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薄皮一枚のこして 4月09日

 

1900年代にイギリスでつくられたという

とても立派でうつくしい祭壇型額縁の

修復をしています。

この額縁、ほんとうは金の輝きも鮮やかに

上品な半艶消しで仕上げられていたはず。

(美術館に入っている同作家の額縁を見る限り)

でもわたしの手元に届いた時には

過去の幾たびかの修理・修復のときに付けられた

古色加工・・・というか汚し加工がされていました。

なぜか?

修理・修復の跡を隠すためでしょう。

石膏が欠けて真っ白な部分も

新しく継ぎ足したけれど色があっていない部分も

全部ひっくるめて濃い茶色のベールのように

汚し加工で覆ってしまえば、全体のトーンは揃って

ぱっと見は整ったように見えるのです。

 

それはそれで、まぁ考え方ですから

その時は良かったかもしれませんけれども。

わたしとしては、これは1900年代という比較的新しい額縁、

オリジナルは古色加工を求めていないデザイン、

参考となる資料もあるし、納められる作品を考えて

今回の修復作業で「汚し加工」を取り除くことにしました。

▲祭壇型額縁を真上から見た部分。

 綿棒でぬぐうと真っ黒になり、下からは

 オリジナルの美しい金箔が見えてきました。

 

▲そうとなれば、少しずつ薄く剥がすように

 汚し加工を取り除きます。

 

とはいえ、全部ごっそり取り除くとそれはまた

バランスが崩れますし、あまりに印象が変わりすぎ。

(なにせ何年も「汚れた状態」だったわけですから)

汚し加工の薄皮を1枚のこすような気持ちで

全体の様子を見ながらゆっくり洗浄しました。

もしもっと洗浄が必要となれば、それはその時に。

もしやっぱり汚し加工された雰囲気が良いとなれば

それはまたその時に。

 

 

小箱のたのしみ 4 4月06日

 

ひきつづき小箱制作についてご紹介します。

前回テンペラ絵具をのせてグラッフィート装飾の

準備を終えました。

今日は乾いた絵具のうえに模様を転写して

掻き落とし、つまりグラッフィートします。

▲トレーシングペーパーに描いた下描き模様を

 細い棒でなぞって転写しますが、この場合は

 カーボン紙等使わず、絵具に凹み線を作ることで

 模様が見えるように転写します。

 

上の写真の中央、黒い絵の具の部分

うっすら白い線で模様が転写されているのが

見ていただけますでしょうか。

カーボン紙を使うこともありますが

今回は細かい装飾模様なので下描きも細い線で。

凹み線のみの転写にしました。

 

さて、いよいよ掻き落とし、削り出し、です。

普段は竹串やネイル用のオレンジウッド等を

細く削って掻き落としに使っていますが

今回は細い線を出すために、Gペンを使うことにしました。

▲箔を傷つけないように慎重に掻き落とします。

 

▲ちょっと厚めに絵具層を作ったので

 思いがけず絵具が硬く掻き落としにも苦労します。

 

蓋の模様はフィレンツェの旧サンタッポローニア修道院

(旧聖・アポローニア修道院)入り口にあった

テンペラ画の衣装模様をお借りしました。

この旧修道院はカスターニョの最後の晩餐で有名な場所ですが、

このテンペラ画はカスターニョではなくて・・・

作者名をメモするのを忘れてしまいました。やれやれ。

▲聖人の衣装のすそ模様だった・・・。

 

ひとまず全面に模様を入れ終わりました。

保存しておいた絵具で修正をして

なんだか気に入らなかった部分に追加で刻印を打って

今日の作業は終わりです。

 

 

小箱のたのしみ 3 4月02日

 

先日ご覧いただいた小箱制作のつづきです。

ピカピカに磨き終えて刻印を打ったら

グラッフィート装飾のためにテンペラ絵具をのせます。

グラッフィートとは、磨いた箔のうえに

テンペラ絵具を塗り、絵具が乾いたら

細く尖らせた木製の棒(竹串なども可)で

絵具を掻き落として下の箔を見せるという技法です。

 

