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さよなら東宝日曜大工センターパパ 7月13日

 

東宝日曜大工センター ご存知ですか。

幼い頃には父に連れられて行き

額縁の仕事を始めてからは自ら行き

散々お世話になったホームセンターは

2010年に閉店、今はもうありませんが、

 いまだにどのホームセンターも

つい大工センターと呼んでしまう。

隣には東宝映画撮影所があって

大工センターで庭の掃除用具を買う

芸能人などよく見かけたり

ちいさな売店でソフトクリームを食べたのも

良い思い出です。

カナヅチ振り上げるお父さんの

イラストバッグには 紙テープを入れていて

使うたびに思い出す大工センター。

そろそろこのバッグもお払い箱、

懐かしの大工センターの記憶も

バッグと共に擦り切れて 消えてゆく。

 

 

ちゅーちゅーたこかいな 7月09日

 

「ちゅーちゅーたこかいな」

 

二の四の六の八の十

「にのしのろのやのとう」

と同じように、二つずつ数えるときの

数え歌のようなもの。

6月の大歌舞伎劇中で中村芝翫さんが

小判を数えるときのセリフにあって

とてもとても久しぶりに聞きました。

 

幼い頃に祖母とおはじきを数えた時のことが

突然に鮮明に思い出されて、なんだか

ホンワカと涙が出そうになりました。

しわしわで骨ばって、かさかさに乾いていて

いつも暖かかったおばあちゃんの手の

(なにせ冬でも半袖で過ごすような人でした。)

感触や声が蘇って来ました。

わたしのおばあちゃん。

 

 

サンソヴィーノチャレンジ つづき① 7月06日

 

作っていますサンソヴィーノ

なにせ彫りが深いので

木づちをふりまわして

右腕が鍛えられた気がします。


いつものことですが、木地の形が

(自分で設計したのに)そもそも違うので

オリジナルよりロールの高さが足りませんが

そこはまぁ、可能な範囲で善処ということで。

 

いや、それにしても難しい・・・

 

 

夜の深みにはまらないように 7月04日

 

「物を減らそうキャンペーン」は

地道にゴソゴソと続けています。

すこしずつ、でも確実に減っています。

 

先日はFD(フロッピーディスク)を処分しました。

KANESEI初期の額縁写真が主ですが

プライベートの写真記録もいくつかあり、

捨てるに捨てられずにいました。

この度ようやくFDドライブを買って整理。

ディスクその数71枚・・・。

読み取りに時間がかかるし

4分の1の写真データはすでに劣化して

読み取り不能になっていました。

でもとにかく、これでひとつ区切りを

付けることができた気分です。

71枚のFDよ、ありがとう。

 

助け出せた写真や記録はまだ

きちんと見ることができていません。

なんだか怖くて。

写真って心に深く響くものですね。

夜に見ると深みにはまりそうなので

天気の良い午後にでも見ることにします。

 

 

ダダーンと。 6月29日

 

大きな肉塊を焼くとか

大量の野菜を刻むとか

ダダーン!と料理をしたくなるときがあります。

血が騒ぐというか、暴れたくなるというか。

そんな時は心の中ではロッキーのテーマが

流れているものです。

 

これも発散のひとつですね。

そうしてスッキリしたらご飯が出来ている。

こんな方法で発散できるのですから、

なかなか良いと思います。

冷えたビールがあればなおのこと良し。

 

 

サンソヴィーノチャレンジ 6月25日

 

16世紀後半にイタリア・ヴェネト州で

「サンソヴィーノ」スタイルという

額縁が流行しました。

ヤコポ・サンソヴィーノという

建築家・彫刻家から採った名前だとか。

ほどけたロールケーキのような渦巻きや

うろこの模様などが特徴的なデザインです。


そのサンソヴィーノ額縁を

作ってみようと思っています。

鼻息荒く準備を始めましたが、

簡略化したとはいえ

下描きを進めれば進めるほど

写真を見れば見るほど

重なりが複雑で渦巻きがぐるぐるで

不安も渦巻いてまいりました。


KANESEI風味のサンソヴィーノになっても

とにかく途中で投げ出さずに

完成させたいと思います。

むむむ・・・挑戦です。

 

 

天使の誘惑に負けて夢を見る 6月18日

 

久しぶりに銀座の山野楽器2階にいったら

ついうっかりワゴンセールを覗き込んでしまう。

先日、必死になってCDを売りとばしたのに

また増やすのかい?!と思いつつも

結局レジに向かってしまうのでした。

だってジャケットがゴッツォリの天使なのですもの。


ここのところようやく雑貨と服の誘惑は

ぐぬぬ・・・とかわせるようになったけれど

CDショップと書店は克服ならず、わたしの鬼門です。

立ち入らないようにしていたのに

まんまと自分に負けてしまいました。

 

音楽も文章もデータが主流の昨今ですが

「手に持つ実感」「貸し借りできる」ということは

やはり抗いがたい魅力だと思うのですよね。

そんなわたしは古いのでしょう。

お婆さんになったら益々時代に取り残されていそう。

変な詐欺に引っかかったりしないようにせねば!

と今から自戒を込めて考えている次第です。

 

一方で、優秀で親切なロボットアシスタントが

ひとりに1台付いていてくれるから大丈夫、

というくらいずっと進んでいると良いなぁ

なんて夢も見ていたりします。

いまのところはAIBOが欲しいのですが、

これもまた夢のひとつ。

 

 

根暗な乙女風 6月11日

 

先日ご覧いただいたリメイクフレーム

あざみの花の模写をいれました。

ルドゥーテのあざみを 卵黄テンペラで。

最初から黒い額縁に入れるつもりで

背景や花の色もアレンジしたので

並べてみるとだいぶ違うのです。

グレーと黒と濃いピンクの組み合わせは

気が強いけれど根暗な乙女、の雰囲気。

なかなか好きな仕上がりになりましたよ。

12月の「小さい小さい絵」展に出品予定です。

 

 

なぜそこに、あゝなぜあなたは書いたのですか 6月04日

 

色々な本を開いて資料を探していたのですが

久しぶりに見たこの額縁、やはりなんど見ても

一瞬驚いてしまいます。


というのも、これです。

表面の金箔の上に直接、整理番号が記入されています。

こちらも。

なぜ。

なにゆえここに書き込むのでしょうか。

まさか油性ペンではないとは思いますけれど。

この額縁、展示するという本来の用途の予定は無く

もはや資料としてだけの額縁なのでしょうか。

 

整理番号、必要ですからね。

額縁の裏側に、紙のラベルを水性の糊で

貼りつけてくれたらどんなに良かっただろう。

 

だれが、いつ、なぜここに書いたかは

知る由もありません。

現在もそのままにされて本にも載せるということは

おそらく理由もあるのでしょう。

でも、額縁を制作、そして修復する立場としては

なんだか複雑な気持ち。

せっかく素敵な額縁作ったのになぁ、・・・とか。

何百年も大切にされてきたのになぁ、・・・とか。

 

ううむ、わたしが気にし過ぎなのだろうか?

せめて可逆性のあるもので記入されていることを

願うばかりです。

 

 

フレームリメイク お色直し 6月01日

 

小さな黒額縁に古色付け。

ワックスを塗った上に「偽ホコリ」の

パウダーをはたきました。

しばらく待ってから布で磨きます。

この額縁、ずいぶん前に画材店のセールで

ふたつ買って忘れていたのですが、

ひょっこり出て来たので

黒に塗って雰囲気を変えました。

下の写真の奥がリメイクしていないものです。

元は明るいクリーム色の大理石風。

クリーム色もかわいいけれど

黒のアンティーク風も

なかなか良い感じに出来たと思います。

どちらがお好みですか?

 

 

翼に乗る怪物 5月28日

 

ボーイング737に乗りました。

席はちょうど翼の上。

おおきな翼は地上では垂れ気味だけど

空の上では美しい反りがあります。

この辺りに座るといつも思い出す

「風の谷のナウシカ」コミックのワンシーン。

骸骨姿の「虚無」がもっともそうなことを言って

ナウシカを丸めこもうとしています。

ドキドキします。

 

飛行機の翼に怪物が乗っているシーンは

昔に観たホラー映画にもあったような記憶です。

「翼に怪物が乗っていたら」は

皆が考える恐怖のひとつ、なのでしょうか。

くわばらくわばら・・・

 

 

楽しい仕事 5月18日

 

額縁修復の仕事

失われた装飾を復元して

正面から斜めからさまざま見て

あるいは自然光や蛍光灯、薄暗い光で見て

オリジナル部分と見分けが難しくなった時

ニヤッとしてひとり悦に入り

この仕事が好きだなぁとしみじみ思うのです。

しあわせなわたし。

 

 

頼むことが出来るようになったら 5月16日

 

わたしは幼い頃からひとりで催し物に参加したり、

友達と遊ぶけれど、ひとり遊びも好きで飽きないという

「ひとりが基本」の性格で、今もあまり変わりません。

ですのでKANESEIも基本的に、お客様との打合せ、

デザイン、木地作りから完成、納品まで

ほぼひとりで行っています。

もちろん材料や既成の竿を購入はしますけれども。

 

ですがここ数年で、他の方の技術をお借りして

わたしのデザインした木地を作って頂く

「発注」という機会が増えてきました。

KANESEIが受注する額縁の内容や

数が向上してきた、とも言えるでしょうか。

 

なぜかずっと思い込んでいた

「自分の持つ技術と既存の材料で完成させられるだけの

仕事しかできないんだ、自分でやらないと

いけない義務と不安」という考えから解放されて、

「この額縁を完成させるのに必要な技術と材料が

わたしに無いなら、できる人に仕事としてお願いすればいい。

そうすれば作ることができる」を受け入れました。

我ながら遅すぎる気づきでしたが。

 

受け入れることで身心がとても楽になりました。

 

 

わたしの仕事、オーダーメイド額縁のご注文を頂いて作る、

という仕事も、お客様からみてみれば

「自分の思ったような額縁が欲しいから、

作る人に注文して(頼んで)手に入れる」のですから、

頼む、頼まれる関係がずっと前から身近にあったのでした。

互助、ギブ&テイク。

人間が生きる上の基本なのでした。

 

 

新聞紙を使いますか 5月11日

 

昨年12月に、思うことを思うままに

ブログに書いていこうと決めましたので

以前なら「こんなことをお話しても

仕方があるまい」と思っていたような

ちょっとしたことも書くようにしています。

このブログのタイトル diario ディアリオは

イタリア語で「日記」です。

わたしのつぶやきにどうぞお付き合いください。

 

前置きが長くなりましたが

先日ふと思いました。

新聞紙を活用するのは日本独特のことなのか?

それも日本の古い人間だけなのか?

 

わたしは額縁制作の作業中もLAPISでも

作業台の汚れ防止にしょっちゅう新聞紙をしきます。

粉も絵具も油も糊も、すべて受け止めてくれて

作業後には惜しげなく丸めて捨てられる。

なんて便利な紙なのでしょう。

 

でも、SNSで海外の作家や工房の様子を見ても

壁のマスキングに貼っているのを1度だけ、

新聞紙をしいて作業しているのを見たことは・・・

思い出せる限りありません。

わたしの作業風景(新聞紙をしいた作業台で

嬉々としている)の写真をSNSで見て下さった

海外の方々、一体どう思っているかと考えたら

なんとも言えない気分です。

でもやっぱり、新聞紙は便利ですからね、

これからも使い続けると思います。

 

なんでもかんでも新聞紙で包んで

きっちりと仕舞い込んでしまって

結局どこに何があるのかわからない

祖母の納戸を思い出しました。

新聞紙って昭和なイメージ。

 

 

たけのこときのこの問題。 5月09日

 

もの心ついた時からずっと

「たけのこの里」が好きでした。

いいえ、いまも好きです。

 

先日「きのこの山」をひと箱いただいて

しばらく手を付けずに眺めていたのですが

おおげさに意を決して食べてみたところ

なんと。

「たけのこの里」より軽くておいしいのでは?

あれ、おかしいな、こんなはずじゃなかったのに。

食の好みは体調や状況によって変わりますけれど

この「たけのこの里」から「きのこの山」への

自分の変わり様は内心小さくない驚きでした。

これはもしや・・・年齢によるものなのでは・・・。

 

大なり小なりこうした変化は

日々起きているのでしょう。

気づくきっかけがお菓子だっただけで。

 

つぎに買い物に行ったとき、どちらを買うか。

たのしい迷いが増えました。

 

 

10年ずっと守られて 5月04日

 

KANESEIの福の神様であるモッコウバラ、

今年は元気に沢山の花を付けてくれました。

いつも見ごろを迎える連休ですが、

桜同様にモッコウバラも今年は開花が早くて

そろそろ花の終わりを迎えています。

写真は今年4月の19日に撮ったものです。


わたしが「モッコウバラは福の神様」と

お話しているのは、毎年この時期は

ありがたいことに作業部屋にこもって

制作に励んでいることが多いから。

不思議な、としか言いようのないタイミングで

額縁人生をステップアップするような

プロジェクトを頂戴しています。

 

ずっと休み続けているインターネットからの

ご注文受付も、はやく再開したいと思いつつ

今年もドタバタと花の時期が過ぎていきます。

お待ちくださっている方に申し訳なく思っております。


わたしの作業部屋の窓辺に、日除けになるよう

母が黄色い八重咲のモッコウバラを植えてくれて、

花が美しく咲くようになってから10年。

モッコウバラの神様に守られ導かれた

10年を思い返しています。

 

 

国立歴史民俗博物館 4月25日

 

良く晴れた爽やかな日に、千葉県佐倉市の

国立歴史民俗博物館へいきました。

 

「世界の眼でみる古墳文化」という

企画展が目的です。

古墳からの出土品の展示はもちろんなのですが

古墳内部を実物大に再現したものを覗き込んだり

壁画の詳細な模写(日本画による)を間近で観たり

アメリカ大陸やヨーロッパの「古墳的なもの」

の解説がとても興味深かったですよ。

王様のお墓の上に次の王様のお墓を作って、

そうしてどんどん積み重ねて巨大化するなんて。

なぜ重ねるんだろう??不思議です。

 

この博物館は国立だけあって、常設展が

かなり充実しています。

先史・古代(改装中)、中世、近世、

近代、現代と日本の歴史文化を追って

映画のセットのような街が作ってあったり

ジオラマやビデオ上映があったりと

体験型の展示が多くてとても楽しいのです。

きっと子供も喜ぶだろうなぁ、という感じ。

 

なにせ広くて、すべて見るには1日がかり。

当初は博物館の後に川村記念美術館や

ホキ美術館に行こうと目論んでいましたが

博物館で力尽きてしまいました。

それくらい楽しめる博物館です。

 

東京からすこし遠いけれど、

公園や植物園も充実していて気持ちの良い場所、

連休に遠足としてお出かけください。

レストランの古代ハヤシライスも

おいしかったですよ。

 

国立歴史民俗博物館

「世界の眼でみる古墳文化」

2018年3月6日~5月6日まで

 

 

 

MAさんの筆収納アイディア 4月23日

 

先日、atelier LAPIS でMAさんの

作業台をふと見たら

カンペン(死語ですか?)に筆が浮いているよう。

よく見てみたら、筆がジェルパッドに

貼りつけて収納されていたのです。


これはとても良いアイディアですね。

ジェルパッドは100円ショップで売られている

耐震ジェルだそうです。

これならカバンの中でペンケースが揺れても

筆は軽いので動かず、穂先も痛みません。

ジェルパッドは水洗いできるので

ホコリがついても大丈夫。

 

なるほどなるほど!

筆巻きよりずっとコンパクト。

巻いたりほどいたりの手間もかかりません。

そして見た目も美しい。

わたしも真似しようと思います。

 

 

ちいさいもの好き 2 4月20日

 

マカロンを食べ終わった

ラデュレの小箱。


中にはオーナメントを入れています。

小さい箱に小さいものがガサゴソと。


骨董市で買い集めたふるいもの、そして

フィレンツェのマッシモ氏に頂いたものも。

石膏で型取りして、額縁や小箱装飾に使います。

 

花型もありますよ。


ぜんぶ同じじゃないか、ですって?

いやいや、細部も厚さも違うのですよ。

 

使う目的で買いはじめましたが

眺めるだけで楽しい気分。

いつのまにかコレクションになっていました。

ニヤニヤが止まりません。

笑ってないで作りなさい、ですって?

はい、そうします。

 

 

太古の思い出との別れ方 4月18日

 

1月末にお話しした「物を減らしたい欲求」

低音でドヨドヨと、わたしの中で続いています。

服や本といった比較的整理しやすいものは済み

(第一回整理。本当はまだあるのです、きっと。)

「開かずの引出し」に着手しようと思いました。

 

この引出し、とても便利な場所にあるけれど

いままで全く活用していませんでした。

そっと開けて、唸って、そっと閉じる。

何故かと言えば、それは「思い出だけ」しか

詰まっていないと分かっているから。

 

連絡先も分からなくなった

学生時代の友人と撮った写真、

ものすごく古い手帳、

頂いたまま箱に入ったお土産品、

従兄と一緒につくった夏休み実験の結晶、

そうです、要らない物だけです。

 

もう何年も開けずに済んだ引出しの中身、

えいやとひっくり返して

中身を見ないで捨ててしまえば

楽なのは分かっていますけれど。

必死で整理して、結局どうにもならない

いくつかの物がまた引出しの奥に戻されました。

 

いったい皆さん、こういった物は

どう扱っていらっしゃるのでしょうか。

「捨てる」に気持ちを持っていくには

わたしはどうしたら良いのでしょう。

「だんしゃり」の本でも読めばいいのでしょうか。

それとも開き直ってあきらめる?

なぜ捨てられないのか理解に苦しむと

思われる方が沢山いらっしゃるのも

わかっているのですけれど。

 

わたしの「太古の品々」を目の前に

ぼんやりしゃがみこんでしまうのでした。

 

 

フラ・アンジェリコの後ろ姿を追って 4月16日

 

4月11日の夕方、九段にある

イタリア文化会館での講演「アートと科学:

広帯域の電磁波で観たフラアンジェリコの壁画

を聴講しました。


講師の福永先生は、電磁波についても

分かりやすく解説してくださいましたが、

この電磁波調査がいかに修復に役立つか、

なによりワクワクするような、ジオットや

フラ・アンジェリコがどのような手順と材料で

テンペラ画やフレスコ画を制作したのか?

というお話を聞けました。

 

サン・マルコ修道院の至宝「受胎告知」の

フレスコ画について、

・マリア様のクリーム色の衣は、当初は

 コチニールの赤い顔料で塗られていた。

・1960年代の修復時にはすでに赤が失われていた。

・天使の翼の顔料はすべて土系の顔料である。

・漆喰の最後の層(ジョルナータ)は0.5mm程

 の厚さで作られている。

・湿式法の上に乾式法で草花や赤褐色の

 アウトラインが描き加えられている。

・建物奥の天井付近に当初は鳩が描かれていた。

などなど、他にもジオットのテンペラ画についても

気づけば体を乗り出して聞いていました。

やー。

とても面白かったです!

 

サン・マルコ修道院の狭い廊下に足場を組んで、

黒い僧服の腕をまくったフラ・アンジェリコと弟子、

そして左官職人がせっせと作業している後姿、

並んでいる道具や筆、匂いや音まで

想像できたような気がします。

 

画像はwikipedia からお借りしました

 

こうして今まで大切に大切に

調査し、修復し、保存されてきました。

あらためて保存修復の大切さと面白さを

思い返す、興奮冷めやらぬ夜でした。

Aちゃん、知らせてくださってありがとう!

 

 

余白の美、その対極 4月06日

 

最近、合間にすこしずつガサゴソと

彫り進めていたアユース材の小さな額縁、

そろそろ木地作業終了です。

 

今回のデザインはイタリアの額縁本

“REPERTORIO DELLA CORNICE EUROPEA”

に載っている15世紀末ボローニャの額縁を

参考に作りはじめました。

まずは簡単なところから着手。

隙間時間に作りましたので

ここまで2カ月弱かかってしまいました。

木地の形が違うので、彫り進めながら

すこしずつデザイン変更をしていきました。

仕上げに部分的にペーパーをかけます。

 

調え終わり、本と並べてみたらずいぶん違う。

オリジナルも全面細かく彫ってありますが

自分の額縁を改めてみてみると

ちょっとやり過ぎちゃった?

詰め込み過ぎた・・・ような気がしています。

見本にした額縁は平たい箱額、

わたしの木地は高さのある外流れ型ですから

オリジナルより主張が出たのかもしれません。

 

「小さくぎっしり」が好きなので

まぁ、これはこれで。

石膏をかければもう少し落ち着くだろう

と思っています。

 

 

ちいさいもの好き 4月04日

 

先日ご覧いただいた和柄の引出しツマミは

ほかのツマミ一族とともに小箱に納まりました。

 

わたしの宝物、タンブリッジウェアの小箱

 

こっそり開けると

 

ツマミのサンプルが12個。

数年前にもご紹介したのですけれど

また見て頂きたくて登場させました。

和柄ツマミで箱も満席です。

小さい箱に小さいものがぎっしり。

ニヤニヤしながら眺めています。

 

 

知って驚くたのしみ 3月30日

 

宮本輝著「田園発港行き自転車」を読みました。

宮本輝氏の作品は、高校の国語の教科書で

出会って以来、すべてではありませんが

読み続けています。

 

その「田園発・・・」の中で

『おっしゃった』という言葉が

「仰った」ではなく「仰有った」と書かれていました。

この文章を見たとき、我ながら目が見開きました。

 

「おっしゃった」と言う言葉は日常で使います。

文字として書くとき、またwebで変換する時も

「仰った」となるのが当然と思っていました。

でも今回の「仰有った」で、「おっしゃった」の

本当の、と言いましょうか

本来の言葉の意味がようやく理解できたようです。

目上の人からの「仰せ」が「有った」。

おおせあった。おっしゃった。

そうか・・・!

 

ううむ、なるほど。

すでにご存じの方にとっては「何を今さら」なこと、

「仰せ」の意味を考えれば分かりそうなこと、

そして些細なことかもしれませんけれど

わたしにとっては新知識。

頭の片隅にさっと日が差したような気がしました。

 

新たな疑問も湧きます。

なぜ送り仮名が「仰・った」になったんだろう?

そもそも送り仮名はどうやって作られるのだろう?

 

こうした発見と疑問が自分の日々に

もっと起れば良いのに。

そのためにも、そして楽しみのためにも

読書は生涯続けようと思います。

 

 

類人猿の歩み 3月26日

 

朝起きて、ぼんやりと立ちあがったら

腰にぴきっとした小さな衝撃があって

それから30分後にはもうイダダダダ・・・

これはいわゆるぎっくり腰。

背筋を伸ばすと痛い。

腰を丸めるのも痛い。

一番楽な姿勢は、膝を曲げて前傾姿勢

両手は横に垂らして足は肩幅に開いて。

スクワットの途中のような体勢でした。

自分の歩く姿を鏡で見たら、

あら、これって図鑑で見たんじゃない?

猿から人間になる途中、類人猿の姿でした。

 

このまましばらく「常にスクワット状態」の

体勢で過ごしたら、脚と腹筋が鍛えられるかも?

ぎっくり腰が治ったらお腹周りが引き締まって

階段昇りが楽になっていたりして??

なんて呑気なことを考えています・・・。

日頃の運動不足を痛感。

 

ある日突然やってくるぎっくり腰

皆さまもどうぞお気を付けください。

 

 

 

丸と四角 金箔きらきら 3月02日

 

丸いものと四角いものを同時進行で

作っています。

小箱と引出しのツマミです。

 

木地はどちらも市販のもの。

今回はKANESEIにはめずらしく

和風の模様を入れることにしました。

デザインは「日本の模様 第一集」青幻社より。

石膏を塗り磨いた小箱とツマミに模様を転写したら

ニードルで線刻します。

 

赤色ボーロを塗って純金箔を水押ししたら

メノウ棒で磨きつつ、線刻のラインも

細いメノウでなぞり磨きます。

 

磨き終わりました。

金箔がきらきら。

和柄初挑戦でしたが、新鮮な気分です。

完成後、またご覧頂きたいと思います。

 

 

逃げる月と去る月 2月28日

 

2018年が始まったのはいつでしたっけ?

クリスマスとお正月が終わったのは

つい先日だったでしょう?

それがもう2月は終わりですって!

 

亡くなってしまった明治生まれの祖父が

「昔から2月は逃げる、3月は去るというのだ。

お正月から2月、そして3月は

それくらい早く過ぎ去ってしまう。」

と言っていたそうです。

 

2月はもう逃げてしまったので

3月が去ってしまわないうちに

心の準備をしなくては。

いや、心の準備をする準備、だったりして。

何の心の準備か、ですって?

それはまぁ・・・ほら、色々です。

皆さまもどうぞ有意義な3月を!

 

 

古典技法額縁の未来 2月16日

 

あとしばらくしたらコンピューターや機械が

人間に代わって多くの仕事をするようになるのですって。

 

古典技法額縁はどうだろう?

機械でもきっと作れるようになる。

「手仕上げ風」の揺れや趣もつけられるでしょう。

でもプログラムを作ってまで大量生産する物でもなし。

AIロボットがつくる古典技法額縁ってなんだか

とても「上手」で、きっちりと正確なものになりそう。

そしてクローンのような古典技法額縁が

無人の部屋で喜びも無く生まれたりして?

