diario
hori-makuha-2 7月30日
あたらしくドローイング用に作っていた
彫刻入り額縁が完成しました。
この額縁「hori-makuha-2」は以前につくった
「hori-makuha-1」を細くおおきくしたもので
イタリアの古い額縁を参考にしています。
汚し加工を減らして、巻く葉のツヤ(磨いた金)と
ツヤ消し部分(磨いていない金)のコントラストを
よりはっきりわかるようにしました。
若い男性のドローイングを額装して完成です。
「works」内「classical」にこちらの額縁をアップいたしました。
どうぞご覧下さい。
夜のお手紙は危険 7月27日
「夜に書いた手紙は朝に読み返してから投函すべし」
と昔から言われていますが
ブログもきっと同じですね。
このブログは友人にあてた手紙のような気分で
書きつづけています。
夜に書いたブログは日中に書いたブログと
内容が違う気がするのです。
日中には額縁の制作方法とか手順とか
より具体的なことが多い一方で
夜に書くブログは考えていることとか思い出とか。
かく言う今日のブログもご想像通り夜に書いています。
夜に書く方が感情を表しやすいのでしょうか。
深夜に気持ちのままにどんどん書き連ねた文章を
朝に冷静に読み返してみたら
「おっと、あぶないあぶない・・・」なんてこと
じつはわたし、結構な頻度であるのです。
だからやっぱり朝に読み返したほうが良さそうです。
とても個人的な内容は手紙やメール、ブログではなくて
顔を見ながらお話したいです。
そうは言ってもいまは会うこともためらわれたり
遠くて会いに行くこともままならなかったり。
なので、せめて電話でね。
hori-16-2 完成 7月23日
以前にご覧いただいたちいさな彫りかけ木地は
石膏を塗り磨いてボーロを塗って金箔を貼って・・・
無事に仕上げることができました。
▲木地の形は少し違うのです。
いつものように、わたしの愛読書である
「Repertorio della cornice europea」掲載の
16世紀末イタリアのピエモンテ州でつくられた
額縁を摸刻しました。
▲本の写真と同寸です。のせるとぴったり。
オリジナルは一回りおおきい。
片手に乗るサイズですけれど
細かい彫りで凹凸もあって、箔の作業は
サイズのわりに少々面倒ではありましたが・・・
「小さなモチーフ彫刻の練習」としては
まぁ良い経験になりました。
肖像画とか静物画とか、暗い背景の絵を
入れてみたいような気がしています。
「works」内「classical」にこちらの額縁をアップいたしました。
どうぞご覧下さい。
気の持ちよう 7月20日
いまってとても便利な時代で、海外にいる友人とも
会話をするように手軽にメッセージや写真を
送りあうことができるのですね。
先日、金箔作業で必死になってキリキリしているときに
イタリアの友人から「おーい、何してるの?」と
気軽なメッセージが届きました。
わたしは「今は金箔作業中だよ~」と返したら
「いいね!金箔仕事はリラックスできるよね」
なんていう返信が来たのでした。
なぬ??金箔作業はリラックスできる???
読み間違えたかと思うほど意外な答えだったのですが
その後も作業をしている間、考えていました。
そうか、わたしがキリキリするような作業内容で
リラックスできる人がいるのだ。
それなら、わたしだってリラックスできるんじゃない??
そう思ったら、なんだか気分が楽になりました。
はっと目からうろこが落ちる感じ、そして
肩の力が抜けて血の巡りが良くなるような感じ。
同じことをするなら鼻歌まではいかずとも
気持ちを楽にしたいものです。
結局わたしは金箔作業が好きなのですからね。
額縁の作り方 29 ほこり大敵 7月16日
たいへんに久しぶりの「額縁の作り方」です。
今回はボーロ(箔下とのこ)を塗る前の準備について。
ボーロをつかうには、木地に石膏を塗り磨いてある
必要がありまして、この石膏地がないと
ボーロを塗っても箔が付きませんし、
またメノウ磨きも出来ないのです。
たとえば、ボローニャ石膏ではなくアクリルジェッソで
代用しようと思っても、上手くいかないのが不思議なところ。
石膏の硬度、密度、ニカワの有無など関係あるのでしょう。
それで、ですね。問題は石膏地は紙やすりで
きれいに磨いておく必要があるのですが
ボーロ以降の作業にはホコリや塵が大敵ということです。
磨き上げた石膏地を、さらにさらに掃除して
石膏粉や紙やすりの屑を極力払っておかないと
箔の仕上がり・・・つまり完成度に影響します。
「たかが石膏の粉でしょ?」と侮るなかれ。
磨き終えた石膏地は柔らかい筆で粉を払い、その後は
とにかく乾いたティッシュで拭きまくります。
わたしの経験ですと、ティッシュがいちばん柔らかくて
粉を取り除いてくれるのです。
ウエスやタオルよりきれいになるように思います。
その後、わたしは作業部屋にエアコンプレッサーが
ありますのでさらに風で吹き飛ばすのですが、
お持ちでない場合、カメラなどの精密機器を手入れする
シュコシュコ(名前が分かりません!)で吹き飛ばす!
100円ショップなどでも売っています。
▲これがいわゆるシュコシュコ
ちなみに掃除機で吸い取ることも可能ですがその場合、
掃除機の掃除がとても面倒になりますのでお気を付けください。
ここで肝心なのは石膏地だけではなくて
裏側や内側もきれいにしておくこと!
