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思い出を共にした人へ 4月22日

 

小さな額縁が完成しました。

 

17mm幅の木地、白で模様を入れたスペースの幅は

5mmしかなくてほとんどミニチュア額縁です。

筆さばきもなかなか大変でしたけれども、なんとか。


中央部分の星が気に入っています。

 

この額縁には昨年フィレンツェで買った版画を入れて

ベルリンに住むドイツ人の友人へ贈る予定です。

昨年秋、12年ぶりに再会することができた友人K。

彼女がいなければわたしは留学3年間を乗り越えること

――楽しいことは山ほど、辛いことも同じくらい――は

できなかったと思っています。

 

4月21日(今年はイースター!)が誕生日のK、

間に合わなかったけれど、そして

彼女への感謝にはささやかすぎる贈り物ですが

フィレンツェ風の額縁に、フィレンツェ風景を納め、

2018年秋のフィレンツェの思い出を籠めて。

 

「works」内「classical」にこちらの額縁をアップいたしました。

どうぞご覧下さい。

 

 

Firenze 2018 tempo calma №9 4月19日

 

2018年の秋にフィレンツェに1ヵ月間

滞在した時のことをお話しております。

1ヵ月間という旅行としては長く

住むというには短い期間、

小さなアパートを借りることにしました。

 

 

場所は中心街の中心、どこに行くにも

――パオラの工房もグスターヴォさんの工房も、

アルノ川の右岸も左岸も――とても良い場所。

変な話、お手洗いに行きたくなったら

アパートに帰る、といった感じでした。

▲背中側にベッドスペース、窓の向かいがキッチン。

右にバスルーム、玄関がつづきます。

 

きちんとしたキッチンが付いているダイニング

カーテンで仕切れば独立するベッドスペース、

▲白が基調の部屋にドライフラワーや花のパネル。

フェミニンですが落ち着インテリアです。

 

洗濯機、冷蔵庫、電子レンジや食器も完備

お湯がたっぷり出るシャワーもあります。

▲右奥のカーテンの中に洗濯機があります。

 

部屋は2階ですがエレベーターがあるので

大きなスーツケースも大丈夫でした。

歩いて数分でスーパーマーケットにもすぐ。

ひとり暮らしには十分快適です。

 

つかの間のひとり暮らし、気ままに

好きな時に好きなものを食べて寝て、

夜遊びで遅くなっても気を使わず。

留学時の友人と再会して当時を思い出し、

お互い歳を取ったねなんて尽きない話をして。

滞在たった1ヵ月、されど1ヵ月、

とても思い出深い部屋になりました。

またいつか行きたいな、と企んでいますが

その際にはぜひともまたこの部屋を

お借りしたいと思っています。

早く計画たてなくちゃ。

 

 

雄牛の胆汁 なぜ今も 4月17日

 

雄牛の胆汁を買いました。

 

ご存知の方もいらっしゃると

思いますけれども、これは

水彩画やテンペラで使う「はじき防止剤」

つまり界面活性剤の働きをします。

磨き上げた金箔の上に卵黄テンペラで

彩色するとき、絵具が金にはじかれて

定着しませんが、この液を数滴いれると

伸びが良くなり、しっかり定着してくれます。

とても役に立つのです。

これがあればグラッフィート装飾もスイスイ。

 

ルネッサンス初期の技法書にも載っています。

この液体を絵具に混ぜてみようと思った

最初の人は素晴らしい発想と勇気の持ち主。

 

いまは合成で無色透明無臭、

商品名だけ「雄牛の胆汁」として

販売されているものもあるようです。

でも今回わたしが購入しましたのは

イタリアのマイメリ社製で、

精製されているけれどまさに牛の胆汁。

薄黄色でちょっとした臓物臭もあります。

浮遊物もちらほらと。(何かは知りたくない・・・)


いまとなってはわざわざ牛の胆汁を買わずとも

合成の方が良いのかもしれませんが

古典技法を常とするKANESEIとしては

古い処方の物が手に入るならば

やぶさかではありません。

臭いけど。

 

ちなみに上の写真、左にあるのは

ずいぶん昔にフィレンツェの画材店

ゼッキで買ったものです。

経年ですこし色が濃くなりましたが

そして何やら白く沈殿していますが

買った当初から濃い茶色、そして

その臭いたるやもう苦くて塩っぱい

強烈な異臭を発していました。

思い出してもグワーッときます。

 

ゼッキ製のフタを開ける勇気は

もはやありません。

でも「謎の毒薬」風の枯れた佇まいは

なんだか気に入っています。

「これを飲むと手がヒヅメになるよ

フフフ・・・」とかなんとか。

飲み物に混ぜてもあまりに臭くて

すぐにバレそうであります。

 

 

額縁の本「Pandolfini: Cornici antiche e dell’ottocento」 4月15日

 

これは本、ではありますけれども

オークションのカタログです。

昨年のフィレンツェ滞在で訪ねた

古本のお店で見つけることができました。

写真も豊富で、とても良い資料です。


Pandolfini パンドルフィーニとはフィレンツェにある

大手オークションハウスです。

2018年の4月18日に行われたオークションに

かけられた額縁カタログですので、開始価格と

落札予想価格も載っているのが興味深いところ。


予想価格が低い額縁で€700(130円換算で

91.000円)くらい、高い額縁ですと€9000

(1.170.000円)ほどと紹介されています。

ほほう・・・

どんな人が落札したのでしょうか。

 

