方で、
筑波大学・茨城県立医療大学名誉教授の内藤裕史氏とおっしゃるそうです。
さて、展覧会で展示されている写本は
いわゆる「羊皮紙」(獣皮紙)に顔料で彩色し金箔を施したもので
元は本の1ページでしたが後世に切り取られたもの。
額縁に納めて展示されています。ほとんどの作品が写真撮影可!
▲北イタリア・パヴィアの教会所蔵だったミサ聖歌集の一葉。
このシワシワな感じがいかにも「羊皮紙」でドキドキします。
金も彩色もとても美しく残っていて感動します。1480年頃の作
560年前に作った人々が、いるのですなぁ。
パヴィアのサン・サルヴァトーレ教会のために作られた本の一部とのこと。
小さな穏やかな街パヴィアのこの教会、訪れたことがあります。
あそこに在った物が流れ流れて日本に。
場所も時も遠い遠い離れたところ。
不思議な感覚です。
その他にも気になったものと言えば
これもフランス15世紀の写本画家であるジャン・コロンブの作品です。
この人物の顔を見れば「あ!コロンブ!」とすぐに分かる。
なぜかと言えば、かの有名な「ベリー公のいとも華麗なる時祷書」の
画家のひとりだからです。
ランブール兄弟が制作半ばで亡くなった後を継いだのがジャン・コロンブ。
「ベリー公の華麗なる時祷書」を見るたびにランブール兄弟と
コロンブの力量の差が気になって(ちょっとがっかりして)いたのですが
コロンブさん、すみません。
実物のコロンブ作品は輝くような美しさでした。
マリア様の表情も背景も、イエス様がヨセフを見上げる眼差しも、大変に厳かでした。
他にも沢山の作品が並びます。
▲聖歌集・・・どんな曲なのか聞きたい。
▲ひたすら可愛いったらない。
▲力強くてカッコ良い!
これからいらっしゃる方も沢山と思いますので
ネタバレはこの辺までにします。
とにかく小さな世界がずらりと並んでいて、見て回るのに時間がかかります。
虫眼鏡ご持参の方もいらっしゃいました!
集中力と体力と時間と、すべてに余裕があるときに
満を持しての訪問をお勧めいたします。
最後に
これらの写本を人生を懸けて収集された内藤先生は
ほぼすべてのコレクションを西洋美術館に寄贈されましたが
上記の一枚はいまもデスクに置いて毎日を過ごしていらっしゃるとか。
後日に図版でこの作品を探しましたが、どうやら掲載されていないようです。
これは内藤先生だけの、大切な思いと歴史なのでしょう。
この展覧会は8月25日まで開催です。
暑い時期ですがお勧めです。
わたしももう1度行きたいと思っています・・・。
ラテン語額縁の使い方 7月25日
ジュエリーブランドgermedeur の kanekoさんから頂いた
ご注文額縁は無事完成してお届けいたしました。
先日はグラッフィート(搔き落とし)が
終わった時点までご覧いただきましたが
いつものように古色をつけてアンティーク調にします。
上の写真、左が今回のラテン語額縁
右は以前に作ったことわざ額縁です。
ラテン語額縁はまだ黒々として金もピカピカですが
ことわざ額縁の擦り切れコッテリ仕上げを目指します。
スチールウールで擦って傷をつけ
ワックスでこってりと汚しをつけてお化粧。
さぁ、完成しましした。
この額縁は黒い別珍布を貼ったボードを額装して
いわばお盆のように平らに置いて
ジュエリー展示に使っていただく予定です。什器ですな。
額縁にもいろいろな使い方があります。
絵や写真などを入れるだけではなくて
アイディア次第でぜひご活用いただければと思います。
どこもかしこも 7月22日
先日、ドイツ人でベルリン在住の友人Kと電話していたのですが
彼女は自分のお店(自作の革製品を販売するお店で奥は工房になっている)
を閉じようと思うとの話。
あんなに頑張っていたし楽しそうにしていたのに、なぜ?と聞くと
「お店のある通りは今はほとんどのお店が閉めてしまった。
人通りも減ったからお客さんも来ないし、
賃貸料の支払いも大変だし・・・」
Kはネットでの販売もしていますが
「2018年頃は売れ行きがすごく良かったけれど、コロナ後は全然。
食品の価格も倍になったし、3つ目のバッグを買う人はいないのよ。」
との事でした。
ミラノ在住でフィレンツェ留学時代の友人Fの話。
彼はとても有名な家具修復工房の3代目で
腕も人柄も良くて安泰と思いきや
「いわゆるクラシックな古い家具って大きいから広い家が必要だけど
若い人はもう大きな家に住む余裕は無いしね。
それにこうした家具は時代遅れでもう好まれないからさ、