 

だけど

「機械じゃなくて人間が作った額縁」が

欲しいと思って下さる方もきっといる。きっと。

 

古典技法額縁にとってかわるものが登場しなければ

あるいは額縁自体が消滅しなければ

細々ながらも需要はあるのではないかな

少なくともわたしが生きている間は・・・

 

と、楽観的に考えている今日です。

明日はだれにも分からないけれど。

AIロボットが、作る「たのしさ」と「つらさ」

そして「よろこび」を知ったとき

いよいよ人間が危ういのかも知れません。

 

 

キッチリしないのが大切 2月09日

 

ちいさな額縁を作っています。

フラ・アンジェリコの天使を描いた

テンペラ模写を入れる額縁です。


今回は全面に金箔を貼り、

刻印で模様を入れることにしました。

デザインは15世紀にイタリア・トスカーナで

作られた額縁を参考にしています。

フラ・アンジェリコと近い時代の雰囲気に。

 

刻印をきっちり打つのではなくて

なんとなく、ランダムに打つように心がけると

おおらかな優しい雰囲気になります。

 

きっちりしないこと。

これが必要なときもあります。

 

 

クリヴェッリの花、その額縁 2月05日

 

模写したクリヴェッリの花のテンペラ画

額縁をつくりました。

 

木地にスパイラル形の細工材と

石膏型取りしたオーナメントを取付けて


アクリルグアッシュで彩色しました。

仕上げにワックスで古い雰囲気に。

「黒い螺旋」spirale-nera1

オーナメント違いのデザインです。


額縁がちょっとごつかったでしょうか?

でもなかなか気に入った仕上がりになりましたよ。

 

 

毎度のことですが、写真に撮ると

実物通りの色を再現できなくて

いつも慌てます。

アクリルガラスには何やらうつり込んでしまうし。

家中を右往左往して場所を探すわりには

これぞという1枚が撮れなくて

結局何枚も載せてしまうことに。

上の完成図3枚のうち、一番実物に近いのは

最初の1枚目なのです・・・。

つくづくプロのフォトグラファーの方の

技術とセンスには驚き尊敬しております。

 

 

徹夜明けの天使 1月31日

 

引き続き卵黄テンペラで

フラ・アンジェリコの天使を模写しています。

写真は下色を塗ったところ。

肌の下には緑を塗るのがこの時代のスタイルです。

 

受胎告知の大天使ガブリエル

威厳のある涼やかな表情なのです。

衣装はおおまかに完成間近、肌に影を入れました。

 

順調に描きすすめてきたつもり

が・・・模写天使の顔ときたら

あなたどちら様ですか。 へんな顔!

ニセモノ感満載になってしまいました。

(模写なのでもともとニセモノなのですけれど!)

徹夜明けの天使? 目のクマがひどい。

顔色も緑人間を引きずったままだし

髪もおかしなことになっています。

 

小さな点ひとつで表情が変わります。

足したり引いたり描けば描くほどに

どんどん違う顔になって、

結局一番最初がマシだったりして。

 

数日後、気を取り直して修正をば。

これにてお終いとさせていただきます・・・。

これからニスを塗って額縁に入れます。

額縁のデザインはもう決まっているのです。

フフフ。

 

大丈夫、それはまだここにあるよ 1月29日

 

なにが自分に起こったのか、

いいえ、きっと普通のことなのでしょうけれど

突然に荷物を減らしたい衝動にかられています。

いままで1度の引っ越しと1度の留学による

荷物整理を経験してはいるのですが

子どもの頃のものもそのまま箱に詰めて

押し入れの奥だとかタンスの上に追いやって、

クローゼットも本棚も現在と過去が入り乱れ。

よくあるパターン「要らない物に占領されて

いま必要なものを片づける場所が無い」になっています。

恥ずかしながらわたしは自他ともに認める

「捨てられない」タイプ。

でもそろそろどうにかせねばなりません。

 

もう聞かないCD、読まない本やマンガ

見ないDVDをまとめてみたら段ボールに3箱も。

買取サービスにお願いすることにしました。

二束三文にさえならないかもしれませんが

1度は欲しいと思って買ったもの、

自分でゴミに出すのも忍びないのです。

もしどこかに欲しいと思ってくれる方がいれば

と一縷の望みをかけて(大げさ)送り出します。

大学時代に通学でつかった思い出深いバッグも

2回しか着ていないけれど古くなったワンピースも

諸々たくさん、リサイクルに出す整理をして

お別れの準備ができました。

古い化粧品や空き箱(これぞ無駄中の無駄)も

分別してじゃんじゃん追い出してみたら

思った以上に大きなスペースが空いたようです。

 

でも、本当に二度と使わないもの

--幼稚園時代に集めたガラスのミニチュア動物や

上手に編めたセーター、イタリア語で書かれた

スペインガイドブックとか--は

またもとの暗い場所に押し込めたのでした。

いつか手放せるときが来るかしら。

きっと来ないのだろうなぁ・・・。

 

ひとそれぞれと思いますが、わたしにとって

使わない=必要ない、ではないのですもの。

使わないけれど、それがまだ手元にあるという

安心感のようなもの、とでも言うのでしょうか。

最後まで手放せないのは「思い出」なのですね。

そんな思い出があるのは幸せなことなのだろう

と思っています。

 

 

クリヴェッリの花、その意味 1月17日

 

小さいテンペラ画模写をしました。

サイズは6×6cmほどです。

カルロ・クリヴェッリ作の

「聖母子と聖フランチェスコ、

聖セバスティアヌス」から部分です。

小さな画面にぎっしり詰め込まれた感じで

描いていてとても楽しい模写でした。

 

オリジナルはロンドンのナショナルギャラリーに

所蔵されており、175×151cmの大きな板絵です。

模写したのはマリア様の右にある花。

ガラスや白いバラは聖母の処女性を、

赤いバラは愛、キリストの受難を象徴するとか。


Carlo Crivelli “Madonna col Bambino in trono

tra i santi Francesco e Sebastiano” 1491

National Gallery,London

画像はwikipedia からお借りしました。

 

クリヴェッリの模写は初挑戦でした。

ビシィィッとした線が見やすいけれど

それを真似るのはまた難しい・・・という発見。

 

この絵に合わせようと額縁を準備していたのですが

乗せてみたらまったく合わないことが判明しました。

むむう、新たに額縁を準備することにします。

どんな額縁が良いでしょうか?

 

 

歌会始と選ばれた言葉 1月15日

 

2018年の歌会始、お題は「語」でした。

ふーむ、2016年の「人」2017年の「野」より

すこし難しそうなお題です。

 

選ばれた方々の歌が発表されたあと、

アナウンサーが歌の背景などを解説します。

その内容を聞いて、わたしが同じ心境あるいは

光景を見たり感じたとき、どう詠むだろう、

どの言葉をどのように並べるか。

考えます。

「歌」とするからには、普段使いの言葉も良いけれど

もうすこし、なにか・・・。

 

おなじ気持を表すにも、言葉ひとつで

心に響くかどうかが決まってしまうのですね。

分かりきっていることだけれど難しい。

わたしが日々なにげなく使っている言葉も

相手に気持ちよく伝わっているのだろうか。

 

 

皇后さまの御歌は、たったこれだけの言葉から

100倍くらいのことを表現されているような

ふわぁっとした暖かさと思いやりを感じます。

 

日本語は奥深く美しい。

日本語に対する感覚を、もっと大切に

研いでいきたいと思った朝でした。

 

来年のお題は「光」、明るい歌が多くなりそうです。

 

進むとき、眺めるとき 1月10日

 

砂の上の足あと

おおきな歩幅で迷いなく進む足あとは

まっすぐ海へ消えました。

 

海に進む人を陸から眺める人もいる。

わたしはどちらだろう。

進むときもあるし、眺めるときもある。

進むも眺めるも、その良さがある・・・けれど。

小幅でも、今は進まねば。

 

 

きっと吉報です 1月05日

 

鎌倉の鶴岡八幡宮、若宮側を通った時のこと。

 

おや、草の中にふわふわがひとつ。

なんだろう?

 

リスだ!

 

たたたっと来て、こんにちは。

「なにか良い知らせがあるのかい?」

と聞かれましたので

いいえ、特に無いのだけれど

あなたに会えたのが良い知らせかも。

 

 ・・・と答えたとたんに行ってしまいました。

きっと吉報が届く予感です。

 

 

わき目をふらず正直に 1月03日

 

あけましておめでとうございます。

どのような年末と年始をお過ごしですか。

 

我が家のお正月、今年も例年通り。

それで良いのです。穏やかに。

 

暮にお参りした森戸大明神でひいたおみくじに

「わき目をふらず正直に働いて信心怠らなければ

おのずから幸福が来ます」との一文がありました。

むむ、なるほど。

わき目をふらず正直に。

今年の抱負といたします。

 

皆さまにも心豊かな一年になりますよう!

 

 

あけましておめでとうございます 1月01日

 

 

旧年中はありがとうございました。

新春を迎え皆様のご多幸をお祈り申し上げますと共に

本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

平成30年 元旦 KANESEI

 

 

真っ赤な気球から愛をこめて 12月25日

 

メリークリスマス!

 

幼い頃は毎年、小さいけれど本物の

もみの木のクリスマスツリーを飾っては

ドキドキしたものです。

今はもうツリーは飾らないけれど

毎年この天使だけは出しています。

 

たぶん母が選んで買ってくれたのでしょう。

真っ赤な気球にぶら下がる金色つばさの天使。

・・・あれ、天使は飛べるのではなかった?

と思いましたが、

この天使の翼は 飛ぶには小さすぎるのかもね。

 

窓際に置いた寒さが苦手な植物たち

月下美人や蘭の緑に囲まれて明るい南国風。

今年も機嫌良さげにびょんびょんと

飛びまわって愛を振りまきながら

「ハロー♡ メリークリスマス♡」と言っています。

わたしも楽しいクリスマスを過ごそうと思います。

 

 

汚れた金が好きなのさ 12月22日

 

今日のお話はいわゆるdirty money ではありません。

すみません、まぎらわしいタイトルなのは

重々承知なのですけれど、つい。

 

先日「なぜ古典技法の額縁を作るのですか?」

という質問を受けて、ほとんど無意識に出た答えが

「おそらく金(gold )が好きだからでしょうか」でした。

その時「ええっ!!金ですか?!」と驚かれ

その驚きにまたわたしも驚いてしまったのですが。

 

金が好き・・・意外でしたでしょうか。

その方にはわたしに、あるいはわたしが作る額縁のイメージに

キラキラした華やかな金の印象がなかったからでしょう。

金の「俗っぽいイメージ」がお嫌いだったのかも。

でも、わたしが古典技法額縁を作るようになったのも

黄金背景テンペラ画で純金箔の水押し技法に魅了されたことが

おおきな理由の一つですから、金好き歴は長いのです。

 

風化した、古びた金が好きです。

赤いボーロに乗った金箔をメノウ石で磨き上げる。

その輝く金をわざわざ汚す作業を加えます。

汚れて擦れて傷がついて、それでも下からほんのりと輝く

半艶の金の額縁を作りたいと思っています。

 

 

2018年のこころの糧 12月20日

 

大山崎山荘美術館で開催された

有元利夫回顧展をどうしても観たくて

12月のはじめの頃、思いきって

京都に行きました。

山崎駅はJRで京都駅から15分くらいと近いのですが

とてもとても静かな場所でした。

線路を渡って、かなり急な坂道を

えっさえっさと10分くらい登ると

素晴らしい洋館がありました。

この洋館に入れるだけでも嬉しい。

重厚な洋館と有元利夫の作品は

とても良い組み合わせでした。

 

作品の前で、ひたすらぼぉっとしてしまう。

絵を見ている。

けれど違うものも同時に見ているような。

 

東京の小川美術館で毎年の展覧会を

楽しみにしていますけれど

来年もお休みとか。

こうして遠くまで来ましたが

有元利夫を「補給」できましたので

2018年もこの記憶を頼りに

心穏やかに過ごせると思います。

 

 

枯れはじめた花をそえて 12月13日

 

ずいぶん前、プロのフォトグラファーの方に

わたしの額縁を撮影していただく機会がありました。

雑誌に掲載するための写真でした。

 

どんな風に撮ろうかと相談していたとき

「夕方前に部屋の自然光の中で

枯れはじめた花を添えよう」と提案されました。

わたしの額縁の色や古い仕上げの雰囲気を感じとって

そしてわたしがイメージしていることを理解して

とても美しく表現してくださったと感動しました。

青山、表参道のほぼ全ての花屋さんから

(枯れはじめた花を売るお店はありませんから

廃棄準備された花を少しずつ)かき集めた

枯れはじめの花を添えて撮影したことを

庭のバラをみて思い出しました。

 

終わりの始まりの花

特別な色や雰囲気は今もとても好きです。

 

 

思うことを思うままに 12月07日

 

KANESEIのホームページ「works」の

写真キャプションを整理していて、ふと「diario」を

ブログを始めた頃の2009年から 読み返してみました。

当時のブログは今より文章も短くて

額縁に限らず、身のまわりのことや

思ったこと考えたことを書いていたようです。

 

最近はブログが半分仕事の様になって

自分で内容を狭めていたかも?

また最初の頃のように自由に書こうと思います。

 

「犬さん犬さん知らないでしょ教えてあげましょうか

KANESEIブログは製作以外のことももっと書くんだって!」

「あらなぁに、馴れ馴れしい鶏さんだこと

ブログを思うままに書くのは当然じゃないの

あなたは2017年のKANESEIでしょ

わたしは2018年のKANESEIよ

ニュースタンダードはわたしよ! ふふん」

「おや生意気だわね、猪さんに言いつけるから」

「!!??」

意地の悪いふたりの会話

 

干支張子 加守田次郎

 

 

久しぶりの金継ぎ 全然ちがう 12月04日

 

友人から預かっている朱塗りのお盃の

金継ぎをしております。

ずいぶん前にお預かりしたのですが

お正月も近づきそろそろタイムリミットです。

とても久しぶりなので、金継ぎ稽古時に頂いた

プリントを見直したりと心もそぞろ。

金継ぎ稽古では陶器や磁器の焼物ばかりを

直していましたので漆器の作業は初めてです。

 

いざ始めてみたら、当然ながら漆器金継ぎは全く違います。

なんと言っても、硬い磁器は研げるけれど漆器は傷になる。

わたしの持っている金継ぎ用の磨き棒では磨けないし

コンパウンドを使ってみる勇気もない。

手袋をしていると指先が漆に触って

他の部分を汚してしまっても気づきにくかったり。

マスキングすれば良かったと気づいても後の祭り!

焼物より数倍難しいのでした。

うーむ、安請け合いしてしまいましたが 後悔先に立たず

とにかく出来る範囲で。

こわいよーこわいよーと思いながら直すと

器に「こわいよ」が染み込みそうなので

なるようになる、で参ります。

いやはや。なんとも。

 

なんてブツブツ言っていますけれど

やっぱり金継ぎは楽しいです。

自宅のひとり趣味として再開しようとたくらんでいます。

 

 

小さい小さい絵展 2017 11月30日

 

あれ、ついこの間ようやく秋が始まったのでは?

と思っていたらもう師走間近です。

どうしよう、どうしようと言っていても

時間は過ぎていくものですね。

 

今年の「小さい小さい絵」展は

12月7日木曜日から13日水曜日までの1週間です。

例年と同じく卵黄テンペラの模写を出品いたします。

暮の忙しい時期、息抜きにすこしだけ

お立ち寄り頂けましたら幸いです。

どうぞよろしくお願い申し上げます。

 

今年はDMにも載せて頂きました。

タイトルが「カトリーヌ・プレイ・・・」とありますが

「カトリーヌ・レイの時禱書」が本当です。

ミスプリ、失礼いたしました。

 

第23回 小さい小さい絵展

12月7日(木)~12月13日(水)

池袋東武百貨店6階1番地 アートギャラリー

池袋東武百貨店 アクセス

 

 

丸沼芸術の森 ワイエス展へ 11月27日

 

ステンドグラス作家の雅子さんと妹のあっこさんと先日

埼玉県朝霞市にある丸沼芸術の森へ行きました。

アンドリュー・ワイエス生誕100年記念展覧会です。

この施設は郊外にある、広大な丸沼倉庫の

敷地内を通り抜けていく先にあるとか。

手作りの案内看板を頼りにてくてく進みます。

新しいアスファルトも清々しい芸術の森に到着。

先にあるこぢんまりとした美術館に入りましょう。

こちらのコレクションは館長(社長)がワイエスの

作品、思想に感銘を受け、ワイエス本人に会って

直接購入したという水彩、エスキスです。

ワイエスというとわたしはテンペラを使った

精密な描写の印象が強いのですが、

ワイエスが心に浮かんだイメージが失われる前に

素早く描いた水彩画は優しくゆっくり心に入ってきて、

でも深すぎるほど奥深くに染み入るのでした。

 

今年で生誕100年と聞くと

ワイエスが亡くなった時のショックを思い出し、

同時にそれからわたしが過ごした時間を考えました。

時の流れが早い、なんてことは何千年も前に生きた人も

同じように思ったのでしょう。

 

展覧会鑑賞後、グッズショップでお土産を買い

学芸員の方と沢山のお話をさせて頂き(気づいたら1時間も!)

上映ビデオをゆっくり見てから 帰途に付きました。

アットホームな、ワイエス愛に溢れる、 とても素敵な美術館でした。

丸沼芸術の森

*ワイエス展は終了しました。

 

 

引出しの整理は夜のうちに行われる 11月13日

 

作業の手順、使う材料や方法で悩んでいるときは

たとえば移動中でも友人とおしゃべりしていても

常に頭と心の大きな部分を占めていて

無意識に解決策を考え続けているような状態です。

それは眠っているときも続いています。

 

夜明け近く、半睡半覚のころに

「あれはこうすれば出来るんじゃない?」

「あの本に載っていたはずでは?」

「やっぱりあれはダメ。こっちにすべき」

まるで誰か・・・あるいはもうひとりの自分に

ささやかれたような突然の「ひらめき」があります。

頭の中でピカッと光って、目がパカッと覚める。

「そうだそうだ!解決だ!!」と思ってまたひと眠り。

でも決して忘れていることは無くて

清々しい気分で朝を迎えられるのです。


この不思議。なんでしょうか。

きっと同じ経験をされた方も沢山いらっしゃるでしょう。

頭の中の引出しに覚醒時にも入っていたはずの解決策が

眠っている間にようやく邪魔されずにひとつひとつ開けて探されて、

夜明けとともに整理されて届く・・・といった感じ。

脳は睡眠時に記憶が整理されると聞きます。

わたしの脳みそも必死に頑張っていたのね、と

我ながらちょっと脳がいじらしく思えたりしたのでした。

 

 

愛娘を旅立たせる気持ちで 11月06日

 

先日、額縁を入れ替えたら・・・というお話でも

すこしご覧頂きましたが、今年も「小さい絵」展の

準備が整いました。3点あたらしく出品いたします。

すべて卵黄テンペラです。

 

ベノッツォ・ゴッツォリのマギ礼拝堂フレスコ画の

「東方三博士の行列」よりメルキオールの部分模写です。

若かりし頃のロレンツォ・デ・メディチがモデルだとか。

作品サイズは115×75mm。


額縁は市販のものを加工しています。

 

こちらも同じくゴッツォリのマギ礼拝堂のフレスコより

天使の部分模写。55×40mmです。


この額縁も市販品ですが、加工はしていません。

可愛いらしい額縁が見つかりました。

 

そして「カトリーヌ・ブレイの時禱書」より聖母子部分模写です。

こちらは乙女チック本「花と美術の物語」に載っていた作品ですが

この時禱書を検索してみても情報が見つからず。

フランスかベルギーか・・・どの辺りの作品なのでしょう。

微笑むマリア様と、美しい母が自慢げなイエス様の表情が好きです。

作品サイズ120×75mm。


額縁はわたしが作ったものです。

石膏型取りしたオーナメントを取付けました。

 

絵(模写)に限らず額縁ふくめて、自作の物はどうにも

我が娘に思えてしまいます。

愛娘たちを旅に送り出す母の気分になって

画商さんの元へ宅急便で発送いたします。

幸せに暮らしておくれ。

 

 

豊かな気分で作業開始 11月02日

 

ぴかぴか新品!

新しい筆を使い始めるのは とても気持ち良いものです。

なにかこう、豊かな気分になって、心も軽やか。

毛が柔らかくでしなやかで、絵具の含みもバッチリです。

 

先日、買出しでまとめて何本か調達しました。

お手頃価格のものばかりではありますが

普段の額縁製作作業には充分。

作業もはかどりましたよ。

 

筆は消耗品。

分かっていても、なかなか交換時期を見つけられませんが

(捨てるのが可哀想で、もう少し使えそう・・・と思って

使い続けると、結局作業効率が落ちるのです。)

新しい筆を調達すれば交換の良い機会になります。

 

 

運慶展 胡粉の下、そしてむき出しのわたし 10月30日

 

とうとう運慶展へ行ってまいりました。

雨の週末の夕方、待ち時間は無いもののかなりの混雑。


事前にテレビや雑誌ですこし見聞きしていましたが

やはり実物の迫力はすさまじいものがありました。

800年前につくられた当時と経年変化していても

極彩色が失われた分、運慶の作りだした形がより見えている。

肉厚な背中、血管のはしる手、正に今振り上げられた腕

あるいはふわりと結ばれた仏様の印、遠いまなざし、

力強い腰、そして玉眼、どれもこれも緊張感が漂います。

ほとんどの像に「目が合う点」があって、それを探って

目を合わせると、いやはや、背筋がビリビリします。

 

いくつかの像ではすでに胡粉下地が剥落して、

運慶が彫った木そのものをじっくり見ることができました。

力強い印象の像だけど、細部も曲面もきわめて丁寧に

細かく仕上げてありました。

鑿や彫刻刀の彫り跡などほとんど見えません。

今のように手軽に紙やすりも手に入らないし

気軽に何本も彫刻刀を揃えることもできなかった時代です。

きっと彫刻刀を研ぐ時間と彫る時間は同じ長さだったかもしれません。

そうした「準備」の時間は、一種の瞑想のようだったのかも?

無著像と世親像を間近で見て、運慶の心の内面を垣間見たような・・・

ううむ、違います、

鑑賞する自分の心の一部分をむき出しに自覚したような、

久しぶりにそんな感覚になりました。


*写真は運慶展サイトからお借りしました。

 

混雑覚悟でも、これは観るべし。

ぜひお出かけください。

特別展「運慶」 東京国立博物館

11月26日(日)まで 

 

 

彫刻額縁 第3弾 10月26日

 

彫刻額縁のサンプル第3弾が彫り終わりました。

(第1弾はhori-acanthus-1、第2弾はcorona-di-fiori-1です)

イタリアの古い額縁の写真を参考にして

アレンジしながら彫り始めたのですが、

途中で急遽デザインを変えたりして

彫り終わってみれば写真の額縁とは全く違うし

当初イメージしていたものとも随分と変わりました。

結局当初の計画通りなのは巻きつく葉があるということと

中央に並ぶぽちぽちだけです。

とはいえこのデザインの基本は平行の上に垂直と斜めが被さったもの。

それだけはぶれずに制作を進めました。

木地の形は半円形、カマボコの形です。

参考と比べながら、限られたスペースと木材の特徴

そして自分の彫刻技術を鑑みて作るのは難しく、

また楽しくもあります。

 

さて、どんな仕上げにするかよく考えねば。

ステインで茶色に染めるか、彩色で陰影を強調するか

はたまたザ・古典技法の純金箔水押しにするか?

 

ふむ、純金箔水押し仕上げに決めましょう。

これからライナー(ガラス押さえ)も少し彫って

こちらも同じ純金箔水押しにします。

ずいぶんと派手な額縁になりそうです。

 

 

手作品の価格を決めるとき 基準は何処に 10月19日

 

平和島の骨董市で家族が買ってきてくれたハサミです。

手作りで切れ味は抜群、

カシメには銅が使われて可愛らしい。

よく見えないけれど、刻印もあります。

新しいもののようです。

 

いくらで買ったのかたずねたら 3,000円との答え。

・・・しばし無言になりました。

100円ショップでそれなりに切れるハサミが売られている今

小さな手作りハサミが3,000円。

高い?安い?

このハサミを作る時間、材料、 そして技術を考えたとき、

わたしには この価格があまりにも安く感じられるのです。

それはわたしが物作りをしているから?

 

わたしが作る額縁の価格は皆様に

どう受け止められているのか。

ずっと前から心にある問いがまた復活しました。

結局のところ基準なんて無いのですけれど。

売り手と買い手が納得できる価格をさぐって

すり合わせるしかないのでしょう・・・

難しい永遠の問題。

 

それはそうとこのハサミ、どんな人が作ったのでしょうか。

真っ赤に燃える炉を見つめる眼差し、

細い身体でひたすら働くおじいさんのイメージ。

どこかで見たと思ったら、以前に住んでいた場所近くの

鍛冶のおじいさんでした。

小学校帰りに通りかかると、金属と石炭の匂いの中から

溢れてくる熱気と機械ハンマーの大音量が 響いていたのでした。

今、その鍛冶屋さんの場所には マンションが建っています。

 

 

額縁を入れ替えてみたら 10月09日

 

秋になりました。

近所の小学校は今日(10月8日)が運動会なようで

朝からにぎやかな声援、そして午後には学校から

家族での帰り道の楽しそうな会話が聞こえています。

 

秋になると、毎年暮の恒例「小さい絵」展の準備をします。

額縁もようやく完成し、絵を額に納める作業中です。

左はゴッツォリのマギ礼拝堂フレスコ画「三賢者」より部分模写

右は1400年代末の写本「カトリーヌ・ブレイの時禱書」より模写です。

写本模写の額縁はわたしが作りましたが

ゴッツォリの額縁は既成のモールディングを加工しています。

 

ところで、この額縁を入れ替えてみたらどうでしょう?


