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里帰りでリフレッシュした5姉妹 5月30日

 

数年前に作らせていただいた引出用ツマミ5つ。

ひとつに傷がついてしまったとのことで

今日すこし修復作業をほどこし 整えました。

赤い表面がえぐれて 白い石膏下地が見えています。

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お客様にお引渡ししてからその後 毎日のように

使っていただいたツマミ5姉妹は味が出ていて

お嫁に行った娘たちが里帰りしたようで懐かしく

ちょっと嬉しい再会でした。

額縁と違い「手で触れて使うもの」ならではの変化が見られ

母(わたしです)も大変に感慨深い思いでした。

5つあるとそれぞれに 頻繁に開ける引出しのツマミと

あまり開けることがなかった引出のツマミで表情も違い

過ぎた時間を感じられます。

 

欠けを充填して磨いて補彩し 5つ揃えてニスの塗り直し。

それぞれクリップを台にして乾燥待ちです。

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艶もよみがえり またお役に立てる姿になりました。

これからも長くご愛用頂ければと思います。

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藤岡直樹写真展『flora』より 5月27日

 

写真家の藤岡直樹さんの展覧会「flora」の会場から。

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先日の夜 レセプションが行われました。

会場は二部に分かれていて 花をモチーフとした写真はメインの部屋に。

打ちっぱなしと白の壁 そして無垢材とコンクリートの床

それぞれコントラストが美しい部屋と 野に咲く花々の写真は

モダンな空間を幻想的に感じさせます。

 

そしてもう一つの部屋 奥にある書斎のようなスペースに

風景と人物をモチーフにした写真が展示されています。

こちらにKANESEIの額縁を使っていただきました。

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踊り回転するバレリーナの連続写真をモノクロ1枚に。

 

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明るい日差しの入る日中と スポットライトの陰影がある夜

作品の印象がこんなに変わるなんて・・・という楽しみもあります。

 

藤岡直樹写真展「flora」は6月8日まで。

どうぞお立ち寄りください。

http://www.emoninc.com/

 

 

La nostalgia in Italia 2011 Firenze -Mamma d’Italia- 5月23日

 

イタリアの郷愁2011 フィレンツェ -イタリアのマンマ-

 

Mamma Mia! (マンマ・ミア!)

というセリフはイタリアで良く聞かれる言葉ですが

日本で言えば 良い意味の時も悪い意味の時も

「なんてこと!」といった感じです。

直訳すれば「お母さん!」ですけれど。

イタリアの人たちにとって それだけお母さんの存在が大きい証ですね。

 

さて イタリアで聞いた面白い言葉で

「パンツにアイロンをかけるお母さん」というものがあります。

これは「典型的な古き良きお母さん」という感じでしょうか。

わたしが住んでいたアパートのキッチン窓は中庭に面していて

プライベートな生活感あふれる部分が 隣近所お互いに垣間見える場所でした。

ある夏の日 お隣のお母さんがテレビを見ながら

家族全員の洗濯物すべて(Tシャツから靴下 そしてパンツも)に

アイロンをかけておられるのが開いた窓から見えて

半信半疑だったこの「典型的イタリアのお母さん」の姿を

リアルに目の当たりにした驚きがありました。

室内は居心地良く整えられ 掃除が行き届き

毎週末には美味しそうな料理が並ぶテーブルを囲んで

離れて暮らす家族が賑やかに勢ぞろいする・・・そんなお宅でした。

きっとイタリアの理想的家族そのままの姿のような。

 

下の写真はフィレンツェの通りから見えたテラスです。

よく手入れされた植物と きちんと干された沢山の洗濯物。

この家でもきっと溌剌としたお母さんが

洗濯物にアイロンをかけているのだろうなぁ・・・。

キッチンから見えたお宅の幸せな風景を思い出していました。

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彼のベッドはブラックダイヤモンドに 5月20日

 

なんだか意味深なタイトルになってしまいましたが

いま作っている額縁は変形6角形です。

実物大の設計図を描いて角度を出し 木地の裁断が終わりました。

この形 どこかで見覚えありませんか?

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黒いマントをひるがえし 夜な夜な美女の生き血を吸う男・・・

ドラキュラ伯爵のベッド(棺)の形の額縁です。

でもこの額縁のベッドに横たわるのは ドラキュラ伯爵ではなく

ブラックダイヤモンドとスワロフスキーの装飾も美しいバースプーン。

この変形6角形の額縁原案は ご依頼主さまのアイディアです。

わたしだったら・・・思いつかないような「魅惑のデザイン」で

作りながらもワクワクしています。

 

 

 

春の果て 5月16日

 

テンペラで 黄色い小鳥を描きました。

オズボーン(Audubon)の作品集から louisiana tanager です。

風琴鳥の一種のようですが 日本名を見つけることができませんでした。

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テンペラ画の卵黄メディウムは乾きが早く

描き方に制限が出来てしまう難点もあると言われますが

細い筆での線描きを重ねて 鳥の羽毛を表現すること

細密描写にも向いていると感じます。

 

春の終わり 初夏のような日

窓から小鳥たちの鳴き声が聞こえる明るい午後

鮮やかな色の絵具を筆にとって小鳥の姿を描くのは

心踊る時間でした。

風琴鳥という名も素敵じゃありませんか。

風が琴を鳴らしたような美しい声で鳴く小鳥・・・なのでしょうか。

 

 

La nostalgia in Italia 2011 Firenze -Zecchi- 5月13日

 