さて、箔の上にテンペラ絵具をのせるにあたり

とにかく同じ厚さになるように、というのがコツ。

ヒタヒタに絵具を塗るというか置きます。

卵黄の量は・・・まぁいつもと同じくらいで大丈夫。

今年イタリア滞在中に見たグラッフィートは

いままでわたしが行っていたよりも

絵具層が分厚い、ということが分かりました。

ですので、ちょっと今回は厚めにこってり

絵具をのせることにしました。

ちなみにテンペラ絵具は乾くと卵黄が

酸化重合して水には溶けなくなり

一度乾いた絵具を使うことはできませんが

ラップをしてさらに密封容器に入れておくと

3~4日は使うことができます。

その場合、卵黄に防腐剤を入れることを忘れずに。

▲混色して作った絵具はグラッフィート修正用に保存。

 

絵具が乾きましたらいよいよグラッフィートで

装飾模様を入れます。

これがまた楽しいのですよ。

 

 

笑顔のために 3月30日

 

市が尾にあるAtelier LAPIS で毎週月曜に

古典技法額縁と黄金背景テンペラ画模写の

講師をさせていただいて、かれこれ9年目です。

始めたばかりの頃、自分の技術や

制作に対する心構えのようなものを

ほかの人に渡す(お教えする)のは、ある意味

心身の一部を切り取って譲渡するような気持ちで

不安があったのでした。

 

でも、今となればそんな心配は無用も無用、

月並みではありますが「得るもののほうが多い」

という充実し励まされる仕事になりました。

 

そんなLAPISの講座ですが、先日思いました。

生徒さんが「これで良いですか?」と確認を求めて

わたしに見せてくる時、まだまだ作業が足りないと思えても、

それはわたしの感覚では足りなく感じるだけで

この生徒さんにとってはこれで精一杯なのかも?

それとも「まぁぼちぼちで良いかな」と思っておられる?

もうこの作業が退屈になって先に進みたいんだろうな、

でもあと一息、あと一歩頑張ればずっと良い出来になる。

励ましてもっと追及してもらうか。

「良いですよ」と言ってしまうのは簡単だけど。

 

その迷いで、つい

「あなたがこれで良ければ、これで良いですよ。」

という発言をしてしまったのでした。

 

だけど、この言い方は失礼でもあり、怖いですね。

「わたしは納得しないけど、あなたの好きにしたら良い」

という突き放した言葉ですから。

 

生徒さん方は、LAPISにたのしみに来ていらっしゃる。

励まして無理に続けさせても辛いだけなら

楽しく作業していただいたほうがずっと良い。

でもこの人ならもっと出来るはず!

そう思って、最近は「もう一息やってみましょう、

大丈夫、出来ますよ、わたしも一緒にしますよ」

と言うようにしています。

その一言を聞いたときの生徒さんの笑顔は

とても素敵なのです。

 

 

いまはこうした趣味の講座を開講するのも

むずかしい状況ですが・・・

またアトリエで皆さんと笑顔で再会できる日を

たのしみに待っています。

 

 

小箱のたのしみ 2 3月26日

 

純金箔をぴかぴかに磨いたら

刻印で模様を入れましょう。

 

刻印入れの方法にはいろいろとありますが

今回はメノウ棒を軽く打って入れます。

力を加減して点の深さ、大きさが揃うように。

点の刻印が入るとさらに金のキラキラが増します。

小さくてギュッと詰まった世界へ

作業を続けます。

 

 

小箱のたのしみ 3月23日

 

先日から、またひとりがさごそと

小箱を作りはじめました。

金箔の額縁を修復する作業の途中で

すこしのお楽しみです。

金箔はピカピカに磨けました。

これから装飾模様を入れます。

黒と赤でグラッフィートの予定。

イタリアのルネッサンス時代の模様です。

またこちらで制作過程など

ご覧いただこうと思っています。

 

 

荻太郎先生「顔」の額縁 3月19日

 

昨年ご覧いただいた「バレリーナ」に続き

荻太郎先生の作品を額装させて頂きました。

 

 

サインは入っていませんので

発表なさるご予定で描かれたものでは無いかもしれません。

だけどタッチの力強さと勢い、迫力には

見るたびに圧倒されてしまう。

微笑んでいる様子は仏様を思い出させます。

守られているような、叱咤激励されているような

そんな気がします。

 

額縁はごくシンプルに

細い木枠につや消し金、 線刻を入れました。

 

いかがでしょうか。

 

 

 

いつものデザインだけど 3月16日

 

イタリア・フィレンツェでの彫刻修行後

はじめての額縁彫刻ですので

なんだかちょっとワクワクするような

自分にハラハラするような

変な気分になっています。

あちらで入手したあたらしい彫刻刀も使いつつ。

フィレンツェ修行のおはなしは

もう少し落ち着いたころに、と思っております。

まずは日々できることを地道に。

 