広大な屋敷の奥にある薄暗い展示室には

膨大な額縁コレクションがあって、

壁一面に新旧問わず素晴らしい額縁が飾ってある。

そこに今日、18世紀の額縁が新たに加えられた。

これから先は門外不出、人目に触れることも無い。

部屋の主は夜な夜な絹のクロスで額縁を磨き

ひとりごとのように額縁に話しかけている。

使用人はみな不気味がってこの部屋には近づかない。

でも主は、これら額縁を作ったいにしえの職人たちの

姿と声を毎夜感じ、聞き続けているのだ。

 

額縁オタク。

妄想してしまう。

この本に掲載された額縁たち

どこから来て、どこへいくのでしょうね?

 

 

貼るのか置くのか問題 4月12日

 

以前「祭壇型額縁をつくる 8 」でも

お話したのですけれど、

金箔は額縁に「貼る」のか「置く」のか。

独り言のような内容でございます。が、

留学を終えて帰国当時からなんとな~~~く

気になり続けている貼るのか置くのか問題。

言い方ひとつではありますが、でも

言い方って大切ですから。

 

日本の額縁制作の世界では、箔は

「貼る」ではなく「置く」と表現します。

日本の額縁創成期は漆工の職人さん方の

活躍が多かったそうなので、

そのまま伝統的な「箔置き」という言葉が

使われ続けてきたのではないでしょうか。

 

 

一方、KANESEIのお客様などからは

「金箔が貼ってあるのですか」とのお言葉が

多いところから鑑みるに、日本語では

一般的に金箔は「貼る」のでしょう。

薄い紙状のものをくっつけるのは「貼る」です。

 

さて、イタリアの職人さんはなんと言うか。

Io metto foglia d’oro. わたしは金箔を置く。

「置く」“mettere”という動詞を使います。

やっぱり「箔を置く」のですよ。

なんでだろう。

どうしてでしょうね??

 

実際に西洋古典技法で箔の作業をしてみれば

たしかに「箔を置く」という感覚ではあります。

おそらく漆工の世界の感覚でも、箔は

置くと表現するのが相応しいのでしょう。

極めて薄い金箔を、日本は竹挟みではさんで、

あるいは透けるような和紙につけて、

イタリアは繊細な刷毛に静電気でつけて持ち上げて、

対象のもの――漆器や仏像、額縁――に

フンワリと置いて、そしてそっと押さえる。

 

「箔を貼る」は完成品を見ている人の感覚

「箔を置く」は製作の作業をしている人の感覚

から出てくる表現、でしょうか。

 

 

となると、他のアジアの国で漆工に携わる職人さん、

ロシアのイコン制作の方々、

ポーセレンや写本の世界などでは

どう表現しているのか知りたいのです。

む~ん・・・箔を「置いて」いるような気がする。

辞書や翻訳サイトでは出てこない

いわば現場の表現ですからね、

いつか職人さんご本人にお聞きするチャンスが

あれば面白いなぁ、と思っています。

 

 

まるい。 4月10日

 

我が家のまえには立派な桜の木があって

桜吹雪が庭にも道にもいっぱい舞います。

それはそれはうつくしい。

 

あれ、花びらの跡がまるい。

 

下はマンホール。

たくさん集まるとピンクもより濃く華やかです。

 

午後の強い風のあと、もう消えていました。

ほんのしばらくだけの、まるくきれいな風景でした。

 

 

回廊の記憶 4月08日

 

白いアーチの並ぶ回廊

濃い色の空

強いコントラスト

イタリアの画家ジョルジョ・デ・キリコの

描いた風景に似ていませんか。

 

ここはフィレンツェ、捨子養育院の中庭。

美術館となった今、子供はもういません。

 

キリコの風景画は、イタリアの人にとって

どこかで見たことのある風景に感じるとか。

日本人のわたしにとっては

とても特別で不思議な風景でしたが

この中庭で「イタリアには本当にあるなぁ」と

驚きつつ納得しました。

 

 “Mystery and Melancholy of Street” Giorgio de Chirico 1914
Private Collection

 

数年前にリニューアルした捨子養育院美術館は

お客さんがとても少ないのが不思議なほどに

素晴らしい絵画コレクションが、

ギルランダイオの傑作が待っています。

ぜひ晴れた日に来てください。

 

捨て子養育院美術館:Museo degli innocenti

 

 

生まれた時は大きかった 4月05日

 

修復でお預かりした額縁の裏の角。

木材が欠損しています。

でも、なんだか変ですぞ。


上の写真、額縁左上角には木片が45度の

角度で差し込み留めてあります。

本当ならこの木片は下半分にも突き抜けているはず。

▲角の接合部分に細い木片(サン)が差し込まれ

強度を与えている。本来ならこうなっていたはず。

写真はAtelier LAPIS よりお借りしました。

 

おそらく、この額縁はサイズ変更されたのでは?

