top » diario

diario

古色再考 12月31日

 

フィレンツェ留学時に修業させていただいた

パオラとマッシモのお店が作る額縁の

最大の特徴は古色付け、アンティーク風仕上げです。

フィレンツェには、数は減りましたが

伝統的技法--つまり古典技法――で

額縁を作る工房は今も沢山あります。

そのなかで競争し生き残ってきたパオラとマッシモ。

古色の美しさ、力強さはイタリアのみならず

海外からのお客様からも認められています。

 

わたしが彼等の作る額縁に惹かれたのも

その古色の美しさで、修業中にもさまざまに

技法を教わりました。

そして今もわたしは古色を付けた額縁を

好んで作っているのですが・・・

 

今回のフィレンツェ滞在でパオラから

改めて古色の付け方を教わり、また

彼女の作業を傍らで見つつ過ごしていました。

それで分かったこと。

今までわたしが日本で行ってきた古色付けとは

仕上がりの光と色味が違うのです。

 

汚しに使う材料が思っていたのと違ったこと、

(バリエーションがいろいろあるのです。)

そしてなにより技術の違いが大きいのでした。

今回のフィレンツェ滞在で得た収穫は

たくさんありますが、この「古色について」は

改めて大きな気づきでした。

 

 

擦ってたたいて汚すだけではない。

古色再考のチャンス、活かそうと思います。

 

これにて2018年のKANESEIブログ「diario」を

お終いにいたします。

ブログをご覧くださりありがとうございました。

また額縁や修復の仕事でお世話になりました皆さま

大変ありがとうございました。

来る年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

 

2019年は諸々、心身ともにスピードアップを

めざす所存でございます。

 

 2018年12月31日 KANESEI

 

 

 

祭壇型額縁をつくる5 ボローニャ石膏塗り 12月27日

 

すこし間があきましたが、祭壇型額縁です。

 

下ニカワを塗り麻布を貼り込んだ木地に

今日は石膏を塗ります。

まずは石膏液つくりから開始しましょう。

 

前日の夜にふやかしておいた兎ニカワ

(ニカワ1:水10、いつも通り)を

湯煎で温めたらボローニャ石膏を入れます。

今回は300mLのニカワ液ですので

完成する石膏液は500mLほどでしょうか。


まだもう少し、水面ギリギリまでいれます。

石膏がニカワ液に沈んだら、しずかに漉して

石膏液は完成です。

 

麻布部分の石膏を塗るとき、

布目にしっかり石膏液が入っていないと

気泡の原因になります。

筆で塗るだけでなく、指で塗り込みますと

よりしっかり入っていきます。

石膏液はこまめに温め、蒸発した水分を足しながら

温度と濃度を管理します。

 

薄めに3層~4層塗り、今日はここまで。

渦巻き側面など麻布がまだ見えています。

 

いったん乾かして、麻布や彫刻部分の凹凸を

紙やすりを使って整えてからあと少し

2~3層の石膏を塗る予定です。

 

 

床いっぱいの暖かさで Buon Natale! 12月24日

 

メリークリスマス!

 

フィレンツェの老舗薬局

サンタ・マリア・ノヴェッラ薬局にあった

大きなクリスマスツリーです。

幹が見えないほど床いっぱいまで

こんもり茂らせて作られたモミの木は

やわらかく華やかな雰囲気で

お客様を迎えていたのでした。

 

寒波が来ているそうです。

皆さまもどうぞ暖かくして

穏やかなクリスマスをお過ごしください!

 

Firenze 2018 tempo calma №2 12月20日

 

今回の旅の目的は、額縁制作の修業先だった

工房へ行くことでした。

この工房はマッシモ氏とパオラさんご夫婦

ふたりで運営されていたのですが、

紆余曲折があり、現在はパオラさんひとりで

制作から販売まですべてを行っています。

 

工房を訪ねた日、なにせ7年ぶりですし

イタリア語も久しぶりですので緊張気味でしたが、

ドアを開けたとたんに感じた匂い--ニスや溶剤、

木の匂い、古い建物の匂いが入り混じった--

を嗅いで、パオラの笑顔が向こうに見えたとき

すっかり留学当時の気持ちが戻ったのでした。

▲お店のウィンドー。工房手作りの額縁と古い額縁(販売中)と

入り混じって展示されています。

 

工房はほんの少しの変化(物が増えた)はあったけれど

飾ってある見本の額縁の雰囲気も、カウンターの

雑多な雰囲気も、すっかり昔のまま。

▲右に見える入口の奥には作業部屋が続きます。

 