 

花でも愛でて 3月13日

 

なんだか落ち着かない毎日ですね。

わたしは元々自宅でひとり作業が日常ですので

あまり変わらない日々を過ごしておりますが

やはり息苦しさを感じています。

庭のヒヤシンス一家は変わらずに今年も

美しい花を咲かせてくれています。

作業の途中で花を愛でております。

 

 

皆さまもどうぞお元気でお過ごしください。

 

 

Atelier LAPIS(アトリエ ラピス)の様子から 2020年3月 3月09日

 

先月に引き続きHAさんの額縁です。

白木の木地に彫刻をするところから始まり

長い時間愛情を注いで作った額縁が

ようやく完成しました。

 

木地に彫刻、ボローニャ石膏塗布

アクリルグアッシュで彩色、

洋箔をミッショーネで貼りました。

ワックスで強めの古色を付けて完成です。


▲鮮やかな青を塗ってから、最後に箔置き。

 使っているのはドイツ製のペン状の道具です。

 先にヘラ状の堅いゴムが付いていて箔を押さえます。

 

古色用のワックスは濃い茶色なので

塗りこんだら鮮やかな青のトーンも落ち着いた色に。

ラピスラズリのような大理石のような趣になりました。

 

この額縁、わたしが以前つくった額縁(下の写真)と

ほぼおなじデザインでHAさんがつくりました。

▲3年前(だったか?)完成させた額縁「hori-16c-1」

 内側寸法108×95mm、サイズも同じです。

 

おなじ木地、似たデザインで制作しても

彫りの深さや太さ、色や仕上げの違い、

作り手のイメージによってこれだけ違いがでます。

これぞ制作の醍醐味、ですね。

 

HAさん、美しい額縁を完成させてくださり

ありがとうございました!

 

 

五寸釘を握りしめて 3月05日

 

真夜中に、恨みの藁人形に打ち付けるのは

五寸釘・・・

 

ですけれど、わたしの五寸釘は打たずに使います。

それももっぱら日がある時間でございます。

線刻するニードルとして重宝しています。


 

この五寸釘、つまり長さ150mm、太さ5mmの大きな釘ですが、

さすがにそのままでは細くて作業がし辛い。

革テープを巻き付けて握りやすくしています。

▲これぞ本当の五寸釘。

 

▲ちょっと太くてシャープな線が彫れます。

 

この重くて太い五寸釘、これを深夜に生木に打つなんて

相当な気力体力が必要なことでしょう。

なんともはや。

 

この五寸釘、大学生の頃に道で拾いました。

誰が落としたんだろう。

藁人形と一緒に持っていた人でしょうかね。

あまり考えないようにしています。

 

 

物の心を感じるとき 3月02日

 

先日、ピアスを1組無くしました。

でもこのピアスとのお別れが早く訪れることは

以前から分かっていたことなのでした。  

無くしてから「分かっていた」と言うのもおかしな事ですが。

 

以前に行った骨董市で数千円で手に入れた イギリス製のピアスは

デザインも気に入って 迷わず買い求めたのですが

お会計を済ませて店主さんから手渡されたときに

「あれ、このピアスはわたしの物ではないのかもしれない」と

突然に思えて、我ながら頭の中は「???」でした。

 無くした理由はわたしの管理が悪かっただけ・・・ではありますが

ピアスがわたしを嫌って逃げ出して行ったとも感じています。  

「物に心があるなんて妄想も甚だしい」と思いますけれど、

ただ、古いものにだけは・・・

「古い物には心がある」と何やら確信をもって感じています。

 

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それにも理由があるのです。 2月27日

 

KANESEI額縁の側面には、金箔はあまり貼りません。

黄茶色の金箔に近い色を塗って仕上げます。

 

その理由を聞かれることがあるですけれど、

まずはフィレンツェの額縁師匠マッシモ&パオラが

そうしていたから、というのが始まりではありますが

わたしなりに理由を言うとすれば。

 

純金箔って結構な迫力があります。

特に古色を付けたりすると迫力に重みも加わって

ともすると額縁の印象が強くなりすぎてしまう。

また、デッサン用などの細く繊細な額縁で

側面にも箔を貼ると太く重く見えるような気がします。

 

額縁は真正面からより斜めからのほうが

人の視界に入る場面は多いのです。

側面に「金ではないけれど金に似た色がある」と

印象が軽やかに、薄味になると言いましょうか。

作品を鑑賞するために正面から観るときには

しっかり箔の装飾があり作品とバランスをとりつつ、

斜めから見たときには額縁の存在を主張しすぎない、と言うか。

 