ううむ、合わないことこの上なし。

(元から合っていないと思われたら・・・すみません。)

ゴッツォリにグレーはさびしく、余白も広すぎる感じですし

写本には額縁が重すぎるようです。これはだめ。

 

かほど額縁は作品の印象を変えます。

額縁は縁の下の力持ち、そして演出家でもあります。

 

 

手から手へ届けられた石膏 10月05日

 

イタリアのフィレンツェを訪れた

Atelier LAPISの生徒さんから頂いたのは ボローニャ石膏を1kg!

以前、雑談時に「ゼッキで販売しているボローニャ石膏は

日本で手に入るものと少し違う」とお話したことを

覚えていて下さったのでした。

フィレンツェのゼッキの店頭で買い求め、荷物に入れて

日本に持ち帰り、そして市が尾のアトリエまで

持ってきてくださったなんて

さぞかし重くてかさばったことでしょう。

申し訳無く思いつつ、とてもありがたく頂戴しました。

 

上の写真、ゼッキのラベルには

「gesso sottile volterra」と書いてあります。

これはヴォルテッラ産の細かい石膏、という意味です。

日本では画材で使う2水石膏を「ボローニャ石膏」と呼びますが

イタリアには2水石膏の産地がいくつかあって、

ボローニャもヴォルテッラも有名な産地です。

 

普段はホルベインやクサカベが販売するボローニャ石膏を使いますが、

ゼッキの石膏とは少し違うのです。

ゼッキ石膏はより軽いと言いますか、わずかに粒子が大きいのかも?

ホルベインやクサカベの石膏は、ニカワで溶いて塗り乾かしたら

ゼッキ石膏より少し硬く絞まるような印象です。

石膏を紙やすりで磨くとき、ゼッキ石膏はすこし楽。

一番の違いは箔のメノウ磨きの時の手ごたえでしょうか。

 

日本で手に入るボローニャ石膏にすっかり慣れましたし、

遠い日本でボローニャ石膏を手に入れられるだけで幸せなこと、

良い時代になりました。

でもこうして「本場のもの」を使う機会が得られると

心躍ります。嬉しい。

この石膏は大切に使わせて頂きます。

 

 

日本伝統工芸展 わたしならどうする? 9月25日

 

毎年お彼岸の恒例、お墓参りの後に寄る

「日本伝統工芸展」へ今年も行ってまいりました。


NHKの「日曜美術館」の解説を聞いてから見るか

見てから聞くか・・・

以前は聞いてから見たいと思っていましたが

今年は偶然ですが聞く前に見ることになりました。

まっさらな状態で先入観‐‐こんな人が作っているのか、とか

制作過程云々‐‐を持たずに見た後に自分の感想とともに

解説を聞いたほうが、より心に残るのでした。


 

いつもながらの勝手な想像ですけれど、

もしわたしがこうした伝統を受け継ぐ立場だったら

どうしただろう。

物作りが好きだから、嬉々として取り組む?

プレッシャーに押しつぶされて止めてしまう?

西洋美術方面に行きたくて葛藤する?

 

まったく別の世界で生きてきたけれど

どうしても伝統工芸制作の道に進みたいがために

様々なことを断ち切って打ち込む人もいるでしょう。

 

「やりたいこと」と「やるべきこと」が同じ

という幸せな作家は数少ないのだろうし、

そこにたどり着くまで沢山の苦労があるのだろうなぁ・・・

と、ぼんやりと考えていました。

 

 

逢えなかった姫君 レオナルド×ミケランジェロ展 9月11日

 

おととい、庭の銀木犀が咲き始めました。

朝、窓を開けるととても良い香り。

秋のはじまりです。

 

三菱一号館美術館で開催されている展覧会

「レオナルド×ミケランジェロ展」に行きました。

なにせ二人の作品は繰り返し本で見ていますので

すでに見慣れた・・・と言っては大げさですけれど

慣れ親しんだ気持ちがあります。

 

それでもやはり、当然ながら

実物の線、陰影、ハイライト、すべてが想像以上に美しく

オーラと言いますか迫力が迫ってくるのでした。

 

レオナルドのデッサン「少女の頭部」

大きいと思ってたのに、はがきサイズ程度で小さい!

これまた驚きました。

ミケランジェロのデッサンも、太い線の力強い作品

という印象が強かったのですが、細く優美な線の作品もあって

内心大興奮しながら見ていました。

近づき過ぎて係の方に注意されてしまい、お恥ずかしい。

 

唯一残念だったのがレオナルドの「美しき姫君」の出品が

取りやめになったとかで見ることが叶いませんでした。

数年前に「真筆であろう」とニュースになった作品で

とても楽しみにしていたのですけれど・・・

まだ真筆の確定(?)がされていない等、色々あるのでしょう。

 

面白かったのは、デッサンの作品がかなり分厚い

箱のような額縁に納められていたことです。

おそらく今回の展覧会のために作られていて

オリジナルの額縁を日本で更に箱型の額縁に納めて

紫外線カットはもちろん湿度も保てる仕掛けをして

大切に大切に展示されたのでしょう。

内部がどうなっているのかとても気になりました。

 

レオナルドもミケランジェロも

天才として生まれた上に、たいへんな努力もしたはずです。

そんなイタリア人ふたりの作品に触れて

すこし心がピリッとしつつ、ウットリした一日でした。

9月24日までの開催です。ぜひお出かけください。

三菱一号館美術館

「レオナルド×ミケランジェロ展」

2017年6月17日(土)~9月24日(日)

10:00~18:00 月曜休館(但し、祝日は開館)

岐阜市歴史博物館で10月より開催

 

 

吉田博展 8月28日

 

23日の夕方、Tokyo Conservation の仕事のあとに

新宿で開催中の「吉田博展」を観に行きました。

毎度のことながら会期末ギリギリ、この日は閉館もギリギリの時間。

ですが会場は老若男女(若い人も沢山)で中々の混雑でした。

 

吉田博は版画家として有名なのでしょうか。

わたしにとって吉田博作品は油彩画にとても馴染みがあります。

Tokyo Conservation では数年前に吉田博をはじめ

妻のふじを、そしてご家族の方々の作品を修復させて頂きました。

その時に間近に観て触れた博の作品は、それはそれは

見惚れるように色が美しいのが印象的でした。

山や雲を描くピンク、水色、緑、紫の色はそのまま

戦争画にも使われていて、厳しい画題と画面なのに

その色使いを見ると吉田博は戦争中も冷静に自分を失わず

描く努力をしていたのだ・・・と感じるのでした。

 

今回久しぶりに再会した吉田博の作品は、修復の場で

見ていた時とは違い、白い壁でライトアップされていて

「よそいき」の顔をしていましたが、やはり清々しい美しさでした。

ガラスが無い額縁に納められている作品もあって

筆跡がダイレクトに感じられる反面、やはり汚れやすいからか

画面全体がうっすらと灰色がかっていたりして、

繊細な色使いが陰に隠れていたのがすこし残念でした。

 

それはさておき、やはり吉田博の作品に触れられるのは

幸せな、そして深呼吸したような気持ちにさせてもらえました。

展覧会は昨日終わってしまいましたけれど、大変盛況でしたので

また近々きっと展覧会が開催されることでしょう。

その日を楽しみにしたいと思います。

 

2歩下がっても1歩進めれば 8月14日

 

残暑お見舞い申し上げます。

 

お盆で夏休みの方が多いでしょうか。

わたしは今日も今日とて作業をしています。

普段のルーティーンである Atelier LAPIS 、

絵画修復スタジオ Tokyo Conservation の仕事や

お茶の稽古がすべてお休みの1週間ですので

自宅での作業に集中できて、なかなか充実しています。

 

目下取り掛かり中の額縁修復は・・・ううむ

3歩すすんで2歩下がる、の毎日。

まずは1歩ずつでも進んでいますので良しとします。

修復に焦りは禁物。コツコツまいります。

 

暑さの疲れが出る時期です。

ご自愛くださいませ。

 

 

とちもち、もちもち食べてみたい 8月10日

 

家族がゴルフ場からひろってきた栃の実です。

にわとりの卵よりすこし大きいくらい、

香りは土と青い草の混じったような、森の匂いがします。

お尻を見ると3つに割れている。

中には栗の様な模様の、もう少し大きい実が入っていて

熟すとこの3本の割れ目からパカッと割れて実がひとつ。

割れた姿はアボカドを半分に切ったみたいな感じです。

(検索してみた写真によると。実物は見たことがありません。)

今の状態はまだ実が殻につつまれていて熟れていないようです。

栃の実ってこんなに大きいのですね。びっくり。

ちなみに栃の木材は木目が美しいので

木地仕上げの額縁に使う工房もあります。

 

実はお餅にして食べたりできるそうですが、

灰汁抜きをしたりと大変な手間が必要だとか。

脂肪の吸収抑制効果、抗酸化作用(ポリフェノールが豊富)

などなどかなり魅力的な食材になるみたいです。

食べてみたい!

どんな味でしょうか。ほろ苦い?甘みがある?

 

とはいえ、食べるにはせめて5~6個は欲しいところ。

今回はしばらくこのまま観察を続けてみようと思います。

熟して弾けて実が出てくるでしょうか?

中から虫ちゃんが出てこないことを祈ります・・・。

 

 

ウサギ膠 味噌汁風? 8月07日

 

古典技法に欠かせないウサギ膠です。

膠を水で1:10で溶いて冷やすと

下の写真のようになります。

味噌汁ゼリーの様ではありませんか?

色も透明度も、見るからにお味噌汁風。

ブリブリとして、歯ごたえも口溶けも想像できます。

ガラス器にシソの葉を敷いて、ボイルした小エビ、

オクラやミョウガの刻んだのをトッピングしたりして

夏の一品・・・なんちゃって。

膠はゼラチンですからね、ちょっと美味しそう。

もちろん食べてみる勇気はありません。

 

右巻きか左巻きか 8月03日

 

6月に完成した額縁「花輪」を作っているとき

ずっと気になっていたのが、リボンの巻く方向です。

わたしは無意識に左に巻き上がる方向にしましたが、

参考にした本「FRAMING THE NINETEENTH CENTRY」に

載っている額縁は、後から数えてみたところ

右巻き左巻きがだいたい半々なのでした。

最初は利き手の方向が関係するのかな、と思いましたが

巻く方向にこれといった理由が見つかりません。

 

我が家の今年の緑のカーテンはツンベルギア。

ゆっくりながらも毎日着々と成長しています。

先日、柱に巻きつく姿をながめていたら気づきました。

「はっ、右巻きだ!」

植物はすべて右巻きなの?私は植物的には異端?!と思ったら

どうやら「蔓の巻きつく方向は遺伝子によって決まる」とか。

地球の北半球南半球関係なく、そして種類によってそれぞれ

右巻きの種もあれば左巻きの種もある、ということ。

(アサガオはツンベルギアと同方向、藤は反対方向だそうです。)

どっちもあり。

それなら額縁のリボンの巻く方向なんてナンセンス。

心地よく思う方向はひとそれぞれなのでしょう。

わたしは藤タイプとでも言いましょうか。

藤の花が好きですが、ますます親近感を覚えたりしつつ

どうでも良いことだけど気になっちゃった一件は

蔓を理由にして落着とします。

めでたしめでたし・・・かな?

 

 

 

ひとりでいること 7月24日

 

KANESEIとして額縁の制作、修復を始めたときは

将来の展望だとか計画だとか 何も考えずに

額縁好きだし作るの楽しいし道具もあるし

(そして両親が許してくれそうだし・・・。)

心構えもせずに、ただ「始めた」のでした。

我ながらなんと呑気だったことでしょう。

 

徐々にわずかながら自信を持てるようになってきた頃

「そろそろ後輩を育ててみたら?」

「人を雇って仕事を拡大しないの?」という

ご意見を頂戴する場面も出てきました。

 

後輩を育てる、とは少し違うかもしれませんが

「額縁の素晴らしさ、古典技法の楽しさを知って頂く」

に関しては、母校の非常勤講師させて頂いたり

atelier LAPIS講師 や額連のワークショップをとおして

行っているつもりです。

 

では「誰かと一緒にKANESEIを進めること」は? というと

う~~む・・・

同志(または共同経営者、共同責任者?)が側にいる心強さは

修復スタジオ Tokyo Conservation の室長と主任の姿、

お互いを補い励ましあい、それぞれの役割をしっかり果たす様子を

いつもとても羨ましく思います。

 

でもわたしは、どうなんだろう。

今、なにかを失敗しても自己責任です。

やり直しの出費も労力も、わたしひとりの問題です。

もし共同経営者がいて、わたしがなにか失敗したら?

またはそのひとの作業に不足を感じてしまったら?

それらを一緒に乗り越える勇気と気力がわたしにあるのかしら。

信頼関係を築く努力を怠らずに続けられるでしょうか。

 

今はまだ自信がありません。

怖い、の方が近いかもしれません。

両天秤にかけて想像してみても、それは想像だけ。

それならひとり、しょせん小さな範囲でガサゴソと

穴倉にこもっているのがわたしにはお似合い。

いまのところ、そんな風に思っています。

遠からず変えられる日が来ると良いのですが。

・・・いや、このままの方が良いのかな。

 

同志――志を同じくする人が側にいてくれたら。

むむむ。

 

 

 

夜のサングラス作戦 試してみたら 7月20日

 

春にお話しした「夜のサングラス作戦」

ふと思い出して、試してみることにしました。

夕食前に金箔を水押しして、22時にメノウ磨き開始です。

今回のサングラスは普段ドライブするときに使っている物。

装着していざ、磨きましょう。

 

結論から言いますと、わたしのサングラスは暗すぎて

作業が良く見えないのでした。

反射のきつい部分はちょうど良い明るさ、でも

凹み部分や隙間などは真っ暗になってしまう。

確かに目はとても楽ですが、作業が見えないのでは本末転倒です。

結局、いつものように裸眼で磨き終えたのですが、いやはや。

家族も寝静まった後、ひとりで「目が、目が~!」と叫び(ムスカ大佐風)

肩におきゅ膏を貼る夜でした。

 

箔作業用に色が薄いサングラスを買うのが良さそうです。

 

 

 

ゴッツォリ天使、大きいフレスコ小さいテンペラ 7月13日

 

ふたたびゴッツォリの天使模写です。

大きい天使の下に、小さい天使が置いてあります。

母校の大学で以前、フレスコ画制作の飛入り参加をしました。

その時に模写したのが大きい方。

(天使なのに翼を省いてしまいました。ひどい話。)

その下にある小さいのは今回テンペラで模写しました。

オリジナルのゴッツォリ作品はフレスコですので

やはりフレスコ模写の方がオリジナルの雰囲気に近いようです。

でもまぁ、この小さなテンペラ模写(5×4.5cm)も

これはこれで、と。

同じ絵を違う技法とサイズで模写するのもなかなか楽しい作業でした。

先日のロレンツォもあわせて額縁を作って

暮の「小さい小さい絵」展に出品予定です。

 

 

ロレンツォ、その若かりし頃 7月06日

 

ベノッツォ・ゴッツォリ(1421頃~1497)は

わたしの敬愛するフラ・アンジェリコの弟子で

フィレンツェで活躍した画家です。

 

昨年にもマギ礼拝堂フレスコ画「三賢者」の部分模写

描いていてとても楽しかったので、今年もまず1枚。

ロレンツォ・ディ・メディチの若い頃がモデル

と言われている賢者のひとりです。

 

描き始めたは良いものの、顔の描写は本当に難しい。

なにせ細い線1本で表情はガラリと変わってしまうのですから。

唸りながら呼吸を止めて、線を1本ずつ描き足して

どうにかこれで完成とします。うーむ。

描けば描くほどにブラックホールに吸い込まれそう。

 

オリジナルの表情は、ここまで笑っていません。

もっと澄ました顔をして、眉を上げて、

王子様然としています。

それが・・・すまし顔に近づけない。笑っちゃう。

庶民的な顔、とでも言えそうな表情になりました。

もともとフレスコの大きな作品を

手のひらサイズのテンペラに模写するのですから

無理があるというか。

ゴッツォリが怒りそうですね。

それにしても・・・

いつもホルベインが出しているテンペラワニスで

仕上げているのですが、どうも艶が強い気がします。

もう少し艶を押さえた、3分艶くらいのテンペラワニスを

作ってくれたらとても嬉しいのですけれど。

 

 

めぐり逢う朝 もう一度 7月03日

 

7年前にもご紹介したことがある映画「めぐり逢う朝」ですが、

手元には古いVHSビデオしか無くてすでに観ることも叶わず

最近はサントラCDもあまり聞いていませんでした。

先日どうしても観たくなって、絶版になっているDVDを

中古で購入することにしました。

映像も音楽も何もかもが好きな映画なのですが

観るたびに小さな気づきがあって、また嵌っていきます。

この映画のどこが好きなの、何が魅力なの、と聞かれたら

ひと言ではとても言えませんけれども、

父と娘、老と若、師と弟子、妻と夫、富と貧、俗と清、剛と柔

そして死と生。

世の中のさまざまな対比が表現されているのも魅力のひとつです。

美しい映像、美しい音楽と必要最低限のセリフで物語が進みます。

 

ああ、でも

ここでどれだけわたしが叫んでも栓無いことではありますが

どうぞ機会があったら、いいえ、機会を作ってでも

ぜひともご覧になってほしい映画なのです。

頭の片隅に「めぐり逢う朝」を置いておいてください。

 

考えてみたらわたしは、老師と若い弟子の映画が

好きなのだと気づきました。

この「めぐり逢う朝」を筆頭に「薔薇の名前」しかり

「いまを生きる」のキーティング先生と生徒たち、

「風の谷のナウシカ」のユパ様とナウシカも師弟。

「ニューシネマパラダイス」のトトとアルフレードも

ある意味師弟関係と言えるでしょう。

わたしは今まで、何人もの素晴らしい師に導かれ

今に至っているから、なのだと思っています。

 

 

美しい道具を使いたい 6月29日

 

atelier LAPISの生徒さんがお持ちの

素敵なメノウ棒を見せてくださいました。

手作りの一本。

鮮やかなグリーンのメノウ、美しい!

とても繊細な形です。

このメノウ棒は万能形なのだそうです。

平らな面も、細かい溝も、カーブも。

ほぼすべての部分を磨くことができます。

このメノウ棒を作った方ご自身も

古典技法画制作のプロ中のプロですので

必要な機能をよくご存知なのですね。

 

 道具もまた、美しくあるべき。

 

 

糸きりの儀式 6月29日

 

金箔100枚のあたらしい包みを開くと

糸で十字に留めてあります。

この糸を切るのは、いつもながら少しだけ

緊張します。

鋏を持って、横糸を切り、縦糸を切る。

儀式めいた「糸きり」です。

この新しい100枚をつかって、良い物が作れますよう。

 

額縁を熟成させる 6月22日

 

わたしは田町にある絵画修復スタジオTokyo Conservation で

額縁修復と併せて絵画修復の仕事も携わらせて頂いています。

かれこれ10年以上、早いものです。

 

ずいぶん前のことですが、油彩画の補彩をしていた時、

(絵具か欠け落ちてしまった部分を補う作業です。)

ひとまず完成したので上司のYさんに確認をお願いしました。

「うん、良いね。でもまぁちょっと寝かせておきなよ」と。

数日間「寝かせて」おいて、また見直すと

客観的に広い視野で、改めて確認できたのでした。

 

それ以来、額縁も同じようにしています。

「できた、完成」と思っても、半日あるいは丸一日寝かせて

なるべく近寄らず、目に触れないようにします。

それから最終判断をする、という工程を心がけています。

きっと物作りをする方々ならご理解くださるのではないでしょうか。

離れている間に自分の心と頭がリセットされ、そして

なぜだかわかりませんが、そのちょっとした時間で

額縁の箔やら装飾、色が馴染んで落ち着いてきます。

まるでほんのりと熟成されるような感じ。

そうして「熟成額縁」が完成されるのです。

 

 

尾崎雅子さんの作品 麻布十番ギャラリーにて 6月19日

 

2005年に知り合ったステンドグラス作家の尾崎雅子さん

とても久しぶりに再会することができました。

6月14日から開催されている山田浩之さんとのコラボ展覧会の

オープニングパーティーにお邪魔しました。

雅子さんは岡山で活動されていますが、東京でも展覧会や催事等

とてもエネルギッシュに活躍しておられます。

 

下のランプは信楽焼の山田さんのオブジェに

雅子さんが組んだランプが取り付けられています。

ランプの白い部分は新素材でガラスと陶器の間のような材。

ろくろでひねって焼いてあって、とても透光性が高いとか。

白を通した柔らかい光、壁にうつる影の形が印象的でした。

明かりが灯っている時と消されている時

どちらの雰囲気も変化があってすてきです。

明りがあると、白の渦巻き模様(ろくろ跡)が際立ち、

赤絵の足に影が出来て今にも歩き出しそう。

明りを消すと一変して赤絵が鮮やかで楽しい雰囲気です。

白の縁に焼き付けられた金も輝きます。

勝手な印象ですが、上が怒った鬼、下が眠っている鬼

のような気がしました。

 

麻布十番ギャラリーで6月26日まで開催中。

お出かけください。

 

 

「リアルのゆくえ」展 古い絵と額縁の関係 6月12日

 

平日の午前中、平塚市美術館で開催された

「リアル(写実)のゆくえ」展に行きました。

いつも会期終了間際に駆け込み鑑賞するわたしです。

最近「写実」と接し考える機会が多かったこと、

そして大好きな岸田劉生、高島野十郎の作品があるので

楽しみに出かけました。

はじめて知った作家、はじめて観る作品も沢山ありましたし、

劉生「壺」、野十郎「早春」、小絲源太郎「けしの花」

椿貞夫「菊子座像」、原田直次郎「神父」をまじまじと観ることができて

とてもとても幸せでした。

写実の絵画は現代も描かれていますが、わたしは明治中期ごろから

戦後あたりまでの作品が好きなのだ、と改めて思いました。

描いた人の目を通して追体験できるような感覚といいましょうか。

描く対象や色使いなどが大きいとは思いますが、現代ではない作品、

特に高島野十郎の「早春」などは、観るたびに

わたしの心象風景にとても近いようにも感じています。

そして明治・大正・昭和のふるい日本製額縁を堪能しました。

一見ヨーロッパ風の額縁も、ちょっとしたデザインの意匠や

箔の色味が、なんとも「和風」なのです。

なかには漆や螺鈿の豪華な純和風額縁もありました。

これら額縁もおおいに楽しめる展覧会です。

 

それにしても。だからこそ。

こうした古い絵に、ごく最近作られたであろう真新しい額縁が

付けられているのを見ると、なんとも言えない気分になります。

おまけにツヤピカ新品額縁なのに変な傷がついて

白い木地が見えていたりすると悲しくなってしまう。

作品に対する印象も大きく左右します。

オリジナルの額縁がすでに失われていたり、所蔵先の意向や予算等、

さまざまな事情を理解しますけれど、いっそ額縁無しで

裸の作品を鑑賞したいと思ってしまうのでした。

 

でも、それもまたわたし個人の感想です。

古い時代遅れの機能とデザインの額縁なんて

額縁の役割を果たしていない、と考える方もいらっしゃるでしょう。

つくづく、作品と額縁の関係、バランスは奥深いと痛感しました。

 

 

道具巻き、ちくちく 6月07日

 

今まで市販の豚革道具巻きに入れていたメノウ棒一式ですが

この道具巻きは彫刻刀用で大きかったことと

本来の目的、彫刻刀を入れる必要ができて

どうしたものかと思っていました。

ネットで検索すると、手作りで大丈夫みたい。

作ってみることにしました。

もとは古いランチョンマットです。

このアイディアもネットから拝借しました。

端の処理をする必要もなく、紐を付けてかがって

ポケットを縫うだけという いたって簡単な作りです。

紺色のニット紐も、着なくなったサマーセーターからなので、

なにからなにまで家にあったものを再利用。

以前入れていた豚革道具巻きは紐をきつめに縛っていても

メノウ棒が抜け落ちてしまうことがありましたが

今回はフタ(と言いますか、袋状の)のカブセをつけました。

これで移動の時も安心なのです。

洗いざらしの綿厚布ですから、適度にやわらかくてすべらず。

メノウ棒一家の安住の場所、完成です。

夜な夜なちくちくと「かーさんはーよなべーをしてー」と

心で歌いつつ、たのしい制作でした。

 

 

 

祭壇型額縁 6月05日

 

ここのところしばらく取り掛かっていた

祭壇型の額縁が完成し、先月お客様にお届けしました。

高さ1メートルちょっとあるもので

エッグアンドダーツなどの彫刻を施し

全面を純金箔の水押しで仕上げました。

日本ではなかなか制作する機会も少ないような

大きな祭壇型額縁を作らせていただき

額縁制作者として大変に幸せな仕事でした。

今年のお正月のブログでお話しました挑戦のひとつが、

まずは成功したようです。

 

さ、次に向けて気持ちを切り替えなければ。

 

 

古い水はやわらかい 5月25日

 

古典技法、水押しで金箔を貼るとき

箔下地のボーロに水を塗り、箔を置きます。

水はただの水、普通の水道水を使うのですが

わたしのイタリアでの師匠、マッシモ氏いわく

「新しい水より、何度も使った古い水の方が良い」とか。

何故でしょうね。

最初は不思議でしたが、だんだんと分かるようになりました。

新しい水は固いというか、弾くというか。

 

上の写真の水は「古い水」、何度も筆を出し入れしたので

うっすらと赤ボーロの色が溶けています。

恐らくですが、使ううちにボーロや膠が少しだけ溶け込んで

ボーロ地になじみやすくなる、ということなのでしょう。

広口のビンを使って、水が減ったら継ぎ足しています。

まるで焼き鳥やうなぎの「秘伝のタレ」のようです。

軟水と硬水の違いがあるのか、は分かりません。

 

 

低融点合金があれば 5月22日

 

休日の午前中に、ぼんやりとテレビを見ていましたら

秋葉原にある「ironcafe」というお店が紹介されました。

このカフェ、鋳造体験ができるというのです。

それも卓上電熱器を使い湯煎でとかした金属を使うのですって!

