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ボーロの色もそれぞれ 4月30日

 

石膏を塗り、恐怖の紙やすり磨きを終えた

バルディーニ美術館の額縁摸刻は

金箔下地のボーロを塗るところまで来ました。

 

このボーロには基本的に赤・黄・黒があります。

イタリアでは時代と場所によって

ボーロの色に特徴があるのですが

今回は茶色にしました。

 

このバルディーニ所蔵の額縁、わたしの予想では

フィレンツェの1800年代のものかなぁ!

などと言っておりましたが大きな間違い、

イタリアの額縁史に詳しい方に教えていただいたところ

トスカーナ地方またはエミリア地方で(Toscoemiliana)

1600年代に作られたものでしょう、とのこと。

▲上の写真はフィレンツェのバルディーニ美術館にある

 オリジナルの額縁。2018年訪問時に撮った写真です。

 

また、その時代のトスカーナでは

主に茶色のボーロが使われていたとのお話から

黄色ボーロに黒と赤を混ぜたものを作りました。

ちなみにエミリアは暗い赤、

ローマ、ナポリなど中央以南は黄色、

ロンバルディア、ヴェネトはオレンジ色の

ボーロを使っていたのが特徴だそうです。

 

純金箔も当時1600年代イタリアと

おなじ技法と道具で置いて(貼って)います。

激しい凹凸、側面まで貼り込んであるので

金箔の消費量も恐ろしいことになりそうです。

 

 

下地の色は大切 4月27日

 

先日彫り終えた額縁木地  に

水性ステインを塗りました。

仕上がりは金色艶消しなのですが

木地を茶色に染めておくことで

金の発色に深みが出て穏やかになり

かすかな揺れができてきます。

▲沢山の色がシリーズで発売されていますが

 わたしは「オーク」色を使う機会が多いように思います。

 

下地に色を塗るか塗らないか

何色を塗るのか、どのように塗るのか・・・

仕上がりを左右する

とてもとても重要な工程です。

 

 

小箱を贈る 4月23日

 

ご覧いただいておりました小箱は

無事に完成し、贈り物にしました。

イタリアの友人へささやかな感謝と励ましに

雑貨とともに送りました。

普段より日数はかかりましたが

無事に手元に届いたようです。

▲側面は黒一色です。

 

▲蓋と身の合印として中央に赤を少しいれました。

 写真だと見づらいのですが・・・。

 

蓋をぱかっと開けますと

今回は中に貼った別珍も黒です。

黒が好きな人ですので、お好みに合わせて。

 

イタリアの友人知人に元気に再会できる日が

一日も早く来るように願いつつ

わたしに何ができるか考えています。

 

「works」ページ内「other」にアップいたしました。

どうぞご覧下さい。

 

 

今年の福の神様は 4月20日

 

毎年かわらずに美しい花を咲かせてくれる

KANESEI自慢の黄色いモッコウバラは

KANESEIの福の神様でもありまして、

毎年この花が咲くころは大忙しなのです。

たいてい5月の大型連休の頃、遊びに行きたい

真っ盛りの時期なのですが。

今年はほかの植物同様にモッコウバラの

満開がずいぶんと早いようです。

この春、福の神様モッコウバラの花は

慰めと励ましの神様にバトンタッチ

なのかもしれません。

桜もつつじもお花見に出かけることができず

ひたすら息をつめて待機しているわたしたちに

「まぁまぁリラックスして、わたしをご覧」

と話しかけてくれているように感じています。

 

 

ご機嫌取りの日 4月16日

 

最近は皆さまと同様に外出も減って

自宅での作業時間が伸びています。

 

しばらく放置していたこの額縁

フィレンツェのバルディーニ美術館所蔵の額縁摸刻

制作を再開することにいたしまして

先日ボローニャ石膏を塗りました。

 

 

なにせ急いではおりませんから

パーツ毎に丁寧に塗りました。

上の写真では側面はまだ塗っていません。

内側の細かい彫りにまず塗って乾かして、

周囲のおおきな彫り部分に塗って乾かして

そうしてようやく側面に取り掛かろうと思います。

こうして時間をかけて自分のために作業できるのも

今だからこそかもしれません。

 

出かけたり人に会ったりする機会が減って

気分が鬱々とすることもありますけれど

いままで先延ばししていたことに手を付けたり

「自分のご機嫌をとってなぐさめる日」というのも

悪くない過ごし方かなぁ、と思っています。

 

 

小箱のたのしみ 5 4月13日

 

小箱制作のつづき、そろそろ仕上げです。

装飾を入れ終わった小箱には

フィレンツェのゼッキで購入した

gommalacca シェラックニスを塗ります。

このニスでテンペラ絵具が箔とより密着し

安全に扱えるようになります。

▲奥に見えるガラス瓶が gommalacca

 アルコールベースのニスです。

 

このニスはすぐ乾きますので、引き続き

古色付けの箔磨り出しをします。

スチールウールで角を擦って下地を出します。

グラッフィート模様の上は触らずに。

そしていつもの古色ワックスを薄く塗り

乾いたら磨いておしまいです。

 

内側には黒い別珍を貼りました。

これで大切なものを入れても大丈夫。

この小箱制作の手順はいつもの額縁制作と

同じなのです。

ただ小さくて立体で、というだけ。

でも気分が変わって、好きな模様を入れられて

手のひらに乗せて眺めることができて

とても楽しい作業です。

 

 

薄皮一枚のこして 4月09日

 

1900年代にイギリスでつくられたという

とても立派でうつくしい祭壇型額縁の

修復をしています。

この額縁、ほんとうは金の輝きも鮮やかに

上品な半艶消しで仕上げられていたはず。

(美術館に入っている同作家の額縁を見る限り)

でもわたしの手元に届いた時には

過去の幾たびかの修理・修復のときに付けられた

古色加工・・・というか汚し加工がされていました。

なぜか?