今ある修復の仕事はすべて以前からのお客さんで
それもお年寄りばかり。
彼らが亡くなったら家具は二束三文で売られちゃうか
捨てられるだろうね。」と言っていました。
超絶技巧で作られた家具、昔は箪笥2竿でマンション一件分の価格でした。
今まで繰り返し修復し大切にされてきたけれど、それらも顧みる人が居なくなる。
時代の流れ、と言えばそれまでだけど。
どこもかしこも(ドイツとイタリアだけですが)
嬉しい話はあまり聞けません。
バイデンさんとトランプさん、ゼレンスキーさん、プーチン氏、
イスラエルとパレスチナ、その周辺、そして中国、北朝鮮。
他にもわたしが知らないだけで、もめ事は尽きない。
回りまわってわたしたちの日常も不穏ですね。
どうしてこうなってしまったのだか。
考えても考えても、じゃぁこうすればよい
という答えは見つかりません。
額縁の作り方 グラッフィートの下描きをどうするか問題 7月18日
先日ご覧いただいたラテン語フレーズを入れた
額縁の装飾過程をすこし。
箔の上に卵黄テンペラ絵の具を塗って乾いたら
絵の具を掻き落として箔を見せる
「グラッフィート graffito 」という技法です。
もう何度もご紹介しておりますので
ご興味があればぜひ続きをご覧ください。
さて、ボローニャ石膏地にカーボン紙で
デザインを転写しまして、これをニードルで線彫りします。
グラッフィート装飾は、基本の方法としては
この線彫りはしません。
石膏地に箔を貼り磨き、
まっさらな箔地にテンペラ絵の具を塗り、
乾いたところに模様を転写して掻き落とします。
わたしは何故に石膏地に線彫りするのか
(ひと手間増やすのか)と言いますと、
線があることで薄っすらと凹凸と陰影が出来て美しいと思うこと。
それから、テンペラの上に転写する必要がありませんので
カーボン紙等の跡が残らないこと。
上の写真は搔き落とし開始の様子です。
黒い絵の具層の下に金箔があります。
薄っすらと文字の線彫りが見えていますので
このラインをなぞります。
今回は黒ベースですので黒色の上にカーボン紙を使っても見えませんし、
例えば白いチャコペーパー等使って跡が残ると厄介です。
逆に明るい色のテンペラを塗って、その上に転写する場合でも
やはりこの転写跡ってとても気になるのです。
完成度がぐっと落ちてしまうような。
そんな訳で、ひと手間増えてもこの方法が気に入っております・・・。
さぁ、グラッフィート(搔き落とし)が終わりました。
あとは古色仕上げをして完成でございます!やれやれ。
子どもに与えるもの 7月15日
イタリアの美術館で、可愛らしい小さな額縁に入った聖母子像や
教会で使う道具のような美しい小物が展示されていました。
かわいいなぁ・・・と単純に眺めていたのですが
後から聞いたところによりますと
その昔、貴族の次男は家督を継げないので僧侶になり
教会のヒエラルキーで上位を目指す、
そして生家に利をもたらす・・・という道が敷かれていたとか。
将来が決められていた子供たち
幼いころから教会の「お道具」などを模ったおもちゃを与えられ、
馴染まされていたのですって。
将来、実際に教会の聖具に触れても違和感なく受け入れられるように。
それを聞いて以来、単なる「美しい小さなもの」と
鑑賞できなくなりました。
そして後から、実は結構な驚きとショックを受け
でもどこかで納得したことに気づきました。
この美しい「遊び道具」にまつわる様々な思い、
人々の・・・特に両親の心境、
イタリアの文化と芸術と宗教などなど、
連綿と続いた物語に思いを馳せたのでした。
それを「ど忘れ」と言って良いのか 7月11日
昨日の午後、魚ニカワ液をつくろうと思ったのでした。
このニカワ液は、古典技法の箔貼りにいつも使っているので
もう何百回と繰り返し作っています。
板になっている乾燥ニカワを小さく刻んで水にふやかし
翌日に湯煎で溶かせば完成です。
上の写真、右のシート状のものが魚ニカワ。
製菓で使う板ゼラチンとそっくりです。
左の瓶は魚ニカワを水に漬けたもの。
で、ですね・・・。
この何百回も作っているニカワ液ですが
1リットルの水に魚ニカワ4枚というのが大体の決まりと言いますか、
わたしがイタリアの学校で習った分量です。
昨日「さて作ろう」とおもったのですが、はて・・・。
突然、本当に突然この分量が思い出せなくなりました。
あれ、水1リットルに1枚だっけ?え、250ミリリットルに1枚だっけ・・・?