45度の接合部分を切って(サンも同時に切られる)

すこしだけ切り取ってから

また接合したけれど、接着剤と釘固定で終えた。

角にあったサンの残骸は経年で落ちた。

つまり大きなサイズだった額縁を切って

小さいサイズに作り直した。

・・・と想像します。

 

なんと乱暴な!とも思うのですが、

違う作品のために額縁のサイズを変える

というのは珍しいことではありません。

ヨーロッパの古い額縁が修復に来ると

たまに出会います。

フィレンツェのパオラとマッシモの工房にも

お客様の依頼でのサイズ変更仕事がありました。

小さい額縁を大きくするのは難しいけれど

大きい額縁を小さくすることは

デザインさえ大丈夫なら可能です。

 

古くてすてきな額縁が手に入ったけれど

サイズが合わないから、あきらめる?

気に入っていた額縁だけど、合うサイズの

作品が手元にもうないから、お払い箱?

一概には言えませんし、サイズが合う作品に

出会うまで倉庫で待てれば良いけれど。

加工して再利用可能なら、して頂きたい。

でもその際の加工は丁寧に、と思います。

 

さて、今回の額縁ちゃん。

裏の角ですからほとんど見えないし

強度にも影響はほぼありませんが

失くしてしまったサンの代わりの木片を

貼りつけました。

▲三角の木片を接着して

▲水性ステインで着色

 

額縁の裏側はその額縁の歴史が見えて

とても面白いのです。

裏側をじっくり見ることができるのも

額縁修復の醍醐味でございますよ。

 

 

Firenze 2018 tempo calma №8 4月03日

 

パオラは骨董市や工房に訪ねてくる業者から

古くて良い作りだけど壊れている額縁を

手に入れて、修復して販売もしています。

 

わたしが行ったとき、お店には修復が

終わったばかりの額縁があったのですが

気になって気になって。

迷った挙句に売ってもらうことにしました。

わたしにとってはなかなかの出費でしたけれど

古いものとは出会いが大切です。

逃せば2度と会えませんから。


17世紀風のデザインですが、作られたのは

20世紀初頭の額縁ですのでさほど古くありません。

なんだかとても「イタリアっぽい」額縁です。

 

さて、どこが修復されているでしょうか。

お分かりですか?

答えは裏から見ると分かります。

 

左の長手(裏から見ると右)と

上下の花状装飾部分です。

▲上部、小さなパーツは欠けやすい。

セロテープの跡が残っているけど気にしない・・・?

 

▲ヤスリの跡も豪快に残っていますがへっちゃら?!

最下部の半円に割れて継いだ痕跡が見える。

 

パオラが買った当時、花状装飾はすでに

昔に修復がされていて、左長手が無い

状態だったとか。

パオラが新しく作った長手は、裏からみれば

修復後と分かるよう白木のままにしたそうです。

 

ちなみにこの長手の彫刻、グスターヴォさん

手によるものだとか。

お世話になったふたりが修復した額縁、

愛着もますます湧きます。

 

いまはまだ空っぽの状態ですけれど

古いガラスの鏡を入れたらかっこいいな。

鏡の古色加工(と言うのでしょうか)もしてみたいな!

傷や白い斑紋、黒い錆びが浮いたような

ぼろっちい鏡をつくってみたい。

などと企んでおります。

いつになるやら、ですけれども。

 

 

プリンセスにはリボンが必要ですから 4月01日

 

今回できあがった額縁ったらもう

ペールピンクにゴールドのリボンという

甘々スイートな額縁です。

ディズニープリンセスのキャンバス作品に

あわせて作りました。

ピンクとリボン。

お姫様には欠かせないですからね。

 

我ながらかわいらしい額縁ができました。

 

リボンのオーナメントはずいぶん前に

骨董市で買ったフランスの古い金具から

型取りしたものです。

古典技法ではないけれど、こんな額縁もつくります。

 

 

この額縁、ホームページでご紹介するのに

classical   modern どちらのカテゴリーか

悩んだのですけれど、modern といたします。

でも、ううむ、釈然としませんがひとまず。

 

という訳でして

「works」内「modern」にこちらの額縁をアップいたしました。

どうぞご覧下さい。    

 

 

Atelier LAPIS(アトリエ ラピス)の様子から 2019年3月№2 3月29日

 

HAさんの刻印額縁が完成しました。

制作中、この額縁のニックネームは いちごちゃん。

刻印の間隔と大きさが苺の種みたい!

とHAさんがおっしゃるのです。

1度そう思うと、もう苺にしか見えない

という暗示にかかってしまいそうでした。

でも古色を付けて完成してみたら

もういちごちゃんではありません。

貴婦人のような額縁になりました。

HAさん、優雅な額縁を完成させてくださり

ありがとうございました。

 

Atelier LAPIS

 

 

型取り大会 今年も幕開け 3月27日

 

額縁の装飾につかうオーナメントを

たくさん型取りしました。

まずは型をつくるところから開始。

昨年秋にフィレンツェで買った

引出しツマミも仲間入りです。


変なマーブル色になっていますけれども

これは「おゆまる」、白は「型取りくん」

(どちらも商品名ですが覚えやすい。)


どちらもシリコン粘土というのでしょうか、

熱を加えると柔らかくなり、冷えると

弾力がありつつも硬くなるものです。

繰り返し使えるのでとても便利。

 