聞いた瞬間、我ながら目がピカッと開きました。

 

大学時代、彫刻の授業で一度だけ鋳造をしたことがあります。

アトリエ裏の屋外に穴を掘って炉を作り、コークスを大量に燃やして

そこに金属の塊(古い電線とかでしょうか。記憶が曖昧)を入れます。

体感したことの無かったような圧倒的な熱量に恐怖を感じつつ

真っ赤に溶けた金属を型に流し込むのでした。

粘土や石膏で作ったものが金属に出来る魅力はとても大きかったものの

とても自分一人でできるような作業ではない!と思ったものです。

 

ですが、この ironccafe で使っている「低融点合金」があれば

自宅での作業も可能です。これはすごいです!

カフェのワークショップで使う合金は融点が80度くらい。

粘土で型をとって、湯煎でとかした80度の金属を流し込む。

30分くらい待って粘土を外したら中から鋳造作品が登場!

なんて手軽にできるのでしょう。

もう少し高い130度くらいの合金もあるようですから、

制作可能なものの範囲がぐっと広がりそうです。

なにはともあれ、いちどこの「ironcafe」で

鋳造体験ワークショップを受けてみなくては。

鼻息が荒くなっています。

低融点合金。

世の中、知らないことだらけですね。

 

 

 

始まりと終わり 5月18日

 

複数枚おなじデザイン、サイズの額縁を作っているとき

当然ですが1枚より作業量も時間も増えて、

ひたすら同じ作業をずーーーっと続けているような気持になるのですが、

完成するときは、あるとき急に、ぽかっと終わってしまう。

「あれっ?もしかして終わり?」という 唐突感がまずあって、

一瞬ですが茫然とします。

そうして、しばらくしてから達成感がやってきます。

いつものことながら不思議な感覚です。

 

ちなみに、大きくて手の込んだ額縁1点を作る場合は

徐々にクライマックスに向かうので、

お客様にお届けし、喜んでいただけた瞬間に

達成感と安堵感がどっとやってきます。

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ともあれ「始まりと終わり」がある仕事は

自分に向いているな、と思っています。    

 

 

ミュシャ展 5月15日

 

先日の春陽展観覧後、時間があったので

ウワサの「ミュシャ展」も、ということにしました。

チェコ国外初公開の「スラヴ叙事詩」は 巨大な壁画サイズのキャンバスに

テンペラと一部油彩で描かれています。

老若男女、外国からの方も沢山の観客で賑わっておりますが

会場は広く見辛さはありません。

撮影可能な部屋で、幾つか写真をパチリ。

 

下部を見るとキャンバスが張られていることがわかります。

およそ6メートル×8メートルのキャンバスは 一枚仕立て、

繋ぎ目は見当たらない・・・というのが驚きです。

何せ巨大な作品で、制作を想像すると目眩がします。

テンペラのハッチング(線描)、草の描写のピッチは

だいたい1本の線が4〜5センチくらい。

ザバザバ描いているようだけど、とても繊細です。

 

未完部分も興味深いです。

マットでパステル調の色、ここを見るとテンペラらしい感じです。

ミュシャは今まで私の中では、女性をモチーフにした

可愛らしいポスターのイメージが先行していましたが、

今回の展覧会で印象がガラリと変わりました。

感動できる素晴らしい展覧会、お勧めです。

 

国立新美術館「ミュシャ展」

2017年3月8日(水)-6月5日(月)
毎週火曜日休館 5月2日(火)は開館  10:00-18:00           

 

 

里帰りした額縁 5月11日

 

数年前に友人からのご注文で作った額縁と

久しぶりに再会しました。

赤ちゃんのお誕生祝いの額縁です。

今回また色違いでのご注文をいただいたので

(女の子が新たに誕生したとのこと!)

いわば「みほん」として以前の額縁をお預かりしたのです。

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あわいピンクに花の盛上げと線刻模様

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内側の側面には銀箔を施してあります。  

 

久しぶりに再会した「我が娘」である額縁は、

先方でも大切にされて日々楽しんでいただいていた形跡があって

それが嬉しい。  

新しい額縁は、基本のデザインはそのままで

あわい紫色、線刻をすこし変えてみる予定です。    

りんごの花、なんてどうでしょう。

 

 

側光線で見る 5月08日

 

ボローニャ石膏を磨くことは

古典技法額縁制作の作業の中でも

地味だけど注意力が必要になる

なかなか大変な仕事です。

上からの照明では 真っ白な石膏地の凹凸や筋跡が見づらい。

特に紙やすりによる線状の跡は消しておきたい。

石膏磨きの時には、照明ランプを横に置きます。

いままで反射して見えなかった凹凸がはっきり!

違う角度からの光で見る、何ごとにも大切であります。

 

 

春陽展 5月04日

 

連休前の平日午後、国立新美術館へ行きました。

春陽展です。 さっそく入りましょう。

もう20年近くお世話になっております 今關鷲人先生の作品を拝見します。

こうした大きな団体の展覧会場は 油絵具や溶き油の匂いが漂い、

大学のゼミ室を思い出してノスタルジックな気分になります。

 

いままでの今關先生の柔らかな印象の作品と

今年の出品作品は少し違いました。

初見は一瞬恐いような? でもしばらく見ていると、そうじゃ無い。

枝の線、背景の色の重なりに 先生の作品でいつも感じる

安心感が 滲んで見えてくるのでした。

うーむ、こればかりは文章で説明しても 仕方のないことですね。

機会があればぜひご覧頂きたいと思います。

 

春陽展は毎年、チャリティで小品を販売しています。

収益金の一部を、今年は熊本へ送って下さるとの事で

私も微々たる協力をさせていただきました。

大坂忠司先生の木版画「Ponte Vecchio」

懐かしいフィレンツェの橋の風景。

水面から見上げた構図に惹かれます。

どんな額縁を作りましょうか。

濃い茶色の木地仕上げ、彫刻も少し入れて…

なんて、さっそく構想を練っています。

 

 

2017年の福の神 5月01日

 

また今年もKANESEIの福の神

モッコウバラの季節になりました。

昨年に虫被害があって葉がすっかり落ち

今年は花がめっきり少なくて寂しいのですが

御利益は例年通り

いえ、例年に増して忙しい連休です。

思えばここ数年、5月の連休をのんびり 過ごした記憶がありません。

爽やかな季節、新緑と青空をジト目で一瞥して

作業部屋に引きこもる日々。

だけど、こんな形のひとり工房で仕事を頂けているのは幸せなことです。

ありがとうございます。

 

さぁ、今日も張り切って作ります!

 

 

お好みはどちら? 4月27日

 

金色のオーナメント。

下地はどちらも同じ着色方法ですが、

上がほんの少しのアンティーク加工

下がしっかりアンティーク加工です。

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どちらがお好みですか?    

これからの季節には、上の明るい金が良いですか?

上は春夏、下は秋冬、といった雰囲気でしょうか。

 

 

縮んだ彫刻刀から考える未来 4月24日

 

わたしが愛用している彫刻刀は

イタリア留学時代に購入したスイス製の物です。

学校の彫刻授業の貸し出しも、プロの彫刻師も

ほとんどのシーンでこのメーカーの彫刻刀が使われていました。

市が尾の古典技法アトリエ Atelier LAPIS でも

筒井先生がシリーズを揃えて下さっており、

生徒さんが日々彫刻に励んでいます。

先日、わたしの彫刻刀とアトリエの彫刻刀を

何気なく並べてみたら、ずいぶんと違うのでした。

柄の長さ、刃の長さがアトリエのものは短い。

見た目は小さな違いですが、使い勝手は大きく違います。

木製の柄は、わたしの物は塗装されているようですが

アトリエの物は無塗装(恐らく)でザラリとした手触り。

ロゴの入れ方も変わったように感じます。

わたしの彫刻刀は、かれこれ20年前(!)に

購入したものですが、アトリエの彫刻刀はそれ以降。

経費削減が図られた結果の変化、なのでしょうか。

単にシリーズの違いによるサイズ変化なら良いのですが。

(わたしの彫刻刀はばら売り、アトリエのはまとめて

購入した箱入りシリーズなのです。)

 

新しく開発される材料--発色の良い絵具や環境に配慮された

塗料、接着剤--は日進月歩で素晴らしい反面、

道具や古典手技法の材料は「昔より今が良い」は

残念ながら耳にすることがあまり無いようです。

ヨーロッパではボーロやニカワ、日本では胡粉も

昔のように良い物を手に入れることが難しくなってきている・・・

メノウ棒の品質も変化しているような気がします。

50年後には、いったいどうなっているのだろう?

2本の彫刻刀を眺めながら、複雑な気持ちの午後でした。

 

 

ぴぐもん 4月17日

 

先日、天王洲アイルへ行く機会があり

咄嗟に思い出したのが「pigment」と言うお店のこと。

伝統画材のショップで、一昨年の夏の開店以来 ずっと気になっていたのです。

なにせ膠、顔料、そしてZECCHIの商品

–メノウ棒、箔道具やモルデンテ–を扱っているのですから。

出不精のわたし、なかなかたどり着きませんでした。

 

ところが、なんということでしょう。

定休日でした。わー・・・。

 

仕方なくウィンドウから覗き見、凝視。

あれに見えるはZECCHIのロゴと商品です。

ルフランのボーロ、赤以外に黒も見えます。

ずらりと並んで飾ってある顔料の美しいこと。

チューブ入りの水練り顔料、欲しかったなぁ。

 

なんとも、もどかしいばかりでした。

夏が来る前に、お店が開いている時に きっとまた来ますよ!

とお店の皆さんに向かって つぶやきました。

こちらを見ていらっしゃいます。

覗きすぎて挙動不審でしたでしょうか・・・すみません。

pigment tokyo (月曜・木曜休み)

pigment tokyo online shop-zecchi

 

彫刻は磨くか否か 4月13日

 

イタリア留学時代、彫刻の授業で先生は

「彫刻は紙ヤスリでは磨かないよ」 とおっしゃっていました。

当時は「なるほど、そうなんだな」 と思っただけでした。

木地のままで仕上げる場合(石膏をかけない場合)は

彫り跡を残した方が美しいと感じます。

紙ヤスリをかけるとノッペリとした印象になるような。

でも、彫刻の上に石膏をかける場合は

紙ヤスリをかけた方が美しく仕上がると思います。

木地が整っていれば石膏も均一に塗れますから。

とはいえ仕上がりイメージやデザインによります。

木地仕上げだとしても、ツルリと整ったデザインの場合は

もちろん紙やすりを数種類使って磨き上げます。

結局のところ・・・好み、そして臨機応変と言うことでしょうか。

とりとめのないお話になってしまいました。

 

 

気迫で勝負 4月10日

 

制作中、たまに「材料との勝負」を感じる事があります。

広い面の石膏塗りや細かい箔置きなど、ちょっと困難な場面でも

「さあ、わたしの言う事を聞きなさい!」 という気持ちで迫ると

石膏や金箔が素直になってくれるような気がします。

材料との勝負。負けられません。

そんな時のわたしの表情や目付きは恐ろしそうで

お見せできそうもありません。

 

結局のところ、額縁制作に限らず様々な場面で

いかにあきらめないか、我慢するか

「自分との勝負」なのですけれども・・・。

 

 

夜のサングラス作戦 4月06日

 

純金箔を貼って、3枚4枚と額縁をメノウ磨きしていると

肩こりもしますが、一番疲れるのは目です。

黄金の反射光は後頭部まで刺さるような(大げさですが)

強力な光です。

北向きのアトリエがあって、自然光での磨きだったら

もっと楽なのでしょうけれど、箔磨きは夜になる場合が多いのです。

わたしのテンペラ画の先生のおひとりは、

夜に(つまり蛍光灯下で)金箔を磨くときはサングラスをなさるとか!  

わたしは作業後にうす暗くしたお風呂で、

ゆっくり温まりながら 目に手を当てて眼球も温めます。

これが効きます。

そして肩には「おきゅ膏」を貼って、おやすみなさい。

 KIN-1

でもやっぱり、次回「夜のサングラス作戦」トライしてみます。

目は大切にしたいです。  

 

 

ルソーは見たのか 4月03日

 

まだ桜が開花する前のころ、

深大植物公園に行きました。

晴れた春、散歩日和です。

 

この植物公園にはとても大きな温室があります。

久しぶりに入ってみた室内は、外と打って変わって熱帯植物の世界。

まるでルソーの絵に入ったような気持ちになったのでした。

バナナ。

果実はとても身近だけれど、木そのものは遠い植物。

迫力もあって、ひときわ南国を感じさせます。

 

帰宅後にルソーの絵を検索して見たのですが

描かれているバナナの木は、なんだかちょっと違うみたい。

まるで普通の広葉樹にバナナ風の大きな葉が付いているだけのような?

 

ルソーのバナナはルソーだけが見た夢の中のバナナ。

なのでしょうか。

Fight between a Tiger and a Buffalo, 1908   

Henri Rousseau (French, 1844-1910)

The Cleveland Museum of Art

 

19世紀イギリスの雰囲気で その2 3月30日

 

先日、atelier LAPIS で製作中とお話しました

19世紀イギリス風額縁の彫刻が終わりました。

小さなモチーフばかりなので 繰り返し作業の多い彫刻でしたが、

生徒さんの製作を手伝ったりアドバイスしたり

細々とした時間の合間に彫るには かえって良かったようです。

 

次は金箔です。

この時代のスタイル通り、石膏は塗らずに

金箔をミッショーネ(糊で貼る技法)で貼る予定。

全面ミッショーネは初めてですので、楽しみです。

 

 

East India Company 東インド会社からはるばると 3月23日

 

イギリスのお土産でいただいた紅茶は

東インド会社のものでした。

ティーバッグとは思えないような 本格的な香りと味、美味しいです。

さすが紅茶の本場のイギリス。

ごちそうさまでした。

 

東インド会社って 世界最初の株式会社でしたっけ・・・

歴史の授業で習いましたが 今も続いているのですね。

びっくりしました。

 

やる気が瞬間消滅・・・因果応報 3月16日

 

先日自宅で、ご注文いただいた額縁の彫刻をして

ついうっかりと左手人差し指に

彫刻刀を刺してしまいました。

幸いに大した怪我でもなかったのですが

痛いよりも、なんだかガッカリ感が強いのです。

何がガッカリって、自分の不注意と

道具の手入れを怠ったこと、でしょうか。

「やる気スイッチがブレーカーから落ちる」ような気分です。

 

刃物を使っていて怪我をする場面はたいてい

作業に慣れて、完成が目前で気を抜いた瞬間

または研ぎを怠って切れない刃物を使っているとき。

本来なら彫る作業をする前後に、毎日研ぐのがベストですが

ついつい後回しにしてしまうのでした。

なにごとも因果応報でございます。

 

日本では砥石を水に濡らして使いますが

イタリアの学校では砥石に油(ミシン油のような)を

垂らして研いでいました。

砥石が日本の水研ぎ用と違う種類なのですね。

ちなみに刃物研ぎは男子生徒のほうが熱心でした。

彫るより研ぐほうが好きなのでは・・・というようだった

スイス出身のR君を少し見習わねば、と思い出しています。

 

 

19世紀イギリスの雰囲気で 3月09日

 

atelier LAPIS のレッスンがある毎週月曜日には

わたしもアトリエで何かしらの 制作をしています。

ここ最近はもっぱら彫刻です。

 

アトリエには沢山の本がありますが

最近この19世紀イギリスの額縁を扱った 本をよく見ていましたので、

ここはひとつ19世紀イギリス風の額縁を作ることにしました。

月桂樹のような葉のリースを内側にぐるり、

外のラインには渦巻きリボンのデザイン。(まだ下描き)

平らな部分には箔を直接ミッショーネで貼る予定です。

KANESEIの新しいシリーズとしてのサンプルに、

またLAPIS生徒さん方の制作参考のお役に立てば、と思っております。

 

彫り始めたばかりですが楽しいです。

完成しましたらこちらでご覧いただきたいと思います。

 

 

お姫様とねこ 3月06日

 

先日ご覧いただいたねこのテンペラ画と

ラテン語を入れた額縁の額装が終わりました。

ねこテンペラは白と金のアンティーク風額縁

 

ラテン語の額縁には 中世のお姫様の模写テンペラ画を。

 

ちなみにこのラテン語は “ver erat aeternum”

オウィディウスの詩から借用しました。

「永遠に続く春」という意味だそうです。

お姫様とは関係がありませんけれど、装飾として。

 

この2点の黄金背景テンペラ画を3月16日から22日までの

「小さい絵と猫の絵画展」に出品いたします。

東急百貨店吉祥寺店8階の美術工芸品売場です。

お近くにおいでの際は、ぜひお立ち寄りくださいませ。

「小さい絵と猫の絵画展」

 

ver erat aeternum 3月02日

 

最近にわかにまた文字装飾熱が復活したわたしです。

新しく小さな額縁にも ラテン語を入れました。

絵の具を盛るようにのせて ふっくらとさせました。

これから茶色に着色して アンティークな雰囲気に仕上げる予定。

黄金背景テンペラ画が納まったら

またこちらでご覧いただきたいと思います。

 

 

本を読むときは素裸で 2月23日

 

我ながら紛らわしいタイトルだと思いますが

裸になるのはわたしではありません。

本です。

カバーも帯も、挟まっているものもさっぱりと外して

裸の本にしてから読んだり持ち歩いたりします。

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ずれたり折れたりしないよう気遣う必要も無く

これで安心して本の世界に入っていくのです。  

 

ちなみに図書館で借りた本には自分のカバーをかけます・・・。

裸 or 厚着 皆さんはどうなさっていますか?    

 

 

ネコテンペラ2 2月20日

 

横っちょからひょっこりと。

子猫のテンペラを描きました。

昨年秋に準備していたものですが、

ようやく今日彩色が終わり

そろそろ額縁の準備をしようと思います。

白い額縁か金色の額縁か、迷います・・・。  

 

 

 

よそいき 2月09日

 

べっこう柄のメガネが壊れました。

とても気に入っていたのですが

うっかりと踏んでしまったので自業自得。

おまけにこのメガネは「よそいき」でしたので

外出時に大変不便です。

めがね

仕方がないので同じメガネを買いました。

こんどは黒です。

また踏まないよう大切にします。

「よそいき」って最近聞かない言葉ですね。

 

 

 

石を持て 2月06日

 

フィレンツェ留学中の修業先、額縁工房のマッシモ氏に

一番最初のころに注意されたのが

「メノウ棒は柄を持つのではないよ、石を持ちなさい」でした。

もちろんメノウ棒の種類にもよりますけれど、

正確には石と真鍮の軸のつなぎ目辺りを持つ、という感じです。

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それまでわたしは自己流で、鉛筆を持つようにして

メノウ棒の木製の柄を持ち、手首を振ってメノウ棒を動かしていました。

 

残念ながらマッシモ氏から理由は教わっていませんが

それ以来わたしが石部分を持って作業した感想としては

・石膏地や箔の感触がより繊細に感じられる

・余計な力が入らないので石が滑って箔に傷がつくことが少ない

・メノウ石と真鍮の軸が緩んだり外れたりすることが少ない

・腕全体を動かすので疲れが少ない

などでしょうか。

慣れるまですこし磨き辛く感じるかもしれませんが、

メノウ磨きは「石を持て」、お勧めです。

 

 

これはアリかもしれませんよ 1月30日

 

KANESEIでは、ふだん型取りには 石膏を使っています。

硬さと密度がベストかな、というのがその理由。

ですが、以前から額縁の装飾に紙粘土を使う、という

お話を聞くことがあって気になっていました。

でも・・・小学生時代に触っていた紙粘土の感触、

繊維っぽいパサパサ、ガサゴソした印象がぬぐえず

ちょっと躊躇していたのも事実なのですけれど。

 

先日、atelier LAPIS の生徒さんが型取りをしてみたい

とのこと、ここで思い出したのが紙粘土でした。

昔よりずっと良い紙粘土があるし、実際に紙粘土で

額縁の装飾を型取りした経験がある生徒さんもいらっしゃる。

じゃあ紙粘土が手軽なので試してみましょう!

トライしてみました。

丸いオーナメントからシリコン粘土で雌型をつくって、

紙粘土を詰めてそっと抜きます。

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良い感じですね!模様も繊細に再現されています。

成功のカギは、石粉配合の高級紙粘土を奮発すること

(子どもの工作用より良いもの。)

空気が入らないようにきっちり型につめること、

型から取り出すタイミング、でしょうか。

 

今回は丸い形なので問題ありませんでしたが、

細長い形だと、もしかしたら乾燥する間にゆがむかもしれません。

ともあれ、高級紙粘土での型取りは石膏より手軽ですし

精度も遜色ないようですから、これは良いかもしれません。

半乾きの時だったら曲線部分にもフレキシブルに貼れるかも。

型取りに限らず、装飾模様に粘土で作ったものを接着し、

ボローニャ石膏を薄くかければ箔の水押しだってできるかも??

実験継続が必要ですが可能性大、面白そうです!

 

 

 

3年後にやっと 1月26日


ちらかった机から失礼いたします・・・。

2013年、まだ金継ぎの勉強をしていなかった頃に

「なんちゃって金継ぎ風」で欠けを継いだ

わたしの大切なマグカップですが

昨年ようやく本金継ぎをすることができました。

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高価なものではなくても、こうして手入れをしていけたら

このマグカップ氏も喜んでくれているのではないかなぁ

と想像しつつ、使っています。




文字装飾 1月16日

 

文字を額縁の装飾に入れるのが好きです。

ほとんどの場合はラテン語の慣用句を選んでいます。

イタリア留学先の Palazzo Spinelli (修復専門学校)の

終了制作で作ったスペインゴシックスタイルの額縁が始まりでした。

 

今までは自分の為の創作額縁にラテン語装飾を入れていましたが

とうとうご注文を頂いて、嬉々として文字を描いています。

いつかカリグラフィーも勉強してみたい。

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そういえば昔、もじもじくんってありましたね。

とんねるずの。

あれも好きでした。

 

紙ペーパー? 1月12日

 

紙やすり、あるいはサンドペーパー。

額縁制作に限らず、木工には欠かせません。

KANESEIでは180番から600番くらいまで

常時5~6種類の紙やすりを準備しています。

 

先日、紙やすりのパッケージを見ていて

ちょっと面白くなってしまいました。

「紙ペーパー」ですって。

紙紙?ペーパーペーパー?

「紙ペーパー」が通じるのは紙やすり業界ならでは。

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紙やすり=サンドペーパー→略してペーパー。

そして「布ペーパー」なるものも存在します。

つぶつぶ(サンド)が紙についているのがサンドペーパー。

布についている(主に耐水)が布ペーパーと呼ばれるもの。

でもこれって「布製サンドペーパー」ですよね。

あるいは「サンドクロス」とか?

・・・なんだか良く分からなくなってきました。

 

私を含めて職人・作家は紙やすりで研ぐことを

「ペーパーをかける」なんていうのですが、

「紙をかける」ってなんじゃい??

そんな紛らわしいこと言わないで「ヤスリをかける」と

言えばいいじゃない?と思いますけれども、

ただ「ヤスリ」だと棒状の金ヤスリの場合もある・・・

「紙やすりをかける」なんてまどろっこしい!

よって「紙ペーパー」なる言葉が出現したのですね。

何気なく使っているけれど、考えたら可笑しな言葉!