イタリアの郷愁 2011 フィレンツェ -ゼッキ-

 

古典技法絵画や修復などにご興味ある方の間では

かなり有名な画材店「Zecchi」(ゼッキ)です。

いまさらご紹介するまでもない・・・かもしれません。

この短い旅の間にも数回通いました。

 

デザイン用具やアクリル絵の具など現代の製品も勿論揃いますが

金箔作業の道具 膠や古いレシピの顔料にオイル 銀筆

1頭分まるまるの羊皮紙 修復に欠かせない天然樹脂・・・

さすがルネッサンス発祥の街だけある品揃えです。

ドゥオーモの近く 横丁にある小ぢんまりとした店ですが

夕方には学生や本職の画家さん 世界各国の旅行者で狭い店内は満員。

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イタリアのお店の特徴なのか 店内で自由に商品を手に取って

(チューブ入り絵具や筆等)選ぶこともできますが

基本的に カウンターで店員さんにお願いして

奥から出してもらったり 顔料を量り売りしてもらいます。

これがまた 何とも「ちょっと特別」な感じで楽しくもあります。

混雑時には延々と待つことになりますが

イタリア的なゆっくりとした時間の進み方なのです。

「郷に入れば郷に従え」ですね。

そして気を付けなければいけないのがお昼休み!

朝の開店が8時30分と早い分 お昼休みは3時間もあります。

最近ではイタリアでもお昼休みがないお店が増えましたが

ゼッキのような古いスタイルのお店も健在です。

わたしが今回フィレンツェ滞在中に数回通うことになったのも

このお昼休みのタイミングや夕方の混雑で

なかなか思うように買い物がはかどらなかった・・・という理由。

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でもご安心! 帰国後に「買い忘れた!」なんてことがあっても

ホームページのサイトからメールで注文

海外発送もお願いすることができます。

http://zecchi.it/ (左上角のイギリス国旗クリックで英語表示)

 

留学当時 大学病院で親不知を抜いた帰り道

腫れた顔をして寄ったゼッキで 店長のおじさんに

「おお 良く頑張ったね」と慰めてもらったのも思い出です。

おじさんは髪がずいぶん白くなったものの お元気でお店は大繁盛でした。

ちなみにこの店長のおじさん 「冷静と情熱のあいだ」という

フィレンツェを舞台にした日本映画で画材店の店長として登場しています。

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藤岡直樹展 『flora』 5月09日

 

先日ご覧いただいた黒にアカンサスの額縁ほか6点を

写真家藤岡直樹さんの展覧会で使って頂くことになりました。

 

広尾にある エモン・フォトギャラリーにて

5月14日(火)~6月8日(土)まで。

お近くにおいでの際にはぜひご高覧くださいませ。

 

n.fujioka

 

藤岡さんの写真は どれも いつも

遠い記憶とつながる物語があるように感じて

心が揺さぶられます。

とても不思議な物語です。

 

EMON PHOTO GALLERY

http://www.emoninc.com/

 

ローマ 陽の当たる午後に 5月06日

 

最近完成した額縁は いつものように

石膏地に盛上げ装飾でアカンサスの葉を入れて

ワックスでアンティーク仕上げにしました。

黒と茶色と少しの金。

モノクロの写真が額装される予定です。

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ローマにある古い屋敷の 午後の陽の当たる白い漆喰壁に

かけてみたらどうだろう・・・

そんな想像をしました。

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* 「works」内「classical」にこちらの額縁をアップいたしました。

どうぞご覧下さい。

 

 

La nostalgia in Italia 2011 Firenze -I fratellini- 5月02日

 

イタリアの郷愁 2011 フィレンツェ -イ・フラテッリーニ-

 

旅行者にとって昼食は大きな楽しみの一つ。

そしてイタリア人にとっても同様に 大きな楽しみの一つです。

ドゥオーモとシニョリーア広場の中間にある

“I fratellini” というスタンドはフィレンツェ人でいつも賑わっていて

旅行者にもおすすめの立ち飲みワインとパニーノ(サンドイッチ)の店です。

店の名前 “I fratellini” とは直訳すると「兄弟」の意味。

そっくりな兄と弟で切り盛りする繁盛店です。

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写真を撮ったのは早い時間でしたが これがお昼時にもなれば黒山の人だかりです。

お行儀よく後ろで待っていたら いつまでたっても順番は来ません。

とりあえず人をかき分けカウンターに乗り出してアピールします。

兄(おそらく)がきちんと「カウンターにたどり着いた順番」で

注文を取りワインを継いでくれて 弟がせっせとパニーノを作ってくれます。

以前に市場のお話でもご紹介した生ソーセージのパニーノ

“Il panino alla salsiccia fresca e melanzane”(生ソーセージとナスのパニーノ)

を右手に キアンティ・クラッシコの赤ワインを左手に持って

賑やかにおしゃべりしながら パンくず目当ての鳩を踏まないように気を付けながら

地元民のように堂々とかぶりついて味わうのも一興です。

食事が終われば 写真手前の男性が手をかけている木の棚に

ワイングラスを返し 下のくずかごにパニーノの紙屑を捨て

また午後の散策や仕事に戻りましょう。

 

留学当時には 昼休みに友人とここでパニーノと炭酸水を買って

(午後に授業や工房での作業があったのでワインはお預け!)

シニョリーア広場のロッジア前階段に座って食べたのを思い出し

この旅でも同じようにしてみました。

パニーノの味もロッジアからの眺めも 何も変わっていません。