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Firenze 2018 tempo calma №5 2月20日

 

額縁工房に通いつつも、やはり

美術館に行かずにはおられませぬ。

額縁工房からもほど近いホーン美術館へ。

 

イギリス人美術評論家であり美術商だった

ホーンさんのコレクションを基に作られた

こぢんまりとした美術館ですが、

聞きしに勝る充実でしたよ。

▲静謐なエントランス。期待が膨らみます。

 

まずはやはりこの美術館の宝物である

ジョットの「聖ステパノ」から。

発色、聖ステパノの表情にも惹きつけられますが

背景の金、そして石膏盛上げ(パスティリア)や

刻印による繊細な装飾に目は釘づけでした。

▲「聖ステパノ」1330年~1335年頃の制作。843×540mm

頭部の白いふたつは石です。石打の刑での殉教を表現しています。

 

照明の角度で亀裂や古びた擦れ、箔や画面の

経年変化が良く見えます。

左側、髪の描写の下に金箔があることが分かります。

こめかみには光輪を描いたコンパスの穴も。

▲亀裂はほぼ横向き。支持体の木目に関係するのでしょうか。

それとも石膏を塗ったときの刷毛の方向か?気になります。

 

▲若々しく赤味の指す肌、そして様々な装飾模様

どこをとっても「かわいい」と思ってしまいます。

 

もちろんジョットが描き終えた時には

この亀裂は皆無で表面はもっと滑らかで

金の輝きも強く彩色も鮮やかで

「この世のものならぬ」ように光り輝いて

いたことでしょう。

 

でも今の、まさに今のこの美しさは

ジョットの手になるものに経年による

変化が加わり、それがこれまで保存修復に

携わった方々によって保たれて、

すばらしい奥行きが増しています。

きっとジョットも「これも悪くないねぇ」

なんて思っていると想像します。

 

Il Museo Horne