ネットで検索してみたら自分が昔書いたブログに行き当たり
無事に1リットルに4枚と確認できた次第です。
そうだそうだ、そうだった。
昔のわたし、書いてくれてありがとう・・・。
だけど、ニカワ液が作れて安心しつつ
自分の脳を心配しつつ、なんともドンヨリした午後でした。
いやはや。
美しいラテン語 7月08日
完成間近になっている額縁は、ラテン語装飾です。
ジュエリーブランド「germedeur」のkanekoさんからのご注文
ジュエリー展示に使っていただけるように作っております。
昨年「ことわざ額縁」と名前を付けた額縁を
ご覧になったkanekoさんが、
ガラスケース内で使えるサイズで文字を入れて・・・
とご注文くださり、さて文章はどうしよう?
ご相談を重ねました。
▲満を持してラテン語文章の装飾を額縁に転写する。
アルファベットの文章で、ぱっと見て意味は
すぐに分からない言葉(英語でもフランス語でも無くて)・・・
で、ラテン語に収まりました。
kanekoさんが日本語で文章を作り自動翻訳でラテン語に訳し
じゃぁこれで行きましょう!となったのです。
が、ご存じのように自動翻訳ってまだまだ危うい・・・
額縁を作り始めてしまったら
文章を変えることはとても難しい。
ここはひとつイタリア人に尋ねるが吉。
そうしましたら案の定「ええと、言いたいことは分かるけど
文章として微妙というか美しくない。」とのこと。
添削してもらいました。
kanekoさんによる日本語文章
「ジュエリーを通じて希望と喜びを分かち合う」
これを自動翻訳では
「Spem et laetitiam per ornamenta participes sumus」
そして添削後
「Spei laetitiaque per ornamentum participes sumus」
構成の変更はなかったけれど、小さな言い回しなのか
単語の活用など変更されていました。
(変更理由など説明してくれたのですが
わたしのイタリア語能力ではいまひとつ理解できず!)