上手く言えませんが「押しが減る」ように

わたしは感じています。

 

 

額装する作品やサイズ、額縁のデザイン、飾る場所

そしてお客様のご注文によって

側面に金箔を貼る額縁も、もちろんあります。

とくに祭壇型額縁など側面に貼らない選択はありません。

 

正面には金箔を貼るのに側面には貼らないなんて

手抜き、ケチ(びんぼっちゃま風?懐かしい)と思われると

残念なのですけれど、理由もあるのです。

結局のところ好みの問題ではありますけれども

ご参考にしていただけたらと思います。

 

 

額縁の作り方 28 石膏塗りの筆選び 2月24日

 

古典技法額縁の制作では

ボローニャ石膏塗りは大切な工程

かつ一番難しい工程と言えるのではないでしょうか。

「手早く丁寧に!」をスローガンに

適度な濃度で適温にした石膏液を塗るには

筆選びが大切です。

 

わたしがいつも使っているのは

水性用の平筆、12~15ミリ幅くらいのものです。

メーカーによって微妙に号数が違いますが

この写真の筆は世界堂オリジナル筆14号。

やわらかい毛がたっぷりしていて抜け毛も少ないく

このシリーズは愛用しております。

もちろん塗る対象――テンペラ用の板なのか

彫刻の入った額縁木地なのか――によって

選ぶ筆のサイズと形状は変わりますが

やわらかい毛の筆、というのはいつも同じです。

乾いた筆をいきなり石膏液につっこまず、

まずはお湯で(湯煎した鍋の湯で)ゆすいで

ホコリを落とし、空気を抜きましょう。

 

ボローニャ石膏液を扱う指南書がさまざまありますが、

著者によって選ぶ道具はちがいます。

ある本によるとブタ毛の堅い丸筆や刷毛で

筆跡を残してガシガシと塗るとありました。

でもわたしは、可能な限り筆跡を残さず

石膏液の表面張力を利用して滑らかに塗るのが好きです。

滑らかな表面なら、次の辛い作業「石膏磨き」で

削る必要が少なく(つまり時短)、そして

気泡が入りづらいと感じているからです。

 


翌日の朝、かわいた石膏地に気泡はありませんでした。

石膏塗り成功でございます。バンザーイ。

 

 

みんな臭かった 2月20日

 

なにやら匂い(臭い)の話がつづきますが。

 

Atelier LAPIS の生徒さんがある日

「古いウサギニカワがあるのだけど、まだ

使えるかどうか・・・」とおっしゃるので

まずは見てみましょう、と持って来ていただきました。

 

下の写真、左が古いニカワ、右が現在のニカワ

どちらもホルベイン社製で

水10:乾燥ニカワ1の割合で作った溶液です。


▲乾燥ニカワは古くても、カビたりしていなければ使えます。

 

古いニカワ液の蓋を開けた途端、すさまじい臭い!

一度も洗ったことがない野良犬が濡れて蒸れたような

何とも言えないケモノの脂臭といいましょうか。

ビンの下にはすこし濁った澱もあります。

そうそう、これこれ!このニカワの強烈な臭いは

とても懐かしいのです。

 

わたしが初めてウサギニカワを使ってテンペラ画を

描いていた大学生の頃(かれこれ随分前の話・・・)

ウサギニカワと言えばこの感じ、それはそれは臭くて

研究室がこの臭いで満たされ、鼻がマヒしていました。

 

古いニカワは今のニカワより不純物が多いのでしょう。

だけど、この古いニカワのほうが古典的といいますか

ルネッサンス時代のニカワに近いでしょうし、気分的にも

「古典技法で制作しているのだ!」と盛り上がります。

 

数年前から「ニカワを溶かしても臭わないな、

鼻は楽だけど、なにか違う・・・」と思っていたのです。

久しぶりにクッサ~~い「ザ・ウサギニカワ」の臭いを嗅いで

なんだかとても楽しくなったのでした。

この臭い、フラ・アンジェリコもレオナルド・ダ・ヴィンチも

みんな嗅いで臭がっていたのでは・・・。

 

 

匂いの記憶 2月17日

 

先日、近くに用事があったのですが早めに着いたので

ずっと気になっていた「旧小坂家住宅」を訪ねました。

世田谷トラストまちづくり

「旧小坂家住宅」および「瀬田四丁目旧小坂緑地」 

二子玉川駅から少しあります。静嘉堂文庫美術館近く。

 