修理・修復の跡を隠すためでしょう。

石膏が欠けて真っ白な部分も

新しく継ぎ足したけれど色があっていない部分も

全部ひっくるめて濃い茶色のベールのように

汚し加工で覆ってしまえば、全体のトーンは揃って

ぱっと見は整ったように見えるのです。

 

それはそれで、まぁ考え方ですから

その時は良かったかもしれませんけれども。

わたしとしては、これは1900年代という比較的新しい額縁、

オリジナルは古色加工を求めていないデザイン、

参考となる資料もあるし、納められる作品を考えて

今回の修復作業で「汚し加工」を取り除くことにしました。

▲祭壇型額縁を真上から見た部分。

 綿棒でぬぐうと真っ黒になり、下からは

 オリジナルの美しい金箔が見えてきました。

 

▲そうとなれば、少しずつ薄く剥がすように

 汚し加工を取り除きます。

 

とはいえ、全部ごっそり取り除くとそれはまた

バランスが崩れますし、あまりに印象が変わりすぎ。

(なにせ何年も「汚れた状態」だったわけですから)

汚し加工の薄皮を1枚のこすような気持ちで

全体の様子を見ながらゆっくり洗浄しました。

もしもっと洗浄が必要となれば、それはその時に。

もしやっぱり汚し加工された雰囲気が良いとなれば

それはまたその時に。

 

 

小箱のたのしみ 4 4月06日

 

ひきつづき小箱制作についてご紹介します。

前回テンペラ絵具をのせてグラッフィート装飾の

準備を終えました。

今日は乾いた絵具のうえに模様を転写して

掻き落とし、つまりグラッフィートします。

▲トレーシングペーパーに描いた下描き模様を

 細い棒でなぞって転写しますが、この場合は

 カーボン紙等使わず、絵具に凹み線を作ることで

 模様が見えるように転写します。

 

上の写真の中央、黒い絵の具の部分

うっすら白い線で模様が転写されているのが

見ていただけますでしょうか。

カーボン紙を使うこともありますが

今回は細かい装飾模様なので下描きも細い線で。

凹み線のみの転写にしました。

 

さて、いよいよ掻き落とし、削り出し、です。

普段は竹串やネイル用のオレンジウッド等を

細く削って掻き落としに使っていますが

今回は細い線を出すために、Gペンを使うことにしました。

▲箔を傷つけないように慎重に掻き落とします。

 

▲ちょっと厚めに絵具層を作ったので

 思いがけず絵具が硬く掻き落としにも苦労します。

 

蓋の模様はフィレンツェの旧サンタッポローニア修道院

(旧聖・アポローニア修道院)入り口にあった

テンペラ画の衣装模様をお借りしました。

この旧修道院はカスターニョの最後の晩餐で有名な場所ですが、

このテンペラ画はカスターニョではなくて・・・

作者名をメモするのを忘れてしまいました。やれやれ。

▲聖人の衣装のすそ模様だった・・・。

 

ひとまず全面に模様を入れ終わりました。

保存しておいた絵具で修正をして

なんだか気に入らなかった部分に追加で刻印を打って

今日の作業は終わりです。

 

 

小箱のたのしみ 3 4月02日

 

先日ご覧いただいた小箱制作のつづきです。

ピカピカに磨き終えて刻印を打ったら

グラッフィート装飾のためにテンペラ絵具をのせます。

グラッフィートとは、磨いた箔のうえに

テンペラ絵具を塗り、絵具が乾いたら

細く尖らせた木製の棒(竹串なども可)で

絵具を掻き落として下の箔を見せるという技法です。

 

さて、箔の上にテンペラ絵具をのせるにあたり

とにかく同じ厚さになるように、というのがコツ。

ヒタヒタに絵具を塗るというか置きます。

卵黄の量は・・・まぁいつもと同じくらいで大丈夫。

今年イタリア滞在中に見たグラッフィートは

いままでわたしが行っていたよりも

絵具層が分厚い、ということが分かりました。

ですので、ちょっと今回は厚めにこってり

絵具をのせることにしました。

ちなみにテンペラ絵具は乾くと卵黄が

酸化重合して水には溶けなくなり

一度乾いた絵具を使うことはできませんが

ラップをしてさらに密封容器に入れておくと

3~4日は使うことができます。

その場合、卵黄に防腐剤を入れることを忘れずに。

▲混色して作った絵具はグラッフィート修正用に保存。

 

絵具が乾きましたらいよいよグラッフィートで

装飾模様を入れます。

これがまた楽しいのですよ。