木目の中はティッシュでは取れませんから、
筆とシュコシュコを駆使してください。
木目にしつこく入り込んだ石膏紛があとからこっそり
落ちてきて邪魔をしますので、侮れません。
▲ボーロの中にホコリやゴミがあると
ボーロが粉っぽくなって箔の付きが悪くなる。
メノウ磨きのときにメノウが引っかかって箔が傷つく。
金箔を磨いた時にホコリがそのまま凹凸になって現れる。
恐ろしい結果が待っておりますぞ。
それからもうひとつ。
ボーロを塗ったら素手では触らないこと。
これはフィレンツェの修復学校で繰り返し言われました。
手の油分がボーロに付くと
箔置きのときの水をはじいてしまいますし
手汗などの水分でホコリが付いてしまうことも。
側面か裏面を持つようにする必要があります。
いちいち面倒だな、こんなのある程度で大丈夫でしょ!
・・・とのお気持ち、とてもよく分かります。
だけどひとつの工程を適当にすると、その後がすべて
「ザ・適当」になるのです。
これはわたし自身の教訓でもあるのでございます!
手を抜くべからず・・・。がんばります。
シルヴァーノのカルトッチョ 8 完成 7月13日
シルヴァーノ・ヴェストゥリ氏のカルトッチョ額縁
箔作業も終わりまして、これにて完成です。
箔をどこまで置く(貼る)か
どこまで磨くか磨かないか・・・悩みましたが
貝殻の内側、C字部分の内側、葉の裏側を
磨かずに艶消しで仕上げました。
派手なデザインですので、艶消しがあると
すこし抜け感ができて落ち着くかと思っています。
裏にあったパオラの書き込みだけは
記念として残しました。
“A SCARTOCCIO VESTRI SILVANO”
古色付けはせず、このままで。
ひらひらと薄くて繊細な
カルトッチョらしい表現ができたのでは、と
眺めております。
シルヴァーノさん、いかがでしょうか。
摸刻の摸刻 7月09日
数年前につくった彫刻額縁 hori-makuha-1
のデザインでデッサン用の額縁を、というご注文を
いただきまして、制作中でございます。
▲以前つくった額縁を参考にしながら作業します。
もともとこの hori-makuha-1 額縁もイタリアの
古い額縁を参考に摸刻した額縁なのですが
今回はその自作の摸刻を参考にするわけでして・・・
摸刻の摸刻といいましょうか。
自分で作ったのに忘れている部分もあったりして
不思議な気分でした。
同じデザインをもっと頻繁に作っていれば
そのデザインのための作業が身に付くのでしょうけれど
そんなに機会があるわけでもない場合は
やっぱり見本や参考はある程度必要になるのでした。
▲彫り終わりましたらさっそく石膏!
この額縁も全面を純金箔で装飾して古色仕上げの予定ですが
以前の hori-makuha-1 より古色は穏やかにしようと思います。
もうすこし繊細な雰囲気の額縁になる予感です。
シルヴァーノのカルトッチョ 7 箔作業 7月06日
黄色ボーロ一色でいこうと決めた
シルヴァーノ・ヴェストゥリ氏のカルトッチョ額縁
ひっぱり続けましたがようやく
いよいよ箔作業の朝です。
わたしの黄色ボーロは赤ボーロに比べて粒子が荒いのか
粘りがないのか、カサカサとして箔が付きにくいのです。
なのでまずは念入りに1層新たにボーロを塗りまして
▲ボーロの質は色によるものなのか分かりません・・・
メーカーやロットによっても違うかもしれません。
内側からはじめます。
問題は外側の立体的な葉の部分です。
なにせ3Dですし奥に深いので、箔の大きさやら
置き始めの場所やら考えてグズグズしておりますと
あっという間にメノウ磨きのタイミングが来てしまって
箔を置きながら磨きながら同時進行です。
▲一日作業してもここまで。
遅い自覚はありますけれども、なんともはや。
でも徐々にコツがわかってきましたよ。
やはり箔は小さめに切った方が小回りが利いて
複雑な凹凸にも置きやすいようです。
翌日には箔置きも終えようと思います。
ふくれた顔で見上げたから 7月02日
昨年2019年の・・・いつだったかに
思いついて作りはじめた小さな額縁は
途中でなんだかやる気がなくなって
箱に入れたまま隅っこに置いていました。
昨日ひさしぶりに箱を見かけて思い出し
ふたを開けてみたら、額縁がむっとした
ふくれっ面でわたしを見上げたのでした。
(そんな気がしたのでした。)
ひさしぶりに見ても、やっぱりあまり
やる気はおきないのだけれど、あまりにも
いじけた風情だったので再開を決めました。
可愛そうなことをしました。
「ごめんね、仕上げますからご機嫌直してね。」
などと話しかけながら(変ですね、自覚しています)
彫り進めました。
▲この「小さな葉と実の集まり」がすこし・・・鳥肌。
いやいや、こういうデザインなのですよ。
デザインの細かさに対して木材が柔らかすぎて
それがやる気の起きない原因だったのです。
まだ仕上がっていませんけれど、なんとか
雰囲気は出てきました。
掃除して整えて、金箔を貼って仕上げるつもりです。