これからしばらく、パオラを手伝いながら

初心に帰って様々教えを乞います。

 

 

Firenze 2018 tempo calma №1 12月17日

 

2018年11月に、かつての留学先である

フィレンツェに行ってまいりました。

頂戴しているご注文をさらにお待ちいただき

Tokyo Conservation室長はじめ

額縁教室の先生、生徒さん方にもご了承いただき

渡伊を叶えることができました。

ここで改めてお礼申し上げます。

 

2011年以来7年ぶりのフィレンツェでしたが

La nostalgia in Italia 2011

とても変化があったところ

昔と変わらず続いているところ

さまざま感じました。

このブログ「diario」で、旅で見てきた

額縁や美術作品などと一緒にご紹介したいと思います。

どうぞお付き合いくださいませ。

 

 

この冬も会えそう 12月13日

 

10月のおわりに、庭の日蔭にぶら下げていた

ヒヤシンス一家の球根

庭のいつもの場所に植えました。

 

下げていた場所が悪かったのか

土からあげた後の処理が悪かったのか

じつは球根にカビが生えてしまっていて

「これはもうだめかもしれないな」と

思いつつも土に植えたのでした。

 

すっかり忘れていた(我ながらひどい!)

ヒヤシンス一家の場所を見たら、今朝

そうです! 芽がでていたのですよ。

 

可愛いことこのうえなし。

みずみずしいちっちゃな緑がピコン。

とはいえ球根は6つあるはずなのです。

今日のところ芽はまだ3つしかでていません。

これが誰(ヒヤ子群か真珠3姉妹か)の芽か

まだ謎、蕾がでてきて判明します。

毎朝しばらくハラハラが続きそうです。

残る3つも芽をだしてくれたら、と願います。

 

 

ピンク色のひらめき 12月10日

 

先日、強烈なピンクと輝く金で

ぎょっとさせてしまいました額縁

その後、淡い色に調整しまして

完成を迎えました。

 

ピンクの上にオフホワイト色を何層も重ねて

ほのかに湧き上がるようなピンクを目指します。

 

ちなみに淡くする前はこんなピンク。

なんど見てもすさまじい色ですが。

 

どの程度の色味にするか、絵を入れて確認し

うむ、程よい色になりました。

純金箔は艶消しにして仕上がりです。

 

当初は赤味の無いクリーム色にするつもりでしたが、

打ち合わせ時にお客様が

「ピンクが合うと思う」とのお話で。

ひとりになってからじっくりと絵を見返して

淡いピンクにすることに決めました。

 

そのぱっとしたひらめき、「ピンクが合う」

に従ってとても良い結果になったと思っています。

 

 

小さい小さい絵展 2018 12月06日

 

そしてとうとう2018年も師走を迎えました。

先人たちが「人生はあっという間」との

言葉をたくさん残していますけれど

いやまったく、その通りでございますね。

 

今年も「小さい小さい絵」展に出品いたします。

テンペラ画模写を4枚準備いたしました。

 

池袋東武百貨店にて12月20日(木)から

12月26日(水)までの1週間です。

お近くにお越しの際に

お立ち寄り頂けましたら幸いです。

どうぞよろしくお願い申し上げます。

 

池袋東武百貨店催事場カレンダー

 

祭壇型額縁を作る4 麻布貼りと下ニカワ塗り 12月03日

 

彫刻作業を終え、完成した装飾竿の

egg&dart も本体に取り付けました。

今日はボローニャ石膏を塗る

準備をいたします。

木地に「下ニカワ」といって目止めの

兎ニカワを塗りますが

今回は並行して亀裂防止の麻布も貼ります。

 

この祭壇型額縁の木地は、横から見ると

何層も木材を重ねて土台、柱、装飾を作ってあります。


このまま石膏を塗るとおそらく

木材の境目に亀裂が入ることでしょう。

それを少しでも少なくするために

石膏の前に粗い麻布を兎ニカワで貼ります。

木材が湿度で動いても、石膏に出る影響が

最小限になるように。

たった一枚の麻布、でも威力は絶大です。

 

この麻布ですが、織り目に沿って

切ることが大切です。

貼り込むときも、できるだけ目を整えて。

「なんたる面倒!」ではありますが

そうすることによって麻布の力は

最大限に発揮されるのだそうです。

今回のような下地につかう麻布も

絵画修復で補強に足す麻布も

かならず織り目に沿って切る。

先人の教えに忠実に行きます。