 

 

受注休止のおしらせ 1月02日

 

いつもありがとうございます。

2016年からたくさんのご注文を頂き、

額縁の制作、修復の完成までにお時間を頂くことが多くなりました。

この度、しばらくの間ですが受注を休止させて頂きます。

KANESEIをお選びいただきながらお断りすることが心苦しく、

申し訳がございません。

再開は2018年春を予定しております。

また、KANESEI特製吊金具のご注文は続けてお受けいたします。  

現在すでに頂いております見積ご依頼やご相談は

引き続き誠心誠意対応させて頂きます。

どうぞよろしくお願い申し上げます。  

 2017年1月 KANESEI  

 

 

つよい心で 1月02日

 

あけましておめでとうございます。

東京は良いお天気、穏やかなお正月を迎えました。

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ことしもいつも通りの元旦の食卓です。

お年玉も頂いてしまいました。

もう頂く年齢ではありませんけれども、頂ける間は

ありがたく頂戴いたします、父上様。

 

わたしにとって2016年は、仕事上で変化のある年でした。

精神面で、いままでのようでは進めない。

色々な意味で、もっと強い覚悟がないと越えられない

というようなシーンが増えました。

KANESEIとして額縁の制作、修復を始めて、

こうした局面を迎えるのが遅すぎた感もありますが

「とにかくここまで来た」というささやかな感慨もまたあります。

2017年は2016年の流れに乗って、心を強くもって

恐れずに進みたいと思います。

 

2017gantan-2

具だくさんのお雑煮で英気を養うお正月です。

 

 

あけましておめでとうございます 1月01日

 

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旧年中はありがとうございました。

新春を迎え皆様のご多幸をお祈り申し上げますと共に

本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

平成29年 元旦 KANESEI

 

 

KANESEI作業部屋、冬の風景 12月29日

 

冬のボローニャ石膏塗り作業は

湯煎での石膏液の温度管理が忙しくなります。

石膏液の温度はすぐに下がってしまう。

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かといって温め過ぎると気泡が入りやすくなりますし

石膏液の水分が蒸発してしまって濃度が変わってしまう。

こまめに湯煎にかけたり下したり。

そして湯煎用の鍋からの蒸気で窓が曇ったり。

ラジオからは乾燥注意報が聞こえています。

いつもの冬、石膏塗りの風景です。

 

 

2016年のKANESEI Diario 今日でおしまいです。

本年もKANESEIのホームページをご覧くださり

ありがとうございました。

また、仕事で様々にお世話になりました皆さま

心よりお礼申し上げます。

今年はチャレンジができた一年でした。

そしてそのチャレンジは続行中です。

2017年にその良い結果が出せますよう努力いたします。

来る年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

あたたかなお正月をお迎えくださいませ。

 

Buon Natale 2016 12月25日

 

メリークリスマス!

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保土ヶ谷のビジネスパークにあるツリーです。

毎週通っていましたが、ある朝突然に大きくて立派なツリーが登場!

設置は大変だろうなぁ、その様子も見たかったな、なんて思います。

この巨大なツリー、3階くらいの高さがあるように見えます。

どうやって立てたのでしょうね??

きっと毎年、作業服の男性たちが組み立て、装飾をして、天辺に星を飾って。

電飾をONにしたときには喜びの拍手が起こったことでしょう。

普段はビジネスマンたちが闊歩するロビーですが

この時期は子供たちがツリー見学に来て、可愛らしい声も聞こえます。

皆が喜んでいる姿を、設置して下さった方々が見てくれたらと思います。

 

我が家の庭にも喜びが一つ。

デルフトブルーのヒヤシンス、ヒヤ子の芽が出ました。

昨年春に水栽培から地植えにして、今年春には小さな花を付けました。

地面の下で来春にむけて、着々と準備をしているのでしょう。

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クリスマスに毎年登場する天使たちにも応援してもらって

ヒヤ子、がんばって!

 

 

頼もしい仲間 12月15日

 

筆もメノウ棒も、そして彫刻刀も

数はいくつも持っていて、そのつど使い分けますけれど

結局のところ好みの何本かが決まっていて

そればかり使っていたりして。

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道具はある程度の数は必要だけれど、

沢山あればあるほど良い、というわけでもない。

反対に、いくら沢山あっても「これがなくっちゃ!」がある。

軍団の中の少数精鋭の道具たちは

大切な「気の合う頼もしい仲間」です。

 

押すのか引くのか 12月12日

 

さ、寒いのです・・・。

どうもエアコンの調子が良くありません。

金属のヤスリを握っていると熱が芯から奪われてしまう。

最近はもっぱら指だし手袋にカイロを入れています。

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ヤスリを使っていて思い出すのは、大学時代にご指導頂いた先生。

彫刻の授業でFRPに必死にヤスリをかけていた時に

「あんたね!めったやたらにガリガリやるんじゃないよ!

ヤスリは押す時に切れるの!引くときにも力を入れたら

ヤスリが傷むからやめてくれ!!」と怒られて(?)びっくりしました。

なにせそれまでヤスリに方向があるなんて知りませんでしたから。

言われてみれば押すと手ごたえがある。ほほう!

 

それ以来、押す→引くのリズムをとるようになりました。

初心を思い出す、佐藤先生との懐かしい記憶です。

 

 

型取りオーナメント大会 12月01日

 

今日から12月、2016年おわりもカウントダウン開始です。

 

晴れ晴れとした気持ちの良い日に、朝からせっせと石膏で

型取りのオーナメントをつくりました。

完成後に並べてみると、なかなか達成感があります。

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右側の丸いオーナメントは額縁10枚分と予備。

額縁の四隅に1つずつつける予定で40個ちょっとです。

これからバリを取り除いて、裏側を削って調整します。

 

左側には新入りオーナメントもあります。

いつものように、骨董市で手に入れた

ヨーロッパのオーナメントから型取りしました。

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まるいバラの様な形のもの、そして天使。

この天使ちゃん、口元は笑っているのに目が怖いです。

クスクスと笑い声が聞こえてきそうな不敵な表情。

何に使いましょうか・・・やはり小箱?

ミステリアスな小箱が完成しそうです。

 

 

小さい小さい絵展 2016 + 猫の絵画展 11月28日

 

2016年は残すところあとひと月とちょっと。

早いものです。

今年の暮もまた「小さい小さい絵」展に出品いたします。

今回はいつもの小さい絵展にプラスして

猫の絵画展も同時開催です。

先日ご覧いただいた猫のテンペラ画を展示予定です。

池袋にお越しの際は、どうぞお立ち寄りくださいませ。

どうぞよろしくお願い申し上げます。

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小さい小さい絵展 猫の絵画展

池袋東武百貨店 アクセス

 

作っています 11月24日

 

KANESEI特製の吊金具のご注文

ありがとうございます。

ただいま制作中です。

 

形ができましたよ。

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穴もあきました。

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もうしばらくお待ちくださいませ。

 

前方後円墳、なんて呼ばれています。

そういえばそんな形・・・ハハハ。

 

金継ぎ 完成しました 11月07日

 

平和島骨董市で買った金継ぎ練習用のお皿は

先月の稽古でようやく作業が終わりました。

 

前回に蒔絵をした部分には

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翌日に余分な金粉をはらってから

「固め」の生漆を塗っておきました。

そして金継ぎ稽古の日に、固めたお皿と鯛牙を持って

いそいそと。

下の写真は金を鯛牙で磨いています。

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輝いている金は磨き終えたところ

暗い金はこれから磨くところ。

金粉は磨く前にはただの黄土色の粉に見えるのです。

 

ようやく完成しました。

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長くかかりました。いやはや。

入門者のわたしにはハードルの高い作業でしたが

とにかく目的である「練習」は大いにできました。

やってみないと分からないことばかりでしたから。

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金継ぎ練習はつづけます。

でもしばらくは小さな欠けや亀裂修理でコツコツと。

数をこなして漆に慣れていこうと思います。

 

はー。なにはともあれ達成感を味わいます。

 

額縁 お色直しもうひとつ 11月03日

 

今年3月に開催させていただきました

JAWA-SHOW(TOKYO画材ショー)でのワークショップに

額連でご準備下さった教材用額縁を

いくつか頂戴していましたのですが、

先日の「額縁 お色直し」で味を占めて

この額縁でも試してみました。

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下の写真右がオリジナルの額縁

左が加工後の額縁です。

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右のオリジナルの方が金が明るく華やかな雰囲気です。

マチエールのある作品が合いそう。

左の加工後は色と艶のトーンを落としたので落ち着いた様子。

先週木曜に完成した姿もご紹介しましたが、

夏に作ったゴッツォリの模写を入れました。

色を暗く、古びた雰囲気に加工しています。

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まだあといくつか、頂いた額縁がありますので

オリジナルの華やかな印象に合う模写も作ってみようかな、

と思っています。

 

箔 今昔 10月31日

 

KANESEIに入院中の天使、ようやくここまで

たどりつきました。

箔を置いてメノウ磨きが済んだところ。

方翼だけキラキラになった天使ちゃんです。

もうすぐ飛べるはず。

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白っぽく光っているところは今回箔を置いた部分です。

箔のつくろいをしてまた磨き、それから

オリジナルの部分のような色艶にするための補彩をします。

 

わたしは普段、箔類は金沢のお店にお願いしています。

先日も純金箔と洋箔(銅と亜鉛の合金箔、純金箔の代用品)を

購入しましたが、やはり高騰しているのですね。

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上の写真、純金箔4号色(94.4%金)で100枚18000円くらいでしょうか。

(時価ですので今日すでに高くなっている可能性も有り。)

わたしが大学生の頃、はじめて金箔を買ったときには

贅沢にも4号箔よりもっと純度の高いほぼ24金の金箔を使っていて、

その金箔が100枚で1万円しないくらいだったと記憶しています。

当時はまだ額縁制作を続けるとは思っていませんでしたけれど

「あの頃、金箔を買い溜めしておけば良かったなぁ」

なんて思ったりしています。

 

 

今年は早めに 10月27日

 

冬支度開始」でお話した、暮の「小さい小さい絵」展の準備を

今年はすこし早めに終えることにしました。

ハガキより小さなサイズのテンペラ画を額縁に納めました。

例年は11月後半の納品締切ギリギリになってしまうのですが

早めに準備を終えると気持ちも晴れ晴れです。

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ひとつひとつタイプの違う“わたしの娘たち”

12月に皆様にご覧いただけますよう。

 

 

梅若研能会橘香会 10月24日

 

10月22日の土曜日、国立能楽堂での橘香会の舞台を拝見しました。

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友人の繋がりで最近お知り合いになった

古室知也さんシテの「藤戸」が目当てでした。

なにせ20年ぶり3回目のお能、理解できるか不安でしたが

前もって古室さんに解説していただいたり資料を頂いて

予習できましたので、とても興味深く拝見できました。

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仮面劇であり、動きも緩やかなお能ですが

表現力の深さに感動しました。

藤戸も朝長も死者が霊になって登場する内容で

(この2つに限らずお能は霊の登場が多いそうですが)

決して明るい物語ではありませんでしたが

観劇後はどこか清々しいような、穏やかな気持ちになっていて

なんとも不思議なのでした。

 

 

金継ぎ 作業6 10月20日

 

平和島骨董市で「金継ぎ練習用」として売られていた

割れたお皿の修理作業も大詰めになりました。

高蒔絵にするため、模様を漆で高さを出して

乾くのを待つまでの様子が前回作業5でした。

 

その後に朱漆を全面に塗ってまた乾くのを待ち・・・

(作業時間より待ち時間のほうがずっと長い)

とうとう金蒔絵の作業になりましたよ!

 

計画通り、高くした模様部分にだけ朱漆を塗り

しばらく待ってから金粉を撒きました。

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豪快に金を撒き過ぎまして、余計な部分にも沢山ついてしまいました。

もったいないこと。

さて、この状態でまた1日ほど漆が乾くのを待ちます。

それから「固め」の生漆を金に塗って、さらに1日待ちます。

 

まだ待つの?!・・・これが最後の待ち時間です。

 

 

これさえあれば 10月17日

 

以前に作った額縁と同じデザインで、という

ご注文を頂いたとき、かならず取り出すのが

模様の下書きをしたトレーシングペーパーです。

(もちろん模様が入っているデザインの場合、ですが)

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そのトレーシングペーパーは上の写真のように

小さな紙片ですから、ポケットファイルに入れて整理しています。

新しいデザインの額縁を作るたびに紙片が増えて、

気づけばファイルも随分と分厚くなってきました。

 

トレぺの紙片を見れば、どんな額縁で誰に作ったか思い出せる。

このファイルさえあれば、また同じ額縁を作る事ができる。

KANESEIのお宝のひとつ、でございます。

 

ネコテンペラ 10月13日

 

先日に金箔を貼り終えたねこのテンペラ画が

ひとつできました。

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直系10センチくらいの板に黄金背景、卵黄テンペラです。

ねこは初めて描きましたが、ふわふわの毛の表現が難しいのですね。

ハッチングの線が目立つと剛毛に見えてしまう。

ぶにゃー!

ねこ特有のやわらかさと可愛らしさ、愛嬌を出したいのだけど。

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バケネコになりきれず茫然とした表情・・・といったところ?

むむむ。

 

ティントレットの世界 10月10日

 

国立新美術館で開催中の、アカデミア美術館所蔵

「ヴェネツィア・ルネサンスの巨匠たち」展に行きました。

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ベッリーニ、クリヴェッリ、カルパッチョ、ティツィアーノ

そしてわたしの大好きなティントレットの作品が出ています。

 

19歳の時にはじめてヴェネツィアでティントレットを観たとき

うす暗い部屋の天井近く一杯にあった作品の

灰色がかった青と紫がかった赤、強いハイライトの白と

影の縁にある反射の表現の激しさで

「な、なんだこのオドロオドロしい絵は!」が第一印象でした。

なにせその頃のわたしはボッティチェッリとモネ凝っていて

明るい色使いと女性的な美を追っていたのです。

でもティントレットの作品に「ぎゃっ」と思ったのもつかの間

旅の最中になんども、教会やドゥカーレ宮など本来あるべき場所

-美術館ではなくて-で観る機会を得るにつけ

独特の強さと不思議な世界に引き込まれたことを覚えています。

今回ひさしぶりにティントレットの作品に触れる事ができて

ヴェネツィアで観たときの感情や部屋の匂い、空気の様子を思い出しました。

 

この展覧会にはルネッサンスらしい額縁も出ています。

肖像画の小品に付けられていた額縁には、金箔をふんだんに使った

グラッフィートなど繊細な額縁があって、それも見どころ。

ちなみにわたしのおススメはティントレットの「動物の創造」です。

神様が動物、鳥、魚を生み出した瞬間を描いています。

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筆使いも構成もドラマチック、そしてちょっとユーモラス。

神様が今まさに「さぁ、行きなさい!」と叫ばれた瞬間でしょうか。

みなが神様の指さす方、同じ方向を目指しています。

鳥が不思議な飛び方をしています。

そして右端のユニコーン。

天地創造時にはユニコーンがいたのかな。

顔しか描かれていませんが、躍動感あふれる全身が見えるよう。

東京での展示は今日で終わってしまいますが、大阪に巡回します。

おいでの際にはぜひ楽しみにご覧ください。

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「アカデミア美術館所蔵 ヴェネツィア・ルネサンスの巨匠たち」

東京・新国立美術館 10月10日(月・祝)まで開催

大阪・国立国際美術館 10月22日(土)より開催

 

雨の日に 10月06日

 

やっと秋が来たと思ったのに、暑い日が来たり

変な陽気がつづきますね。

 

先日の雨の日、展覧会めぐりをしました。

まずは日本橋三越で開催の「第63回日本伝統工芸展」です。

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毎年楽しみにしている展覧会ですが、今年はなんと

知人の知人(お目にかかっていませんが)高橋奈己さんと仰る方が

日本工芸会新人賞を受賞されたとのお知らせがありました。

すばらしい!これまでの鍛錬の賜物です。

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うつくしい曲線で構成された白磁の水差し。

女性らしい柔らかさと同時に鋭さも感じられました。

金継ぎを勉強するようになってから、漆の作品を見る

気持ちにも変化が出てきました。

完成するまでの労力、その技術、時間・・・

百聞は一見にしかず、と言いますか

百見は一経験にしかず、なのでした。

 

さて、続いて六本木の国立新美術館に移動して新制作展です。

わたしの母校である和光大学には新制作に所属されている

先生方が多く、以前は毎年お邪魔していた新制作展ですが

ひさびさに拝見しました。

この冊子にもお世話になった先生方のお名前が。

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こちら新制作は今年で80周年だとか。

日本伝統工芸展が63回ですから、ずいぶんと古いのですね。

 

さてさて続きまして、Tokyo Conservation の室長

尾形先生の個展を・・・と意気込んで行きましたら、

ギャラリーにはシャッターが下りていたのでした。

開廊日のチェック、忘れていました。

やれやれ・・・そんな日もあります、と思うことに。

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金継ぎ 作業5 10月03日

 

木片を埋め込んでコクソ漆、朱漆、黒呂色漆を塗って

やっとのことで整形を終えた(あきらめた)金継ぎ練習ですが、

そろそろ装飾部分の計画を立てる段階までたどりつきました。

悩んだ結果、高蒔絵で装飾を入れることにしました。

 

全く関係のない模様を入れることも考えましたが

華やかな図柄のお皿に違う模様はゴチャゴチャになるだろう

それに全体を金にすると派手すぎるし・・・

ということで、先生にいただいたアドバイスに従って

オリジナルの模様を追って再現し

高く盛った模様部分を金、他は朱で仕上げる計画に。

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蒔絵筆をゆっくりゆっくり動かして漆を盛ります。

あまりに集中して窒息しそうでした。

 

蒔絵筆はわたしが普段テンペラに使う面相筆と同じくらいの細さ。

でも漆は卵黄テンペラ絵の具よりずっと粘りがあります。

いつものテンペラの感覚で漆を筆に含ませて動かすと

厚塗りになりすぎる傾向があって、先生に注意されました。

筆を傾けて持って、進行方向に向かって引くように

ゆっくりとゆっくりと動かすのがコツのようです。

実践は難しいですが、ようやく分かって来ました。

 

ちなみにわたしの使っている蒔絵筆は猫の毛だとか。

真っ白でコシのある、うつくしい毛の筆です。

 

 

額縁の重さを考える 9月26日

 

先日、ごはん屋さんで隣になった女性が鉄の造形作家の方で

すこしお話することができました。

「鉄の額縁の作り方」を考えたのですが

その方いわく「とにかく鉄は重いのが問題。

壁に取り付けるにも壁の補強や設置が大変で

結局わたしは額縁を作るのをあきらめた」とのこと。

 

小さい額縁なら作れるけれど、大きいのはダメ。

でも鉄の強い表情や錆びた色、肌合いは魅力的だし

鉄なら外に設置出来て、経年変化も楽しめるのだけど・・・

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結局、最近は良い塗料があって「鉄風」の表現ができるから

額縁にするなら塗料を工夫するのが良いかもね・・・

という結果に落ち着いたのでした。

 

鉄など金属、焼き物、漆喰、

色々と額縁を作ってみたい素材はありますが

重さはひとつのネックになります。

でも工夫次第、かな?

 

 

Trial and Error 9月22日

 

ねこの黄金背景テンペラ画の準備をしています。

にゃー。

今日は赤色ボーロを塗って純金箔を水押しします。

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黄色いテープでマスキングしているので、下絵が隠れて

ねこなのか何なのか分からない状態になっています。

 

古典技法の教室 atelier LAPIS の生徒さんからの質問で多いのは

「ボローニャ石膏は何回(何層)塗るのですか」

「100㏄のニカワ液には何グラムの石膏を入れるのですか」

「ボーロはどれくらい塗れば良いですか」というものです。

この質問の答えは・・・いつも迷います。

というのも、作る額縁(あるいは絵)のデザイン、

仕上がりのイメージ、そして作り手の癖などを考慮する必要があるから。

本などによると、ボローニャ石膏は5~6層、

ボーロは3~4回塗り重ねる、と紹介している場合が多いでしょうか。

その一方、ボーロは1回で十分だ!と仰る先生もいらっしゃいます。

石膏もボーロも薄くするほどシャープな仕上がりになりますが

その代り技術が必要です。

LAPISのレッスンでは、それぞれの生徒さんの状況を見ながら

ちょうど良さそうなところまで(何とも中途半端な表現ですが)

塗ったり溶いたり、という作業をしていただいています。

 

古典技法には基本となる方法はありますけれど、

実は石膏やボーロの溶き方などには、お菓子のレシピのような

キッチリ決まった分量はありません。

ニカワ液に石膏を溶くにしても、何㏄に何gと答えられない。

ほとんどが「こんな感じ」としか説明できないことが多い・・・。

制作者それぞれの好み、技術に左右されるのです。

わたしの答えとしては

「LAPISでの方法(つまりわたしのお勧めの方法)でまず作って、

機会があれば他の先生の方法や本の方法も試してみて、

自分のレシピと方法を見つけてください」

なのです。

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わたしも様々な先生の方法を教えていただき

本の方法を試してみて、失敗も繰り返して、

沢山の情報の中から「良いとこ取り」をして

わたしの好きな方法とバリエーションを組み立てています。

 

今の方法よりもっと良い方法が見つかるかもしれません。

これからもわたしの試行錯誤はつづきます。

 

 

金継ぎ 作業4 9月19日

 

磨きに磨いて、木地が丸出しになってしまった補修部分は

先生にご相談して、とにかく整形をしっかりしてから

黒呂色漆を塗った上に朱漆を塗って、最後に磨きましょう

という計画になりました。いやはや。

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上の写真は磨き終えたところです。

朱漆の下に黒呂色漆が見えて、図らずもまるで根来塗。

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そして更に黒呂色漆を塗って、数日待ちます。

それからまた、磨きます・・・。

 

ああ、なんて長い工程、長い待ち時間。

わたしの技術が未熟だから、というのはもちろんですが

我慢強い心が必要です。

 

今回、欠損につかった木片はアガチスですが

後日先生にうかがったところ、

「アガチスでも悪くないけれど、ヒノキを使うことが多い。

ヒノキは長持ちするし良い」とのことでした。

なるほど。

次回また木片を使うことがあったらヒノキにします。

 

 

看板用額縁 9月15日

 

先日「額縁 お色直し」でご覧いただいた額縁は

浅草にあるグラスとバーグッズのお店「創吉」さんからのご注文で

看板用の額縁でした。

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創吉さんから設置完了のお知らせと写真を頂いたので

こちらでもご紹介させていただきます。

 

今回の額縁は樹脂製で、アクリルのカバーを入れています。

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なにせ看板ですから外に設置して風雨や直射日光にさらされます。

水に弱い木材、錆に弱い金属の使用は避けて

強被膜ラッカーを吹き付けています。

屋外用の額縁・・・わたしにとってはじめてでした。

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ともあれ、デザインはお店にぴったり。

ロゴが映えて道行く人たちの目にも留まりやすいはず。

お客さんをさらに沢山呼び込んで活躍してもらいます!

 

創吉さんでは江戸切子の教室も開催中です。

所要時間は90分。

浅草寺にお参りして、名物の天丼でランチ、

そして江戸切子体験、夜は自作の切子グラスで乾杯!

・・・なんて休日はいかがでしょうか。

創吉:江戸切子体験のご案内

 

 

金継ぎ 作業3 9月05日

 

ガサゴソと進めております割れ皿の金継ぎですが

先日作った欠け部分の木片を取付けました。

木片には生漆を塗り乾かしてから、麦漆で接着。

そして隙間を刻苧漆(コクソ漆、パテ状の漆)で埋めました。

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刻苧漆が乾くまで1週間待ちます。

彫刻刀で形を整えて紙やすりで滑らかにします。

そして黒呂色漆を塗り、1日乾燥。

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そして磨きに磨きます。

黒漆の艶が消えて、絹のような手触りになります。

 

あ、あれ・・・下の木地が見えてきました。

でもまた平らになってないので、更に磨きます。

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うーむ、ううーむ。木地丸出し。

木片はもっと薄く小さく(欠けより一回り以上小さく)

作るべきだったのですね。納得。

裏はまだマシです。

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あらためて黒呂色漆を塗って乾燥させて、さらに磨きます。

また木地が出たら塗って磨いて・・・を繰り返し。

この磨きが完成度を左右しますから、頑張りますよ!

 

こうしてみると、額縁もお皿も修復する工程も

気持ちも似ているのでした。

 

額縁 お色直し 9月01日

 

お客様が購入されたレディメイドの額縁は

工場でモールディングを組んで作られたものでした。

木製ではなく樹脂で出来ています。

最近の技術は素晴らしいのですね。

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さて、お客様からのご依頼

「綺麗だけど、どうも思っていたより金の色味が強い・・・」

とのことで、お色直しをすることに。

まずは磨り出しをして凸部分の金を少し落とします。

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金の塗装が落ちて白っぽくなりました。

ここにプライマーをスプレーしまして・・・

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色を叩きこんでのせます。

上の写真、縦方向に白っぽいのは未塗装の部分です。

塗装した部分もまだ色が生っぽいですね。

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さらに古色加工をして、艶消しに仕上げて完成です。

最初の金が、何十年か経って錆びたようなイメージです。

お色直し、いかがでしょうか。

 

 

冬支度開始 8月29日

 

8月が終わりに近づくと、もう冬の準備です。

気が早い? そんなことも無いのですよ。

毎年暮に開催される「小さい小さい絵」展の準備です。

 

フィレンツェのリッカルディ宮殿内にベノッツォ・ゴッツォリが描いた

フレスコ画からテンペラで部分模写しました。

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どんな額縁にいれましょうか。

金かな、黒かな、グレーかな。

しばらく絵を眺めて考えることにします。

 

 

What is the cornice? 8月25日

 

“cornice”

わたしにとってまず頭に浮かぶのは

イタリア語で額縁をさす言葉「コルニーチェ」です。

 

先日、お客様とメールのやり取りで

祭壇型額縁制作の打ち合わせをしました。

その際「corniceは3段にすること」とのご指示がありました。

cornice? 額縁は3段? どういうこと??