ハッキリ言ってよー分からんのです・・・。
とにかくこれで「正しくてエレガントなラテン語」になったはずです。
イタリア人にとってラテン語は
どんな位置なんだろうと、つねづね思っていました。
日本人にとっての古文?もっと近いのか遠いのか。
きっとある程度勉強したり興味を持っている人なら
読んで理解はできるでしょう。
でも作文や添削となると別、と言った感じです。
そして「より美しい文章」となると、これはぐっと難しくなる。
このイタリア人の友人には感謝です。
きっと高校時代は頑張って勉強したんだろうなぁ・・・と思います。
CHAOS & ORDER 7月04日
先日ご覧いただいた楕円形額縁は
無事完成しましてお客様にお届けいたしました。
ご注文くださったのは刺繍作家の坂田あづみさんです。
リンクからぜひ彼女の作品と世界をご覧ください。
坂田さんのお話によると、ご自身の作品には
楕円形額縁が一番しっくりくるとのこと。
正円だとバランスがとり辛いそうです。
でも四角でもない・・・。
そうした、作家だからこその感覚はとても理解できます。
こればっかりはご本人次第、
そしてこうした感覚が一番大切だったりします。
9月に坂田さんは個展を控えていらっしゃるそうで
この額縁もその時にお使い下さる予定です。
その際にはぜひ、作品と一緒になったこの額縁もご覧ください。
またご案内いたします。
額縁外側寸法:217×166×20mm
木地にボローニャ石膏、パスティリアと点打ちで模様と文字装飾。
赤色ボーロに純金箔水押し、メノウ磨き。
側面に黒アクリルガッシュで彩色、ワックスによる古色仕上げ。
あなたは何て呼ばれたい? 7月01日
わたしの名前は、ハルコと言います。
アルファベットで書くと HARUKO となりますが
イタリア語では H を発音しません。
HAHIHEHO(はひへほ音)はほぼ全て AIEO の母音のみになる。
で、わたしの名前は彼らイタリア人にとっては大変発音し難いようです。
大抵の人たちは「アル~ゴ~」と、ルにアクセント
そしてなぜかコはゴになることが多くて
ちょっと笑っちゃって楽しいのだけど、釈然としません。
「はるこ、と呼んでください」と一度だけ説明して
きちんと呼んでくれている人は数人います。
とても嬉しい。
ちなみにわたしの工房名というか屋号というか・・・
「KANESEI」かねせい、ですが、こちらは
イタリア人の皆さんには違う意味で難しいのかもしれません。
イタリア語で CANE は犬、SEI は助動詞の二人称単数
「Cane sei」と言うとつまり「お前は犬」と言う意味に取れます。
そしてCane は犬の他に「嫌なやつ、無能なやつ、情け知らず」
というような悪い意味もあって、ううう
イタリアで「Cane sei!!」カネセイ!と誰かに向かって言ってはいけません。
フィレンツェでわたしの小箱を扱って下さるお店 Eredi Paperone で
わたしの小箱解説にはKANESEIの文字は無くて、
わたしのフルネームでご紹介くださっています。
最初は「なんでかな、屋号は知らせたはずだけどな・・・」と思っていたのですが
ある時に「もしかして」と気づいたのでした。
わたしはあえて尋ねませんし、お店の皆さんは何も仰いません。
ただ屋号は使わず名前で紹介してくださっている。
そこに皆さんの優しさを感じます。
ずいぶん昔、留学時代に友人Lは愛称といいますか
短くした呼び名で呼ばれていました。
わたしも同じように呼んでいたのですが、ある日Lが
「・・・その呼ばれ方、本当は好きじゃないんだ」と
ボソッと、でもきっぱり言ったことがありました。
その日以来、彼の名前は短くせずにきちんと呼ぶことにしたのでした。
呼び名、呼び方って難しい。
それは自国でも外国でも同じことなのですけれど
相手に敬意を持っていれば自然と「お互い気持ちの良い呼び方」
に導かれていくのだから、何も難しいことは無いのだな
・・・と思っています。
一年は厚かった 6月24日
2023年の一年間、曹洞宗の月間冊子「禅の友」の表紙に
KANESEIの額縁写真を使っていただきました。
このブログでもたびたびご覧いただいておりました。
1年間分、12冊分って結構な量だな・・・と
思っておりましたが3回の撮影が楽しすぎて
終わってしまったのが残念でなりませんでした。
その1年間分12冊の「禅の友」をまとめた1冊が作られて
わたしにも贈って頂きました。
▲2023年 第881~892号
表紙に1月号~6月号の表紙額縁
裏表紙に7月号~12月号の額縁がモノクロで印刷されていて
やぁやぁ、とてもカッコ良い。
12冊をそのまままるっと綴じてありますので
表紙も裏表紙もそのまま。
▲2月号の裏表紙の小箱と、3月号の表紙額縁。
▲10月号の裏表紙の小箱、そして11月号の表紙額縁
1冊の冊子は40ページ弱ですが
12冊合わさると厚い。そして重いです。
こつこつと毎月発行しておられる編集部の方々
ありがとうございました。お疲れ様です。
毎年この総集編が出ることで達成感も強く感じられる事と思います。
▲厚くて重い
とても嬉しく、感慨深く、大切な1冊です。