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キャンペーン効果で発掘 10月29日

 

額縁に模様を入れるとき、

まずはトレーシングペーパーで下絵を作り

これを額縁の石膏地に転写します。

 

いままではカーボン紙を使っていましたが

どうも線が濃く残りすぎて、不便なのです。

上に薄い色を塗るときなど、いつまでも

カーボンの黒々とした線が透けてしまう。

トレーシングペーパーの裏に鉛筆を塗りつけて

転写すると、周囲も汚れがち。

どうしたものか。

 

先日、引出しを片づけていたら

(「ものを減らそうキャンペーン」は継続中、

と言いますか、生涯続く予定・・・)

水色のチャコペーパーが出てきました。

そうそう、そういえば買ったっけ。

 

そんな訳で盛り上げ装飾(パスティリア)の

模様転写にチャコペーパーを使ってみました。

これはなかなか良いですよ。


カーボン紙より繊細な線で写せる、

薄い色がある、水で消せる、など

今のところ便利この上なし。


装飾完成後に、要らない下描きは残りません。

 

いままで忘れられて引出しに眠っていた

チャコペーパーちゃん、宝の持ち腐れでした。

「ものを減らそうキャンペーン」で

発掘できて万々歳!なのです。

今後はチャコペーパーとカーボン紙

便利に使い分けをしたいと思います。

 

 

祭壇型額縁を作る1 egg&dart 下描き 10月25日

 

今回の祭壇型額縁は、上部と下部の2か所に

帯状に彫刻装飾が入ります。

まずはこの彫刻から作業開始です。

 

デザインは egg&dart という古典的なもの。

まるい卵と尖った矢が交互に並ぶデザインです。


「CARVING ARCHITECTURAL DETAIL IN WOOD」より

 

いにしえのギリシャ神殿にも使われているような

いわばオーソドックスなデザインですが

それだけにバリエーションも沢山あります。

 

今回の egg&dart は2cm幅の半カマボコ形の竿に

入れますので比較的小さくシンプルです。

竿に下描きをしますが、この方法はそれぞれ。

コンパスで目安を手早く入れるだけの人もいれば、

金属板で型をつくる方法も本に紹介されています。

「CARVING ARCHITECTURAL DETAIL IN WOOD」より

 

わたしはというと、定規で目安を入れたあと

トレーシングペーパーで下描きをつくって

カーボン紙で転写する、という

面倒かつ無駄の多い(と思われる)方法です。

結局のところ、慣れて好きな方法が安心。

・・・というだけのことなのです。

 

なにはともあれ次、彫刻刀で彫ります。

 

 

完成度をあげるために 10月22日

 

先日、とある方に

「金箔がきれいに仕上がらない、

どうしたら上手にできるようになるか

なにかアドバイスをしてほしい」

とのご相談を受けました。

その時はうまく答えられず、

ここ数日考えてみました。

 

効率的な作業のコツなどもあるけれど、

それは些細なこと。

結局のところ、心の持ち方

我慢する

あきらめない

「まぁいいか」の2歩先へ

なのではないかと思います。

自分との闘い、とも言えるでしょうか。

 

古典技法額縁の制作でいえば、当然ながら

木地作りから完成の美しさを左右します。

余計な段差はないか、接着剤は適量か、

隙間は埋めたか、ざらつきは取り除いたか。

ニカワ液は煮詰まっていないか、石膏液は適温か。

石膏を磨くときも磨き残しはないか、

木地が露出していないか、厚さは均一か。

金箔の小さな穴は丁寧に繕ったか。

基本的なことばかりですけれど

ひとつひとつが次の作業に影響し、

金箔の仕上がりを左右します。

 

「箔置きだけ」上手にすれば

美しく仕上がるわけではなく、

すべての作業が繋がっているのです。

 

ちょっとアレだけど、まぁいいか。

疲れちゃったから、もういいや。

と思ったことはわたしもあります。

いや、いまだに思うこと度々ですけれど。

ここを我慢してさらにトライするのです。

 

「まぁいいか」のつぎの1歩は「良く出来た」

そしてあともう1歩「これが今できる最上」まで

あきらめずに作業を積み重ねたとき、

完成した額縁は、きっと今までとは

ちがうものになっているはずです。

そして、それを繰り返して

額縁を作り続けていくことで

向上するのではないでしょうか。

 

と、考えています。

おこがましいですね。

ありきたりの内容になってしまいましたし

「言うは易し」なのも承知です。

わたしももっと上手く作りたいと模索中ですから

上に書いたことを実践する努力をします。

 

どうしたら完成度をあげられるか、というのは

もの作りの永遠のテーマのひとつ。

技術の修練と、心の修練と。

がんばりたい。

がんばります。

 

 

名前をあらためまして月桂冠 10月18日

 

先日から彫っていた花輪の額縁ですが

ニスを吹き付けて完成しました。

以前に作った額縁と同じデザイン制作中は

いつもはブログであまりお話しませんが

この額縁は、なんだか良くできたようなので

嬉しくなってしまいました。


昨年つくった額縁より色つやが良い気がしています。

額装予定の作品と、よりしっくりくるでしょう。

完全に自己満足の世界ですけれども。

 

ところで、この額縁の名前は

corona-di-fiori-1」花輪なのですけれど

改めて見れば花輪ではなくて月桂冠でした。

花はひとつもありませぬ。

というわけで、本日からこちらの額縁、

月桂冠「corona-di alloro-1」にいたします。

よろしくお引き立てくださいませ・・・。

 

 

Atelier LAPIS 展覧会クロージングパーティー 10月15日

 

