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美しい道具を使いたい 6月29日

 

atelier LAPISの生徒さんがお持ちの

素敵なメノウ棒を見せてくださいました。

手作りの一本。

鮮やかなグリーンのメノウ、美しい!

とても繊細な形です。

このメノウ棒は万能形なのだそうです。

平らな面も、細かい溝も、カーブも。

ほぼすべての部分を磨くことができます。

このメノウ棒を作った方ご自身も

古典技法画制作のプロ中のプロですので

必要な機能をよくご存知なのですね。

 

 道具もまた、美しくあるべき。

 

 

糸きりの儀式 6月29日

 

金箔100枚のあたらしい包みを開くと

糸で十字に留めてあります。

この糸を切るのは、いつもながら少しだけ

緊張します。

鋏を持って、横糸を切り、縦糸を切る。

儀式めいた「糸きり」です。

この新しい100枚をつかって、良い物が作れますよう。

 

斜子織額縁 マゼンタカラー 6月26日

 

昨年に作った赤い斜子織模様の額縁

新しくマゼンタカラーでのご注文をいただきました。

赤よりマゼンタのほうがすこしモダンでしょうか。

下の写真はずいぶんと派手な色味に写っていますが

実物はもうすこし穏やかなマゼンタなのですよ・・・。

下書きにマス目を作って3本線を入れる と言う

単純な模様ではあるのですが、ちょっとしたコツがあったり

なにより向きを間違えないように 1マス飛ばしで入れねば。

ぼんやり流れ作業で描いていると ついうっかり失敗しかねません。

くわばらくわばら。

ひとまず斜子織模様が入りました。

これからライナーを付けたり裏処理をします。

 

赤の斜子織額縁とマゼンタの斜子織額縁、

どちらがお好みですか?

 

「works」内「modern」にこちらの額縁をアップいたしました。

どうぞご覧下さい。    

 

 

額縁を熟成させる 6月22日

 

わたしは田町にある絵画修復スタジオTokyo Conservation で

額縁修復と併せて絵画修復の仕事も携わらせて頂いています。

かれこれ10年以上、早いものです。

 

ずいぶん前のことですが、油彩画の補彩をしていた時、

(絵具か欠け落ちてしまった部分を補う作業です。)

ひとまず完成したので上司のYさんに確認をお願いしました。

「うん、良いね。でもまぁちょっと寝かせておきなよ」と。

数日間「寝かせて」おいて、また見直すと

客観的に広い視野で、改めて確認できたのでした。

 

それ以来、額縁も同じようにしています。

「できた、完成」と思っても、半日あるいは丸一日寝かせて

なるべく近寄らず、目に触れないようにします。

それから最終判断をする、という工程を心がけています。

きっと物作りをする方々ならご理解くださるのではないでしょうか。

離れている間に自分の心と頭がリセットされ、そして

なぜだかわかりませんが、そのちょっとした時間で

額縁の箔やら装飾、色が馴染んで落ち着いてきます。

まるでほんのりと熟成されるような感じ。

そうして「熟成額縁」が完成されるのです。

 

 

尾崎雅子さんの作品 麻布十番ギャラリーにて 6月19日

 

2005年に知り合ったステンドグラス作家の尾崎雅子さん

とても久しぶりに再会することができました。

6月14日から開催されている山田浩之さんとのコラボ展覧会の

オープニングパーティーにお邪魔しました。

雅子さんは岡山で活動されていますが、東京でも展覧会や催事等

とてもエネルギッシュに活躍しておられます。

 

下のランプは信楽焼の山田さんのオブジェに

雅子さんが組んだランプが取り付けられています。

ランプの白い部分は新素材でガラスと陶器の間のような材。

ろくろでひねって焼いてあって、とても透光性が高いとか。

白を通した柔らかい光、壁にうつる影の形が印象的でした。

明かりが灯っている時と消されている時

どちらの雰囲気も変化があってすてきです。

明りがあると、白の渦巻き模様(ろくろ跡)が際立ち、

赤絵の足に影が出来て今にも歩き出しそう。

明りを消すと一変して赤絵が鮮やかで楽しい雰囲気です。

白の縁に焼き付けられた金も輝きます。

勝手な印象ですが、上が怒った鬼、下が眠っている鬼

のような気がしました。

 

麻布十番ギャラリーで6月26日まで開催中。

お出かけください。

 

 

19世紀イギリスの雰囲気で その3 完成 6月15日

 

以前にお話ししていました額縁が完成しました。

19世紀イギリスで流行したスタイルです。

*過去の記事

19世紀イギリスの雰囲気で

19世紀イギリスの雰囲気で その2

「花輪」“corona di fiori”という名前にしました。

石膏等を塗らず、木地に直接箔を置く予定でしたが

まずは白木をステインで濃い茶色に染めてから

金箔ではなく金色の塗装に変更しました。

そして金塗装の上にまた茶色をかけています。

茶色+金+茶色仕上げ。

なにせ実物の「このスタイルの額縁」を見ながら

作ったわけでは無くて、本を見ながらの想像です。

でもまぁ・・・なかなか可愛くできたかなと思います。

いかがでしょうか。

 

「works」内「classical」にこちらの額縁をアップいたしました。

どうぞご覧下さい。    

 

 