急な坂道沿いにあって、敷地面積は広いけれど

いわば崖とその周囲、といった感じの場所。

今は雑木林の敷地が公園になっているのと、

崖上にある邸宅が無料公開されている施設です。

世田谷区の指定有形文化財になっています。

 

訪ねたとき、他にお客様はだれもおらず

広いお屋敷内を迷いながら見学しました。

お茶室や内倉、ティンバー風の応接室など

とても凝った造りのお屋敷。

一番奥にたどり着いたら、そこは主寝室でした。

▲シャンデリアや石膏装飾の天井がすてき。

 奥の盾状のものはこの家の主、小坂順造氏の肖像彫刻です。

 左のカーテンの向こうがサンルーム。

 

サンルームからの眺めが素晴らしいのです。

庭の向こうには富士山も見える明るい部屋で

とても落ち着いた雰囲気、ほっとしました。

 

ほっとしたのは雰囲気だけではなくて、

なぜかとても良く知っているにおいがするのです。

もうずっと前に亡くなった祖父の家のにおい。

もちろん祖父の家はこんな立派なお屋敷ではありませんでしたが

独特の同じにおいがします。

古い家特有のにおい・・・だけではないのです。

なんと表現して良いのか分からないのだけど、

古い家具や少し湿度のある空気の、

絨毯や壁や、あらゆる物のにおい、でしょうか。

 

近くには、祖父が持っていたのと同じステレオが。


▲ビクターの古いステレオ、レコードとラジオです。

 我が家にいまだに置いてあるので見間違えません。

 

そのほか、サッシではない窓や鍵、建具がそっくりだったりと

あまりに祖父を思わせるものが多くて

ぎょっとするやら懐かしいやら。

部屋着の着物姿の祖父がいても驚かない気持ちでした。

 

においの記憶って凄まじい。

脳の深いところから突然蘇ってきます。

不思議です。

 

 

ちょっとちょっと・・・クローン2つ発見 2月13日

 

我が家の庭に植えたヒヤシンス球根10個は

9つが無事に発芽しております。

どうやらピンクが1つ、まだ出ていない様子。

まだ眠っているのでしょうか。

 

それはさておき。

天気が良かった今日、じっくり観察したのですが

おや・・・なんだか変な形が。

 

なんと、すでに分球して発芽しているのでは??

▲右側に2つ、しっかり花芽もあるような。

 

いやいや、ちょっとちょっと

あなた誰?(何色?)

もう家族を増やさなくて良いのですよ。

生物の宿命か、子孫繁栄は自然の成り行きですか。

(これ以上球根が増えると植える場所に困ります・・・)

ううーむ。

なにはともあれ、健康に成長することを願いつつ

観察を続けます。

 

 

今までとは違う気持ちで 2月10日

 

ベルナール・ビュフェ美術館に行きました。

一緒に行った人の希望で立ち寄りましたので

わたしは何となく、大した興味もなく行ったのですが。

 

久しぶりに、というのもなんですが

とても感動しました。

期待していなかったのも大きいかもしれません。

(失礼な話です、すみません。)

▲写真はベルナール・ビュフェ美術館H.Pからお借りしました。

 

ビュフェの作品はいままでにも何度か

目にすることはありましたが、正直なところ

あまり好みではなくて流し見していました。

 

今回、若いころの作品から小品、大作など

まとめて鑑賞することができました。

第二次大戦中にもあきらめずシーツに描いたこと

自画像をずっと描き続けていたこと

特徴的な黒い線が誕生したころのこと

苦悩したこと、感じたこと考えていたことなどなど。

作品もさることながら、専門に扱う美術館なので

丁寧に解説、展示がされていたことで理解が深まりました。

美術館設立者がビュフェ作品にほれ込んで集めた

とのことで、その愛情と熱意も感じられました。

 

額縁もスタイリッシュでかっこいいものがありました。

ガラスが入っていないので、絵の色艶やタッチが

手に取るようにわかるのも素晴らしいのです。

 

以前に流し見していたころと比べて

自分の精神状態も経験も変わったからかもしれません。

でも今後またビュフェの作品を観る機会があれば、

きっと今までとは違う心持で鑑賞することが

できるような気がします。

 

東京からすこし遠いけれど、旅気分でぜひ。

おすすめです。

 

ベルナール・ビュフェ美術館

 

 

比べ物にならない美しさなのに 2月06日

 