1年近い準備期間を経て開催された

Atelier LAPIS の展覧会も、

始まってみるとあっという間の1週間でした。

展覧会をご覧くださったみなさまへ、

この場で恐縮ですがお礼申し上げます。

ありがとうございました。

 

ふだんはアトリエで作って完成を一緒に喜び祝い

後はご自宅で楽しむという生徒さんが大半ですが、

展覧会という発表の場に出品するにあたり

制作に対する情熱もいつも以上だった気がします。

 

月曜、火曜と土曜の生徒さん方の作品が

一同に集まっている展示ですので、

皆さんそれぞれに興味が深まり刺激を受けて

とても有意義な展覧会になった様子でした。

 

13日土曜の夕方にクロージングパーティーが

賑やかに催されました。

おいしいお料理、デザートにワインもあって

初対面の生徒さん方も会話がはずみます。


みなさん古典技法に興味のある方ばかりですので

話題は尽きません。

あっという間の2時間半でした。

これで一区切り、そしてまた気持ち新たに

アトリエでみなさんと切磋琢磨する月曜日が

はじまります。

Atelier LAPIS

 

祭壇型額縁を作る プロローグ 10月11日

 

額縁のながい歴史の中で、祭壇型の額縁は

比較的はじめの頃に登場した形ですが、

その特徴的なスタイルと雰囲気から

現在でも欲しいと思われる方がいらっしゃいます。

でも、日本で制作する工房はあまりないようです。

その理由はさまざま推測しますが、ひとつに

木地作りのむずかしさがあるように思っています。

 

そんな祭壇型額縁をKANESEIで制作しています。

電卓片手に四苦八苦、ようやく設計図をおこし、

そして注文して作って頂いた木地がいよいよ届きました。

木地は茨城にある千洲額縁さんにお願いしました。

ミリ単位の調整、細かいお願いを誠実に

聞いて下さるとても頼りになる工房です。


千洲額縁さんのブログに、おととしお願いした祭壇型額縁の

木地製作の様子(今回の木地ではありません)が

すこし紹介されていますので、ぜひご覧ください。

千洲額縁さんブログ2016.10.27

 

お客様からのご注文は、下の写真の額縁を再現すること。

この額縁は、ニューヨークにある有名な工房で

作られたものであろう、とのお話です。

(絵画作品は隠しました。お見苦しくてすみません。)

 

この祭壇型額縁制作は千洲額縁さんの木地が50%

続くKANESEIでの彫刻と装飾が50%という感じで

わたし一人では到底作ることができないもの。

木地完成の時点で半分完成したも同然・・・

の感がありますけれども、

今回のKANESEIでの作業過程をすこしずつ

このdiarioでご紹介しようと思っています。

ご興味を持ってくださる方がいらっしゃると

嬉しいのですが。

 

それでは、始まり始まり。

どうぞ気長におつきあいくださいませ。

 

 

なにかを見た。 10月08日

 

毎度のことですが今回もまた

終わり間近の駆け込みでどうにか

藤田嗣治展を観て参りました。

没後50年とのこと・・・そうなのか。

わたしが生まれた時には亡くなっているけれど

半世紀も昔の人とも思えない。

 

さて、雨の日の夕方にもかかわらず

展覧会は大盛況で、ゆっくり感慨にふける

というような鑑賞はできませんでした。

それでもやはり、あの独特の

白く半艶消しの画面と細く長い墨の線、

そして古色を付けたような繊細な表現を

間近に観ることができて心は燃えました。

額縁も手作りしたことで有名なフジタですが

ポーラ美術館の「姉妹」の8角形額縁は

今はレプリカに換えられていて、

オリジナルを見ることは叶いませんでした。

 

でも今回、風景の小品(フランスの美術館所蔵)に

付けられていた額縁は・・・なにも記載は

ありませんでしたが、あれはきっと

フジタの手になるものだったろうと確信しています。

なんということも無い、白い箱額で

「姉妹」と同じような四角いモチーフの

彫刻が入っているのですが、

その彫刻の「美しい不揃いさ」と言いましょうか、

バランスと佇まいと、オーラと、

大げさですけれど、額縁からぐいと

腕を掴まれたような気持ちになりました。

 

あの額縁と絵のひと組を観て、

今回「フジタを垣間見た」と思います。

彼の本業の絵から感じるものではない、

もっとちがう何かを見ることができた、と思います。

 

 

 

もう思い出せないこと 10月04日

 

花輪模様の額縁を彫っています。

自分で作った額縁をそばに置いて

見本にしながら同じように作ります。

 

 

試行錯誤しながら昨年つくった額縁、

1年前のことを色々思い出しています。

もう思い出せない、ということが

分かったりもします。

1年は短いような長いような時間です。

 

 

これもひとつの嫁入り支度 10月01日

 

以前に作った額縁たちは、普段は我が家で

箱に納められてしずかに暮らしていますが

お客様に見本としてお持ちする時などには

おめかしして(磨かれて)出掛けます。


 

先日、ひとつの額縁がお客様のお目に留まり

お買い上げいただくことになりました。

見本としてお持ちしたのですが、

額装する作品とのサイズと色味がぴったり合い、

手に入り辛くなったオーナメントを使っていることもあり

現品をお納めさせて頂くことになりました。

これから額装をしてお届けする予定です。

 

わたしの心はすっかり母です。

娘(額縁)をお見合いに連れて行き、

ご挨拶をし、嫁入り支度を整えて嫁がせる・・・

うれしくてさびしい。

しみじみとした気分です。

 

 

ところで、このブログ「diario」でお話している内容は

必ずしも現在のことではないのです。

つい昨日のことをお話するときもあれば

数か月前の出来事のときもありますので

「そんなことをしていたのね~」程度に

思って下さればと存じます。