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わたしの額縁の原点 9月11日

 

今日ご覧いただく額縁はフィレンツェで3年間通った修復専門学校

木工修復科の修了制作として作ったものです。

以前ご紹介したスペインの本「Coleccion CANO DE P.E.A」に

掲載されているゴシックスタイルの額縁を模刻しました。

角材の状態から木枠を組み 彫刻し 石膏を塗り金箔を施し

グラッフィートと呼ばれる技法で模様を入れています。

金箔の上にカゼインテンペラを塗り この絵の具層を

細く引っかくことで下の金箔を出しています。

cornice-spagnola2

私がイタリア フィレンツェの修復専門学校「Palazzo Spinelli」へ留学したのは

当初は絵画修復を勉強するためでした。

大学時代から色々な先生にお世話になっては

油絵修復の手伝いをさせて頂いたり 模写をしたりと準備し

大学卒業と同時にフィレンツェへ行きました。

修復学校が始まる秋までの4ヶ月間 語学学校へ通いましたが

その頃にパリに留学中の友人を訪ねたことがあります。

パリ16区にあるマルモッタン美術館へモネの大作を観に訪れた時

思いがけずゴシックスタイルの額縁達に出会いました。

美術館入口からすぐにミニアチュールの作品を集めた部屋がありました。

赤い壁に暗い照明の中で小さな額縁がギッシリ展示されており

その部屋に足を踏み入れた瞬間の感動と言いましょうか

衝撃のようなものは今も良く覚えています。

それまでも沢山の額縁を見ていたはずですが

この時ほど「額縁」に打ちのめされた(としか言いようがありません)

ことはありませんでした。

パリからフィレンツェへ戻ったのは修復学校が始まる1週間前でした。

赤い小部屋で見た額縁の感動と衝撃が尾を引いたまま

そして漠然とどこか心の底でうごめいていた疑問が重なって

翌日の夕方には修復学校へ転科願いを出しました。

こうして木工修復科へ通うことに決め

同級生が家具修復工房で修行する中 私は額縁制作工房へ行き

3年後の修了制作で パリで見たゴシックスタイルの額縁を

イメージしてこの額縁を作りました。

cornice-spagnola

こうして文章にしてみると我ながらなんと衝動的なのだろうかと思いますが

私にとっての人生の転機 重要な瞬間というのは本人の好む好まざるに関らず

本能的に(?)決断が下される・・・と言う風に感じています。

どんなに迷っても理由付けを考えても 既にもう決まっていることのような・・・?

 

この額縁は私的記念碑になっています。