 

じっと文章を眺めて、気付きました。

「ああ、コーニスのことか!」

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上の図は wikipedia よりお借りしました。

3番の部分をコーニスと言います。

軒下の出っ張り部分のこと。

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上の写真は今年作った帆立貝のタベルナーコロ(祭壇型額縁)です。

上部紺色の装飾模様の上、彫刻の部分2段とその上1段までがコーニス。

この祭壇型額縁もコーニスが3段の構成です。

 

祭壇型の額縁はギリシャ神殿のような形で様々ありますが、

屋根や軒、柱などのデザインが入っていますので

部分の名称も建築用語そのままです。

そして、額縁の起源は扉や窓の枠。

改めて額縁と建築は切っても切れない関係であること、

また英語はラテン語から派生した言葉であることを

納得したのでした。

 

コーニスとコルニーチェは同じ綴り。

なるほど・・・そうだったのですね。

 

 

心が向かうのは 8月18日

 

金継ぎが仕上がった猪口で乾杯です。

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拙い仕上がりながらも

自分で繕った猪口でいただくお酒は美味美味。

 

気づけば

額縁修理も金継ぎも、Tokyo Conservation での絵画修復も

「壊れたものを直すこと」に情熱を傾けています。

 

 

鯛牙棒 8月11日

 

わたしは誰でしょう・・・

カタカタ

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答えは鯛。

あごの骨、半分です。

スーパーで一番大きな鯛の御頭をかってきて兜煮にした残り。

身は美味しくいただいて、あご骨も大事にキープします。

 

なぜこんなものを準備したかというと

「鯛牙棒」という道具を作るためです。

金継ぎ(金繕い)などで使われる蒔絵の金属粉を磨く道具で

額縁古典技法のメノウ棒とおなじような用途です。

 

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一番大きな牙を抜いて、粘土細工のヘラ先に穴をあけて差し込みました。

簡単そうに書いていますが、なかなか大変な作業だったそうです。

・・・はい、わたしが作ったのではなく、作ってもらったのです。

牙の反対側のヘラ部分は、ちょっとした「付け箆」にも使えそう。

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先日、ちょうど線刻模様額縁の金箔を磨く機会があったので

ものは試し、鯛牙に登場してもらったのですが

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細いみぞもバッチリと磨けたのでした。

ヨーロッパでも昔、メノウ棒だけではなくオオカミの牙などでも

磨いていたそうです。

日本では馴染みのある魚、鯛の牙をつかって

ヨーロッパ古典技法の額縁を磨く。

和洋折衷でございます。

 

下の写真は、金継ぎの先生が見せて下さった鯛牙です。

右から2本目以外は先生の手作りだそうです。

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6角形の軸に根本は漆仕上げ。

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プロならではのシンプルでかっこいい道具でした。

 

 

きっと誰しも 7月25日

 

田町の Tokyo Conservation で仕事をするとき、わたしは

午前中10時から11時ころが一番作業がはかどる時間です。

いっぽう、自宅の作業部屋で額縁を作っているときにも

一番気分が乗って集中力が増す時間があります。

それは夕方17時から18時ころ。

理由は分かりませんけれども。

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この「自分だけの不思議なゴールデンタイム」は

きっと皆さんもお持ちなのでしょうね。

 

西洋更紗 トワル・ド・ジュイ展 7月21日

 

渋谷のBunkamuraザ・ミュージアムで開催中の

「西洋更紗 トワル・ド・ジュイ展」へ行きました。

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東インド会社で輸入された綿更紗から発展して

フランス・ヴェルサイユ近郊の街で生産されたコットンプリント

「トワル・ド・ジュイ」の布の展覧会です。

インド更紗同様に木版で花模様やオリエンタルな模様をを印刷していたものが

徐々に銅板でフランスらしいオリジナルの模様を印刷するようになったとか。

 

お客さんの9割は女性。

それはそれは美しく、大切にされてきた布が展示されていました。

愛らしく可愛らしい模様・・・

「貴婦人と一角獣」のタペストリーのミル・フルールを思い出したり。

あるいはローマのヴァチカン美術館の長い廊下の天井画にあった

ギリシャ・ローマ風の模様を思い出したり。

そしてペルシャからシルクロードを通って日本に来た

正倉院宝物の裂地を思い出したり。

どれもこれも西洋と東洋のつながり、そして

西洋の模様の歴史をたどれるようでした。

フランスに永住を決めた藤田嗣治は、どんな気持ちで

「ジュイ布のある裸婦」を描いたのでしょうか。

自らミシンも操作して様々なものを縫っていた藤田ですから

ジュイ布もきっとお好きで、手元にコレクションしていたのかも?

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鑑賞後のグッズ売り場では鑑賞の興奮冷めやらず

つい買いすぎてしまいました。やれやれ。

復刻版(日本製)のジュイ布も買いましたので

小さなバッグでも作ってみようと思っています。

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渋谷Bunkamura ザ・ミュージアム

「西洋更紗 トワル・ド・ジュイ展」

7月31日まで開催中です。

 

 

 

 

すでに待ち遠しい 7月14日

 

暑いです。

まだ梅雨は明けていませんが、もう夏のようです。

 

いま作っている額縁は秋の名前が付いた作品を納めて

秋に開かれる展覧会に出品されるものです。

今からもう爽やかで美味しい秋が楽しみです・・・

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暑さもあと3カ月の辛抱。

 

 

怪奇 額縁木地の行方 7月07日

 

たしかにわたしは自他ともに認める探し物下手です。

家族はさることながら修復スタジオの室長、主任にも知られてしまっている。

ですが土曜日の午後におこったことは謎に包まれたままです。

 

ご注文にあわせて木地を4本切っていました。

額縁は両端を45度に切った長辺2本と短辺2本の棒を組みますから。

額縁木地を切り終わって、さあ接着して組もうと思ったのですが

無いのです。木地3本が。

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どこかに片づけるはずも無く、必ず作業部屋内にあるはず。

2日がかりで探しても、家族に探してもらっても見つからず

「切ったのは気のせいでは?本当は切ってないのでしょ?」

などと言われる始末・・・。

だけど、わたしは確かに木地を切って近くに置いたのです!

 

切った記憶はあるし端材もある、そして長辺1本だけがある。

なぜ4本中1本だけある?

誰かが持って行った?

木地が自ら歩いて出て行った?

わたしは記憶障害?・・・いえ、まさか。

神隠し、だったりして。いえいえ、まさか!

 

それきり、今日にいたるまで木地の行方は分かりません。

初夏の夕方、KANESEIにおきた怪奇現象のお話。

七夕の短冊にお願い事

「木地の残り3本が見つかりますように」と書きましょうか・・・。

 

金継ぎ練習 作業2 7月04日

 

平和島の骨董市で「金継ぎ練習用」として買った

割皿の作業を続けています。

破片2つを麦漆で接着したあと、足りない部分を

木片で作って補填しなければ。

KANESEI作業部屋にあった木片を削ることにします。

今回はアガチス材にしました。

アガチスで良いのかな?どうなんだろう。

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欠けた部分に木片をあてて形をとってから

ざっとノコギリで切り出します。

強度がでるよう、木目は平行に。

 

まずは下と外側のアールを削ってから様子を見ます。

どうでしょう。大丈夫そうですね。

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では内側を彫刻刀でザクザク削りますよ。

削ってはお皿に当てて確認、の繰り返しです。

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さらに紙やすりで微調整など。

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作業時間1時間。

うーん・・・どうでしょう?

悪くないけど良くもない。

接着後にもうすこし削って調整する必要がありそうですが

削りすぎた部分はコクソ漆(パテ状漆)でごまかすことにします。

 

なにせお皿の破片再現は薄い3Dですから

それぞれのカーブを合わせるのが想像以上に難しい作業。

あっちを合わせるとこっちがズレちゃう!

道具と材料がすぐ手元にあるので練習できましたが

なかなかハードルが高い充填部分制作でした。

次回の金継教室で先生にみて頂こうと思います。

 

 

さあ、美味しく食べてビシバシ使おう 6月30日

 

先日の「銀はなに色」の写真にも写っていましたが

このちいさなガラス容器はKANESEIでなくてはならないほど

いつも活躍してくれています。

ご覧の通り、某有名なお店のガラス製プリンカップ。

このプリンは皆さんも一度は召し上がったことがあるのではないでしょうか。

 

田町にある絵画修復スタジオ Tokyo Conservation

使っていたのに始まって、すっかり手放せません。

・とにかく丈夫

・耐熱で湯煎にかけられる

・透明ガラスだから色が良く見える

・大抵の溶剤にも溶けださず安全

・洗ったり拭いたり、片づけが楽

・厚手で安定感があるから倒れない

・程よい小ささ(断然ミニプリン!)

などなど。

ちょっとだけニカワが必要、ほんの少し石膏液を湯煎したい

箔の繕いをするのに少しだけ水が必要

ニスを使った筆を溶剤でゆすぎたい・・・

なんて時には、これがなくては始まりません。

 

そしてなにより、割ってしまったとしても補充も手軽です。

なにせデパ地下に寄っていくつか買って美味しく食べれば

すぐに使えますから。

それもひとつ200円ちょっと。素晴らしい。

 

プリンが食べたいのか、容器が欲しいのか?

どっちも!

これぞ一挙両得と言えましょう。フフフ。

 

調布音楽祭 バッハ・コレギウム・ジャパン 6月27日

 

梅雨晴れの日曜日、調布音楽祭の最終演目

バッハ・コレギウム・ジャパン(BCJ)の演奏会へ行きました。

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いつものように演奏が素晴らしいのは言わずもがな。

穏やかでありつつ熱い鈴木さん(父)の指揮と

その指揮を誰よりも見つめて演奏する優人さん(息子)は

深い信頼で繋がった素晴らしい親子関係に感じました。

父を見つめる息子の眼差しが強く印象に残っています。

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お父さんの鈴木さんが演奏に使われたチェンバロ。

アムステルダムの文字が見えます。

鍵盤の右側が少し高くなって、斜めです。

わざとかな?楽器が古いのかな?

弾き難くないのでしょうか。

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息子の優人さんが演奏しておられたチェンバロはシノワズリ。

どちらも黒に金で装飾された美しい楽器でした。

 

ヘンデル「水上の音楽」と言うと思い出すのは

小学校低学年の頃に買ってもらったLPレコードです。

両親とレコード店に行って、誕生日プレゼントとして

何か1枚買ってもらう約束だったのですが、

この「水上の音楽」と「うる星やつら」のサントラで

迷いに迷った挙句、誕生日とクリスマスということで

2枚買ってもらったのでした。

これが最初の「自分のレコード」でした。

 

このLPは今も家のどこかにあるはずですが

指揮者も演奏者も誰だったのかもはや遠い彼方。

「水上の音楽」は幼い頃の思い出に繋がっていて

華やかな音楽を聴きながらもしみじみとした気分でした。

 

組み合わせをお楽しみください 6月13日

 

額縁によって作品のイメージがガラリと変わることは

みなさまご存知の通り。

額縁制作をする者にとってセンスや考えが問われる

責任重大な部分です。

 

先日完成した額縁には、色やテクスチャーが

特徴的なマットを使いました。

ひとつは古いフランスのデッサンのための額縁。

お客様との打ち合わせの結果、額縁は薄く細い木枠に

シンプルな金の装飾、そしてマットはアースカラーに。

マットの端先(斜めにカットされている部分)には

金色を塗装しました。

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いつもなら無難なクリーム色などをお勧めするところですが

今回はお客様のご希望でこの色に決まりました。

作品の紙の色から額縁の金、木地の茶色へのつながりが

とても自然、そして落ち着いた格調のある仕上がりになりました。

マットの幅が左右より上下を広くしたの成功の要因です。

 

もう1点、こちらはスウェード調のマットです。

こちらもまた茶色の木地に金の装飾をいれた

オーソドックスな箱型額縁ですが

スウェードの雰囲気で、より優しく穏やかな雰囲気になりました。

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模様にみえるのは指の跡ではなく、オリジナルです。

 

マットのサンプル帳には様々な色やテクスチャーがあって

お好み次第でどうぞ

お客様の選択のお手伝いをするのもわたしの大切な仕事のひとつ。

作品とマットと額縁と

組み合わせの楽しみをご提案していきたいと思います。

 

 

金継ぎ練習 作業1 6月02日

 

「帆立貝のタベルナーコロ」額縁の受注は5月末で終了いたしました。

ご注文いただき、ありがとうございました。

お届けまでもうしばらくお時間をいただきますが

どうぞよろしくお願い申し上げます。

*  *  *  *  *  *

平和島の全国古民具骨董まつりで

「金継ぎ練習用」として買った割れ皿で自習中です。

机には紙を敷いて、手袋に腕カバー装備していざ開始。

まずは欠けた割れ口をヤスリで整えます。


そこに木地呂漆を塗り、ロウソクの炎で炙って固めます。

小麦粉と米糊と生漆を練って作った接着剤、麦漆を

竹の付篦(つけべら)で薄く均一に伸ばして接着。


ここまでの作業で30分くらいでしょうか。

セロテープで補強し、乾くまで1週間待ちましょう。

前回、ちがうお皿の作業時、まぁいいか、なんて

セロテープでの補強をはしょったら

(補強するよう先生も仰ったし本にも書いてあるのに!)

翌週見事にズレて接着されていたのでした。

同じ失敗は繰り返したくありません…。

 

漆風呂代わりのダンボール箱の内側を

霧吹きでたっぷり湿らせておきます。

1週間後、きちんと接着されていますように。

漆は実際の作業時間より乾くまでの待ち時間の方がはるかに長く、

待つのが苦手なわたしの良い修行になっています。

 

 

白い 5月27日

 

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いただいた野生のマーガレットと

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庭のばいかうつぎ。

白い花が沢山です。

 

銀はなに色 5月26日

 

銀箔の水押しによる貼り方は

イタリアに留学してから修復学校の授業で学びました。

ボローニャ石膏地に魚膠で溶いたボーロを塗り箔を置く、という方法。

そして銀箔には大抵の場合、黒いボーロが使われました。

銀の白い輝きに黒い下地の深みが加わる印象です。

一方、硬く暗い印象もまたあるように感じます。

 

日本に帰国後しばらくは銀箔に黒ボーロを当たり前に使っていましたが

しばらくしたある日、日本の古い銀箔額縁を見た時に

赤い下地が使われている事に気付きました。(水押し油貼りに関わらず)

その時は、恐らく日本に額縁が入った時に

金箔の下地に赤ボーロが使われているのを見て、

下地=赤が定着したのだろうな、

やっぱり銀箔には黒ボーロが伝統だな!

などと思っていたのでした。

 

でも、それから何度も日本の古い額縁を見るにつれ、

いや待て、銀箔の下地に赤ボーロは有効ではないか?

むしろわたしは赤ボーロの銀箔の方が好きになっている事に気付きました。


イタリアの乾いた空気と強い光のコントラストに対して

日本の湿度ある空気、障子や薄いカーテン越しに入る光による違い…

というのは簡単ですが、もっと日本人の血の感覚とでも言いましょうか。

赤ボーロの方がよりしっくりくるように感じます。

日本国民に多数決を取ってみたいと思う、まぁ好みの差はあれど。

 

銀箔の下から感じる赤い弁柄色の暖かみ、柔らかさは

シックな黒ボーロでも爽やかな黄色ボーロでもない特別なものです。

納める作品にも影響を与える額縁、

ボーロの色を決めるにも悩ましい日々です。

 

 

額縁あそび 5月19日

 

またまた見つけた額縁グッズです。

額縁模様のマスキングテープ。


上野で開催中のカラヴァッジョ展の売り場で見つけました。

額縁模様が延々と印刷されているのですが

箱に貼ってみたら、あら、額縁ですね。


楽しくなって、さらに貼る。

小さなシンプル写真立て(市販品)にも貼る。


こんな額縁でしたが


模様換え。テープの幅ピッタリでした。


四隅を45°にカットするのがひと手間ですが

気軽な遊びでした。

曲面にも上手に貼れば使えそうですよ。

カラヴァッジョ展においでの方、ぜひどうぞ。

 

 

金継ぎ練習 5月12日

 

最近、わたしは金継ぎ(金繕い)を習い始めましたら

以前よりも繕ってある物に目がいくようになりました。

いつも楽しみに出かける平和島の全国古民具骨董まつりでも

様々な器が繕われており、眺めるだけでも楽しいのです。

そんな中、籠に入れて売られている物を見てビックリ。

割れたり欠けたお皿がガラガラとあって

「金継練習用」と書いてありました。

ふうむ、なかなか商売上手ですな。

…と、つい一枚買ったのでした。

欠けたお皿と欠片のセットです。

このお皿も割れる前の販売価格1/7程度のお値段だとか。

それもそのはず、でしょうか?

欠片を組んでみても大きな一片が足りません。


写真左に写っている本のように

木片で再現しなければなりません。

幸いにもKANESEIでは木片には事欠きませんけれど、

なにせ薄いお皿なので木片も薄く上手に作らねば。

 

以前なら売り物にもならず廃棄されたかもしれないけれど

金継流行りで生き延びられる物たち。

蘇って我が家の食卓で活躍してほしいのです。

 

 

茶色いろいろ 5月09日

 

細めの木枠で作る額縁いろいろ。


いつものように、あっち塗ったらこっち磨いて、

あっちこっちです。


それぞれ違う茶色の仕上げにします。

いろんな色の塗料、オークやチェスナット、オリーブ色

混ぜたり薄めたりしています。

同じ塗料でも木地の種類によっても色が変わります。

これから更ににワックスでまた色の変化を加えたり。

 

楽しい!

仕事が楽しいって幸せなことです。

 

 

福の神さま 新たに 5月02日

 

毎年この時期に美しい花を満開にしてくれる

KANESEI作業部屋前にある黄色いモッコウバラは

今年もやっぱり福を運んでくれました。

2012年に「この花はもしかしてKANESEIの福の神様か?!」

と思ったのが始まりで、それ以来毎年のように

モッコウバラの花の時期(大型連休頃)は大忙し、

一年の中でも特に、とても充実した毎日を過ごすことができています。

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卵の黄身の様な優しい黄色、良い香りです。

 

そして今年は小さな福の神様も加わってさらにパワーアップ。

昨年春に深大寺植物園で購入した「斑入白鳥花」の盆栽が

かわいらしい白い花を咲かせています。

小さな体にたくさんの花を咲かせる姿がいじらしい。

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モジャコンビの相棒、アイビーは刈り取った枝を水栽培して

いまやどんどん家族(?)分身(?)を増やし、繁栄弥増すばかり。

KANESEIの晩春は植物に福と力をもらって頑張っています。

 

 

 

 

 

生誕300年記念 若冲展 4月25日

 

4月22日から始まった「若冲展」のオープン前日にあった

内覧会とレセプションに参加させて頂ける機会があり、

大喜びでそそくさと出かけてきました。

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ロビーで受付をして、オープニングセレモニーを少々拝見。

都美術館の館長、NHK会長、そして岡田美術館館長の挨拶が続きます。

今回の展覧会、岡田美術館が所蔵したという「孔雀鳳凰図」が楽しみでした。

83年ぶりに発見されたとか・・・。

 

かなりの混雑でしたが、広い会場内にある作品がすべて若冲という

極楽の中にいるような熱気と喜びが満ちていました。

印象的なのはやはり若い若冲が描いたという孔雀鳳凰図。

ku-ho

画像は岡田美術館HPよりおかりしました

 

筆使いはさすが若冲なのですが、後年の作品のような

鬼気迫るような怖さ(?)は少なくて、色使いが華やかです。

黒色が少ないからでしょうか。

 

何度も本やテレビで見て、見慣れたような気分になっていた

升目描きの「鳥獣花木図屏風」の想像以上の色の繊細さにも驚きました。

jakuchu (3)

画像では分からない、象の額の淡い朱鷺色の美しさ!

面白くて可愛らしい、そして神々しい世界でした。

 

展覧会カタログ表紙にもなっている「梅花群鶴図」の

真正面から見た鶴の顔。

jakuchu (2)

私は生きた鶴を良く見たことがありませんが、

このトウモロコシのような頭、そしてなにより

乱れの無い筆運びに引き込まれました。

細い細い筆で一本ずつ描かれた羽、太さ長さが均一です。

いつ筆に絵具を付け足したのか、いつ息継ぎしたのか。

どんなスピードで筆を運んでいたのか。

この一糸乱れないハッチングを見ていると

ルネッサンス時代のイタリア人画家カルロ・クリヴェッリを思い出します。

時代も国も宗教も違う二人の画家だけど、もし

お互いの作品を見る機会があったなら

なにか通じるものがあったのではないでしょうか。

 

たった1ヵ月だけの開催です。

ぜひお時間を作ってお出かけください。

生誕300年記念 若冲展 東京都美術館

伊藤若冲「孔雀鳳凰図」について 岡田美術館

 

 

「ファッション史の愉しみ―石山彰ブック・コレクションより―」展 4月08日

 

桜が満開の日曜日、世田谷美術館で開催中の

ファッション史の愉しみ―石山彰ブック・コレクションより―」に

行きました。

隣の砧公園からは賑やかな声が聞こえ、花を楽しむ人たちで大賑わい。

美術館も女性メインのお客さんで程よい込み具合でした。

setabi

ロココ辺りからアール・ヌーボーの頃までをメインに

女性の服装の変化を追った内容で、版画と実物のドレスの展示でした。

映画や小説、絵画で見ていたままのドレスの実物を観ては

「これはモーツァルト」「こっちはプライドと偏見」

「若草物語のメグそっくり!」「アシュレーとメラニーみたい」

「ホームズの『あの人』が着ていそう」などと

ひとつひとつがとても楽しいのでした。

そして18世紀のドレスの小さいこと。150センチ前後?意外でした。

時代が下るにしたがってサイズも大きくなっていました。

帰り際、楽しみにしていたカタログが売り切れと知って

がっかり・・・。

 

西洋服飾史研究家の石山彰氏のコレクションの展覧会でしたが、

石山氏の著書一覧を見ていたら、わたしも実は何冊か持っていたことに

今さらながら気づいたのでした。

カタログを入手し損ねたがっかり感が薄れました。

もう一度ゆっくり改めて、石山さんの本を読み返してみようと思います。

 

世田谷美術館

ファッション史の愉しみ―石山彰ブック・コレクションより―」

 

 

「レオナルド・ダ・ヴィンチ -天才の挑戦」展 3月24日

 

連休最終日に江戸東京博物館で開催中の

「レオナルド・ダ・ヴィンチ -天才の挑戦」展に行きました。

edo-tokyo (1)

入口に着いてびっくり、チケット売り場に長蛇の列・・・むむ。

さすが連休最終日。

とにかく入場しましょう。

 

この展覧会は「糸巻きの聖母」と「鳥の飛翔に関する手稿」が

メインとして展示されていますが、他にデッサンがいくつか。

多くの展示作品はレオナルド作品の模写などで

(追従者をレオナルデスキと呼ぶそうです)いかに

レオナルドに影響をうけた画家が多かったか、の紹介です。

 

「鳥の飛翔に関する手稿」のオリジナルは

今まで見聞きしていた通りの(当たり前ですが!)

罫線のないノートに右から左への鏡文字で、間違えの痕跡なし!

インクで黒く塗りつぶす、なんてことはあり得ないのでしょうか。

でも文字列がすこしずつ斜めになっていたり、文字の大きさや密度が違ったり。

丁寧に大切に書かれているけれど人間らしい面も感じられるのでした。

 

ああ、だけど! メインの「糸巻きの聖母」を観るには

なんと130分も行列に並ばねばならない事態になっています。

うー、むむむ。時間と体力と両方に余裕が無い。

ということで、あきらめました。

人々の頭の向こうにある小さな作品を

じっくり眺めて、一応「観たつもり」。

 

この展覧会、「糸巻きの聖母」と「鳥の飛翔・・・」以外には

レオナルド本人の作品は数点の小さなデッサンがあるだけです。

額縁も残念なが小品1点以外には特筆すべきものも無く。

edo-tokyo (2)

会場外にはこんなブースもありましたが、

穴から顔を出す勇気も持ち合わせていませんのです。

・・・うん、まぁ、「鳥の飛翔に関する手稿」が観られたし

さすがレオナルド!の美しいデッサンも見られました。

良しとしましょうよ、わたし。

 

駅への道すがら、桜が咲き始めていました。

今年の初桜。

edo-tokyo (3)

釈然としない、欲求不満な気分でしたが

桜に慰められた帰り道、でした。

 

 

奥深い世界へご案内 3月07日

 

3月3日のひな祭りの日に、東京池袋で開催されました

JAWA-SHOW(TOKYO画材ショー)の一角にて

全国額縁組合連合会主催のワークショップがあり、

講師を務めさせていただきました。

ご参加くださった皆様、また額連の皆様

ありがとうございました。

満席でご参加いただけなかった方々、申し訳ございません。

お申込みをありがとうございました。

jawashow

 

会場入り口にはこんなタイトルを貼っていただきましたが

workshop3 (1)

恐縮です。

今回の内容は、手軽にちょこっと出来る額縁修理の方法を

ご紹介・・・という感じでしたが、

定員20名、皆さまお忙しい中を大変熱心に受講してくださいました。

わたしも緊張しつつ、とても貴重な経験になりました。

workshop3 (2)

額連がご準備くださった新品の額縁に

カナヅチでガシガシと傷を作り、留めを外し準備をして

それぞれ作業をしていただきました。

使う道具も材料もいたって普通、お店で手軽に入手できます。

workshop3 (3)

2時間、駆け足になってしまいましたが、なんとか

「手軽な修理の工程」はご説明できたかと思います。

ご参加くださった方のご参考に少しでも役立てば良いのですが。

 

修理と修復、可逆性を求めるか否か、またその倫理観など

もっと上手にお話すべきだったと反省中です。

そして修理の作業同様に大切な、お客様との打合せ、

また修理計画書の制作方法や写真撮影の重要性など

もっとお話しすべきこと、お話したいこともあったのですが。

また別の機会に。

それまでに経験を増やし、もっと頭の中を理論立てて整理して

説明上手になっておかねば、と思っています。

修復の世界は奥深い!