いまお預かりして修復している額縁は

19世紀にイギリスで作られた額縁です。

持ち主何人かを渡って、最近日本に着いたところ。

 

装飾の少しの欠けはありますが

さすが木地本体は緩みもゆがみもなく

申し分ない状態です。

 

けれども。

以前の持ち主の方が修理を試みたのか、

純金箔の上に銀色のペイントがあります。

下部端先、とても目に付く場所なのです。

今回の修復目的のひとつは、このペイント除去。

▲美しい純金箔の上に銀色の謎のペイントが。

 ちぐはぐでおかしい。

 

溶剤テストをして、これぞという溶剤が決まったら

綿棒に浸してペイントを少しずつ取り除きます。

▲綿埃もいっしょに塗りこまれているペイント。

 除去は急がば回れ。丁寧に根気強く。

 

銀色ペイントの下から純金箔と

赤色ボーロが見えてきましたよ。

▲綿棒には目的の銀色ペイントのみの付着。

 金や赤が付いていないことを確認します。

 

恐らく「金箔が経年で擦れてしまった結果

赤色ボーロが見えて気になる。

金色はないけれど手近に銀色塗料があったから

ひとまず塗ってみた」のでしょうけれど・・・

なぜ「銀色でもいいや」と思ったのかは謎。

 

古色好きなわたしにとっては、銀色ペイントより

経年で擦れた純金箔とボーロの色のほうが

比べ物にならないほど美しいのです。

 

さて。

おおよそ除去できました。仕上げまでもう少し、

そして純金箔を補ってこの部分の作業は完成です。

 

 

Atelier LAPIS(アトリエ ラピス)の様子から 2020年2月№1 2月03日

 

さて、続いておりますLAPIS生徒さん作品紹介、

本日はMIさんの小箱です。

 

わたしがLAPISアトリエでもガサゴソと作業をしていると

生徒さん方はとても興味を持って見てくださるのですが、

小箱も「作ってみたい!」と思ってくださる

制作のひとつです。

 

小箱木地は市販の桐材でつくられたもの。

それにいつもの古典技法どおりに石膏地を作り

線刻をしてから箔を貼り磨き、

今回はテンペラ絵具で彩色しました。

 

▲サイズは90×100mmくらいでしょうか。

 この細かい模様と細い線!いやはや。

イギリス留学経験のあるMIさんなので、

イギリスの模様を入れてみたそうです。

 

前側には箱の蓋と身の合印もいれました。

蓋を閉じるときに向きを迷わないように。

入れるものは決まっていないそうですが、

それを考えるのもこれからのお愉しみです!

 

 

弟子入り準備 1月30日

 

普段はご注文を受けた額縁を作りますが

「自分のために」作る額縁もあって、

新しく準備をはじめました。

 

ヴェネツィアで18世紀に作られた額縁をサンプルに

似たような形の木地で制作予定です。

▲女性的な花模様、C字のモチーフがロココ

 中央の平らな部分”specchio”がヴェネツィアらしいデザイン。

 


▲外側にもう一周彫刻がありますが後ほど足す予定です。

 ・・・下描きに描き落とし発見・・・。

 

まだバルディーニ美術館額縁の作業が残っていますが

(これからボローニャ石膏を塗らなければ)

また新しい額縁を準備し始めたのは

2018年秋に会った彫刻師グスターヴォさんに

短期弟子入りさせていただけるからなのです。

この木地と彫刻刀を担いで遠路フィレンツェへ

行ってまいります。

修行の成果など、またご報告させてください。

 

 

2回分の幸運 1月27日

 

先日1月9日に所用があり車を運転していましたら

鳥のフンがフロントガラスに・・・!

わたしが「ぎゃー!」などと叫んでおりますと

助手席にいたTokyo Conservasion 修復スタジオの

室長が「”運がつく”って本当だよ。俺も顔に

鳩のフンが落ちてきたことがあったけど

その年は記念すべき良い1年になったからね!」と

慰めてくださったのでした。

 

じつはわたし、今年の初詣で並んでいたときに

頭の上に鳥のフンが落ちてきたのです。

お正月早々なんたること・・・と

顔に縦線が入っていた(ちびまるこ風)のですが

室長のおはなしが本当なら、わたしの2020年は

それはそれはもう素晴らしい1年になるに違いない。

 

▲鳥・・・鶏のから揚げ。田町の老舗にて。

 大きなから揚げをハサミで豪快に切って食べる美味。

 

なにせ9日間で2回もウンに当たるなんて

(それも市街で。森の中ではないのです。)

そうそうあることではありませんでしょう?