できあがった型に石膏を流し込んだらしばし待機。

固まって型から外せばオーナメント完成です。

▲完全に乾くまでしばらく待ちます。

 

自作の型に加えて、先日ネット通販で

購入したシリコンモールドでも作りました。

今はこんな型も売っているのですねぇ。

▲海外から取り寄せたシリコンモールド。

期待していた雰囲気とは違いました・・・。

かなり細かくて複雑な模様で気泡が入り易い。

でもこれはこれでかわいい。

 

気泡はあとでパテ埋めします。

ううむ、試した結果、いま使っている石膏は

メーカー推奨量よりほんの少しだけ水多めの方が

気泡ができにくいような気がします。


完成したオーナメントを並べて干します。

落雁のようで美味しそうですな。

額縁に使ったり、小箱に使ったり。

クリスマスのオーナメントも作れそう。

まずはリボン4つを使って額縁制作です。

 

 

ヒヤ子の春 2019 3月25日

 

白いヒヤシンス・真珠3姉妹

遅れること1週間、

デルフトブルーのヒヤ子一族も

これまた可憐な花を咲かせました。

クローン分球した2つの球根もすべて

すこやかに春を迎えています。

 

 

花を咲かすより茎ばかり伸ばして

パールホワイトより背が高くなった

デルフトブルーのヒヤ子一族ですが、

この「茎ばかり伸ばす」というDNAは

分球の2本にももちろん入っています。

このにょろっと伸びた茎を見ると

ああ、きみは間違いなくヒヤ子だね、と

再会を確認できた気持ちになります。

 

 

それにしても真珠3姉妹もヒヤ子一族も

年ごとに花数が少なくなっている・・・

かわいそうに、どうしたものでしょう。

球根に栄養をしっかり蓄えてもらってから

夏前に掘り上げてあげたいと思います。

母(わたし)としては良いご飯を

愛する娘たちに食べさせたい。

・・・つまり、ヒヤシンスの球根に

栄養たっぷりの肥料を与えたい!

チヤホヤと甘やかそうと思います。

 

 

Firenze 2018 tempo calma №7 3月22日

 

ホーン美術館訪問のつづきです。

2階には道具の展示室もありました。

手に取って眺めたいほど楽しい展示です。

 

どれもこれも当然ながらすべて手作り。

鍛冶屋、細工師、銀職人、さまざまな

専門職人が腕を振るった一品なのでしょう。

製図の道具コーナーには、わたしたちが

いまも日々使うような道具がありました。

三角定規や指矩、分度器にコンパス。

 

そのどれも美しい装飾入りです。

実用するには必要のない装飾ですけれど、

ひとつずつデザインし、彫って磨いた

職人さんがいたことに感動しました。

ここにもいました、道具を可愛くしたい人が。

 

今のように道具を手軽に手に入れることが

無かった時代、きっとこの定規は一生もの。

丁寧に装飾を入れることに、これらの

道具を大切に作り、大切に使った気持ちが

籠められているように感じます。

 

いにしえのイタリアの職人さんと

「やっぱり道具は美しくなきゃね~」なんて

微笑あって意気投合した気分でした。

 

 

どこでだれに習おうと 3月20日

 

昨年暮にAtelier LAPIS にご入会くださった

Aさんとはじめてお目にかかったときのこと。

 

古典技法の本場である欧州ご出身のAさんが

日本で日本人から古典技法額縁制作を教わる・・・

Aさんがご見学に来て下さったとき、わたしは

「日本で日本人から古典技法額縁制作を習うのは

嫌じゃありませんか」と聞いたのです。

そのことについてAさんは

「日本人だからって日本の文化すべてを

知っている訳でもないでしょう?

欧州人皆が古典技法額縁に詳しいわけでも

興味を持っているわけでもないのと同じ。

興味を持って勉強した人が教えているなら

わたしはそこに行って学ぶ。

学ぶのに場所と人種は関係ない。」

と話して下さいました。

 

 

そうですか。

そうですよね。

「日本人なのにイタリア古典技法

なんてわざわざ言って、おこがましい」

「せっかく文化豊かな日本に生まれ育ったのに

なぜわざわざイタリア古典技法なんだ」とわたしは

どこかうしろめたさを持っていたと気づきました。

だから欧州ご出身のAさんがいらしたとき

「わたしなんかで良いのでしょうか」

などと思ったのでした。

 

そもそもお時間を作って見学に来てくださった方に

「嫌じゃないか」もなにもありませんよね。

嫌じゃないから来てくださっているのに。

ばかばかしい考えだと、

振り返って考えてみればすぐに分かることです。

なぜうしろめたさを持ち続けていたのか

もはや自分でも分からないのですけれど、

生まれてこの方、一事が万事この調子なのです。

これはもうわたし生来のいじけた性格ですね。

 

イジイジジットリとしていると

できあがる額縁もいじけてしまう。

LAPIS に来て下さる生徒さん

額縁をご注文くださる方々にも失礼です。

明るく堂々とした額縁をつくるために

いい加減もうすこし明るく生きようと思います。

などと、思い至った春です。

 

いったい何年生きてきたんだ、ですって?

