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ヴェネト額縁に古色加工と「なぜ好き?」問題 6月30日

 

2020年2月フィレンツェ滞在時に

木彫師グスターヴォさんの工房に通い

汗と涙に濡れながら(半分嘘半分本当)

制作しましたヴェネト額縁に

2021年6月になって箔貼りをしました。

ピッカピカにして、ひとまず完成・・・

 

 

それから1年、寝室で毎日眺めて過ごし

ようやく諦めがついたと言いますか

向き合う気力が沸いたと言いますか

「ピカはおしまい、古色仕上げしよう」

と思い立ちました。

 

まずは裏から作業開始です。

裏面は白木のままでしたので

アクリルグアッシュの「生壁色」を塗ります。

 

 

この色は被覆力も高く落ち着いた色味で

金箔との相性も良いようで愛用しております。

 

さて表面です。

まずはスチールウールで磨り出し。

 

▲磨り出し前。ピカピカ見納め

 

▲磨り出し後。分りづらいですが

下地に塗った赤褐色のボーロが見えています。

 

そして褐色のワックスを塗りました。

左~下部はワックス後、上~右はワックス前。

 

 

ワックスの効果で凹凸もくっきりしました。

まだちょっと生々しいので

この上にさらに灰色の粉「偽物埃」を

はたき込み磨き上げ、完成です。

やれやれ。

ほんの少し、肩の荷が下りたような気がします。

 

この額縁を作るにあたって参考にした

オリジナルの額縁が作られた18世紀当時、

額縁職人の方々は金箔をいかに

美しく輝く状態に仕上げるか

(恐らく金箔作業専門職人の仕事)が

重要だったはずです。

薄暗い邸宅や教会の小さな灯りを反射して

揺らめき輝く金が求められたはず。

 

全世界のいにしえの時代から

エジプトも南米も、中東もインドも中国も、

「金は変色(酸化)せず永遠の輝きを保つ」から

黄金が珍重され、通貨にも発展したのに。

時代は変わって価値観も変わって

「磨り出し汚した金の古色の美しさ」

「あえて輝かない金を好む」

というような感覚も生まれたわけですよね。

考えてみれば、これは贅沢なことです。

「金そのものの純粋な美しさ」が既にあるのにね・・・。

 

それでもやっぱりわたしは擦り切れた金が好き。

なぜ古色を付けた金が美しいと思うの?

金の一体何が好きなの?

金そのもの?それとも取り巻く文化?

背景や歴史?イメージ?箔作業??

なんだろなー・・・全部、だけども。

 

恋人に「わたしのどこが好き?」と訊ねられて

結局「全部だよ」などと答えてしまうのって

こんな感じかしら、と思っています。

・・・いや、ちょっと違いますかな。

やれやれ。いやはや。