 

▲鳥・・・これも鶏。我が家のクリスマスのご馳走。

 こんな写真を撮っているから鳥(鶏)に恨まれた可能性も。

 

室長の言葉を信じて。

2020きっと素晴らしい1年になるでしょう!

いや、素晴らしい1年になるよういたしますよ!

汚れたガラスは、後日父が拭き掃除してくれました・・・。

運は父にいったかもしれません!

 

 

Atelier LAPIS(アトリエ ラピス)の様子から 2020年1月№2 1月23日

 

HAさんの小さいけれど手の込んだ

かわいらしい額縁が完成しましたよ。

木地を彫刻、角にボローニャ石膏

赤色ボーロに純金箔装飾、刻印で模様入れ。

木地はステインで茶色く染めて古色付けです。

 

模様も彫刻も控えめながらも

とても丁寧に仕上げてあります。

お父様のお写真を入れるために作られた

愛情のこもった額縁です。

わたしも心がじーんと温かくなりました。

HAさん、ありがとうございました。

 

 

この子は誰? 1月20日

 

1月9日のおはなし。

わたしのペット?のヒヤシンス一家の球根は

今年も無事に芽を出しました。

白いホワイトパール3つ、ピンク3つ、

そして 青いデルフトブルー4つ、合わせて10球を

ランダムに植えたのは昨年秋です。

▲小石やら落葉があって分かりづらいですが

 右上に2つ、左上に1つ、3つの芽が出ました。

 

さてこの3つの芽は、一体どの球根か。

この子は誰だ?

▲葉の色から推察するにピンクかな?

 可愛くてたまらない。親ばか炸裂です。

 

予想ではピンクが一番乗り、なのです。

とにもかくにも10球全て元気に

芽を出してくれることを期待しつつ!

今年もヒヤシンス観察開始です。

 

今週からdiarioは週2回、月曜木曜の更新にします。

引き続きどうぞお付き合いください。

 

 

歌会始 2020「望」 1月17日

 

1月16日は毎年1月半ばのお楽しみ「歌会始」でした。

2020年のお題は「望」、令和初めてのお題に

とても相応しい明るいお題でした。

 

それぞれの歌を読み上げる人たち7名の方々の

お顔を拝見するのも実は楽しみのひとつなのですが

(皆さんの年相応の変化に自分も同様に感じられたりして・・・)

今年から新たな若者メンバーが加わり心機一転、

20代青年の声も若々しく伸び伸びとさわやかでした。

7名に年齢に幅があるほうがやはり良いのですね。

こうしてまた、新しい時代になったことを感じます。

 

選歌にいくつか「ああ、そうだなぁ、良いなぁ」と

感じる歌があり、しみじみ。

目の前にその人が見た風景が広がるようでした。

 

上皇后となられた美智子様の御歌が無いのは・・・

歌会始の楽しみが半減した感じです。

仕方がないことではあるのですけれど。

これもまた、新しい時代ということでしょう。

 

来年のお題は「実」だとか。

令和3年の歌会始、穏やかに迎えられますよう。

 

 

鎌倉彫の力強さ 1月15日

 

先日お話した鎌倉の八幡様詣でのさいに

鳥居横の茶寮「風の杜」に寄りました。

天井が高くて広々して静かで、とても居心地よい場所。

 

壁には鎌倉彫の鏡入り額縁がありました。

▲お店の許可をいただいて写真を撮りました。

 

写真が悪くて見づらいのですが、

ぐり模様(下部の渦巻き)はかなり深く彫ってあります。

わたしのイメージしていた鎌倉彫よりも

現代的でスッキリしていて力強い。

▲額縁の外側寸法はだいたい500×500mmくらいだった印象。

 

▲英語のパネルも。制作は博古堂さんという工房のようです。

 

どんな方が彫ったのかな。若い方か、男性か女性か。

作品からいろいろ想像するのも面白いのです。

外国からのお客様も多い八幡様のカフェなので

いろいろの方の目に留まると良いな、と思います。

 

 

Atelier LAPIS(アトリエ ラピス)の様子から 2019年1月№2 1月13日

 

とても精力的に制作して下さるAさん、

はやくも3点目の額縁です。

 

木地にボローニャ石膏、赤色ボーロに

純銀箔、テンペラでグラッフィート。

端先の垂直面には赤色ボーロを残しています。

角度によってちらりと見える赤が印象的です。

この模様は、まず純銀箔を貼り磨き、

その上に黒色のテンペラ絵具で塗りつぶし

模様を掻き落として下の銀を出すという

手の込んだグラッフィート技法で表現しています。

銀箔を丁寧に仕上げておかないと、上に塗る

テンペラ絵具もきれいに落とせません。

側面にも模様を入れるのはまさにAさんオリジナル。

わたしには「目からうろこ」でした。

人それぞれいろいろな表現があるのです。

 

Aさん、新しい提案をありがとうございました!