ハハハ・・・いやはや。

なんともかんともお恥ずかしい限り。

一緒にお笑いください。

 

 

Atelier LAPIS(アトリエ ラピス)の様子から 2019年3月 3月18日

 

ずいぶんと間が空いてしまいましたが

Atelier LAPIS の様子をお伝えいたします。

Aさんのはじめての古典技法による額縁です。

 

昨年12月ご入会からとても精力的に制作されて

2か月半という猛スピードで第一作目を

完成なさいました。

木地にボローニャ石膏、ベネチアンレッドと

黒のアクリルグアッシュで着色

モルデンテで純金箔ミッショーネ装飾

艶あり仕上げ

今回は古色付けはせず、美しく輝く額縁に

仕立てました。

縁の黒と金の縞模様はイタリアの街

シエナで作られていた額縁の雰囲気です。

 

まずは古典技法を経験するために、と

額装をイメージせずにつくった額縁です。

しばらくは完成を喜びつつながめて、

どのように使うか考えてみるのも楽しい悩み。

でもAさんの娘さんが狙っているとのこと、

娘さんのお家に飾られる日も近そうです!

 

Aさん、力強い額縁を完成させてくださり

ありがとうございました。

 

古典技法教室 Atelier LAPIS

 

 

「真珠の花は森の片隅に」風 3月15日

 

庭のヒヤシンス軍団、その後も着々と

春に向けての準備を進めたようです。

パールホワイト3株(真珠3姉妹)が

可憐に花を開きましたよ。

 

 

昨年に花屋さんが鉢で咲かせた花より

花数は少なく背も低くなりましたけれど

むっちりぎっしりの花よりも

森の片隅にひっそり咲く野の花のような

趣が感じられるのではないでしょうか。

・・・物は言いようでございますね。

 

 

となりにはデルフトブルー3株(ヒヤ子一族)が

青い蕾をのぞかせています。

この時間差が心憎い。

こうして順番に咲かせてくれると

庭のにぎやかさが長く楽しめますから。

これまた親バカ気分ですみません・・・。

 

 

難しさはおなじこと。 3月13日

 

彫刻刀研ぎ、相変わらずの課題でございます。

 

台所に砥石をひっぱり出してきては

ガサゴソと研いでおりましたが

この度「電動刃物研ぎ機」なるものを

使ってみました。

 

▲構造としてはかなりシンプルな機械。

 

スイッチオン!

手前の金属板に手をのせて刀を持ち固定。

奥のカップから水が滴下されます。

ドーナツ状の砥石が反時計回りにぐるぐる回転。

すると軽快な音とともに刃が研がれていく・・・

のですが。

 

円盤が回るということは、

円の外側と内側で回転スピードが違う。

円に刃を当てる位置、向き、角度で

研ぎ具合がまったく変わるのですね。

おまけに思ったより回転が速いので

あっっ と思ったらやりすぎたりして。

 

砥石のどこに刃を当てるか、

刃を動かすタイミング、

自分の手のクセ、力加減、

滴下する水の量、そして

刃と砥石のベストな角度を掴むコツ。

これらを理解して身につける必要あり。

素人としては変速機能が欲しい!

 

手で研ぐには練習が必要だけれど

機械で研ぐにもやはり練習が必要でした。

ちゃちゃっと簡単に手早くギラギラ刃物に!

なんて道はありませんのでした・・・。

 

という訳で、しばらく手で研ぎつつ

機械の練習もしようと思います。

機械が上手に使えれば時短は確実ですからね。

じつはこの東芝以外にもいくつか

電動研ぎ機が手元にあるのです。

ふむっ!と小鼻を膨らませた土曜日でした。

 

 

イタリア15世紀風小箱 3月11日

 

つくづく、古典技法の金箔作業は

たのしくてたのしくて

頼まれもしない目的もないものを

ガサゴソと作っております。

この小箱も毎週月曜日、Atelier LAPISでの

古典技法の講師の時間に作業を続けました。


60×52×33mmの、ほんの手のひらサイズです。

デザインは昨年秋にフィレンツェで観た

ジェンティーレ・ダ・ファブリアーノの

黄金背景テンペラ画が納められている額縁から。

15世紀初めころのイメージです。

 


ぱかっ

今回は初の試み、箱内に別珍を貼りました。

ちょっとシワになってしまいましたが。

木地のままより当たりが柔らかですので

壊れやすいもの硬いものの収納にも良さそうです。

モスグリーンの布にしましたけれど

紺色やワインレッド色のほうが

イタリアっぽかったかしらん?と思いつつ。

すっかりマイワールドでございます。

 

小さいものはお好きですか?