 

 

額縁木地は同じだけれど 2月29日

 

今年はうるう年。今日29日は大切に感じます。

 

さて、新しく描き終わった黄金背景テンペラ模写に

額縁をつけました。

tempera2016-2 (1)

今回はシンプルにしました。

左の額縁は木地を着色してワックスで磨きました。

右の額縁は下地に赤を塗って少しの磨り出し、ワックスでアンティーク仕上げ。

tempera2016-2 (2)

2点とも木地の形状はおなじです。

塗りと仕上げ、またマット部分の布が違うと

全体の雰囲気もだいぶ違うのでした。

いかがでしょうか。

 

英国の夢 ラファエル前派展 2月25日

 

渋谷Bunkamura ザ・ミュージアムで開催中の

「英国の夢 ラファエル前派展」に行きました。

なにせこの時代の美術・装飾芸術が大好きですので

見逃すことはできません。

ミレイ、ロセッティ、バーン=ジョーンズにウォーターハウスと

ラファエル前派の有名どころが並びます。

 

ポスターにもなったウォーターハウスの大作「デカメロン」ですが

LEAD Technologies Inc. V1.01

(展覧会チラシより)

こちらは1916年作、そしてストラドウィックの「おお燕よ、燕」

という1894年の作品も展示されており、つくづく眺めたのですが、

どちらの作品も、登場する人物たちの顔が全員おなじ。

上記の「デカメロン」にいたっては男女とも同じ顔です。

まるでモデルはひとりで、それぞれデッサンを組み合わせたよう。

CCF20160219 (3)a

なぜ?? 顔に重きを置かない、装飾的な絵画・・・?

ウォーターハウス自身の自画像?

はたまたレンブラントの描くサスキアのように、妻や恋人の姿?

気になります。

 

見逃せない額縁ですが、この時代のイギリスの額縁の特徴である

装飾モチーフを四隅にだけ置かず、中央にも配置すること、

あるいはあえて四隅に置かず中央のみに置くスタイル。

作品タイトルや作者の名前等をゴシック調文字で入れて

装飾の一部にすること、そして木地に直接ボーロと金箔を施す、といった

典型的な例が沢山みられました。

昨年開催されました上田義彦さんの展覧会でも使われていたタイプ。

2015-09-21-12_12_43

作品も額縁もともに、とても楽しい展覧会でした。

会期も残りわずか、お出かけください。

Bunkamura ザ・ミュージアム

リバプール国立美術館所蔵 英国の夢 ラファエル前派展」

2015/12/22(火)-2016/3/6(日)

 

 

 

気分を変えて、背景艶消し 2月18日

 

できた、と思う。

・・・けれど、どうも釈然としない。

tuyakesi (2)

そんな時は、金の艶を変えてみます。

艶ありを艶消しに。

tuyakesi (1)

黄金背景のテンペラ画、背景を艶消しにしたら

日本画のような雰囲気になりました。

ふむ。

 

 

 

額縁見比べ ヨーロッパと日本 2月15日

 

まだ雪が残る箱根の山の上

ポーラ美術館に行きました。

pola2016 (2)

「自然と都市 印象派からエコール・ド・パリまで」という展覧会を開催中。

風景画を中心にモネ、シスレー、ルノワールにシャガール

フジタやゴッホ、ゴーギャンと有名どころがずらり勢ぞろいです。

東京で開催の展覧会なら混雑したでしょうけれど、

平日の箱根ではゆったりと静かに鑑賞できました。

 

作品はもちろんながら、額縁鑑賞も楽しい展覧会です。

フランスのルイ13~15様式でしょう、金の華やかな額縁が主ですが

同じ金でもボーロの色、仕上げの違い、経年での色の変化も興味深いところ。

おそらくここ数十年内に作られた額縁もあって、それらの

古色付けの方法を探って考え込むのも楽しい時間でした。

 

「ポーラ美術館の絵画―日本の洋画、日本画」が別室で開催中で、

そちらでは日本製の額縁を、これまたお腹いっぱい(?)観ることができました。

ついさっき観た本場ヨーロッパのルイ様式の額縁のようなデザイン・・・

だけど日本で作られた額縁は細部のデザインや木地の形、色味がやはり違うのですね。

日本の額縁製造の歴史は、当然ながらヨーロッパよりずっと短く

当初は本場の額縁の模倣からはじまっているのですが、

徐々に「日本らしいオリジナル性」も備えた額縁が作られるようになり、

それが「日本の洋画」にしっくりと合っている、ということを

あらためて確認できました。

pola2016 (1)

モネの「睡蓮」、シャガールの恋人たちの様子は何度観ても素敵ですし、

フジタの「姉妹」と岸田劉生の「麗子坐像」は、作品と額縁の

組み合わせを観るたびにため息が出てしまう。

岡田三郎助の「あやめの衣」の実物は初見で感動、

ルソーの「エデンの園のエヴァ」の前で原田マハ著の

ルソー像を思い出す・・・

それはそれは贅沢な、幸せな時間を過ごすことができました。

あまりに沢山見過ぎて頭が痛くなりましたけれど。

3月13日までの開催です。

チャンスがありましたら是非。おすすめです。

pola2016-3

ポーラ美術館

 

カサカサで良いこと悪いこと 1月28日

 

いつからか、自分の手指がいつも乾いていることに気づきました。

年齢によるものなのでしょうか。

単純に手入れが悪い!も原因のようです。

 

カサカサの手指で良いこと。

金箔が持てる。これはなかなか便利なものです。

箔に指紋が付かない。磨きたての額縁も持てます。

その他、箔ナイフやメノウ棒など

油分水分に敏感な道具の扱いが楽ですので

箔仕事にはもってこいの「カサカサ手」です。

そして悪いこと。

スマートフォンの指紋認証機能が使えません。

何度登録しなおしても一向に使える気配なし。

実は今、これが一番困っていることかもしれません。

 

ともあれ、女性としてもう少し自覚して

手入れをした方が良さそうです・・・。

2013-04-22 17.52.52

 

 

彫る 1月25日

 

寒い寒い週末、久しぶりに彫刻です。

集中していると時間の流れが速い。

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自分のための額縁。

彫り終わったらどうしようかな?

箔仕上げにする?茶色く着色する?

そんな悩みも楽しい時間でした。

 

 

来し方を思う 1月18日

 

つつがなくお正月を終えるための恒例行事

歌会始が今年も行われ、わたしも朝から楽しみに

テレビの前に陣取りました。

良いお天気。今年のお題は「人」です。

utakaihajime2016 (2)

一般から選ばれた方10人の歌、召人の歌、選者の歌、皇族の方からひとつ、

そして皇后さま、天皇陛下の御歌と続きます。

眞子さまの「ふるさとの復興願ひて語りあふ若人たちのまなざしは澄む」

と詠んだ歌、希望が感じられるさわやかな御歌です。

 

歌集も出版されている皇后さまの御歌は何よりの楽しみ。

拝見(拝聴?)するために「歌会始」を観るようなものです。

utakaihajime2016 (1)

空の高いところを遠く飛んでいく飛行機を眺めて

皇后さまは来し方に思いを馳せて詠まれたのでしょうか。

わたしはフィレンツェ留学当時のこと、そして今に至るまでを思い出しました。

 

希望に満ちて旅立つ若い人・・・

楽しく辛く、長くて短い時間。

幸多かれと願います。

 

 

KANESEI 元旦の食卓 2010~2016 1月04日

 

2016年は今日4日から仕事始めの方が多いでしょうか。

お休みが短いお正月でした。

わたしも今日からまた普段の生活に戻ります。

 

・・・などと書きながらも、お正月のお話を。

DSC_7694

毎年のお正月、何を書いていたかな?と思って

2010年から振り返ってみました。

・・・でも毎年同じなのでした。

2010-tile

食器や家具などを見ていると、同じようでも少しずつ

我が家にも変化があったことが分かります。

それぞれの年の写真を見て、その年のいろいろを思い出したり。

 

そして今年、2016年の元旦の食卓

2016

案の定、変わり映えしませんけれど

それで良いのです。

いえいえ、それ「が」良いのです。

2016年も平和に前向きに。

 

 

あけましておめでとうございます 1月01日

 

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旧年中はありがとうございました。

本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

平成28年 元旦 KANESEI




Buon Natale 2015 12月24日

 

メリークリスマス!

 

旅先でサンタクロースに会いました。

可愛らしいキャンディーケインも頂きました。

2015-12-19 12.24.59

 

その後、森の中にあるサンタさんの教会へお邪魔すると

大きなクリスマスツリーがありました。

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教会にはもう誰も居なくて、室温は恐らく氷点下。

それはそれは寒い午後でした。

でも、薄暗い教会内に明るく輝くツリーがあって

まるでそこだけ暖かいかのような雰囲気。

さっき会ったばかりのサンタクロースが心を込めて

せっせと飾りつけをしたりプレゼントの準備をしている様子が

絵本の1ページのように想像できるのでした。

 

暖かくして、心穏やかなクリスマスをお過ごしください!

 

新しいfrido 12月21日

 

frido の名前をつけた額縁シリーズがあります。

frido-1 のデザインから展開させたものです。

箔を変えて色違いだったり、模様デザインを変えてみたり。

今回また新しいfrido が増えました。

2015-11-08 15.37.02

木地はfrido-1 より幅広で大きなものです。

模様と銀箔を使っている・・・というところがシリーズ。

frido-1 はハガキサイズの小さな額縁ですから

模様のバランスや雰囲気も変化が出て

作っていても新しい発見がありました。

 

上の写真は銀箔を磨き終わったところ。

仕事部屋の蛍光灯が反射して眩しいようですが、

これからいつものようにアンティーク仕上げにします。

 

 

冬の朝 箔置きの心得 12月10日

 

寒くなりました。

昨日の朝は今季初の最低気温だったとか。

そんな朝にKANESEIの作業部屋に入ると

吐く息が白くて手もかじかみます。

まずはともあれ暖房をONにして、箔の準備を始めます。

 

箔床、箔ナイフ、メノウ棒などの道具、そして使う金箔。

寒い時期に忘れてはいけないのが

「暖かい室温に戻すこと」です。

キンキンに冷えたナイフや箔は、自分の息の暖かさで結露して

(KANESEIの作業部屋の寒さ、推して知るべし…です。)

箔がナイフに貼りついてしまったりで

二進も三進もいかなくなってしまうのです。

 

焦らず急がず、まずは部屋を暖かくして道具も温めて

かじかまない手で作業をすること。

KANESEIの冬朝、作業心得です。

fuyu

 

用途に応じて 12月07日

 

アクリル絵具の材料は色々なメーカーから出ています。

同じ名前の絵具でも、メーカーによって発色も

テクスチャーも違うのが面白いところ。

それぞれ使う人の好みがあります。

わたしが好きなのは、アクリル絵具はターナー、

そしてアクリルジェッソはリキテックスとターレンスです。

ガバッと広い面にはリキテックス、

細かい部分にはターレンス、といった感じ。

おそらく体質顔料の種類で出る違いなのでしょう。

乾燥後の手触りが、リキテックスはビニール状に粘りがあり、

ターレンスはよりサラリとして、ボローニャ石膏近い感触です。

様々なメーカーの少量入りのものを取り揃えて試してみると

その違いには驚かされます。

お好みのジェッソやペーストを見つけてみてください。

2015-09-25 16.43.21

ターレンスのジェッソとモデリングペーストは

きっと今後も手放せません。

扱っているお店が少ないのがさびしいところです。

 

 

 

たまごいろ、くわいいろ 12月03日

 

烏骨鶏(ウコッケイ、あるいはアローカナ種?)のたまごを頂きました。

広い庭を走り回る鶏のたまごは、大小様々で殻も硬い。

不思議な、それはそれは美しい色をしているのでした。

ukokkei

青? 緑? すこし紫? そしてうすい灰色です。

このたまごの色をみて思い出したのは、くわい。

ひとつひとつが少しずつ色が違うのも同じです。

毎年暮にお節を準備している時、くわいの皮をむきつつ

なんてきれいな色なんだろう、と思っていました。

800px-Sagittaria_trifolia[1]

(写真はwikipediaより)

 

くわいの色も、烏骨鶏のたまごの色も、

絵の具で表現するのでは届かない色のよう。

「似て非なる色」になりそうです。

 

この色には名前があるのでしょうか。

平安貴族の衣装の色に、実は「くわい色の直衣」

「烏骨鶏のたまご色の小袿」なんてものがあったたかも?

あったら良いな、と思っています。

 

もう12月。はやいですね。

お節の準備でくわいの皮をむく時期がやってきます。

 

あると便利 指サック 11月26日

 

古典技法にかぎらず額縁制作での大きな作業に

下地磨きがあります。

胡粉地でもアクリルジェッソ地でもボローニャ石膏地でも

ヤスリをかけて表面を平らに整えねばなりません。

 

イタリア留学時に、額縁に初めてボローニャ石膏を塗った時

平らな板とちがってなんて塗りにくいんだろう、そして

なんて磨くのが大変なんだろう!と驚きました。

師匠のマッシモ氏曰く「石膏塗りが一番難しいよ」と。

「石膏塗り制すもの古典技法制す」は大げさですが

自分の制作、そして atelier LAPIS の生徒さんを見て

石膏塗りの難しさと大切さを痛感します。

まず木地がきちんと組んであり(当然ですが隙間やズレは

無いように)、適量の下ニカワが塗られていて、そして

正しい濃度で適温のボローニャ石膏がムラなく適量塗ってある。

・・・という前提条件が整っていれば、磨きの労力は

ずいぶんと楽になります。

 

さて、そんなふうにして塗った石膏をいざ紙やすりで磨くとき

一番酷使されるのは利き手の親指ではないでしょうか。

アカギレになったり爪が割れたり指の皮膚も擦れて赤くなったり。

でも指サックを使うようになって、ずいぶん楽になりました。

そして作業効率もアップ!

ゴムのグリップで紙やすりも滑らずしっかり磨けるようです。

文房具店で売っている事務用の指サック、お勧めです。

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ウィンドウの中の額縁 11月23日

 

銀座の高級ブティックD&Gのウィンドウで目を引いた

額縁のディスプレーがありました。

ギャラリー林への道すがら、毎日眺めていました。

2015-11-04 10.45.56

2015-11-04 10.45.36-1

イタリアのブランドなので、額縁もイタリア風?

2パターンのディスプレーがありました。

どちらのパターンも内容や向きを変えて

同じ額縁5種が使われているようです。

どれどれ、と近寄ってじっくり見てみます。

 

2015-11-04 10.46.59a

写真では分かり辛いですが、これらの額縁はどうやら

まるっと型取りしたような、いわば簡易的な額縁でした。

もちろんガラス等グレージングも無し。

よく見ると装飾細工や塗装がつぶれたり粗かったり。

でも期間限定のウィンドウディスプレーですから

形取りの額縁の方が軽くて量産もできます。

コストも全く違うでしょう。

 

なるほど。いやはや。

遠目には「本物」と見紛うような良くできた額縁でした。

どんな人がどんな方法で作ったのでしょうか。

樹脂なのかな、発泡スチロールの固いような材なのかな、

金の塗装や古色の出し方はどうしているのかな、

展示が終わったら処分してしまうのかな・・・

欲しいな・・・と、思ったりして。

 

小さい小さい絵展 2015 11月19日

 

そして今年もまた暮を前にして

「小さい小さい絵」展の出品準備をしています。

毎年11月は、小さい絵の仕上げをして額を作って

箱に詰めて届ける、わたしのルーティン

-五郎丸選手にあやかって!-です。

2015-11-14 14.26.23

上の左から時計回りに

ポーケよりギリシャの踊り手

ポーケより小姓

オズボーンよりセジロアカゲラ

オズボーンよりベニヒワ

 

昨年出品しました4点に加えて上の4点、

あわせて8点を出品、展示即売いたします。

池袋にお越しの際にはどうぞお立ち寄りくださいませ。

 

「第21回 小さい小さい絵展」

12月3日(木)~12月16日(水)

池袋 東武百貨店6F1番地 美術画廊内 絵画サロン

 

続けていきます 11月09日

 

銀座7丁目のギャラリー林で開催いたしました

「額縁とポートレート」展が終わって

ようやく普段の生活と気持ちに戻ったようです。

DSC_7598

会場の雰囲気を写真でご紹介させてください。

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たった数日前まで開催していたのですけれど

すでに夢のようです。

 

さて・・・

またいつも通りに、いいえ以前より精力的に

額縁を追いかけましょう。

「行動は積極的に、計画は柔軟に

しかも何も期待しないこと」は続きます。

 

「額縁とポートレート」終了いたしました 11月06日

 

10月29日から銀座7丁目のギャラリー林で開催いたしました

わたしと篠田英美さんの展覧会「額縁とポートレート」は

昨日11月5日に無事終了を迎えました。

お忙しいところご来場くださり、ありがとうございました。

在廊しておらずお目にかかれなかった皆さまには失礼いたしました。

この場でお礼を申し上げます。

はがき

今年のお正月に篠田さんから届い年賀状に

「二人展をしましょう」というお誘いがありました。

いつもなら「まぁそのうちに・・・」などと言って

お茶を濁していたであろうわたしですが、

ちょうど年頭に2015年の自分の抱負

-“行動は積極的に、計画は柔軟に、しかも

何も期待しないこと” ピルチャーの本の一説から-

を決めたところでしたので、すぐに篠田さんと

準備を始めたのでした。

そしてギャラリーオーナーの林さんご夫妻はじめ

沢山の方々のご支援をいただいて、初めて自分の展覧会を

開催させて頂くことができました。

DSC_7572

春先から出品の額縁を作りはじめ、この半年は

あっという間に過ぎていきました。

そして10月の目の回るような日々と、

開催してからの嬉しく楽しい1週間は夢のようでした。

皆さまから様々なご意見を頂き、また励まして頂き、

心がとても豊かになりました。

すべてがスムーズで、あっという間に開催日を迎えることが

できたのは本当に幸せなことだったと思っています。

銀座という分不相応な場所で開催できましたのも

ひとえに林さんのご支援とご理解のお蔭です。

いまは無事に終了した安心感と解放感、そして

日常に戻るための心の整理の時間に浸っております。

 

額縁を前面にだした展覧会・・・有りか無しか。

これは今後も折々に考えていくつもりです。

そして皆さまにご意見を頂くためにも

少しずつですが精進し、またいつか

今回のような展覧会を開催したいと思います。

その時にはまたどうぞご高覧くださいますよう

お願い申し上げます。

ありがとうございました。

 

 

「額縁とポートレート」展 はじまります 10月29日

 

銀座7丁目にあるギャラリー林で

KANESEIの額縁と篠田英美さんの写真の2人展

「額縁とポートレート」展が本日よりはじまります。

前日の午後、ああでもないこうでもないと試しつつ

展示をしました。

ギャラリーオーナーご夫妻にも大変お世話になりつつ

日が暮れる頃にようやく完了です。

2015-10-28 15.56.26

なにせ大慌てだったので作業後の写真を撮り忘れてしまいました。

 

 

沢山の方にご覧頂けるよう

明日から会場でお待ちしております。

どうぞご高覧下さい。

 

 

季語は秋 10月19日

 

今年の初夏に植えた4本の朝顔の苗は

ぐんぐんと伸びて、真夏の日差しをさえぎる

美しく逞しいカーテンになってくれました。

でも、いつまでたっても花が咲きませんでした。

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ところが、真夏が終わり金木犀も散った頃に

ハタと思い出したかのように突然、大きな花を咲かせ始めたのでした。

朝顔の花は真夏に咲くイメージだったので興醒め・・・

と思ったらなんと!朝顔の季語は秋なのですって。

「朝顔は秋の訪れを告げる花。

日本人はこの花に秋の訪れを感じてきた。

奈良時代薬として遣唐使により日本にもたらされた。」

まさに今が盛りの季節の朝顔なのでした。

 

小学校低学年の頃、理科の授業で一鉢ずつ植えた朝顔。

夏休みの観察絵日記で花が咲いて種を摘んで、と

描いた記憶は・・・わたしの勘違い?

それとも違う朝顔の種類だったのでしょうか。

今年、朝顔のイメージががらりと変わりました。

 

 

サイケデリック・アルルカン 10月12日

 

何年か前に作りだして、金箔で止めたまま

壁にかかっていた格子模様の額縁がありました。

「works」ページ「classical」にある botan という名の額縁と

同じようなシンプルな額縁になるはずでした。

 

この夏に思い立って色を付けてみました。

すでに石膏地に格子模様が入っているので、

ひとつずつ塗り分けて、それならアルルカンの衣装のように。

イメージはアンドレ・ドランの「アルルカンとピエロ」です。

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額縁にも4色を塗り分けてみたのですが

ずいぶんと派手になりました。

サイケデリック・アルルカン。

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KANESEI の額縁とは思えない色使いです。

たまにはこんな額縁があっても良いでしょうか。

これからアンティーク風に仕上げるつもりです。

 

 

展覧会のお知らせ 「額縁とポートレート」ギャラリー林にて 10月08日

 

10月29日から1週間 「額縁とポートレート」と題して

写真家篠田英美さんと2人展をいたします。

場所は銀座7丁目にあるギャラリー林です。

こちらでは昨年秋に Atelier LAPIS の展覧会をさせていただきました。

 

CCF20151014

KANESEIの額縁を新旧合わせ18点出品いたします。

最近このブログでご覧いただいていた額縁も登場。

また11月1日の日曜日午後にギャラリートークも予定しております。

どうぞご高覧下さい。

お待ちしております。

「額縁とポートレート」展画像1-e1443429056104

ギャラリー林

「額縁とポートレート」

2015年10月29日(木)~11月5日(木)

11:00~18:00 会期中無休

11月1日14:00~15:30 ギャラリートーク(参加費無料)

 

 

 

吊金具! 10月05日

 

額縁にたいてい付いている吊金具。

いわば裏方で機能重視の部品です。

だけど、もう少し自分好みの金具があったら嬉しいな

と思っていたのです。

そして、特注で2種類の吊金具を作ってもらえることになりました。

turikanagu (1)

ちいさいものは真鍮製

おおきいものは銅です。

turikanagu (2)

いざ作ってもらえるとなって、スケッチで適当に「こんな感じ」と

お願いしたのですが、後から「スケッチが適当過ぎる」と

クレームが入りつつも(当たり前です)、完成した吊金具は

わたしのイメージしていたよりずっと素敵!

うーむ、かわいいのです。

ひとつひとつ手作りなので、微妙な揺れがあって

それが品の良い雰囲気になりました。

この金具に見合う額縁を作らねば!と

鼻息を荒くしております。

 

 

アラベスク?ルネッサンス? 9月28日

 

ルネッサンス時代にイタリア・トスカーナで作られた額縁の

代表的なスタイル「カッセッタ額縁」(cassetta 箱型額縁)を作っています。

両脇が立ち上がった形の木枠に、黒褐色や金のベースを作って

装飾模様-多くの場合は植物模様-を入れるというもの。

今回は額縁の本「LA CORNICE FIORENTINA E SENESE」から

シエナで作られた額縁デザインを参考にしました。

 

さて、模様を考えてトレーシングペーパーに描いたものを

木枠に写してから金で描き終わり、ようやく少し離れた場所から眺めたら

「むむ?何かが違う」

cassetta215 (1)

(ピントのずれた写真で失礼いたします。)

本などで見慣れてきたカッセッタ額縁と違う。

わたしが作ろうと思っていたイメージと違う。

勝手な印象ですが、どこかイスラム風?

アラベスク模様は入れていないのに不思議です。

 

気を取り直して脱アラベスク、目指せルネッサンス。

内側の端先を金にしました。

cassetta215 (2)

またわたしの勝手な印象ではありますが、

たったこれだけでアラベスクを脱したように思います。

 

一本の金。

入るか入らないかでこんなに印象が変わるのだ

と改めて感じたのでした。

 

 

名月と満月 9月27日

 

中秋の名月。

でも満月ではないのですって。

そう言われてみれば右下が欠けている?

DSC_7524

うむ、名月かな名月かな。

 

 

せめて七転八起 9月21日

 

準備中の屋台がありました。

たこ焼きやリンゴ飴の屋台の派手な看板にかこまれて

一味違う雰囲気の一軒は、おそらく張り子のだるま細工の屋台でしょう。

daruma

「廓然無聖(かくねんむしょう)」と「七転八起」の文字。

煩悩も執着もない、清々しい境地。

つまづいてもあきらめずに立ち上がる。

廓然無聖の境地は、わたしにはあまりにも遠くて

想像して憧れることしかできませんが、

せめて七転八起は努力しなければ、と思うのでございます。

打たれ弱くてすぐにいじけるわたしにとっては

七転八起はとても大変ですけれど

色々と考えてみなければ。

 

だけど、なぜこの垂れ幕文字は

七転八起は左から、廓然無聖は右から書かれているのでしょうね?

廓然無聖に「のし」がついているのもなぜ?

達磨大師がいつも毛深く描かれているのは、インド人だからかなぁ

インドの人って言ったって色々だろうにな、

じゃぁブッダも毛深かったのか?