「リアルのゆくえ」展 古い絵と額縁の関係 6月12日

 

平日の午前中、平塚市美術館で開催された

「リアル(写実)のゆくえ」展に行きました。

いつも会期終了間際に駆け込み鑑賞するわたしです。

最近「写実」と接し考える機会が多かったこと、

そして大好きな岸田劉生、高島野十郎の作品があるので

楽しみに出かけました。

はじめて知った作家、はじめて観る作品も沢山ありましたし、

劉生「壺」、野十郎「早春」、小絲源太郎「けしの花」

椿貞夫「菊子座像」、原田直次郎「神父」をまじまじと観ることができて

とてもとても幸せでした。

写実の絵画は現代も描かれていますが、わたしは明治中期ごろから

戦後あたりまでの作品が好きなのだ、と改めて思いました。

描いた人の目を通して追体験できるような感覚といいましょうか。

描く対象や色使いなどが大きいとは思いますが、現代ではない作品、

特に高島野十郎の「早春」などは、観るたびに

わたしの心象風景にとても近いようにも感じています。

そして明治・大正・昭和のふるい日本製額縁を堪能しました。

一見ヨーロッパ風の額縁も、ちょっとしたデザインの意匠や

箔の色味が、なんとも「和風」なのです。

なかには漆や螺鈿の豪華な純和風額縁もありました。

これら額縁もおおいに楽しめる展覧会です。

 

それにしても。だからこそ。

こうした古い絵に、ごく最近作られたであろう真新しい額縁が

付けられているのを見ると、なんとも言えない気分になります。

おまけにツヤピカ新品額縁なのに変な傷がついて

白い木地が見えていたりすると悲しくなってしまう。

作品に対する印象も大きく左右します。

オリジナルの額縁がすでに失われていたり、所蔵先の意向や予算等、

さまざまな事情を理解しますけれど、いっそ額縁無しで

裸の作品を鑑賞したいと思ってしまうのでした。

 

でも、それもまたわたし個人の感想です。

古い時代遅れの機能とデザインの額縁なんて

額縁の役割を果たしていない、と考える方もいらっしゃるでしょう。

つくづく、作品と額縁の関係、バランスは奥深いと痛感しました。

 

 

道具巻き、ちくちく 6月07日

 

今まで市販の豚革道具巻きに入れていたメノウ棒一式ですが

この道具巻きは彫刻刀用で大きかったことと

本来の目的、彫刻刀を入れる必要ができて

どうしたものかと思っていました。

ネットで検索すると、手作りで大丈夫みたい。

作ってみることにしました。

もとは古いランチョンマットです。

このアイディアもネットから拝借しました。

端の処理をする必要もなく、紐を付けてかがって

ポケットを縫うだけという いたって簡単な作りです。

紺色のニット紐も、着なくなったサマーセーターからなので、

なにからなにまで家にあったものを再利用。

以前入れていた豚革道具巻きは紐をきつめに縛っていても

メノウ棒が抜け落ちてしまうことがありましたが

今回はフタ(と言いますか、袋状の)のカブセをつけました。

これで移動の時も安心なのです。

洗いざらしの綿厚布ですから、適度にやわらかくてすべらず。

メノウ棒一家の安住の場所、完成です。

夜な夜なちくちくと「かーさんはーよなべーをしてー」と

心で歌いつつ、たのしい制作でした。

 

 

 

祭壇型額縁 6月05日

 

ここのところしばらく取り掛かっていた

祭壇型の額縁が完成し、先月お客様にお届けしました。

高さ1メートルちょっとあるもので

エッグアンドダーツなどの彫刻を施し

全面を純金箔の水押しで仕上げました。

日本ではなかなか制作する機会も少ないような

大きな祭壇型額縁を作らせていただき

額縁制作者として大変に幸せな仕事でした。

今年のお正月のブログでお話しました挑戦のひとつが、

まずは成功したようです。

 

さ、次に向けて気持ちを切り替えなければ。

 

 

「誰かの昨日の部屋」 増田健二写真展 6月01日

 

昔のブログ記事をさがしたら、もう8年前の10月

花水木」というタイトルでした。

 

先日、ポストに「花水木」の写真作家である

増田健二さんからのお手紙が届いていました。

「いろいろあって過去にしたかったけれど結局できなかった個展を

ようやく開催することになったので知らせる」という

内容と展覧会のDMでした。

 

今日、増田さんにいただいた「花水木」を

近くであらためて眺めています。

過去に1度だけ額縁のご注文を頂いて制作し、

それから何年か後にその額縁に納めた写真作品を頂戴して、

その写真のためにもう一度額縁を作って、作品を毎日見ている。

そして、とうとう個展を開くというお知らせが届いた。

作品が手元にあるのでとても身近だけれど、遠い人。

道ですれ違ってもお互い気づかないと思うけれど、

なにか細くて切れないご縁が繋がっているような気がします。

大阪での展覧会、こちらでもご案内を載せます。

関西にご在住の方、また機会のある方に

増田さんの作品をぜひご覧頂きたいと思います。

 

増田健二展「誰かの昨日の部屋」

2017年6月7日(水)~18日(日)

11:00~18:00(12日13日休廊)

Books Gallery Coffee iTohen

大阪市北区本庄西2-14-18