お気に召して頂けますでしょうか。

いつか小箱ばかりの展覧会をしてみたい

などと企んでおります・・・。


 

「works」ページ内「other」にアップいたしました。

どうぞご覧下さい。

 

 

わざわざ作るもの 3月08日

 

このジャムの空き瓶に入っているのは

埃、ホコリです。

とは言えニセモノホコリ、できたてほやほや。

 

古色、つまりアンティーク風の仕上げや

古い額縁の修復にはかかせません。

パウダーを調合して作ります。

まさか本当のホコリは使えませんからね。

 

イメージするのは掃除機を掃除したときに

最後に出てくる細かいパウダーホコリです。

あの本物のホコリになにが含まれているか

想像したくないし見たくもないけれど

色のイメージだけはしっかり覚えました。

グレーにすこし茶色が感じられるような

微妙な色味を目指します。

これは「基本のホコリ」で、これをさらに

濃くしたり薄くしたり色味を変えたりして

額縁それぞれに合わせてそのつど調整します。

 

ホコリ色も、昨年秋に行ったフィレンツェで

パオラの「ホコリ」を見てから改めて

自分なりに調合しなおしました。

小さな変化、でもわたしにとっては

大きな変化なのであります・・・。

 

 

掃除は大事だよ。 3月06日

 

以前、油彩画の洗浄のときにも

お話したのでしたが

額縁修復にもまた、掃除(洗浄)は大切です。

ドライクリーニングで十分な場合もありますが

今回はカビの跡があったり

濡れ色の汚れが溜まっていますので

水分で汚れを取り除く計画です。

 

まずは水に対するテストを行います。

結果を確認してからいざ。

竹串にコットンを巻いて綿棒をつくり

ほんのすこし水で湿らせて

転がすようにして汚れを巻き取ります。

そして十分に乾燥させます。

 

写真は上2枚が洗浄する前

下2枚が洗浄した後の様子です。

▲洗浄前

 

▲洗浄後

 

違いがはっきり判らないかもしれません。

でもなんとなく、ラインがくっきりして

もやもやとしたムラが減り

色つやが良くなったと見て頂けるでしょうか。

 

どの程度まで汚れを取り除くかは

お客様のご希望や作品とのバランス、

額縁の状態などで一概に言えませんが、

今回は「ほんのりスッキリ」で完了です。

この額縁は極端に汚れている訳でもありません。

もっとコテコテに汚れた額縁が

修復に来ることもあります。

▲汚れて取り換えたコットン。お見苦しいですが

「これだけ取り除けた」という記録です。

 

装飾の奥隅々まで汚れを取り除きたい!

という場合、違う道具と工程が必要です。

強い洗浄は額縁に与える負担も増えますし

「汚れをため込まない」が一番なのです。

これは家の掃除と同じことでございます・・・。

暮の大掃除が大騒ぎにならないように

今年こそマメに掃除をしたいと思いつつ。

 

 

Firenze 2018 tempo calma №6 3月04日

 

東急百貨店吉祥寺店での

「手のひらサイズの小さい絵展」は

お蔭さまで無事終了いたしました。

お越しくださった皆様ありがとうございました。

またお買い上げを賜りありがとうございました。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

フィレンツェの古典技法額縁制作は

分業体制になっていて、おおよそ

木地(指物師)、彫刻、金箔から仕上げの

3種の職人さんで成り立っています。

パオラとマッシモの工房は「額縁店」ですので

お客様がいらして打ち合わせをするプロデューサー、

デザイナー兼箔から仕上げまでを行います。

木地屋さんに竿を発注、それを切って組み、

彫刻師に木地を渡して彫ってもらい、

それからパオラとマッシモが石膏塗りをして・・・

という手順で制作が進められます。

 

パオラの額縁店で彫刻専門でお願いしている職人さんは

3人いらして、グスターヴォさんはそのひとり。

サン・マルコ美術館ちかくにある

グスターヴォさんの工房にお邪魔させて頂きました。

 

額縁だけではなく、家具の装飾、ランプの土台、

看板から小物まで(この時はイタリアの

超有名ハイブランドのバッグの木製ハンドルを

作っておられて大忙しでした。)

木彫ならなんでもござれ、なグスターヴォさんです。


▲イタリアの彫刻師はみな彫刻刀の刃を自分にむけて置く。

一見こわいけれど、必要な刀をすぐに見つけられる。

 

プロの机、つかう道具、工房の空気など

リアルに拝見することが出来て、自分の目がギラギラ

していたのが分かりました。

身心に刺激を受けます。

▲合板に木材を固定し、さらに合板を机に固定して彫る。

 

グスターヴォさんの彫刻用木槌(きづち)は

40年以上使っているとのことですが

半分近くにすり減っているのでした。

▲pfail社の彫刻刀。木槌で打つときはこのように持って構えます。

 

新しい木槌も準備してあるのだけど、

やっぱりこれが使いやすいんだよね、と。

手になじんで愛着がわいて、もう体の一部に

なったような木槌でした。

 

「いつでもおいで。ここで教えてあげるから。」

と言って下さったグスターヴォさん。

すっかり本気にしているわたしです。

いますぐにでも彫刻刀をかついで駆け付けたい。

彫刻技術をもっと高めたい。

またフィレンツェ滞在を必ず実現させねば!