そういえばイエス様もヒゲモジャの絵が多いなぁ。

・・・などと考えていると、すっかり日常に戻っているのでした。

われながら、やれやれ。

 

フラ・アンジェリコ 9月14日

 

日曜日の夜、パソコンで「フラアンジェリコ」を検索したら

びっくり。

競馬の結果がずらりとでました。

どうやらフラアンジェリコという馬が勝ったようです。

 

「フラアンジェリコ」だと馬

「フラ・アンジェリコ」だと画家の検索結果が一番に出ます。

馬のフラアンジェリコの馬主さん、きっと

好きな画家の名前を付けたのでしょう。

今日のレースでフラアンジェリコが勝って

天国のフラ・アンジェリコも喜んでいるかもしれません。

 

それにしても、フラ・アンジェリコはあまり馬の絵を描いていません。

弟子のゴッツォリの絵には沢山登場するのですが。

あまり馬には興味が無かったのでしょうか。

ナショナルギャラリー所蔵の「マギの礼拝」には馬の後ろ姿が登場しますが、

屋根のクジャクのほうがよっぽど楽しそうに描かれています。

Fra_Angelico,_Fra_Filippo_Lippi,_The_Adoration_of_the_Magi[1]

Fra Angelico and Fra Filippo Lippi, Adoration of the Magi, c. 1440/1460

画像はwikipediaより

 

もしかして 9月07日

 

これは金木犀の香りですか?

ある日突然に、はっとします。

もしかして、秋が来たのですか?

ginmokusei

 

そうです。

ようやく、待ちに待った秋のはじまりです。

 

 

お灸をすえられたい 9月03日

 

高校時代の現代国語の教科書で

「星々の悲しみ」を読んで以来、

なんとなく宮本輝氏の作品は読んでいます。

全作品ではないのですけれど。

「にぎやかな天地」を読んだ時は豪華本を作ってみたくなったり

新ゴボウの糠漬けが食べたくなったりしたものです。

 

そして先日「三十光年の星たち」を読んだおりには

頭の中はおかしな京都弁が渦巻き、お灸がしたくなったのでした。

 

子供の頃足に魚の目ができた時に

母がお灸をすえてくれたのを思い出しました。

足の親指の側面の魚の目に小さなモグサを乗せて、お線香で火をつけます。

まるで注射を打たれるような怖さでヒャーヒャー叫ぶ幼いわたし。

あくる日には魚の目はすっかり消えて無くなっていたのでした。

「三十光年の星たち」の登場人物はお灸をすえられて

なんとも気持ちが良さそうで羨ましくなります。

適切な場所に適切な量のモグサを置いて適切な時間にすれば

とても効果があるのでしょう。

うう~む気になります。

そういえば、なぜ我が家には当然のようにモグサがあったのかな。

okyu

最近はすでに作ってある-肌に乗せて火をつけるだけ-お灸も

市販されていますが、自分で火をつける勇気は無く・・・

「おきゅ膏Z」という小さな湿布状のものを買ってみました。

お灸と膏薬の良いとこどりのような商品です。

箱の中には肩こりや腰痛に効くツボが解説してあって

図のとおりにペタペタと親指大の膏薬を貼ります。

これがどうやらわたしには合っているようで、

ずっしりしていた肩が30分後には軽くなったのを感じられるのでした。

ザ・湿布のニオイでノスタルジックな気分になりつつも

きっと常備薬になる予感です。

 

「おきゅ膏Z」がこれだけ効くなら

本当のお灸の効果はどれだけ絶大なのだろう??

宮本輝さんもお灸が好きなのかな、効いているのかな、

わたしも一回してみたい!

 

我ながらなんと影響を受けやすいことか。

と思いつつも、お灸についてつい検索してしまう今日でした。

 

たとえ売られようとも 8月27日

 

骨董市にいくと目に留まるのは大工や指物の道具の店。

以前から使い古しの-骨董市なので古いのは当たり前だけど-

物差しや薬匙、小さな金槌を買ってきては使っています。

だけど刃物だけは・・・

いったい誰が使っていたのだろう。

どんな経緯で骨董市にたどり着いたのだろう。

前の持ち主は市場に並ぶ自分の道具を見て、どう思うだろう。

そんなことを考えていると

いかに立派なノミや彫刻刀が並ぼうとも、

それらの道具を売買することが好ましく思えませんでした。

刃物は手入れも特別必要ですし、多くの場合は木を切ってきたわけで、

それら木が持っていた命の断片と、道具の持ち主の「気」が

沁み込みすぎているような・・・ちょっとした怖さもあったのです。

dougu

先日行った骨董市で、家族が箱に納められた道具一揃いを買いました。

おそらく前の持ち主が使っていたであろう姿のままです。

ノミにカンナ、旋盤の道具。試作のような破片も一緒でした。

その道具を見ていたら、なんだかふと思いました。

きっとこの道具を手放さねばならなかった前の持ち主は

自分の道具が市場に並ぼうが二束三文で売られようが、

大切に使ってくれる人物、自分がどのように使ってきたのか

理解して尊重してくれる人物が引き継いでくれたら

それ以上のことはないのだろうな。

埃をかぶっていたり廃棄されてしまう道具の方が

きっと何倍もの数あるはずなのですから。

 

わたしが死ぬとき、メノウ棒と箔ナイフを

誰か引き続き使ってくれる人に渡すことができれば、

と思いました。

 

 

落書きいちばん 8月20日

 

額縁のデザインを考えるとき、中に納める作品とのバランス

ご注文くださったお客様のお好みや飾る部屋との相性が大切です。

要らない紙の裏側などに落書きのようにスケッチをしながら

徐々に整理して、まとまったら改めてデザイン画に描き起こします。

そしてまた、自分の自由にできる(ご注文品では無い)額縁の

デザインを考えるときは、額縁木地に直接スケッチをすることも。

ちょっとしたバランスや色のイメージも

実物の額縁木地の上で考えて、臨機応変です。

rakugaki

ボローニャ石膏の白い地の上に鉛筆で、ガサゴソと描いたり消したり。

オーナメントをあっちに乗せたりこっちに乗せたり。

そうして線を選んだらトレーシングペーパーに写してから

全体に転写してデザイン完成、一件落着。

 

・・・そのつもりが。

昨日の夕方「これで決まり!」と思っても

今日の朝見たら「なんじゃこりゃ」ということもあったりして

また描いたり消したり、あっちこっち。

デザイン画をきっちり描いた時は、制作中に迷うことは少ないのですが。

変更可能に気の向くままに作るので、迷いもまた楽し。

 

昭和46年8月18日水曜日 8月17日

 

頂き物の骨董には古い新聞が詰められていました。

昭和46年8月18日土曜日の読売新聞です。

今から43年と364日前、夏の新聞。

2015-03-06 16.36.17

7面には映画の紹介がありました。

「-イタリアのメロドラマ- ベニスの愛 近く公開」

2015-03-06 16.36.48

古い映画です。初めて聞いたタイトルでしたが

ヴェネチアが舞台の映画ときたら!早速観てみました。

イタリアでもヒットして、いくつも受賞したとか。

anonimo-veneziano

今は別れて暮らす夫婦が数年ぶりに会って

お互いに探るような質問をして道端で激しい口論をしたかと思えば

しあわせだったころの思い出話をして笑いあったり。

展開はゆっくりですが、過去と現在の行き来、喜怒哀楽の激しさで

観ているわたしは感情がついていけない場面もちらほら。

ほとんどのシーンがふたりの会話で進んでいきます。

やがて夫が不治の病で余命も短いことを打ち明けて・・・。

 

これぞメロドラマ中のメロドラマ。

音楽も舞台も設定も なにもかもがロマンチックなのでした。

わたしが好きなマルチェッロのアダージョが使われていますが

以前お話した映画「ソフィアの夜明け」にも

バッハの編曲によるコンチェルト974をグールド演奏で使われました。

この「ベニスの愛」でも「ソフィアの夜明け」でも

とても大切なシーンで使われている曲です。

たしかにとても心揺さぶられる曲なので

この曲の持つ力も感じられるのでした。

Anonimous_venetian

この映画、邦題は「ベニスの愛」ですが

オリジナルは「anonimo Veneziano」

訳すと「名も無いヴェネチア人」とでも言いましょうか。

この違いも面白いですね。

 

昭和46年の夏 この映画を映画館で見た人たちは

どんな感想を持ったのでしょうか。

原題の意味も知る機会があったでしょうか。

なににせよ、この映画を観てヴェネチアへの旅に出た人も

きっといたはず!と思っています。

 

 

モジャコンビの日課 8月10日

 

わたしの寝室のデスクには、2つの小さな鉢植えがあります。

アイビーと、深大寺植物園の盆栽店で買った斑入白鳥花。

斑入白鳥花は盆栽とも言えないほどの若いものですが、

わたしのペットのようなモジャモジャコンビです。

moja

夏になってからは、朝まず水をやってテラスに出して

午前中のさわやか(?)な空気で日光浴をしてもらいます。

風に吹かれたり鳥の声を聞いたり。

午後半ばの強烈な日光が当たり出したら

すかさず室内に戻して日焼け対策&根の傷み防止です。

(出かける日は外には出しません。)

涼しい室内で落ち着いたら水をやって、

日が陰りはじめたらまた少し外気浴で深呼吸させて

寝る前に室内に戻しておやすみなさい。

優雅に過ごして頂いています。

たまに肥料をやったり、枝葉を摘んだり

ちやほやちやほや。いいこいいこ。

ほとんどわたしの自己満足ですから

モジャコンビのご希望に沿っているか謎なのが痛いところ・・・。

 

昨年の真夏に旅をして、クマヤナギを枯らせてしまった痛い教訓から

(花月はすっかり大きくなって、庭にうつしました。)

このモジャコンビには元気で過ごしてもらいたいのです。

秋になって日光が落ち着いて、外で過ごせる時間が長くなるまで

あとしばらくです。

 

良いこともひとつ。 8月06日

 

言いたかありませんけどね、言わずにおれませんよ。

「あ、暑い・・・!」

やけっぱちな気分になってしまいます。

 

今年は朝顔で天然カーテン作りを目指していますが

葉は日焼けして茶色く枯れ始めてしまいました。

カーテンのカーテンが必要??

先日の良く晴れた日のお昼、庭の温度計をみたら

日向は44度を表示していました。

我が家は都心ではありませんが、高温で名が出る場所でもありません。

都内のはずれでこの気温です。

44 (2)

いやはや、まいったなぁ・・・

暑さに文句ばかりだけど、暑くて良いことは何かないかな?

と考えてみたところ、ひとつありました。

ずばり「石膏やニカワの湯煎が必要ない」のです。

 

わたしの作業部屋は庭の一角にありますので

冷房をつけずにお昼近くになると、かなり暑くなっています。

前日の夜に作り置きの石膏やニカワを冷蔵庫から出しておけば

翌日お昼頃にはすっかり液状に戻って、作業に程よい温度に。

(もちろん防腐剤が入れてあります。)

もひとつおまけに、石膏の乾きが早くて楽!

44 (1)

ただでさえ暑い作業部屋、火を使う湯煎作業が省略できて

そしてひと手間省けて助かります。

 

この暑さも9月半ば、お彼岸までの辛抱です。

 

めざせ使い切り! 7月30日

 

石膏地を磨き終わり、さて次の作業の箔置きです。

ボーロ(箔下とのこ)をニカワで溶いて準備します。

 

ボーロは作りたて、塗りたて新鮮!のほうが

箔の作業仕上がりも良い(ように思う)ので

出来る限り一度で使い切る量だけのボーロを作りたい。

(というのも、毎日箔置きをするほどの作業量が無いからですが。

作業量の多い工房では、昨日の残りに新しく足して

使っていくので使い切る必要はありません。)

目分量で作りますので、ぴったりの量ができた時は

大変に気分よく、大げさですが清々しい気持ちで

次の箔置き作業に入れるのでした。

boro

毎度「めざせ使い切り!」の心でボーロを作ります。

 

 

薔薇に呼ばれたら 7月27日

 

山の上にあった植物園には、東京ではもうとっくに

季節が終わってしまったような花々がまだ咲いているのでした。

izu (3)

真夏の暑さだった東京がまぼろしのよう。

それともこの庭がまぼろし?

izu (1)

 

みずみずしい花々の庭の奥 そのまた奥にひっそりと

白い蔓薔薇の棚がありました。

花はもうおしまい。一番きれいだったころは

いかばかりだたろう?

その美しかった姿を誰か愛でてくれたかな?

茶色くなった花殻を摘み取ってくれる人もいないの?

izu (2)

手前の庭の賑やかさに反して

あまり手入れも行き届いていなかった最奥の白い蔓薔薇が

小さな笑顔で「ようこそ、ようこそ!」と

言ってくれていたような気がしました。

 

 

 

 

あっちもこっちも 額縁も 7月20日

 

ずいぶん前、2011年にお話した「あっちもこっちも」

テンペラ画模写でしたが、額縁制作もやっぱりあっちもこっちも。

同じデザインの額縁を並べて作るより、違うサイズ違うデザインの額縁を

同時進行で作るのは楽しいものです。

あっちの絵具が乾くのを待つ間、こっちを削って、今度はそっち。

ひとつの工程が終わったら、次の工程に入る前に一息おく時間を持つと

冷静に、それまでより客観的にその額縁を見られるような気がします。

どんどんと流れ作業にならないように。

atti2015

とは言え、飽きっぽいのは相変わらずです。

 

半分現実 半分脳内回顧 7月06日

 

額縁制作の作業では、箔のメノウ磨きや石膏磨きなど

ひたすらに黙々と続ける作業があります。

刻印打ちの作業もそのひとつです。

 

作業中はラジオを付けることもありますが

あまり耳には届いていないような気がします。

わたしの心、というか意識はだいたい半分に分かれていて

半分はいま現実に行っている作業について

「このラインに沿って打つ」「強さはこの位」など考え

もう半分の意識はもっぱら古い記憶をたどっているようです。

この「脳内回顧」はわたしの作業中のくせなのか・・・分かりません。

学生時代のこと、いぜん作った額縁やお客様の反応など

次から次へ糸がつながるように記憶が蘇ります。

困ったことに、蘇る思い出は自分で選べず勝手に湧き上がりますので

もちろん嫌な記憶-たいていは失敗したことや恥ずかしかったこと-も

含まれていて、「嫌な記憶連鎖」が始まってしまうともう

どうにもこうにも眉間のシワは深くなる一方。

こうなったら脳の半分も現実の作業に引き戻すしかありません。

最近は連鎖を断ち切る方法がどうにか身についてきましたが。

kokuin

座禅修業や瞑想の練習は、この自分の「脳内回顧」も含めて

いかにして「考え事」を乗り越えるか、なのでしょうか。

無我の境地。

ううむ、わたしの境地は遠そうです。

 

 

メノウ棒新入り 7月02日

 

古典技法で欠かせないのがメノウ棒です。

箔を水押し(箔貼り方法のひとつ)した後に

このメノウ棒で磨けば、数ミクロンの薄さの箔とは思えない

深い金属的輝きが得られます。

 

普段わたしが使っているメノウ棒は、大学時代に買った

イタリア製のもの3本と、テンペラの先生手作りの1本

そしてポーセレン用の細いもの1本です。

それで十分ではあるのですが、先日東急ハンズで見かけて

つい買ってしまったメノウ棒が2本、仲間入りしました。

どちらも彫金道具売り場で見つけたものです。

menou2015-1

左の細いものは、すでに持っているポーセレン用のメノウ棒と

ほとんど同じ太さですが、しばらく前に先端を折ってしまい

登場回数が減っていたのでした。

折れた先端を研ぎなおして使っていましたが

何となく以前の使い心地は取り戻せないまま。

この新しい1本で、また思うように細い線が入れられるようになります。

 

そして右のメノウ棒は、切り出しナイフのような形をしています。

以前から「ハンズで手頃な価格のメノウ棒を売っている」ことは

見聞きしていましたが、必要が無いので手を伸ばさなかったのです。

今日、ためしに1本買ってみました。

 

menou2015-2

ナイフ形メノウ棒は昔に見かけたものより厚くなって

(以前はもっとヘラのような印象でした。)

軸とつなぐ真鍮の留め金具がしっかりしたような感じです。

これは輸入品のメノウ棒にはない形。軸は竹です。

日本のバンブーメノウ棒は一味違います。

石の部分をしっかり持って磨けば、広い面も細部も磨ける

オールマイティな1本になるかもしれません。

どちらも1500円弱で買えました。

なかなか良い買い物をした気分です。

 

店頭には数本並んでいました。

もし古典技法用にご購入を検討される方がいましたら、

よく比べてみて、厚みのあるもの選ばれるのをお勧めします。

 

 

キューティクルプッシャーの使いみち 6月25日

 

最近手に入れてとても気に入っている道具があります。

石膏垂らし描きでつくるレリーフ模様装飾

(わたしは盛り上げ装飾と呼んでいます)の

アウトラインを整える作業にぴったりなのです。

nail2015 (2)

この道具 ネイル用品のお店でみつけた「キューティクルプッシャー」なるもの。

爪の甘皮を処理するステンレス製の道具とでも言いましょうか。

上の写真で 右側のスプーン状になっている部分で甘皮を押しこみ

左側の小さな部分(鈍い刃物状)で押し込んだ甘皮を削り取るようです。

この左側の小さな刃物状の部分がレリーフの石膏を削るのに最適!

いままではおそらく歯科の道具であろう 似たような道具を使っていましたが

このプッシャーはずっと優れています。

nail2015 (1)

まずグリップが太くてしっかり握れること。

そして刃物状の部分に厚みがあるので 削る時のイヤな音

-黒板をチョークで引っ掻くような 思い出すだけでぞっとする音!-

が出にくいのです。

紙やすりでちょいちょいと研いで使えば切れ味も程よくなります。

そしてそして 従来の歯科道具よりお手頃価格。

 

このプッシャーは 例えば粘土細工や模型など

細かい作業にも使えるのではないか?と思います。

男性はなかなかネイル売り場に足を踏み入れるのに戸惑うでしょうけれど

ネットなら様々なメーカーから発売されているプッシャーが選べます。

 

わたしがこのプッシャーをネイルに使う機会はありませんが

今後は手放せなくなりそうです。

 

写真と古典技法額縁の関係 6月08日

 

友人の勧めで 竹芝にあるギャラリー916をたずねました。

写真の展示を主にするギャラリーです。

今は上田義彦さんの『A Life with Camera』という展覧会が開催されています。

 

ギャラリー916は上田義彦さんがキュレーターも務められる場所であり

また今回の展覧会は上田さんの写真家としての35年間をまとめる展覧会だとか。

 

この展覧会では 倉庫のような大変広い空間の床から天井まで

サイズも撮影時期も違う写真が並んでいます。

すべての写真が額縁に納められていて それがシンプルな額縁もあれば

アンティークの箔を使ったもの 画材店で手頃に入手できそうなものまで。

人物ポートレイトから風景や静物の ありとあらゆる写真が

これまたありとあらゆるテイストの額縁にぴたりと納まって展示され

不思議な統一感と写真のエネルギーが感じられる展覧会でした。

 

いままで古典技法の額縁 それもに金箔を使ったような

クラシカルなデザインの額縁と写真は なかなか難しいか・・・と

思っていましたが 今回の『A Life with Camera』展で覆されました。

シンプルな白木の木枠に白いマットに入れられた写真の隣に

アメリカのアーツ&クラフツ時代の金箔額縁に入った写真がさらりと並ぶ様子は

圧巻でもあり また大きな喜びと「再確認」でした。

 

アメリカのアーツ&クラフツ時代の額縁は わたしは今まで

本でしか見たことのない額縁でしたので それもまた興奮のひとつでした。

 

巨大な空間にならぶ力強い写真と それを支える様々な額縁。

ぜひご覧頂きたいお勧めの展覧会です。

 

A Life with Camera
Yoshihiko Ueda

2015.4.10 – 7.26

ギャラリー916

〒105-0022 東京都港区海岸1-14-24 鈴江第3ビル 6F

OPEN: 11:00-20:00 (平日) / 11:00-18:30 (土日、祝日)

CLOSE: 月曜日(祝日を除く)

入場料: 一般 800円、大学生/シニア(60歳以上)500円、
高校生 300円、中学生以下無料 (Gallery916及び916small)

 

写真家上田義彦『A Life with Camera』

 

 

そ、その色は・・・ 6月04日

 

毎度のことではあるのです。

でも、下色を塗っているときは我ながらぎょっとします。

この色は額縁には強烈すぎやしませんか。

siratama2

ショッキングピンクにゴールド!

 

でもこれで完成ではありません。

上色をかけて、艶消しに。

siratama1

計画通りの仕上がりになって一安心なのでした。

 

 

建物見学  -ここはどこ- 5月28日

 

ここはどこ?

ヴェネチアのお屋敷のような格子窓

honganji (2)

入り口には美しい大理石モザイク ローマの教会?

honganji (3)

柱にはロマネスク風の彫刻 はたまたフィレンツェ郊外の教会でしょうか?

DSC_6994

入り口の扉は大きくて

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扉の装飾は・・・ルネッサンス風?

honganji (5)

ここはどこ?

ここは東京 築地の本願寺。

ご存知の方はすぐにお分かりでしたね。

honganji (1)

内部はお寺そのもの。

こんなところが東京にあったのですね。

インドのような ヨーロッパのような でも純日本・・・

お寺の建築としてはめずらしい

不思議な建物でした。

銀座にお出かけの際に 足を延ばしてぜひどうぞ。

築地本願寺

 

 

つーとん? 5月21日

 

最近すこしずつ「好き勝手」な額縁を作っています。

最低限の決まりはあるけれど あとは気の向くままに。

 

彫刻もご無沙汰 と思って作っている額縁です。

内側のカマボコ形の部分に切り込みをいれてボールのネックレス状にしました。

2015-05-06 14.58.25

でもこの先は未定。

石膏を塗る? それとも木地仕上げにする?

箔を貼る? 装飾はどんな感じに??

さらに彫っても良し オーナメントを付けるも良し。

それとも外回りに他の木枠を足してみる??

頭の中にはいくつかプランがあるけれど 迷うのも楽しいものです。

なにせ「好き勝手」ですからね。

 

このネックレス状の模様は額縁で良く見られるものです。

イタリア語では本によると「perlato」または「olivette」と呼ぶとか。

市が尾の atelier LAPIS の月曜コースでは このデザインを

「ツートン」と呼んでいます。

見たままに模様が「つーとんとん つーとんとん」と

つながっているからで Iさんの命名です。

それ以来わたしにとってもすっかり「ツートン模様」になりました。

 

 

ひとりきりで それでも 5月14日

 

ここ何年もずっと テンペラ画の模写は

小さなもの-ハガキより小さな-ばかりです。

毎年暮にある「小さい小さい絵」展に出すためでもありますが

やはりわたし自身が小さいものが好きだから・・・が

一番の理由かもしれません。

 

画面が小さいと 必然的に登場する人物は減ります。

ひとりが収まりが良いような気がして

結局いつも人物なり動物は「ひとりきり」です。

受胎告知の天使は 向かい側にマリア様がいるはず。

その雰囲気が伝わると良いのですが。

2015-03-21 13.01.09

ひとりきりで描かれていても ひとりきりに感じさせないように・・・

 

 

 

鏡の中に誰がいる? ルーヴル美術館展 5月07日

 

国立新美術館で開催中の「ルーヴル美術館展」に行きました。

休日だったこともあり大混雑!

louvre

この展覧会にはポスターになっているフェルメールとティツィアーノの他

レンブラント ムリーリョ シャルダンにコローと

名前を聞いただけで鼻息荒く駆けつけたくなる作品が出ています。

 

そしてやはり気になるのは額縁。

ティツィアーノ「鏡の前の女」には全面金箔に点の刻印打ちで

植物模様が入れられていたのですが

tiziano

画像はルーブル美術館展ホームページより ティツィアーノ 《鏡の前の女》 1515年頃 musée du Louvre

 

なにせ大きな額縁ですので作業量も多く

また刻印打ちを美しく仕上げるには箔置きからメノウ磨きは当日中

そして石膏地が程よく湿度が残っている状態で打ちたいところ。

おそらくこの額縁を作った工房では数人の職人が同時に

作業をしたのではないかと思います。

刻印の打ち方 また刻印自体も少しずつ違いが見られました。

細かく打つ人 おおらかに打つ人 また急いで打ったような跡。

この「鏡の前の女」の刻印打ちはのべ4人以上で行われた?

と観察しました。

これから展覧会にお出かけの方 ぜひ数えてみてください。

 

それにしても 女性の後ろに置かれた鏡は不思議です。

女性の顔に当たる光が入ってくる窓が見えます。

そして この絵を観ている私たちがいる(はずの)場所

あるいは作者のティツィアーノがいるはずの場所には何もない。

うす暗いなか 女性の白い背中だけが見えています。

鑑賞者もティツィアーノもいるはずのない プライベートな一場面。

鏡の中をもっとじっくり見てみたくなります。

 

展覧会ホームページ:http://www.ntv.co.jp/louvre2015/

 

今年もまた福の神 4月27日

 

4月の中ごろに開花して 連休前に満開を迎える

我が家のモッコウバラは

今年も素晴らしい花を咲かせています。

mokkou2015-1

ちょうどモッコウバラの裏側が作業部屋になっているので

散歩中の人などの「わぁきれい!」という声が聞こえてきて

わたしもひとりニヤニヤと自慢げな気分になっています。

 

そしてこのモッコウバラの花は福の神でもあります。

花が咲くころには毎年大忙しになって

連休中もせっせと作業部屋にこもる時間が増えるのです。

 

KANESEI の晩春はいつも福の神 モッコウバラの花に守られています。

mokkou2015-2