 

 

1500年前と同じものを使う 1月10日

 

少し前のお話ですが、埼玉県行田市にある

「さきたま史跡の博物館」へ行きました。

 

ここは5世紀から7世紀の大型古墳群で有名だそうですが

国宝展示室にてちょうど企画展開催中でした。

「金錯銘鉄剣」とその精密な復元品の展示です。


 

オリジナルは錆びているけれど、その迫力たるや!

オーラがただものではなく発せられているような。

権力者の威厳の象徴。

純金で象嵌された文字は今も輝きを失っていません。

復元品は大きさ材質、作り方から研ぎ方まですべて

5世紀ころに作られたままの姿で復元されたとか。

ガラスケースに入っていますがすごい迫力。

目の前に突き付けられたら背筋が凍りそう。

▲右下の剣が復元品。ひどい写真ですみません。

 象嵌の様子、刃の輝きが間近で見られました。

 

鉄剣も驚きの品でしたが、わたしにはこちらも衝撃。

奥には鉄剣とおなじ稲荷山古墳から出土した

道具類も展示されています。いずれも国宝です。

 

・・・なんだか見慣れた道具がただ古びている、

という感じです。

▲左から砥石、ヤリガンナ、チョウシ、カナハシ、大小のチョウナ

 いずれも現在でも伝統建築で使われている道具そのままの姿。

 

5世紀にはすでに今のわたしが額縁制作でも使うような

ペンチのような、ニッパーのような道具も。


▲サビをとって直せばいまにも使えそう?

 

そうか、1500年前の職人も同じような道具を

日々使っていたのか

この道具はすでに1500年前に完成された形なのか

感慨深い気持ちになりました。

 

1500年の時間は人間の進歩に長いのか短いのか?

 

さきたま史跡の博物館 金錯銘鉄剣復元品特別公開

稲荷山古墳出土鉄剣とは

埼玉古墳群とは

 

 

これで本当にわたしのもの。 1月08日

 

昨年末に買ってしまったkindle、

手に入れたのが嬉しくて

目印のようなものを付けたくなりました。

▲ケースは白。麻のような色です。

 

Kindleにどうにかしてタッセルを付けたい。

使わないと溜まったタッセルもかわいそうですし。

でもストラップホールなどありませんし。

日曜の夕方に工作することにいたしました。

 

秘蔵?のリボンを取り出しまして。

わたしの大好きなDEMELのリボン

Kindleケースの背の幅にぴったりです。

裏に両面テープを貼りました。


内側から貼りはじめ、一番下でタッセルを通して


また内側で貼り付ければ完成です。

これでこのKindleは「わたしのもの」になりました。

 

タブレットにもつけているのです。

使い勝手の良し悪し、耐久性などは

二の次にしております・・・ハハハ。

 

 

Atelier LAPIS(アトリエ ラピス)の様子から 2020年1月№1 1月06日

 

本日2020年の仕事はじめ。

身体に気を付けて頑張りましょう。

 

なんと昨年2019年8月以来になってしまった

古典技法教室Atelier LAPIS の様子ですが

生徒さんの完成品記録をまたご紹介いたします。

 

NAさんの全面金箔額縁は、ご自作の箔盤初使い。

7月のこの日は箔の繕い最終仕上げの日でした。

▲奥に見えているのがピンクの美しい手製箔盤。

 使い勝手もばっちりでした。

 

今回は古色を強めにしたいとのご希望で

傷や凹み、磨り出しもしっかりして

ワックスとパウダーで仕上げました。

▲木地にボローニャ石膏、盛り上げ装飾に

 赤色ボーロ、純金箔メノウ磨き。

 ワックスによる古色。

 

デザインは15世紀イタリア・トスカーナ州で

作られた額縁の模様を参考にしています。

NAさん、全面金箔作業お疲れ様でございました。

順調に上達していらっしゃいます!

小箱完成も楽しみにしております。