いくつになっても、師を持って修練できる機会は

大切にしたいです。

 

 

手紙 3月01日

 

ブログ、時代遅れなのですかね。

今はさまざまなSNSがあって

手軽に情報発信ができるけれど。

 

 

写真だけでは伝えきれないこともあるし

わたしには140文字では足りないのです。

 

「diario」日記と称しながらも

手紙のようなこのブログは、まだ

ここで続けていこうと思います。

ご覧くださってありがとうございます。

 

 

 

祭壇型額縁をつくる11 古色を付けて完成 2月27日

 

長々と古色についてのひとりごとを

お聞かせつづけてまいりましたが、

この祭壇型額縁で「今のところの結論」

として決着を付けようと考えております。

 

この額縁には、19世紀イギリスの新古典主義時代の

作品を模写した油彩画が納められる予定です。

200年弱前の作品(模写とはいえとても精巧)が

納まるべき額縁、どのような古色が相応しいだろう。

イタリア、メディチ家の額縁との違いはなんだろう。

資料を参考にし、記憶をたどりました。

 

200年は長い時間だけれど、額縁にとっては

それほど長くはないはずです。

おそらく、すこしの擦れとかるい打ち傷がある。

金の輝きはメディチ家の額縁のような質感とは

違うはず、しっとりとしてツヤは強くない。

汚れは濡れ色で、隅にたまっている。

全体に赤茶色の深みが足されている可能性もある。

・・・のではないか。と、わたしは考えた。

 

今のところのわたしが思う「古典主義時代に

イギリスで作られ手入れされ続けた額縁」

として古色加工を施します。

正解はわかりません、現時点でのわたしの

考え、好みの世界になっております。

ワックスの調合と塗り方、拭き方を変えましたが

基本的な手順はいつもとおなじです。

木槌などで打ち傷をつくり、

スチールウールで磨り出し、ワックスで汚します。

 

そんな訳でして、完成いたしました。

 

今後、さらに経験をつむことができ、

もっと沢山の額縁に触れることができたら

今日の加工とはまた考えが変わるかもしれません。

その時にもう一度、この額縁を見たいと思います。

 

これにて「祭壇型額縁をつくる」ご紹介

終了でございます。

ながらくお付き合いいただき、ありがとうございました。

 

「works」内「classical」にこちらの額縁をアップいたしました。

どうぞご覧下さい。

 

 

ど根性ヒヤ子 2月25日

 

我が家のヒヤシンス一家、球根6つは

庭ですくすく成長しております。

デルフトブルーのヒヤ子、そのクローン2つ、

昨年からのメンバー「真珠三姉妹」です。

▲雪にも負けず・・・でも思ったほど積もらなかった。

 

いまのところ大きい3つは真珠三姉妹。

ヒヤ子3つは発芽が遅かったのです。

色素の量が花と葉に影響するからか

白い花を咲かす葉は薄緑、濃い青の花の葉は

葉先も濃い色に見えます。

 

さて、写真で「芽は5つしかない」と

お思いでしょうけれども、6つあります。

大きい真珠姉妹の影でヒヤ子(クローン)が

じりじりと顔を出しておりますぞ。

▲むぎゅう・・・でも負けない。

 

球根の植え方が悪かったわたしのせいで

ひとつが「ど根性ヒヤシンス」化しております。

狭いし日当たりも悪いし養分も取りづらい・・・

ごめんよー、がんばっておくれー。

 

そういえば最近は「ど根性~」の植物って

話題になりませんね。

もしや死語でしょうか?!

 

 

祭壇型額縁をつくる10 金箔仕事おわり 2月22日

 

さぁ、祭壇型額縁の金箔作業も

ようやく大詰め、終わりに来ました。

 

金箔を置き、繕いもして磨きました。

全面をくまなく見て、ううむ。

ここ、どうだろう。

箔の仕上がりが釈然としない部分があります。

なんだか薄い、というか軽すぎる感じ。

重厚なデザインで平らな面と凹凸のある面が

並んでいるような額縁では

平らな面の箔の仕上がりがより目立ちます。

 

ですのでもう一度、箔を置きます。

 

今回は下の棚部分、上部の平面部分、

そして柱の土台部分、いずれも平らな面に

金箔を2枚かさねに置きました。

遠目には分かりませんが、2重の箔は

しっとりとした厚さを感じられるのです。

金箔はたったの0.1~0.2μmの厚さですが

1枚と2枚では違いが見えるのが不思議です。

 

さて。

これにて箔仕事は完了です。

下の写真では分かり辛くて恐縮ですが

今回は部分的につや消しにしました。

つや消しの明るさと磨いた部分の重さの

コントラストがなかなか良い感じです。


ぎんぎんぎらぎら、金箔ひかる・・・

今はまだ生々しい金の輝きですが、

これから古色付けの作業です。

そう、いよいよ例の古色付けです。

 

それにしても・・・かつて

自分で見て「ここ、どうだろう」と思っても

「これくらいなら、まぁいいか」と

見ぬふりをして完成にしたこともありました。

お恥ずかしいことです。

そんな額縁の場合、十中八九で

「ん?ここ、なんだか、どうなんだろう」

と気づかれる方がいらっしゃいました。

「ん?」と思われたときの目、表情。

でもなにもおっしゃらずに無言で

じっと見続けておられる時間。

その時の自分の気持ち。

忘れないようにしています。

 

 

Firenze 2018 tempo calma №5 2月20日

 

額縁工房に通いつつも、やはり

美術館に行かずにはおられませぬ。

額縁工房からもほど近いホーン美術館へ。

 

イギリス人美術評論家であり美術商だった

ホーンさんのコレクションを基に作られた

こぢんまりとした美術館ですが、

聞きしに勝る充実でしたよ。

▲静謐なエントランス。期待が膨らみます。

 

まずはやはりこの美術館の宝物である

ジョットの「聖ステパノ」から。

発色、聖ステパノの表情にも惹きつけられますが

背景の金、そして石膏盛上げ(パスティリア)や

刻印による繊細な装飾に目は釘づけでした。

▲「聖ステパノ」1330年~1335年頃の制作。843×540mm

頭部の白いふたつは石です。石打の刑での殉教を表現しています。

 

照明の角度で亀裂や古びた擦れ、箔や画面の

経年変化が良く見えます。

左側、髪の描写の下に金箔があることが分かります。

こめかみには光輪を描いたコンパスの穴も。

▲亀裂はほぼ横向き。支持体の木目に関係するのでしょうか。

それとも石膏を塗ったときの刷毛の方向か?気になります。

 

▲若々しく赤味の指す肌、そして様々な装飾模様

どこをとっても「かわいい」と思ってしまいます。

 

もちろんジョットが描き終えた時には

この亀裂は皆無で表面はもっと滑らかで

金の輝きも強く彩色も鮮やかで

「この世のものならぬ」ように光り輝いて

いたことでしょう。

 

でも今の、まさに今のこの美しさは

ジョットの手になるものに経年による

変化が加わり、それがこれまで保存修復に

携わった方々によって保たれて、

すばらしい奥行きが増しています。

きっとジョットも「これも悪くないねぇ」

なんて思っていると想像します。

 

Il Museo Horne

 

 

祭壇型額縁をつくる9 繕いマラソン 2月18日

 

ひとまず金箔を置き終わりましたが

これでお終いではありませぬ。

箔の破れやピンホールに箔を置く

繕い作業が待っています。

この作業もまた、完成度を左右する

大切な作業なのでございます。

 

よく研いだ箔ナイフを準備して

金箔をこまかく切り刻みます。

細い丸筆を2本用意し、左手には

水を塗るための筆を持ち、

右手には箔を取り上げて移動させる

筆を持ち、いざはじまりです。

 

左手で水を置いたら右手で箔片を置く。

この流れ作業をえんえんとおこないます。

 

以前、繕うときは頭の中で

「やーい、このヘタクソー!」だの

「簡単な場所を破いちゃって、もう!」

などと自分をののしりながら作業していましたが

これは悪いクセです。もうやめます。

自分を鬼の形相にしていた気がします。

 

今年、お正月の箱根駅伝を見ていたら

選手の後ろを伴走する車からコーチが

「いいよいいよ!その調子で行こう!」と

暖かく励ましているのに感動しました。

疲れてつらいとき、まだゴールが見えないとき

励ましの言葉は大切です。

 

金箔繕いもマラソンのように

もくもくとたんたんと行う作業です。

星の数ほどに思われる繕い仕事も

(もっと上手に箔を置きたい)

ふと離れて眺めてみれば、ずいぶんと

進んでいることに気づきます。

終わりのない繕いはないのですから。

 

「どこかで聞いたセリフだな」ですって?

ええ、確かに石膏磨きの時も同じことを

申しました・・・。ハハハ。

「いいよいいよ、その調子で行こう!」と

せめて自分だけでも自分を励ましつつ

作業をすすめます。

 

 

ふたご。 2月15日

 

2016年に作った帆立貝のタベルナーコロ

Atelier LAPIS の筒井先生と生徒さんが

キットで販売して下さったものを制作しました。

その後、お客様からのご注文も頂いて

先日またひとつ完成しました。

古色考察のさいにもご覧に入れた額縁、

左が新しいもの、右が2016年のものです。


 

ふたご。

最近の熱中案件「古色付け」は

以前のものより磨り出しや打ち傷作りは

控えめにして、汚しも減らしました。

ワックスもすこし変えました。

メディチ家はまだまだ遠いけれど・・・

グレーのベールがかかったような金箔

すこし近づけたような。

いかがでしょうか。


▲こちら、新作でございます。

 

▲この2016年の仕上がりの方が好きとの意見が多い・・・

 

とにもかくにも、

この額縁、何度つくってもたのしいです。

先日ひとつご注文いただきましたので

また楽しく制作しております。むふふ。

古色はお客様のお好みで決める予定です。

 

 

美しい道具を使いたい 2 2月13日

 

先日ご覧いただいた彫刻用の木槌

じつは2本作ってもらったのでした。

重いのと軽いの。使い分けができます。

その重い方に金箔を貼ってみました。

祭壇型額縁の作業中ですが、ちょっと遊び。

 

ひとまず金箔を磨いただけですけれど。

わー、かわいーい。

もう完全に自己満足の世界でございます。

ムダな装飾? 

いえいえ、そんなことはありません。


古典技法の額縁制作もそうですが

木彫にもさまざまな道具が使われます。

日々使う道具ですので、徐々に手になじんで

自分の分身のような、手の延長のような

大切なものになっていきます。

 

そんな道具は、できれば美しいものが好ましい。

美しい道具を使えば美しいものが出来る

とは言えません!・・・けれど

美しい道具を手に取った時に感じる

ふとした穏やかで気持ちの良い心が

わたしの手を通して作るものに反映されたら、

と思います。

 

道具もまた美しくあるべき